中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

休日の本棚 上杉鷹山の経営学

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で4702人、そのうち東京862人、神奈川453人、埼玉262人、千葉220人、愛知373人、大阪666人、兵庫304人、京都108人、福岡165人、沖縄176人、北海道77人などとなっています。土曜とはいえ、5000人を下回り、新規感染者数ばかりでなく、陽性率も大幅に低下しています。重傷者数は今なお高い水準にありますが、徐々に減少しています。今後このままの減少傾向が続くのか、はたまた感染拡大へと向かうのかは、われわれ国民の意識と行動にかかっています。ワクチン接種で気を緩めることなく、これまで通り感染防止対策を行っていきましょう。

自民党総裁選では初めての4者討論会が行われました。「改革」を掲げる河野太郎に、岸田文雄が集中攻撃をかけるという構図で、岸田に論破された河野の負けでした。しかし、今やるべきは「改革」以外にありません。自民党の改革なくして日本の政治を改革することはできません。安倍に忖度するような者が総裁になるようでは、これまでの派閥主義、長老支配を打破することはできません。4者とも小粒で総理・首相の器とは言えませんが、それならば「改革」を掲げる者に総理・首相として政治を変えてもらいたいものです。

さて、今日は、童門冬二著「上杉鷹山経営学 危機を乗り切るリーダーの条件」(PHP文庫)を紹介します。

上杉鷹山は、1751年に高鍋藩の藩主秋月種美の次男として生まれ、9歳で米沢藩主上杉重定の養子となり、16歳で家督を継ぎました。上杉家は、関ヶ原の決戦後、会津120万石から米沢30万石に転封、その後さらに15万石に減らされます。120万石時代からの家臣を抱え、借財も増え藩の財政は大赤字、重定は藩領を幕府に返上することまで考えたと言われています。このような絶望的な状況で藩主の座に就いたのが、上杉鷹山です。

鷹山の藩政改革は1期と2期にわかれます。

第1期の藩政改革は1767年から1785年に隠居するまでの18年で、①適材適所の人材登用 ②藩主を含めた大倹約に基づく財政緊縮 ③漆・桑・楮の各100万本植樹計画に代表される地場産業の基盤づくり ④人口減少の防止等の4つの政策を打ち出しました。しかし、改革を理解しない反対勢力の存在や領民の理解を得られず、さらに人材登用した竹俣当綱の慢心や横柄による失脚、鷹山の隠居により道半ばで終わりました。

隠居した鷹山は、当時の将軍徳川家斉から直々に藩政改革を任され、米沢藩主上杉治広と共に再び藩政改革に取り組みます。これが1787年から亡くなる1822年までの第2期の藩政改革となります。第2期の藩政改革では、支出のさらなる削減を家臣に理解させ、領民にも理解してもらうために、財政状況を記録した会計帳簿を全領民に公開しました。また地元の豪商から2500万両を借り入れ、財政復興の進捗状況を示すチェックリストを作成し、計画の進捗状況、修正点を掲げ、厳しい監視や統制のもとで、改革を推進していきます。鷹山の死の翌年には破綻寸前であった藩財政は立ち直り、米沢藩は借財を完済します。

鷹山の藩政改革が領民に根付いたのは、①領民が豊かになる社会 ②領民が参画して共に創る社会と目的を明確にし「あるべき姿」から逆算して「今何をなすべきか」を考えるという思考を取り入れ、鷹山自身が自らも実践し、多くの領民に共感を得たことによるのです。

徳川幕府では、同時期には松平定信寛政の改革、少し後には水野忠邦天保の改革が行われましたが、いずれも成功を収めることはできませんでした。鷹山の藩政改革との違いは、鷹山が藩士や領民に改革の必要性と改善策を理解させたのに対し、幕府の改革では必要性や改善策の内容を旗本をはじめとする武士や庶民に理解させることができなかったからです。

企業や組織、あるいは政治にしても、改革を行うためには明確でわかりやすいビジョンを提示し、社員やメンバー、国民に理解させるとともに、トップが自ら率先して実践し、社員やメンバー、国民の共感を得ることが何にもまして重要なのです。

ジョン・F ・ケネディをはじめ、多くのリーダーや経営者が、尊敬するリーダーの人物として名を挙げる上杉鷹山ですが、この本は、上杉鷹山の組織と人間の管理術について説明されています。

上杉鷹山の藩政改革における考え方を、今風に、企業経営における改革に置き換えれば、次のように言うことができます。

  • 経営改革というのは、単にバランスシートに生じた赤字をゼロにすることではない。改革を進めるには、人づくりが大切だ。人づくりを無視した改革は決して成功しない。
  • お客様に対するサービス精神を何よりも経営の根幹に置くべきである。
  • 絶望的な職場は譬えてみれば冷えた灰だ。しかし、その灰の中をよく探してみれば、必ずまだ消えていない小さな火種があるはずだ。その火種はあなた自身だ。その火を他に移そう。つまり灰のような職場でも、火種運動を起こせば必ずその職場は活性化する。そしてその組織は生き返る。
  • お客様のために我々は存在する。
  • 「品物を使う側、サービスを受ける側の身になったとき、われわれが差し出すものは果たして満足を得ているのだろうか?」という疑問を常に持ち続けよう
  • 改革を行うには人が問題だ。人が育たなければ、改革はできない。
  • 上杉鷹山の行った経営改革は、赤字を消しただけではない。人間の心の赤字を消したのだ。人々の胸に、もう一度他人への愛、信頼という黒字が戻ったのだ。

この本は、次のような構成になっています。

ロローグ なぜ、いま上杉鷹山か 構造不況の米沢藩を甦らせた男・鷹山

第一章 名門・上杉家の崩壊 財政破綻はなぜ起こったのか

第二章 名指導者への序曲 実学感覚を修得せよ

第三章 変革への激情 「真摯さ」がなければ、何事も始まらない

第四章 大いなる不安 絶望感は自らの力で取りされ

第五章 断行 あくなき執念と信念が奇跡を生む

第六章 最後の反抗 衆知を集めて悪弊を斬れ

第七章 英断 必要とあらば、非情であれ

第八章 巨いなる遺志 老兵・鷹山の若き後継者

エピローグ 愛と思いやりの名経営者・鷹山 人の心をよみがえらせるものこそ現代の    

      指導者だ

鷹山が、自ら隠居し、前藩主重定の子保之助(治広)に家督を譲った時に、米沢藩主としての心得三箇条(伝国の辞)を与えています。

  • 国家は先祖より子孫に伝え候国家にして、我、私すべきものには之無く候
  • 人民は、国家に属したる人民にして、我、私すべきものには之無く候
  • 国家、人民のために樹てたる君にて、君のために樹てたる国家、人民には之無く候

当時の封建幕藩体制では、藩主は藩民を私し、単なる税源としてしか考えず、領民の人格など全く無視されていました。鷹山は、藩は藩主の私物ではないし、領民も藩主の私物ではないと明言しているのです。藩主というのは、藩と領民のために仕事をする存在で、藩や領民は藩主のために存在しているのではないということです。現在の民主主義においても、私利私欲にばかり走り、政治家は国民のために存在すると明言し、それを実践する政治家がいないことを考えると、封建幕藩体制下でそれを実践した鷹山はすごいとしか言えません。

これは企業や組織においても同様です。企業や組織は経営者やリーダーのためにあるのではありませんし、社員やメンバーも経営者やリーダーのためにあるわけではありません。社員のため、ひいてはお客様のために経営者やリーダー、企業や組織は存在しているのです。

米沢藩は、現在で言えば中小企業に比肩します。米沢藩の藩政改革は、とりもなおさず中小企業の経営改革と言っても間違いではありません。

前述したように、鷹山は「冷たくなっているようでも、灰皿の底には火種が残っていた。これは米沢藩でも同じだ。残っていた火種が新しい灰に火をつける。その新しい灰火がさらに新しい火を起こす。そういう繰り返しで、藩政改革の火が燃え上がらないだろうか」と考え、家臣に「お前たちが火種だ。心の中にある改革の火種を、それぞれ新しい灰、つまり他の藩士や領民に移してほしい」と言っています。

中小企業の経営改革も同じです。社員に「ウチの会社はなぜ、成長しないでここまで来てしまったのか」「どこを直せばよくなるのだろうか」と問いかけ、社員全員が「会社をよくしよう」という火種を移し、さらに次から次へと移していくことが大切です。

昨日、コッター教授の「企業変革の落とし穴」という論文を紹介して「企業変革の8段階」を示しました。鷹山の藩政改革は、この8段階のステップを段階的に踏んでいるように見えます。あの江戸時代にきちんとした経営戦略を持っていたというのは、やはりすごいとしか言いようがありません。

著者の童門氏には「小説 上杉鷹山」という本がありますが、長編小説で描かれた上杉鷹山の業績と経営学が、この本では凝縮されてまとめられています。経営者、リーダーだけでなく、すべてのビジネスパーソン、政治家にも読んでもらいたい本です。

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休日の本棚 企業変革の落とし穴

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で5095人、そのうち東京782人、神奈川547人、埼玉348人、千葉246人、愛知581人、大阪735人、兵庫268人、京都121人、福岡161人、沖縄185人、北海道84人などとなっています。全国的にピークアウトしつつあり、危機感が薄れてきていますが、第4波のピークを少し下回った程度です。また重傷者は第4波のピーク時の数字を大きく上回っています。いったん新規感染者数が2万人をいう数字を超えその後1万人を下回ると、いまだに高い水準にあるにもかかわらず終息が見えているといった間違ったバイアスが生まれ、危機感が薄れ楽観論に支配されるようになるのです。分科会の尾身会長はは「第5波のピークは過ぎた」と言っていますが、ワクチン接種率が上がったことでの安心感や危機感の薄れから、人流が増えてきています。冬は感染症が流行しやすい時期なので、もう一度気を引き締めて、しっかりとした感染防止対策を続けていかないと第6波が襲ってきます。気を緩めることなく、これまで通り感染防止対策を徹底しましょう。

