中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

職場を壊すダメな上司

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1723人、そのうち東京248人、神奈川128人、埼玉97人、千葉76人、愛知138人、大阪281人、兵庫128人、京都51人、福岡128人、沖縄57人、北海道26人などとなっています。明日で緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が全面解除されることが正式に決定されました。時短営業やイベントの人数制限は当面継続するとのことですが、何の宣言もない状況でどのような法的根拠をもって制限を行うのでしょうか。単なるお願いベースでしかありません。一定期間自粛要請を継続するのであれば、全面解除ではなく、緊急事態宣言からまん延防止等重点措置へ移行させて様子を見るべきだったのではないかと思います。全面解除によって気が緩み、再び感染拡大、そして5回目の緊急事態宣言発令とならないことを願います。

さて、今日は、ライフハッカーの「職場を壊すダメな上司に共通する4つの行動」を取り上げます。

リーダーシップは、職場の雰囲気や協調性、部下の士気にも大きな影響を及ぼします。ダメな上司はチームの生産性を低下させ、最悪のケースでは部下のモチベーションを低下させるだけでなく部下を退職させてしまいます。

この記事では、有害な職場環境を作り出す上司の行動がいくつか紹介されています。

1.手柄を独り占めして責任を転嫁する

 人の手柄を平気で横取りしたり自分のミスを平気で人に擦り付けるような上司や同僚はどのような組織・職場でもいます。人の手柄を横取りしたり、自分のミスを平気で人に擦り付けることができる人は、始末が悪いことに、罪の意識や悪いことをしているという感覚が欠如しています。こうした人の心理には、「自分の貢献を過大視したり、自分の責任を過小視する『認知のゆがみ』」があるのです。

 こうした人とは距離を置くことが何よりも大切ですが、職場の上司ではそういうわけにもいきません。日本の社会では争うことは好まれませんが、自分の身を守るために証拠を残すなどして予防策を講じておく必要があります。 また、自分が上司の立場であれば、認知のゆがみに陥らないように極力注意する必要があります。

 チームの成功は上司である自分だけの手柄ではなく、すべてのメンバーによる成果です。手柄をすべての人で分かち合うことが次の成功へつながります。万が一、手柄を独り占めするようなことがあれば、チームメンバーのモチベーションは低下し、次の成功は覚束なくなることを自覚することです。

 また、逆に事が上手くいかなかった場合には、リーダーがすべて責任を負うことも重要です。たとえチームメンバーの誰かがミスをしても、それは監督者であるリーダーの責任です。全員の準備を確実に整え、プロジェクトの状況を確認し、不手際が起こった時にそれに適切に対処するのがリーダーの役目なのですから当然です。

 リーダーがチームの盾としてチームメンバーを守れば、メンバーはリーダーのため、チームのために真剣に働くようになります。

2.何が起こるか予測しにくい環境にしてチームを不安にする

 今は、何が正解かわからない予測できない時代、VUCAの時代と言われます。だからと言って、上司が、チームや組織をさらに何が起こるかわからない予測できない環境にしてはチームメンバーの不安は募るばかりです。

 この記事では「不安とは、避けたい災難が起きる可能性があることを反映した感情」と言っています。不安を抱えたチームは仕事を完全に避けたり、取るに足らない小さな作業に集中して不安から目をそらそうとします。それでは不安の解決にはなりません。

 最も不安を生み出す環境は、不確実性の高い環境です。次に何が起きるのか分からないと、何か悪いことが起きるのではないかと警戒しなければならなくなるからです。

 優れた上司は、チームが状況を予測しやすい環境を作ります。そのために、できるだけ多くの情報を提供し、上司自身が次に何が起きるかわからないときには、正確にそのことを伝えます。

 今はVUCAの時代だからこそ、リーダーはチームメンバーが不安に陥らないように、できるだけ多くの情報を与え、リーダー自身が率先して事に当たり、責任は自分が引き受けることで、メンバ-の不安を解消すべきなのです。

3.不信の種をまく

 悪い上司は、チーム全員が一つの目標に向けて協力するのではなく、お互いに競争しているように感じる構造を作ることで、不信感に満ちた環境を作ってしまいます。また、メンバーの一部を贔屓することで、職場環境に不信感を募らせ、結果的に部下は上司の気を引くことに終始するようになります。

 チームが成功するためには、チームメンバーが一丸となって事にあたることが大切です。そのためには、チームが一つの目標に向かい協力することが大切で、協力には信頼が不可欠です。

4.アメよりムチを使う

 これまで何度も書いていますが、部下の育成方法は「認めて、任せて、褒める」です。怒りや罰は、その場では効果を発揮しますが、長い目で見れば悪影響を及ぼします。怒りや罰は、部下が職場で働くモチベーションを低下させてしまいます。

 優れた上司は、むしろチームメンバーが良い仕事をすると、それに報いる方法位を考え、褒めることによってモチベーションを高めパフォーマンスを向上させます。

 部下がミスをしても叱るのではなく、そのミスを成功への糧として、ミスから学ぶ姿勢や機会を教えることです。

 叱ることや罰は、ミスに対してではなく、怠慢に与えられるべきものです。同じミスを繰り返し全く学びがないことや、ミスに気づいてもそれを隠そうとすることや、意図的に妨害するような場合には叱り罰を与えなければなりません。

 また、叱った時にフォローすることを忘れてはいけません。

 上手くアメとムチを使い分けることが重要です。

「自己犠牲による忠誠」を強いる時代の終焉

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1147人、そのうち東京154人、神奈川123人、埼玉78人、千葉83人、愛知73人、大阪141人、兵庫78人、京都27人、福岡39人、沖縄40人、北海道19人などとなっています。もともと少ない月曜日ですが、東京、大阪ともに久々の100人台、このまま収束に向かってもらいたいところですが、新型コロナウイルスはしたたかです。人間が気を緩めるやいなや牙をむいて襲い掛かってきます。政府は明後日で緊急事態宣言、まん延防止等重点措置を全面解除する方針ですが、時短営業は一定期間継続するようで、制限緩和を段階的に行うことは間違っていないと思います。ただ、飲食店の営業自粛や酒類提供禁止が新型コロナ感染者の増減にどの程度の効果があったのかの検証も十分に行われていません。営業自粛が一定の効果があったことは否定しませんが、その結果経営に苦しむ飲食店があることも事実で、その支援は必要です。一方で、協力金・給付金で焼け太りした飲食店もあることも事実で、国税が有効に使われたとは言えません。何が正解かわからない状況ですが、将来に活かすために十分な検証を行うことが今後のリスク管理に生きてきます。楽観論と間違ったバイアスに支配されていた菅政権は終わります。新政権ではしっかりとした危機管理を行ってもらいたいものです。

さて、今日はITmediaビジネスの「社員に『自己犠牲による忠誠』を強いる時代の終焉」という記事を取り上げます。

これまで、企業は労働者に長時間労働を強い、労働者は仕事に追われワークライフバランスを実現することは不可能でした。働き方改革関連法が成立し2018年4月から労働基準法をはじめとする8つの法律が順次改正・施行され、少しずつ労働者の意識も変わってきました。

企業経営は闘いです。経営環境は変化が激しく、何が正解かわからず、先が見通しにくくなっています。こうしたVUCAの時代において、生き残りをかけた戦いを行うには、一人ひとりの働き手のわがままを聞いているわけにはいかないことも事実です。働き手の力を結集し一丸となって進んでいくには自己犠牲をものともしない忠誠心で会社に尽くす姿勢を求めることは一見すると理にかなっているようにも見えます。確かに、それが働き手の志向と合致しているのであれば、これほど強い味方はありません。

実際、多くの企業は働き手に自己犠牲による忠誠心を求め、その精神が組織統制機能の軸になっているともいえます。しかし、そうした自己犠牲による忠誠心を強いる中で、パワハラ、過労死、自殺などの不幸な事例が後を絶ちません。

1.「美徳」から「危険な精神」へ

 上述のような痛ましい事件について、これまでは「臭いモノには蓋」で黙殺されてきました。しかし、時代の流れとともに、それが許しがたい社会悪として認識されるようになってきています。それには、これまで「美徳」と見なされていた「自己犠牲による忠誠」を時には命をも奪う「危険な精神」と見なす方向にシフトしたことが起因しています。

 このような価値観のシフトが社会全体で起きれば、働き手の志向や意識に影響することも事実です。社会全体の価値観のシフト、働き手の志向や意識の変化が徐々に進んでいる中で、新型コロナによるパンデミックが起こりました。このコロナ禍が、テレワークなど働き方改革に大きな影響を与えたことは言うまでもありません。

 今は小さなパラダイムシフトに過ぎないものが、大きなパラダイムシフトが起きる予兆であるかもしれません。この記事では、今後どのようなパラダイムシフトが起き、それが採用市場にどのような流れを生み出すかについて3つのポイントを挙げて考察しています。