さて、今日も、ダイヤモンド・ハーバードビジネス・レビューに掲載された論文を紹介します。ジョンP・コッター氏の「企業変革の落とし穴」です。コッター氏は、ハーバード・ビジネススクールの教授で、弱冠33歳で教授に就任したリーダーシップ論の第一人者です。

この論文では、コッター教授が、より競争力の強い企業に生まれ変わろうとする100を超える企業に注目し、その変革事例から得られた教訓が紹介されています。

この100を超える企業には、大企業もあれば中小企業もあり、アメリカ企業だけでなく他国の企業もあり、倒産寸前の企業もあれば高収益を上げている企業もあります。

ところが、コッター教授の分析によれば、企業変革に成功した企業はほとんどなく、また失敗した企業もほとんどないということです。ほとんどのケースが成功と失敗の中間にあり、どちらかと言えば、失敗に近いところに位置付けられているというのです。

これらの事例から得られる教訓が2つあると言っています。

  • 変革プロセスは、いくつかの段階を踏まなければならない。通常、最後まで辿り着くには相当長い時間が必要である。途中にスピードアップを図り一部省略すると、満足いく成果を上げることはできない。
  • どの段階であれ、致命的なミスを犯すと、変動運動はその勢いをそがれる。これまでの成果は台無しとなり、決定的なダメージを被りかねない。

今後、競争が激化するビジネス環境において、この教訓は極めて有益です。

コロナ禍で激動のビジネス環境においては、変革は必要不可欠です。厳しさを増す新しい競争環境に対応するために、ビジネスのやり方を抜本的に改革していかなければなりません。変革を成功させるためには、まずは個人あるいは社内グループが自社の競争状態、市場シェア、技術トレンド、財務状態などを徹底的に検討することから始めなければなりません。そして、次に、これらの情報、特に直面する危機、潜在的な危機、あるいはタイムリーで大規模なビジネスチャンスなどについて、広範かつ効果的に社内に浸透させる方法を考えなければなりません。変革プロセスを立ち上げるだけでも、多くの社員の積極的な協力が必要不可欠です。モチベーションのないところに協力は生まれません。

企業変革には段階があり、その段階を着実に踏んでいかなければなりません。

この記事では次の8つの段階に分けています。

  1. 緊急課題であるという認識の徹底・・・①市場分析を実施し、競合状態を把握する。②現在の危機的状況、今後表面化しうる問題、大きなチャンスを認識し議論する。
  2. 協力な推進チームの結成・・・①変革プログラムを率いる力のあるグループを結成する。②1つのチームをして活動するように促す。
  3. ビジョンの策定・・・①変革プログラムの方向性を示すビジョンや戦略を策定する。②策定したビジョン実現のための戦略を立てる。
  4. ビジョンの伝達・・・①あらゆる手段を利用し、新しいビジョンや戦略を伝達する。②推進チームが手本となり新しい行動様式を伝授する。
  5. 社員のビジョン実現へのサポート・・・①変革に立ちふさがる障害物を排除する。②ビジョンの根本を揺るがす制度や組織を変更する。③リスクを恐れず、伝統にとらわれない考え方や行動を推奨する
  6. 短期的成果を上げるための計画策定・実行・・・①目に見える業務改善計画を策定する。②改善を実現する。③改善に貢献した社員を表彰し、報奨を支給する。
  7. 改善成果の定着と更なる変革の実現・・・①勝ち得た信頼を利用して、ビジョンに沿わない制度、組織、政策を改める。②ビジョンを実現できる社員を採用し、昇進させ、育成する。
  8. 新しいアプローチを根付かせる・・・①新しい行動様式と企業全体の成功の因果関係を明確にする。②新しいリーダーシップの育成と引き継ぎの方法を確立する。

企業変革を成し遂げるには、上記の8つの段階を順次進めていけばいいのですが、それぞれの段階に落とし穴が待っています。

1.第1ステップの落とし穴:「変革は緊急課題である」ことが全社に徹底されない

 人間は、悪いニュースを避けようとするバイアスが働きます。成功事例では、変革推進チームのメンバーが不愉快な事実、すなわち新たなライバルの出現、利益率の低下、市場シェアの縮小、売り上げの伸び悩みなどといった不利益な事実を受け入れ、忌憚のない議論ができる環境が構築されていたのです。危機意識が十分に浸透していなければ、変革は不可能です。この記事では、経営幹部の75%程度が「このままビジネスを進めていては絶対だめだ」と本気で考えている必要があると言います。そして、変革を推し進めるには強力なリーダーシップが必要です。変革を成功に導くには、まずは経営幹部が危機意識を持ち、それを全社的に共有し、強力なリーダーが率先して推し進めていく必要があるのです。

2.第2ステップの落とし穴:変革推進チームのリーダーシップが不十分

 大がかりな変革プログラムでも少人数でスタートすることが多いのです。しかし、トップが積極的なサポートしない限り、大規模な変革は実現できません。

 経営陣が変革の緊急性を十分に認識していれば、変革推進チームの結成は容易ですが、誰かが音頭を取って、チームメンバーをまとめ、自社の問題点やビジネスチャンスに関する認識を共有させ、必要最低限の信頼関係とコミュニケーションを築き上げなければなりません。ここで失敗する企業の多くは、強力な変革推進チームの重要性を侮っていることにあります。

3.第3ステップの落とし穴:ビジョンが見えない

 変革に成功した企業は、例外なく変革推進チームに、顧客や株主、社員に説明しやすくかつアピールしやすい未来図を持っています。ビジョンは、単に5年計画のような数字を羅列したものではなく、自社が進むべき方向性を明確に指し示したものでなければなりません。熟考に熟考を重ねた分析と理想が反映され、素晴らしい出来栄えのものとなってはじめてビジョンを実現できる戦略も策定できるのです。

4.第4ステップの落とし穴:社内コミュニケーションが絶対的に不足

 企業内部の多くの人たちが進んで協力してくれない限り変革は不可能です。信頼に足るコミュニケーションなくして、社員の心や関心を集めることなど不可能なのです。

 変革に成功した事例では、ビジョンを広く知らしめるために、経営幹部がありとあらゆるコミュニケーション手段を駆使し、説明し、社員からの質問を受けてこれに応えることを行っています。コミュニケーションは言葉と行動の両方が必要であり、特に行動はもっとも説得力のある手段です。

5.第5ステップの落とし穴:ビジョンの障害を放置してしまう

 変革推進チームが新たな方針を効果的に伝えられれば、ある程度は社員に新しい行動を起こさせることができます。しかし、それだけでは不十分で、イノベーションを実現させるには障害を取り除くことが必要です。

 新たなことを起こそうとすれな、当然多くの障害が立ちふさがります。最も厄介なのが、変革を拒み、全社の動きとはそぐわない要求を突き付けてくる管理職です。

 どんな組織でも、変革プロセスの前半では、すべての障害を取り除くだけの力も勢いもありません。それでも重大な障害と対峙し、場合によっては、それが人間でも、泣いてでも斬らなければならないときがあるのです。 

6.第6ステップの落とし穴:計画的な短期的成果の欠如

 変革はそんなにたやすいことではなく、時間がかかります。その際、短期的な目標を設定しておかないと、変革の勢いを失速させることにもなりかねません。短期的に何らかの成果が上げられなければ、多くの人は投げ出してしまいます。

 短期的に成果を上げることと、短期的に成果を上げたいということとは別物です。後者は受動的であり、前者は能動的です。順調に進んだ変革の成功例を見ると、経営陣が業績が明らかに改善しうる手段を積極的に模索し、年度計画に目標を設定し、目標達成に貢献した社員を積極的に表彰したり昇格させたりしています。

 「変革には時間がかかる」という意識が社員に広がると、「変革は喫緊の課題である」という事実がなおざりにされてしまいます。短期的な成果を出すという責務を課すことで、緊急性を意識しつつもビジョンに磨きをかける努力が後押しされるのです。

7.第7ステップの落とし穴:早すぎる勝利宣言

 経営者としては、変革の勝利宣言を早く出したいと焦るのも無理はありません。個々の成果を祝うのは結構ですが、この段階で勝利宣言をすると、誰もの気が緩み、今までの努力が台無しになることにもつながります。少なくとも5年、10年かかります。変革の道のりは険しく、途中で気が緩んでしまえは脆くも崩れ去り、後退の可能性が生まれます。しっかりと、一歩ずつ段階的に進めていくことです。勝利宣言を焦るべきではありません。

8.第8ステップの落とし穴:変革推進チームのリーダーシップが不十分

 会社を人間に例えると、変革という血液が身体の隅々にまでいきわたってはじめて「変化個の成果」が定着したといえます。新しい行動様式が社内の規範や価値観として根を下ろさない限り、変革の圧力が弱まるや否や廃れてしまいます。

 変革を企業文化として制度的に根付かせるには2つの要素が必要だと言っています。

  1. しいアプローチや行動様式、考え方など業務改善にどれくらい貢献しえたのか、社員に意図的にアピールしていくこと
  2. 次世代の経営陣に新しい考え方がしっかり身につくよう、十分な時間をかけること

企業変革は、どのようなものであれ、時間がかかるものですし、経営トップが中心となり全社を巻き込んで行わなければ成功することはできません。だからと言って、この激動の時代、VUCAの時代において、変革を行っていかなければ、企業も持続的成長を遂げることも生き残ることもできません。

そして、変革を成功させるには人々を借りた立てる単純明快なビジョンが必要で、そうしたビジョンを掲げることができれば、ミスを起こす確率を減らすことができ、成功の可能性は高まるはずです。

余談ですが、企業だけでなく政治にも当てはまるように思います。菅政権でのコロナ対策の失敗は、変革の段階を踏まず、すべて落とし穴にはまったからだと言えそうです。 

「叱り方」「褒め方」の極意

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で5705人、そのうち東京831人、神奈川534人、埼玉360人、千葉296人、愛知595人、大阪858人、兵庫301人、京都151人、福岡234人、沖縄229人、北海道94人などとなっています。東京では先週の同曜日と比べれば半減し、全国的にも減少傾向が見られますが、いまだに病床使用率は高い水準にあります。現在の減少傾向の要因の一つは、8月の長雨で外出を控えた人が多かったことが挙げられています。今週末から秋のシルバーウィークが始まります。台風が日本列島を横断するようで外出も儘なりませんが、リバウンドさせないためにも、不要不急の外出は控えましょう。2回のワクチン接種を終えても万全ではありませんし、10代以下の感染者が急増し小学校クラスターが倍増しています。子供から親へ、親から子供へという家庭内感染を防ぐためには、子供を持つ世代へのワクチン接種を早急に進めるとともに、これまで通りの感染防止対策をとっていくしかありません。菅首相は、「新型コロナ対策に専念する」と言って総裁選への出馬を断念しましたが、自民党は総裁選で盛り上がり、政府のコロナ対策も見えてきません。立憲民主党をはじめとする野党も体たらくです。誰が新総裁に選出されるかはわかりませんが、いずれにせよ政治に過度な期待をするのはやめた方がよさそうです。結局は、自分の身は自分で守るしかありません。

さて、今日は、ダイヤモンド・オンラインの「『やる気が出るのは叱られた時?褒められた時?』心理学が明らかにした意外な事実」という記事を取り上げます。

これまでも、部下の育成方法として、「褒めるのか、叱るのか」ということを話題として取り上げたことはあります。

部下の育成方法としては、「認めて、任せて、褒める」というのが基本で、ミスをした時には「叱る」ことも必要です。ただ、「叱る」ばかりで後のフォローがなければ、反感を買うだけで、より良い人間関係・信頼関係を築くことはできません。叱った後には必ずフォローすることが大切です。

1.褒めるべきか、叱るべきか

 この2つの対応は、職場だけでなく家庭でも、学校でも、古くから問題となっています。どちらが正しいというわけではなく、両方を上手く使い分けることが大切です。

 日本は、ベネディクトが「菊と刀」で言ったように、欧米の「罪の文化」ではなく「恥の文化」に支配されています。日本の社会は、正しいのか正しくないのか(正か邪か・善か悪か)ではなく、恥ずかしいか恥ずかしくないかという価値観に支配されています。親が子供を叱るときも、「悪いからやめなさい」ではなく「恥ずかしいからやめなさい」的な叱り方をします。良し悪しは別として、欧米にはキリスト教的な価値観が根付き、善悪の基準が明確になっていますが、日本には明確な善悪の基準はないのです。今の若者だけでなく、昔から日本人は、曖昧模糊とした甘えの中で生活しているのです。

 「叱る」というのは、相手のことを思って行うものでなければなりません。しかし、親や教師、上司も、叱られる相手のことを思って叱っているとは思えない場合が多いのです。叱っている本人は相手のことを思って叱っているつもりかもしれませんが、心底相手のことを思っているわけではなく、背後に自己満足や驕りが見え隠れしています。相手のことを思っていなければ、それは怒りに任せた感情の発露にしかすぎません。「叱る」というのは、相手に対してどのような思いや感情を込めて言葉を発するのか、「この一言で、相手が持つ素晴らしい可能性が花開いて、大きく成長してほしい」と思い、真剣に相手にその言葉を響かせようとすることであって、ある意味「命がけ」の行動なのです。

 このことは「褒める」にも当てはまります。「褒める」ときも、相手のことを思って心から褒める必要があります。口先だけ、上辺だけの褒め言葉など、相手の心に響きません。褒める場合も、相手の心に響いてこそ意味があります。「褒める」ことも「命がけ」なのです。

 組織心理学の研究によれば、ネガティブなフィードバック(叱るなど)よりもポジティブなフィードバック(褒めるなど)の方が、モチベーションなどポジティブな心理的・行動的な反応をもたらすと報告されています。

 例えば、ポジティブなフィードバックを受けた人は、フィードバックの内容を「的確である」「役に立つ」と評価し、それを受け入れて肯定的な自己イメージや自己効力感を高めます。また、組織に対する愛着(エンゲージメント)を持ち、役割外の仕事や創造的な活動に積極的に取り組んで、会社を辞めようという気持ちが低いことも報告されています。

 また、脳科学の研究では、金銭的報酬がもらえるときに賦活する脳の部位が、褒められるなどの社会的報酬が与えられたときにも同様の反応を示すことが明らかになっています。つまり、他者からも褒められるということは、お金をもらうのと同じくらいの喜びや満足を得るということです。 

2.能力をほめるか、努力をほめるか

 褒め方によって、効果が違うということも明らかになっています。

 ある問題を与えて、解けた者に対して、①能力を褒める ②努力を褒める ③全く褒めないという3パターをしたのちに、別のさらに難しい問題を与えたところ、努力を褒めたグループの成績が向上しています。

 「努力を褒められたグループ」は「能力を褒められたグループ」よりも、問題を解くことを楽しみ、新しいことも学びたいという意欲が高まっています。

 また、悪い成績だと告げられたのちに自分のスコアを他の者に伝えるように指示したところ、「能力を褒められたグループ」は「努力を褒められたグループ」に比べ、スコアをごまかして伝えるケースが多いことも判明しています。

 これらのことから、褒める場合には、達成できた成果を褒めることも重要ですが、その過程での努力・頑張りを褒めることがより重要だということが分かります。

こうしたことから、部下の育成方法の基本は「認めて、任せて、褒める」です。しかし、褒めてばかりいたのでは思い上がりや過度な自信過剰が生まれ、小さなミスが大きなミスにつながってしまいます。時にはブレーキをかける意味で、「叱る」ことも必要になります。 

 認めて、任せて、褒める ⇒ 時折叱る ⇒ アフターフォローをする

というのが一番良いと思います。このサイクルを回していくのが最も良い部下の育成方法ではないでしょうか。

「叱る」ことも「褒める」ことも、相手のことを思いやる心が一番です。そのためには、相手とのより良い人間関係や信頼関係の構築が大前提になります。コロナ禍デ難しい面はありますが、お互いが共感できるように普段から対話や雑談に心がけましょう。

組織の停滞はリーダー・スタイルに原因

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で6806人、そのうち東京1052人、神奈川489人、埼玉513人、千葉354人、愛知679人、大阪1160人、兵庫367人、京都177人、福岡248人、沖縄255人、北海道110人などとなっています。首都圏など減少傾向が見られますが、茨城120人、静岡170人、広島107人と再び100人超えで増えてきているところもあります。分科会の尾身会長は、「一生懸命ワクチンを接種してもゼロにすることはできない。ウイルスとの闘いは続く」と言い、「ワクチンで逆に安心感が出て、感染対策を緩めると結果的に感染拡大する」「ワクチン接種率が上がったからといって行動制限を急に緩める必ずリバウンドがくるので、行動制限というのはしっかりと緊急事態宣言が解除した後、感染がある程度落ち着いたときに徐々にやっていくべき」と発言し、政府の拙速な行動緩和案の流れに釘を刺しました。

新型コロナ感染者数が減少していますが、その理由について専門家でも見解が分かれているようです。減少しているのは結構なことですが、その理由がわからないままでは今後の感染対策に活かすことができません。一方ではワクチン接種率が上がったことを指摘する意見もあれば、他方では接種率は「5割を超えたところで世代や地域格差もあり全体的な感染者数に影響を与えるまでには至っていない」という意見もあります。8月の記録的大雨による天候不順で外出を控えた人が増えたことが原因という声もあり、東京大学の沖田泰祐准教授らは、「11月末までにワクチンの2回接種が75%になるペースで進んだとしても、(既に人流は増えており)9月末の緊急事態宣言解除後2か月で1日平均5000人を超え、12月には1万人を超える」との試算を出しています。今後も減少傾向が続くことを期待したいところですが、人々の危機意識とリスク回避行動如何によると言わざるを得ません。ワクチン接種を終えたからと気を緩めずに、一人ひとりがこれまで同様感染防止対策をとるしかありません。

さて、今日は、日経ビジネスの「無能なリーダーが引き起こす『Mシンドローム』とは何か」という記事を取り上げます。この記事は、「ビジョナリー・カンパニー」の著者ジム・コリンズ氏がスタートアップや中小企業向けに書いた「ビジョナリー・カンパニーZERO」からの抜粋です。

先日の「マーケティング近視眼」でも書きましたが、成長企業や主要企業でもいつかは衰退します。企業の成長が脅かされたり、鈍ったり、止まったりする原因は、市場の飽和にあるのではなく、経営者による経営の失敗にあるのです。

いくら有望な市場でも、どれだけ有能な人材を集めても、リーダー次第で組織は停滞するのです。

1.組織の停滞はリーダーに原因

「ビジョナリー・カンパニーZERO」で「Mシンドローム」と名付けられた現象があります。Mとは、極めて無能な経営者のイニシャルであるとともに「malaise(停滞)」の頭文字を表しています。MはIQは高く、MBAと博士号を持ち、業界では20年以上の勤務経験があり、有力者とも親密、週の80時間働き、年率30%以上のペースで成長する市場に身を置いています。それにもかかわらず、Mの会社は創業当時こそ成功したもののその後伸び悩み、下降スパイラルに陥り、覇気のない停滞した凡庸な企業になっています。

この原因は、Mのリーダーシップスタイルに問題があったのです。

Mの特徴として次のようなものが挙げられています。

  • 「仲間をリスペクトせよ」と説いたが、自分は決して他の人をリスペクトしない
  • チームワークを説いたが、自分への服従を要求した
  • 優柔不断である。重要な判断に直面すると、延々と分析し、行動を先送りした
  • 明確な優先順位を決めない。部下には「すべてを最優先でやれ」と言い切った
  • 執務室に閉じこもり、社内や部下の様子を見ることがない
  • 常に部下を批判する一方、ポジティブな励ましの言葉をかけたことがない
  • 会社のビジョンをきちんと伝えたことがない
  • 話すときも書くとき難しい言葉や専門用語を使った
  • 会社の成長が頭打ちになっても、リスクを伴う新しい大胆な挑戦を拒んだ

Mの抑圧的で冷酷な態度が、組織全体を冷たい霧のように覆い、社員を暗い気持ちにさせ、自信を蝕み、徐々にエネルギーとインスピレーションを奪っていったのです。Mのリーダーシップが日を追うごとに、週を追うごとに、会社の息を止めていったのです。

Mの例からわかるように、偉大な企業への道を阻むのは往々にして無能なリーダーです。企業だけでなく政治も同じですが、この話はやめましょう(ただ、総裁選で無能なリーダーが選ばれないことを祈ります)。

どれほど最先端のテクノロジーがあっても、優秀な人材がいても、優れた戦略があっても、そして業務の遂行力があっても、リーダーシップ・スタイルがお粗末ではどうにもなりません。これはあらゆる企業に言えることですが、特にトップリーダーが日々の活動に与える影響が非常に強い中小企業ではとりわけその傾向が強いのです。

組織のトップのリーダーシップ・スタイルによって組織全体のトーンが決まります。トップの振る舞いが、会社・組織全体の行動パターンに影響を与えます。

2.リーダーシップのスタイルはさまざま

 誰もが同じリーダーシップ・スタイルを身につけることは不可能ですし、その必要もありません。リーダーシップ・スタイルは、人それぞれの性格的な特徴で決まるものです。効果的なスタイルは色々あって、自分の性格的特徴に合致したリーダーシップ・スタイルを身につければいいのです。

 優秀なリーダーでも、物静かで内気で控えめな人もいれば、陽気で社交的な人もいます。活発で衝動的な人もいれば、慎重な人もいます。年配で懸命で経験豊かな人もいれば、若く勢いがあり向こう見ずな人もいます。人前で話すのが得意な人もいれば、あがり症の人もいます。カリスマ的な人もいれば、そうでない人もいます。有能なリーダーといってもその性格は十人十色です。

 自分らしいリーダーシップ・スタイルを身につけるしかありません。別の誰かになろうとしても、自分にそぐわないスタイルを身に着つけても何の役にも立ちません。

この記事では、「あなたが他の誰かのスタイルを真似ようとするのも馬鹿げている。効果的なスタイルはあなたの内にある」と突き放したような言い方で終わっています。確かにその通りですが、どうやって自分に合ったリーダーシップ・スタイルを見つけ、それを磨いていけばいいいのでしょうか? これについては、教えてくれていません。

 自分の性格を客観的に把握して、自分とよく似た性格のリーダーを見つけ、そのリーダーシップ・スタイルや思考・行動様式を真似ていくことがスタートではないかと思います。この記事のように、他の人のリーダーシップ・スタイルを真似することが無意味だとは思いません。手本がなければ自分に合ったリーダーシップスタイルを見つけることはできません。まずは真似をして、自分に合わないところは軌道修正して自分なりのリーダーシップ・スタイルとして創り上げていくしかないのです。

仕事の成果を左右する雑談力

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で6277人、そのうち1004人、神奈川485人、埼玉506人、千葉341人、愛知568人、大阪942人、兵庫452人、京都118人、福岡209人、沖縄284人、北海道91人などとなっています。東京や大阪で宿泊療養施設に入所していた感染者の死亡が確認され、埼玉でも自宅療養中の患者が亡くなるなど、全国で56人の方がお亡くなりになっています。全国的に新規感染者数は減少傾向にあるものの、人出は場所により1.5倍から4倍と増えており、「冬よりも前に第6波がくる可能性がある」と指摘する専門家もいます。2回のワクチン接種を終えたことで気が緩み出歩いている人が見受けられますが、ワクチンを接種したからといって感染しないわけではなく、引き続き感染対策を行っていく必要があります。

さて、今日は、マイナビニュースの「仕事の成果を左右する!!「雑談」の力」という記事を取り上げます。

昨日は同じマイナビニュースの「質問力」について取り上げました。その際、「雑談力は質問力」と書きましたし、以前にも「雑談力は質問力」という表題で書いたこともあります。

雑談と言えば、天気や趣味の話をするものと思われがちですが、「何を話そうか」を考えるよりも「何を問い、何を聞くか」に主眼を置いた方が会話はスムーズに流れます。誰でも興味のないつまらない話を延々と聞かされるよりも、自分が主役になって話を聞いてもらう方が気分的にも良いものです。だから雑談力は質問力なのです。

昨日書いたように、質問力を高めるには、5W1Hの質問を繰り返していけばよいのです。自分が無理やり話そうとしなくても自然と会話は弾みます。昨日も言ったように、その際、質問の回答を聞いてそれを掘り下げて更に深堀して聞くことが重要です。

1.雑談力を向上させれば、周囲に差を付けられる

 雑談は難しいものですが、雑談力は仕事に直結します。単なる雑談と侮れないものです。雑談と言われますが、雑に行っていいものではありません。

 この記事では、「雑談とは、微妙な関係性の人と適当に話をしながら何となく仲良くなるという繊細で難しい会話の形式」と言っています。

 企業に勤めるすべてのビジネスパーソンは、社内外で多くの人と関わり合いながら仕事をしています。ビジネスにおいて最も大切なことは、これらの人たちとより良い人間関係・信頼関係を築き上げることです。より良い人間関係の構築こそ仕事の成果を左右するものといってもいいでしょう。このより良い人間関係の構築に雑談が大いなる力を発揮します。

この記事では、雑談力のメリットとして次のものが挙げられています。

  • 人づきあいが楽になり、疲れにくくなる
  • 気楽に話が続けられ、スムーズに仲良くなれる
  • 上司や取引先から気に入られ、信頼される
  • チャンスを生み、成果を上げられる

このように、雑談力の効能は仕事に直結するものばかりです。いまだに「雑談は単なる雑談にしかすぎない」と一般に雑談力は軽視されていますので、雑談力を向上させるだけで周囲に差をつけることができます。

2.褒めて、教わって、お礼を言う「HOO」

 この記事では、「褒めて、教わって、お礼を言う」の頭文字をとった「HOO」という方法が紹介されています。例えば、「今日のネクタイ、とても素敵ですね」と褒め、「いつもどこで買われているのですか」と教わり、「ありがとうございます」とお礼を言う、といった流れです。聞かれたことに腹を立てる人は余程のへそ曲がりでない限りいません。みな聞かれれば喜んで教えてくれます。教えてもらってお礼を言って、これで気分を害する人もいません。

 雑談のポイントは話の内容にあるわけではないのです。どんなことでもいいのです。ちょっとした会話を交わしたという事実が、2人の間にある「心理的距離」を縮めてくれるのです。

3.コロナ禍で遠ざかる「心理的距離」

 コロナ以前では、休憩時間や飲み会などでの雑談によって上司や先輩、同僚、部下らとの心理的距離を縮めるチャンスは色々ありました。ところが、コロナ禍でテレワークが導入され、在宅勤務が主流になると、その日の天気やランチのこと、近況報告といった雑談をする機会がほとんどなくなってしまいました。出社して雑談をする機会が減った分、チームメンバー同士の心理的距離がどんどん遠ざかり、それに比例してチーム力が低下してきています。

 こうした状況を危惧して、パナソニックのようにオンライン会議の前に時間を割いて雑談に充てるという取り組みを行っている企業もあります。また、オンラインでメンバー同士が雑談をかわしながらランチをとるという取り組みをしている企業もあります。

 コロナ禍で「雑談をする機会が減った」と感じている人は多いと思います。紹介したオンライン会議の前の雑談タイムオンライン昼食会などを取り入れて雑談の機会を積極的に増やす取り組みを行うべきだと思います。経営者や上司が雑談の重要性を感じていなければ、全社的にあるいは部署で行うことも難しくなりますが、気が合った者同士、同期などでオンライン飲み会を行うことは出来そうです。

 心理的距離の近さというものが、相手に対する共感を生み、仕事に対するモチベーションやその先にある成果へとつながります。

 雑談の機会をどんどん作り、「5W1H」を駆使しながら雑談力を磨き、心理的距離を縮めて、より良い人間関係を築きましょう。

最も重要なビジネススキルは「質問力」

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で4171人、そのうち東京611人、神奈川529人、埼玉251人、千葉294人、愛知554人、大阪452人、兵庫191人、京都99人、福岡158人、沖縄140人、北海道55人などとなっています。もともと検査数の少ない月曜の数字ですが、大幅に減少しています。良いことではありますが、嵐の前の静けさというか不気味な気もします。自粛慣れ・自粛疲れで国民の意識もかなり緩んできていて人流が増えています。今一度気を引き締めないと第6波が足音も立てず忍び寄ってきて、再び猛威を振るいます。ワクチンは万能ではありませんが、少なくとも重症化リスク・死亡リスクを軽減してくれます。ワクチン接種率が5割を超えたようですが、64歳以下ではまだ3割にも満たないようなので、中年層・若年層への接種を急がねばなりません。また、ワクチン接種率に地域格差もあり、ワクチンが足りていない地域に優先的にワクチンを回していくことが、11月に希望者全員のワクチン接種を終えるという政府の目標を達成できるかどうかのカギになりそうです。

昨日、サントリーの新浪社長の「45歳定年制発言」を取り上げましたが、この発言が大きな波紋を呼び、賛否両論の声が上がっています。色々な意見や考えがあるのは当然のことで、これからの働き方について、企業・経営者、従業員が一緒になって議論していくことが重要です。その意味では、新浪発言は一石を投じたと言っていいでしょう。色々な意見を戦わせ、新しい仕組みを構築することで、より良い社会、より良い組織、より良い人生を築いていきましょう。

さて、今日はマイナビニュースの「『質問力』こそが最強のビジネススキル」という記事を取り上げます。

ビジネスパーソンにとって重要とされるスキルには、創造力、発想力、判断力、問題発見力、問題解決力、コミュニケーション力など、様々な力が挙げられます。その中で、「最も重要なものは?」という質問に答えるのはなかなか難しいものですが、この記事では、「質問力」と言っています。

経営者、中間管理職を含めあらゆるビジネスパーソンにとって、大切なのはより良い人間関係・信頼関係を構築することで、そのためにはコミュニケーション力が重要です。コミュニケーションは相手との言葉のキャッチボールで成り立つもので、より良い人間関係・信頼関係を築くためには、相手の持っている情報を引き出すことが重要になってきます。

1.質問とは、「相手が持っている情報を引き出す」こと

 以前にも書きましたが、コロナ禍でテレワークや在宅勤務がニューノーマルとなると、これまでの対面では意味を持っていた「空気を読む」「阿吽の呼吸」といったものが難しくなります。そうなると、適切な言葉に落とし込む力(言語化力)パワフルな言葉で問いかける力(質問力)がますます重要になってきます。

 部下の育成においても、上司が正解を教えるのではなく、考える道筋を与えるということが重要になります。そのためには部下の話を聞き、適切な質問を繰り出してその回答を考える中で部下自身が成長できる環境を作ることが大切です。

 質問というのは、単に自分が知らないことを尋ねることではないのです。相手が持っている情報を引き出し、相手のことをより知ることなのです。相手のことを知らずしてより良い人間関係や信頼関係を築くことはできませんし、相手に適切なアドバイスを与えることも、相手の成長を促すこともできません。

 顧客との会話の中で、自分が8割話し顧客が2割しか話さないようでは、相手から重要な情報を引き出せず、本当に顧客が求めているニーズをつかむことはできません。

 創造力、発想力、判断力、問題発見力、問題解決力といったスキルについても、重要なのはそれ以前の情報収集力、情報編集力です。これらの力の下地となるのは、情報を引き出す力、つまり質問力なのです。質問力はあらゆるスキルの前提なのです。

2.日常的に「5W1H」を使って、質問体質になる

 「5W1H」は、言わずと知れた「Who(誰が)」「When(いつ)」「Where(どこで)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」の頭文字をとったもので、疑問詞の基本で意識的に使う流れの中で質問力のベースを作ってくれるものです。5W1Hを効果的に使うためには、1つ1つの意味をしっかりと理解することです。

  • Who(人物・関係軸)・・・明確な「ターゲット」の視点を問う
  • When(時間・過程軸)・・・「時間的インパクト(変化)」を問う
  • Where(空間 場所軸)・・・事象の「全体像・重要箇所」を問う
  • What(事象・内容軸)・・・「だから何?違いは何?」を問う
  • Why(目的・理由軸)・・・より上位の「目的・未来の姿」を問う
  • How(手段・程度軸)・・・「施策の判断基準・実行の難所」を問う

 ビジネスだけでなく、日常生活においても質問力は大切で、5W1Hで返す癖をつけることで、どんどん質問体質になっていきます。

 部下とのやり取りも「どう思う?」ではなく、上の6つの軸に則った質問を繰り返すことで、部下自身が自分の頭で考えることができるようになります。5W1Hは部下に様々な思考を促す問いかけになるのです。

 しかし、質問をするというのは難しいものです。それは、質問が質問ではなく詰問・尋問になってしまうからです。それはWhy(なぜ)の使い方に問題があるのです。いきなり「why?(なぜ?どうして?)」と問いかけられても、聞かれた側は問い詰められているように感じるからです。

「なぜミスが起こったのか?」を問う前に「ミスの発生場所はどこか?」、「どうして売上げが落ちたのか?」を問う前に「売り上げのどの部分が特に落ちたのか?」を問うこと、つまり「原因探し」の前に「場所探し」から入るべきなのです。

3.深いところにある情報を引き出す「縦型ドリル」

 ここで紹介されているのが「縦型ドリル」と呼ばれる方法です。質問をして相手の情報を引き出すというのは、相手のことを深く掘り下げることです。ドリルを横に進めていても浅い情報しか得ることはできず、相手の深いところにある重要な情報を引き出すことはできません。自分の興味本位で聞きたいことをぶつけていっても、会話は弾みませんし、単なるアンケートのような会話で終わってしまいます。これでは相手の深いところにある情報はつかめません。相手の回答に対してさらに掘り下げて次の質問を投げかけていくのです。縦に掘り進んでいくドリルです。

 闇雲に質問を繰り返すだけでは意味はありません。相手の話をよく聞いて理解し、相手の回答をさらに掘り下げて質問していくことで、深いところにある情報に辿り着くことができるのであって、それで初めて質問に意味があったことになるのです。

質問力はコミュニケーションの真髄ですが、これまで過小評価されてきました。しかし質問力には次のようなメリットがあります。

  • 自分の知らないことを学べる
  • より良い人間関係が構築できる
  • イデアイノベーション創発する
  • パフォーマンスを上げる
  • チーム間の強化や信頼を上げる
  • 落とし穴や危険を察知し、リスクを軽減する

質問することで「共感力」が高まり、さらに良い質問をすることができるようになるといった良いサイクルが生まれます。

    質問 ⇒ 聞く ⇒ 質問 ⇒ 聞く ⇒ 時々自分の話をする

このサイクルを回していけばいいのです。これは雑談においても当てはまります。

無理に「何を話そうか」を考える必要はありません。相手の話をよく聞いて質問を繰り返していけばいいのです。「質問ばかりされて嫌」と思う人は、逆に質問を返して立場を逆転させればいいのです。

以前「雑談力は質問力」と書きましたが、その通りです。

5W1Hを上手く使って質問力・雑談力を磨いていきましょう。 

45歳定年制・世代交代リストラ

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で7212人、そのうち東京1067人、神奈川669人、埼玉504人、千葉398人、愛知855人、大阪1147人、兵庫398人、京都196人、福岡292人、沖縄273人、北海道116人などとなっています。一部地域を除き全国的にはピークアウトしていますが、週末の人流を見るとなぜ減少しているのかよくわかりません。確かにワクチン接種率は上がっていますが、ワクチン接種が進んでいる国でもデルタ株が猛威を振るい感染者数が増加しており、ワクチン接種だけが原因ではないように思います。最初の新型コロナ感染拡大から1年半が経ちますが、その間とられた措置と新規感染者数の推移との因果関係(例えば、時短営業や酒類提供禁止と感染者数の推移との関係など)の検証が全くと言っていいほどなされていません。政治においてもフィードバックは極めて重要です。結果を検証し、何が正しく何が間違っていたのかを振り返り、間違っていたところを軌道修正して次につなげていかなければなならないのです。今の政治にはこうした点が全く欠落しています。政府のコロナ対策は太平洋戦争における日本軍の失敗と比較されますが、①戦略目的の曖昧さ ②短期決戦志向で長期的な視点の欠如 ③主観的で帰納的な戦略策定 ④楽観的な空気による支配 ⑤狭くて進化のない戦略オプション ⑥学習を軽視した組織 など多くの共通点が見受けられます。これについてはまたいつか書いてみたいと思います。どちらにしても、安倍政権・菅政権における新型コロナ対策は失敗でした。こうした失敗を糧として、次の総裁・首相には、国民のためコロナ対策に最優先で取り組んでもらいたいものです。しっかりとしたコロナ対策を行うことこそが経済の回復につながります。コロナ対策をないがしろにしていたのでは、経済の回復はますます遅れるだけです。

さて、今日は、ヤフーニュースの「45歳定年時代 世代交代リストラのために企業がやるべき3つのこと」という記事を取り上げます。この記事は経営コラムニストの横山信弘氏が書いています。

先日、経済同友会の夏季セミナーで、サントリー新浪剛史社長が「45歳定年制にして、個人は会社に頼らない仕組みが必要だ」と発言し、SNSでこの発言が炎上しました。「45歳で定年してどうしろというのか!」「単にリストラではないか!」など多くの批判が殺到し、新浪社長は記者会見を開き「45歳は節目であり、自分の人生を見つめなおすことは重要だ」「クビを切るものではない」と弁明しました。

この記事では、新浪氏の発言は的外れではなく、雇用環境を活性化させるうえで一石を投じたものと評価していますが、基本的には同感です。

コロナ禍で激変する雇用環境変化の中で、キャリアの見直しは不可欠であり、新浪社長の発言は時代の流れに逆行したものではないと思います。

確かに、人生100年時代が到来し、定年年齢が引き上げられ、令和3年4月1日施行の高齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保(義務)に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するために、高齢者就業確保措置として70歳までの定年引上げ、定年制の廃止などの努力義務を新設しています。

新浪氏の発言はこうした流れに反するようにも見えますが、必ずしも、新浪社長発言の真意は定年延長による高齢者就業確保に水を差すものではないと思います。

これまでの人生80年時代では、高校・大学卒業から60歳までの約40年間が仕事に携わる期間であり、年功序列、終身雇用が基本的な雇用スタイルでした。しかし、人生100年時代になると高校・大学卒業から80歳まで約60年間働かざるを得なくなります。コロナ禍から日本型のメンバーシップ型雇用から欧米型のジョブ型雇用への動きが加速しつつあります。日本においてもジョブ型雇用が多く取り入れられるようになると、80歳まで一度も転職することなく一社で勤め上げるということは現実的ではなくなります。そういう中で、60歳になってから、残り40年の今後の人生設計を考えるというのでは遅すぎるのです。自分のキャリアを見直すのは、45歳くらいがちょうどよいというのが、新浪社長の真意でしょう。

この記事では、「45歳定年制」を「世代交代リストラ」と言っていますが、リストラという言葉は、解雇を意味するものではなく、リストラクチャリング(Restructuring)の略で再構築を意味します。人生の再構築の時期として最もふさわしい年代が40歳代です。

昨日ドラッカー氏の「自己探求の時代」という論文を紹介しました。そこでは自己をマネジメントすることの必要性が指摘され、自己の強み、仕事の仕方、価値観を知ることの重要性が語られていました。労働者は、かつてのように企業や組織に固定されたものではなく、移動自由な存在となっています。自己の強みや仕事の仕方を活かし、自分の価値観に合致する企業へ移動することで、更に自己を成長させることができるのです。

そうは言っても、いまだに多くの人はできるだけ一つの会社で働きたいと思っています。しかし変化が著しいVUCAの時代にうまく対応できる企業も限られています。かつてのように企業は事業再構築を行わずして持続的に成長できるものではありますん。

一昨日の「マーケティング近視眼」で書きました、どんな成長企業・主要企業でも衰退するのです。何十年か先に、自分が働いている企業がどうなっているかなど分かりません。要は自分の強み、仕事の仕方を磨いて自分の価値観にあった企業へと移動していくのが最もよいのです。

コロナ前にNECが45歳以上の希望退職者を募り、近いところではホンダが2000人の希望退職者を募りました。長年勤めた企業を突然辞めるには覚悟が必要です。企業には、長年勤めた従業員が次の仕事へとスムーズに移行できるようにする責務があります。この記事では、その責務として、「啓蒙」「仕組みづくり」「リスクリング」の3つを挙げています。

  1. 啓蒙・・・突然の発表ではだれもが驚き、不信感を抱きます。丁寧な発信による啓蒙活動が必要です。
  2. 仕組みづくり・・・副業や兼業を承認・推奨する制度を設け、スムーズにマルチキャリアの道を歩める仕組みを作ることが必要です。
  3. リスクリング・・・学びなおしです。デジタル化時代に対応できない中高年のリスクリングは待ったなしです。

ドラッカーは、本業を持ちながら第二のキャリアを築くことの重要性を指摘しています。自己の強みや得意とする仕事の仕方、価値観を知り、それらを磨きながら、第二のキャリアを積むことが必要ですし、企業も「世代交代リストラ」を意識しつつ従業員がマルチキャリアを積める仕組みを作り、積極的に従業員のキャリア構築・人生の再構築を支援していかなければなりません。

休日の本棚 自己探求の時代

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で8807人、そのうち1273人、神奈川862人、埼玉780人、千葉429人、愛知970人、大阪1263人、兵庫507人、京都199人、福岡378人、沖縄270人、北海道156人などとなっています。2日連続で1万人を下回り、ピークは過ぎたように見えますが、相変わらず重症者数は高水準で、若年層・中年層の死者も出ています。緊急事態宣言延長決定後初めての週末となりましたが、各地の人出は増えてきており、このところの行動制限緩和案がさらに気の緩みを助長させるのではないかと懸念します。全国知事会や医師会も、政府の行動制限緩和に見られる楽観論に懸念を示しています。現在取りざたされている行動制限緩和案は、危機管理の基本に則ったものではなく、あまりにも楽観的で稚拙な内容です。菅首相は「コロナ対策に専念するために総裁選に不出馬」と言い、この行動制限緩和案を菅首相の最後の仕事として、これまでの後手後手ではなくやっている感を演出しようとしているように見えます。しかし、菅首相はすでに過去の人、新型コロナの出口戦略は次のリーダーがしっかりと状況を認識・検証・分析し、的確な判断に基づいて行うべき最重要課題です。既に終わった人が付け焼刃で行うような簡単な課題ではありません。

さて、今日は、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネスから、ピーター・F・ドラッカー

「自己探求の時代」という論文を紹介します。

ナポレオン・ボナパルトレオナルド・ダ・ヴィンチモーツァルトのような偉人は、常人の域をはるかに超えた才能を持っていましたが、自己をマネジメントしたからこそ、偉業を成し遂げたのです。

これからは、普通の人も自己をマネジメントできなければなりません。大きな貢献が可能な適所に自己を置き、50年にも及ぶ職業生活の中で生き生きと働き、自分の仕事をいつ、いかに変えるかを知らなければならないのです。そのために重要なことは自己の強みを知ることです。

1.自己の強みは何か 

 人が、自己の強みと信じているものは、たいていが間違いです。強みならざるものを強みと信じ、見当違いのことが多いのです。これは企業や組織にも言えることです。企業自身が自社の強みと考えているものが、はたから見れば強みではなく、場合によっては弱みであるということは往々にしてあります。

 何事かを成し遂げるのは、強みゆえです。弱みによって何かを全うすることも、成果を上げることはあり得ません。そのために、まずが自分の強みは何かをしっかりと認識することです。

⑴フィードバック分析

 ドラッカー氏は、「自己の強みを知るには、フィードバック分析しかない」と言います。なすべきことを決めたり、始めたりしたならば、具体的に書き留めて、それを半年後、一年後と、期待と実際の結果を照らし合わせて検証するということです。

 このフィードバック分析によって、自分の強みが何かが明らかになり、さらに、既に行っていることや行っていないことのうち自分の強みを発揮するうえで邪魔になっているもの、自分が得意でないもの、強みを発揮できないこと、自分には不可能なことも明らかになるのです。

⑵強みを活かすために何を為すべきか

 フィードバック分析によって、いくつかの行うべきことが明らかになります。

  1. 明らかになった強みに集中すること
  2. その強みをさらに伸ばすこと
  3. 無知の元凶ともいうべき知の傲慢を知り、正すこと
  4. 自己の欠陥を改めること
  5. 人への接し方を改めること
  6. 出来ないことはしないこと
  7. 並み以下の能力を向上させるために、無駄な時間を使わないこと

2.仕事の仕方を自覚する

 多くの人が、自分が得意とする仕事の仕方を自覚せず、得意でない方法で仕事をして成果が上がらないという状況に陥っています。自分の強みと同じく、仕事の仕方も人それぞれです。強みを発揮できる仕事で、本当に成果を上げるには、得意な仕事の仕方で仕事をすべきです。

⑴読んで理解するか、聞いて理解するか

 読んで理解する人間と聞いて理解する人間の2つのタイプがあります。両方であるという人はほとんどいません。また、自らがどちらであるかを認識している人もほとんどいません。読み手が聞き手になることは難しいのです。読み手が聞き手として行動しても、何も理解できず何事もなしえないのです。また逆も然りです。まずは自分がどちらのタイプであるかを認識しなければならないのです。そして自分のタイプに合った仕事の仕方を見つけることです。

⑵学び方を知る

 仕事の仕方について重要なことに学び方があります。学び方も人それぞれです。実際に行動することによって学ぶ人もいれば、人の話を聞いて学ぶ人も、自分が話すのを聞いてもらって学ぶ人もいます。

 自分の得意な学び方を知り、それに基づいて行動することが、成果を上げるためのカギであり、自分の得意な学び方に基づいて行動しないことで失敗するのです。

 理解の仕方(自分のタイプを知る)と学び方こそが、仕事の仕方に関して最初に考えるべき最も重要な問題です。しかし、そのほかにも、誰かと組んだ方がいいか、一人でやった方がいいかも知らなければなりませんし、誰かと組んだ方が良ければ、誰とどのように組んで仕事をするかを知らなければなりません。さらに、①緊張や不安があった方が仕事ができるか、安定した環境の方が仕事ができるか、②大きな組織の方が仕事ができるか、小さな組織の方がいいかというもも重要です。

 ドラッカー氏は、「今更自分を変えようとしてはならない。うまくいくわけがない。それよりも、自分の仕事の仕方をさらに磨いていくことである。得意でないことや、できないことにあえて挑んだりしてはならない」と言っています。確かに、自分の強みを知り、得意な仕事の仕方で成果を上げることは大切ですが、現代のように何が正解かわからない混迷の時代には、時には自分を変えて思い切った挑戦をしていくことも重要ではないかと思います。

3.自分にとって価値あることとは何か

 自己をマネジメントするためには、自分にとって価値あるものが何であるかを知らなければなりません。

⑴組織の価値観との共存

 組織の価値観が自分の価値観と違うならば、欲求不満に陥り、碌な仕事もできません。価値観は人間だけでなく、企業にも組織にも存在します。

 企業や組織において成果を上げるためには、働く者の価値観と、企業や組織の価値観が矛盾してはいけません。必ずしも同じである必要はありませんが、共存できるものでなければなりません。

⑵所を得る

 自分の強みや仕事の仕方がわかる抜つれて、自己の価値観もわかってきます。そうすると自分の適所もわかってきます。逆に自分に相応しくない場所もわかってきます。

 最高のキャリアは、あらかじめ計画して手に入れられるようなものではありません。自己の強み、仕事の仕方、価値観を知ることによってチャンスをつかむ用意がある者だけが手に入れることができるものです。

4.なすべき貢献とは何か

 多くの人が言われたことをなすだけの従者になっています。決まったことや謂われたことだけをすればいい時代ではありません。「なすべきことは何か」という問いを自問自答しなければなりません。ドラッカー氏は、この問いの答えを出すには次の3つを考えねばならないと言います。

  1. 状況が何を求めているのか
  2. 自己の強み、仕事の仕方、価値観からして、いかにして最大の貢献をなしうるか
  3. 世の中を変えるためには、いかなる成果を具体的に上げるべきか

しかし、高い目標を掲げても、実現できなければ意味がありません。期限はせいぜい1年半とし、具体的なものにしなければなりません。

  1. 目標は難しいものでなければならないが、実現可能なものでなければならない
  2. 意味のある、世の中を変えるものでなければならない
  3. 目に見えるものであって、数字で表せるものであることが望ましい

5.互いの関係に責任を負う

 一人で働き、一人で成果を上げることは難しいものです。他の人々と共に働き、他の人の力を借りて成果を上げています。成果を上げるには第三者との関係について責任を負わなければなりません。

⑴他の人を許容する

 他の人も自分と同じような人間であるという事実を受け入れることです。それぞれが自己の強みを持ち、自分の仕事の仕方を持ち、自分の価値観を持っていると知ることです。そして、成果を上げるためには、共に働く人たちの強み、仕事の仕方、価値観を知らなければなりません。

 上司や同僚、部下に関わらず、共に働く人たち、自分の仕事に不可欠な人たちを理解し、その強み、仕事の仕方、価値観を活かすことが大切です。仕事というのは、仕事の論理だけでなく、共に働く人たちの仕事ぶりに依存している物なのです。

⑵コミュニケーションについて責任を負う

 企業や組織には多くの軋轢が存在します。しかし、その摩擦のほとんどが、相手の仕事、仕事の仕方、条幅していること、目指していることを知らないことに起因しています。それは、お互いに効きもせず、知らされていないことが原因です。要はコミュニケーション不足です。

 組織は権力によって成立しているのではありません。信頼によって成立しています。信頼とは好き嫌いではありません。相互理解です。従って互いの関係について互いに責任を負うことが不可欠です。それは責務と言ってもいいものです。十分なコミュニケーションを行って、新貝が相手の強み、仕事の仕方、価値観、目指す貢献、目標としている成果を知り、それらを共有することです。

1997年7月号に載った論文ですが、今なお色あせることなく、読むに値する内容になっていると思います。

休日の本棚 マーケティング近視眼

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で8892人、そのうち東京1242人、神奈川829人、埼玉556人、千葉461人、愛知1031人、大阪1310人、兵庫528人、京都190人、福岡438人、沖縄301人、北海道117人などとなっています。2回目のワクチン接種を終えた国民が全体の5割に達したようですが、64歳以下の接種率については地域差があるようで、11月に希望者全員の接種を終えるという政府目標を達成するには中年層・若年層のワクチン接種を加速する必要があります。しかし、WHOは、ワクチンによって新型コロナウイルスパンデミックが収束するとの見通しに悲観的な見方を示しています。アメリカやイギリスなどワクチン接種が進んだ国で再び感染拡大が起きていることからさもありなんといったところです。ワクチン接種の目標は新型コロナウイルスを撲滅させることではなく、重症化と死亡リスクを防ぐことという段階にきています。インフルエンザと同じように今後も新型コロナウイルスは変異をとげて存続すると考えられ、2回のワクチン接種で終わるのではなく、3回目、更には毎年接種するなどワクチン戦略と追加ワクチンの身体への影響などの研究を通じ非常に重要な知識を集めることが急務です。2回のワクチン接種で終わるわけではありません。いま俎上に上がっている行動制限緩和案も、こうしたことを踏まえながら、状況に応じて段階的に緩和し、状況が変われば直ちに制限を強化するというアクセルとブレーキをうまく使い分けて行う方策を考えていくべきです。いつも言うように楽観論では危機管理はできません。

さて、今日も先週と同様、ダイヤモンド、ハーバード・ビジネス・レビューの論文を紹介します。セオドア・レビット氏の「マーケティング近視眼」を紹介します。

レビット氏は、元ハーバードビジネススクール教授で、マーケティング近視眼(マーケティング・マイオピア)という考えを提唱したマーケティング論の第一人者です。

企業が製品を作り販売する場合、「どのような製品を作って売ればいいのか?」この問いに答えるには、「製品とは何か」という基本的な問いをしっかりと考えなければなりません。マーケティングにおいては、製品を顧客のニーズを満たす便益の束と捉えることが重要になります。よく用いられる例ですが、女性が口紅を買うのは、単に口紅そのものが欲しいからではなく、美しくなりたいという目的のために買うのです。彼女らは口紅を単なるモノとして捉えているわけではないのです。顧客のニーズを満たす便益の束として製品をとらえたとき、企業は「その製品が誰にどのような便益を提供するのか」ということを考える必要がでてきます。

消費者ニーズという視点で製品をとらえることの重要性を指摘したのがレベット氏です。レベット氏は、アメリカの鉄道会社の例を挙げ、鉄道会社が鉄道という物理的製品に縛られて事業を「鉄道事業」と定義したために、自動車や飛行機との競争に敗れて衰退したとして、顧客ではなく製品に焦点を当ててしまうことをマーケティング近視眼と名付けました。鉄道会社が顧客に焦点を当て、自らの事業を「輸送事業」という顧客に便益を提供する事業として定義していれば、その後の戦略も変わったのではないかというわけです。

レベット氏は「主要産業と言われるものなら、一度は成長産業だったことがある。今は成長に沸いていても、衰退の兆候が認められる産業がある。成長の真っただ中にいると思われる産業が、実は成長を止めてしまっていることもある。いずれの場合も成長が脅かされたり、鈍ったり、止まってしまったりする原因は、市場の飽和にあるのではない。経営に失敗したからである。失敗の原因は経営者にある」と言い、「責任ある経営者は重要な目的と方針に対応できる経営者だ」と言っています。

先ほどの鉄道会社のように、産業や製品、あるいは技術ノウハウを狭く定義してしまったがゆえに、それらを十分に花咲かせることができないまま衰退させてしまった企業は多くあります。「鉄道産業」の場合、「輸送産業」と定義できれば、鉄道に限らず輸送手段はほかにもあり、成長の可能性があったのです。事業を狭く定義することで自らの首を絞めたのは経営者の失敗なのです。鉄道会社に欠けていたものは、経営的な想像力と大胆さ、つまり創意と手腕によって生き残り、大衆を満足させようという会社(経営者)の意思なのです。

ある時期に「成長産業」と呼ばれた産業の強みは、明らかに製品の優秀さにありました。その製品を蹴落とす代替品の存在もなかったのです。しかし、どのような花形産業にも衰退の影が忍び寄ります。今急成長している産業がやがては不吉な衰退の影が忍び寄るなど、経営者は思い描くことができないでいます。しかし、これは歴史を見ればまぎれもない事実です。永遠に成長し続ける産業などありません。それにもかかわらず、多くの経営者はマーケティング近視眼に陥っているのです。

レベット氏は「実は成長産業といったものは存在しないと考えている。成長のチャンスを創出し、それに投資できるよう組織を整え、適切に経営できる企業だけが成長できる。何の努力もなしに、自動的に上昇していくエスカレーターに乗っていると思っている企業は、必ず下降期に突入する。すでに死滅したか、死滅しつつある成長産業の歴史を調べてみると、急激な拡大の後に思いがけない衰退が訪れるといった、思い違いの繰り返しである」と言っています。

そして、この繰り返しが起こる条件として、次の4つを挙げています。

  1. 人口増加という危うい神話・・・人口は拡大しさらに豊かになるから間違いなく今後も成長するという誤った確信を抱いている。
  2. 代替品が現れないとの思い込み・・・自社の主要製品を脅かすような代替品などあるはずがないという思い込みがある。しかし代替品が現れない製品などない。
  3. 大量生産を絶対と信じる・・・大量生産こそ絶対と信じ、生産量の増加に伴った限界コストが低下するという利点を過信している。
  4. どんな製品も陳腐化するということを忘れている・・・製品はどんどん改良され、生産コストを低下させるという先入観がある。

大量生産型の産業では、できる限り生産量を増やして限界コストを低下させるという魅力に抗える企業はほとんどありません。それによって利益が増大するならなおさらのことです。その結果、企業努力は生産に集中し、マーケティングが軽視されます。経営者は大量生産にばかり目が行き、販売部門には「売って売って売りまくれ」と尻を叩くのです。マーケティングは販売ではありません。コトラーが言うように「マーケティングと販売は対極にある」ものです。「売らなくても売れる仕組みを作る」のがマーケティングなのです。

真のマーケティング・マインドを持った企業は、消費者が買いたくなるような値打ちのある製品やサービスを創造しようとします。最も重要なことは、企業が売ろうとするものは、売り手によって決まるのではなく、買い手によって決まるということです。売り手は買い手からの誘導によって動くのであり、売り手のマーケティング努力の成果が製品になるのです。決してこの逆ではありません。

だからと言って、レベットは大量生産型の産業を否定しているわけではありません。「大量生産が利益を生むという考え方は、経営計画や戦略の中に組み込まれてしかるべきである」と言っています。しかし、それは「顧客について真剣に考えた後のことだ」というのです。

生産にかかる限界コストさえ低くすれば、何とか利益が出るという考え方は大きな思い違いで、会社を駄目にします。限界コストにばかり目が行っていてはマーケティングや顧客を重視する視点が欠落してしまいます。そうなれば成長ではなく衰退が待っています。常に変化し続ける顧客のニーズや嗜好に対して製品が上手く対応できなくなってしまいます。自社の既成製品しか目に入らないため、その製品が陳腐化していることに気づかなくなるのです。

産業活動とは、製品を生産するプロセスではなく、顧客を満足させるプロセスであることを、理解しなければなりません。顧客とそのニーズから始まるのであって、重要なのは、顧客ニーズを明らかにして顧客を満足させるには、何をいかに提供すべきかを逆から考えていくことです。顧客に少しでも多くの満足を与えられる製品を創造すべきです。顧客にとってはこの製品がどのように生産されるかということはどうでもいいことなのです。

顧客中心の企業になるためには、どういう組織を創り、どういうリーダーシップをとるか、といった大きな課題に取り組まなければなりません。

成功への情熱に駆り立てられた精力的リーダーなくしては、どんな企業も優れた業績を上げることはできません。リーダーは数多くの精力的なフォロワーを惹きつけるだけの、勇猛果敢なビジョンを掲げなければなりません。

経営者の使命は、製品の生産にあるのではなく、顧客を創造できる価値を提供し、顧客満足を生み出すことにあります。経営者は、こうした考え方を組織の隅々まで浸透させていかなければなりません。企業全体が顧客創造と顧客満足のための有機でなければならないのです。

企業は、製品やサービスを生み出すためではなく、顧客の購買意欲を促し、その企業と取引したいと思わせるような活動をするためにあるのです。

リキッド消費時代の新しいマーケティング

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で10,400人、そのうち東京1675人、神奈川804人、埼玉697人、千葉591人、愛知1170人、大阪1488人、兵庫676人、京都270人、福岡429人、沖縄336人、北海道144人などとなっています。全国的に感染者が減少傾向にあることは喜ばしいことですが、人流がそれほど減っておらず、感染者数減少がワクチン接種率の高まりによるものなのか、緊急事態宣言発出の効果なのか、はたまた別の要因によるものははっきりしません。飲食店に対する時短要請と酒類提供禁止が感染者数減少にどの程度功を奏したのかの検証がしっかりと行われなければなりません。こうした中、行動制限緩和の向けての動きが加速しています。緩和案では、緊急事態宣言下の酒類提供を認めるほか、営業時間や大規模イベントの人数制限も緩和し、更にはワクチン接種者への県境をまたいだ移動を容認しGOTOトラベル事業を再開するとしています。菅政権下では後手後手に回ったコロナ対策では来る衆議院選挙で大幅議席減(敗北)が予想され、選挙民の目先を変えてやっている感を出させるためで、国民のことを優先的に考えた政策ではありません。確かに、コロナ対策と経済回復との両輪を上手く回していくことが大切ですが、あまりにも先走りすぎ、内容的にも稚拙です。いずれは行動規制緩和は必要です。単なる人気取りだけの選挙用の施策で終わらせてはいけません。危機管理の基本は的確な現状認識と状況分析が前提になければなりません。これなくして根拠なき楽観論を前提に施策を練っても極めて危険です。すでに国民の意識は緩み始めています。新規感染者数が減少傾向になっても重症者数は高水準にあり、あいかわらず医療はひっ迫しています。この状況で、一気に行動制限緩和に舵を取れば、今度こそ感染大爆発となり医療崩壊へとつながります。的確な現状認識と状況分析・検証を行いつつ、状況に応じて段階的に行動制限緩和を行うべきです。

さて、今日は、JBPressの「『リキッド消費』時代の新しいマーケティングを学ぼう」という記事を取り上げます。

著名なマーケティング学者であるP.コトラーによれば、「マーケティングとは、個人のニーズと欲求を満たすために、交換過程を通じてなされる人間の活動」であり、アメリカ・マーケティング協会によれば「マーケティングとは、顧客やクライアント、パートナー、更には広く社会一般に価値のあるオファリングスを創造・伝達・提供・交換するための活動とそれにかかわる組織・機関、および一連のプロセスのことを指す」となっています。具体的に言えば、マーケティングは、商品企画、製品開発、価格、流通・販売網、広告・広報、販売促進・各種サービス、デザイン、ブランド形成・維持、アフターサービスなど広範多岐にわたる顧客へのアプローチを計画・調整・統合する方策に関して総合的に研究する分野です。

マーケティングはよく「販売」と混同されることがありますが、コトラーは、「マーケティングと販売は正反対ともいえる活動」と言い、「マーケティングの目的は販売を不要にすること」とまで言っています。

マーケティングというのは、顧客のニーズと欲求を十分に理解し、それらを満たすことができる価値を創造し、「売り込まなくても売れる仕組み」を作り上げることです。

マーケティングにおいて重要なのは、①誰に ②どのような価値を ③どのように提供するか ということにつきます。

これまで多くのマーケティングの手法が考案され、実践されていますが、この記事では「新しいマーケティングの発想」が紹介されています。

1.消費行動は「リソッド消費」から「リキッド消費」へ

 この記事では、「現代人の消費行動は、消費対象(製品)を所有することから、消費対象となる資源の循環にシフトし、旧来の『ソリッド消費』から「リキッド消費」へと移行している」と言います。

 この記事が言う「ソリッド消費」とは物を買って消費することで、「リキッド消費」は所有権が移転しない取引による消費のことで、レンタルやシェア、サプスクリプション、コト・サービス消費などが該当します。

 「リソッド消費」から「リキッド消費」への移行の背景には、生活者の消費スタイルの変化があります。それは

  • 所有より体験が重視される
  • デジタルの普及
  • 手間暇よりも手軽な便利さ
  • 環境問題に対する意識の高まり

などによるのです。

 デジタル化が進むにつれて、このように、われわれの消費生活は大きく様変わりしています。リアル店舗のほかにデジタル店舗があり、新しいビジネスも生まれ、インターネット上には様々な情報があふれかえっています。消費者がブランド情報を容易に得られる一方で、理性的な消費者に有効な刺激を与えることが難しくなっています。

 今、新しい時代の「マーケティング」のあり方を検討する時期が訪れているのです。

2.リキッド消費のマーケティングのカギ「ブランド・カテゴライゼーション」

 消費者が短期的に記憶できる数字の桁数は「7±2」と言われています。インターネットの普及、グローバル化などにより、競合ブランドの数が急激に増加し、消費者に「記憶」してもらいにくくなっています。そうした状況の中、顧客にとって自社のブランドがどのような位置づけにあるのかを理解したうえで、自社ブランドをマネジメントしていく有力な枠組みがブランド・カテゴライゼーションです。

 ブランド・カテゴライゼーションでは、「入手可能集合」(その気になれば手に入れられる集合)を出発点とし、「知名集合or非知名集合」(名前を知っているか否か)、知名集合からは「処理集合or非処理集合」(名前だけでなく評価できる情報をもっているか否か)に分け、最終的には次の4つのカテゴライズされます。

  1. 推奨集合 人に薦めたいと考えるブランド
  2. 想起集合 購入したいと考えるブランド
  3. 拒否集合 購入したくないブランド
  4. 保留集合 拒否はしないが何らかの理由で購入を留まるブランド

 こうした枠組みを理解し、自社ブランドの立ち位置が把握できれば、ブランドの提供価値の見直しやターゲットの再評価が可能になります。

3.消費者の感覚に影響を与える「センサリー・マーケティング

 私たちは、意識することなく何らかの感覚刺激の影響を受けています。マーケティング的なメッセージと思わない場合には感覚刺激を抵抗なく受け入れます。

 センサリー・マーケティングは、「消費者の感覚に影響を与えることにより、彼らの近く・判断・行動を左右する」マーケティング手法です。つまり、消費者の五感(製品の外観・官職・味・音・香り)に働きかけるマーケティングです。

 例えば、商品パッケージを構成する写真、文字、フォントなどが同じでも、商品画像を「上に配置するか」「下に配置するか」で印象が大きく変わります。ブランドに重量感・リッチさを表したい場合には画像を下に、ブランドにヘルシーさを表現したい場合には画像を上に、といった選択ができるのです。

 センサリー・マーケティングの特徴といえば、一般的な広告と異なり、消費者が「刺激を受けていることを明確に意識していない」という点です。五感を刺激することで短期記憶を経由することなく、明確な意識がないまま行動へと結びつくことがあるということです。

4.照明が消費行動に影響を与える

 消費者を刺激する変数には、臭覚を刺激する「製品の香り、空間の何らかの香り」、聴覚を刺激する「BGM、シズル音、ブランド・サウンド」、味覚を刺激する「甘さ・辛さ・うまみ」、視覚を刺激する「照明、パッケージカラー、製品カラー」、直角を刺激する「硬さ・柔らかさ、温かさ・冷たさ」などです。

 店舗照明や色彩は、消費者行動に影響を与えるものとして、これまでにも多くの研究がなされています。

 店舗照明は、商品の情報を正しく伝え、商品の魅力を引き出し、顧客の注目を引き、店内に導き、購買促進効果を高めることを目的としています。そのためには、ストア・アイデンティティ戦略に沿った照明の演出や購買心理の検討が必要になります。

 店舗の照明手法として、①ベース照明(店全体・各部分で基本となる照明) ②重点照明(商品周りを明るく照らし訴求力を高めるための証明) ③装飾照明(装飾効果やアクセント効果を期待して用いられる照明)があり、照明方法としては、①直接照明 半直接照明 間接照明 ④半間接照明 ⑤拡散照明があります。

 これらのどれを用いるかは、店舗の構造や販売する商品、顧客ターゲットによっても異なるように思います。自社ブランドの立ち位置を把握し、それに合わせて、五感を刺激するマーケティング方法の一つとして照明を考えることは大切です。

 この記事の最後に「消費者の行動を変えるためにはどのような施策が打てるのか、リキッド消費の特徴をつかみ、新しいマーティングの発想を取り入れていけばいい」と言っていますが、一つの参考になるのではないかと思います。

 コロナ禍で、企業を取り巻く環境や社会全体が大きく変化しました。こうした激動の時代においては、何が正しくて何が間違っているかは全くわかりません。これまでのマーケティング手法にだけとらわれていたのでは時代遅れとなり生き残ることさえ難しくなるかもしれません。新しいマーケティングの発想の中から、少しでもヒントが得られれば、消費者の行動を変えたり、自社が消費者のニーズや欲求にあったか価値を提供することができるようになると思います。