  1. 前例にない調整を必要とするケースの増加・・・AIなどに通じた特別の技能を持つ人材を好待遇で迎え入れたり、コロナ禍という非常事態の中で事業を動かしたりと、会社運営は異例の対応を強いられることが増えてきています。これは、これまでの延長線上に描かれた未来像に基づく事業計画に限界があることを示しています。
  2. 画一的ルールから個別最適ルールへ・・・働き手の志向に応じてテレワークを認めたり、副業をする社員が増えてきたりすると、特例とされてきた働き方と通例の働き方の垣根が分かりづらくなります。社員一人ひとりの勤務条件が異なることが当たり前となり、同じ時間に出社、同じ時間に休憩を取り、同じ時間に退社という画一的なルールが適用できづらくなり、それぞれの事情に合わせた個別最適でのルール運用へと移行していくことになります。
  3. 採用勝ち組と負け組の二極化・・・1、2で示した変化を見越して対応している企業と何も手を打っていない企業とで二極化が起こります。特にテレワークと副業への対応が顕著な差となって現れます。採用側と働く側の選択肢を一気に拡大させる市場を形成する流れに乗るか、あくまでも狭い選択肢に押し込められた市場に留まり続けるか、で勝ち組か負け組かに分かれるように思います。

2.新たな市場が形成されていく

 1から3の流れについては、これまで自己犠牲による忠誠を求め、働き手に対する強い拘束力で企業秩序を守ってきた企業にとっては受け入れがたいことかもしれません。しかし、社会環境が変化し、見通しがつかない時代になっていることは紛れもない事実です。この事実から目を背けていたのでは、持続的成長どころか、確実に衰退して生き残りをかけた戦いに負けてしまいます。まだ負け組として細々と生き残ることができればいいのですが、場合によっては社会や市場から完全に放逐されてしまいます。企業はゴーイング・コンサーン、生き残ることが使命です。

 上述の流れの中で新たにできた市場の中で戦っていくしか生き残る道はないのです。

コロナ禍で働き方は大きく変わりましたが、政府が働き方改革に乗り出したのはコロナ以前です。コロナ禍が働き方改革を加速しましたが、働き方改革は大きな流れであり、今後も続いていくものです。この流れに乗り遅れることは死活問題になります。

この記事が言うように、これまでのように会社が働き手に自己犠牲による忠誠を強いる時代は終わります。

これまで何度も書いていますが、経営は「ヒト、ヒト、ヒト」です。「ヒト」は使い捨てする経営資源ではなく、自己犠牲による忠誠を強いる存在でもありません。一人の人間として尊重されるべきものです。企業・経営者と働き手(社員)は対等の立場にあって、お互いがより良い関係・信頼関係を築き、お互いを高めていくことが大切です。そうすることによって企業も持続的成長が図れるのです。

トップ5%のリーダーと残念なリーダーとの決定的違い

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で2134人、そのうち東京299人、神奈川193人、埼玉131人、千葉106人、愛知166人、大阪386人、兵庫115人、京都53人、福岡104人、沖縄71人、北海道54人などとなっています。全国的に減少傾向が続いていますが、大阪は、25日連続で前週の同じ曜日を下回っているものの、新規感染者数は5日連続で東京を上回り、減少幅が小さいように見えます。大阪ミナミやキタの人出は増えており、ノーマスクの人も見受けられます。政府は、19都道府県に出されている緊急事態宣言を今月30日をもって解除する方針を固め、まん延防止等重点措置への移行も見送る方針で検討に入っています。全面解除となれば、一気に国民の気は緩み、繁華街や行楽地の人出は急増します。一律に全面解除するのではなく、19都道府県の中には首都圏や愛知・大阪・兵庫などまだ一定数の感染者がいる地域ではまん延防止等重点措置に移行させて様子を見るべきではないかと思います。段階的な行動制限緩和が必要です。

さて、今日は、現代ビジネスの「AIで判明、『トップ5%のリーダー』と『残念なリーダー』の決定的違い」を取り上げます。この記事は、越川慎司著「AI分析で分かったトップ5%のリーダーの習慣」からの抜粋です。

越川氏は、「トップ5%のリーダー」と「残念なリーダー」との特徴的な違いがAI分析で明確になったと言い、次のようなトップ5%リーダーの特徴を挙げています。

1.やる気を当てにしない「仕組み」を確立する

 越川氏は、5%リーダーは、チーム目標の達成に向けてのプロセスの中に、「チームメンバーにやる気(モチベーション)があるかどうか」という要素を入れないと言います。つまりチームメンバーにやる気がなくても、5%リーダーがプロセスが実行できるような「仕組み」を作るということです。

 確かに、残念なリーダーのようにメンバーのやる気だけを当てにするようではいけませんが、いくらやる気がなくても回るプロセスを作ったところで、メンバーにやる気がなければ、その仕組みも上手く動かないように思います。メンバーのやる気(モチベーション)を軽視するわけにはいきません。組織というものは「仕組み」だけで動くものではありません。経営資源の中で最も重要なのは「ヒト」です。最も重要な経営資源である「ヒト」がやる気を出して動くからこそ組織も効率的に動くのです。だからこそ、経営理論(マネジメント論)の中で、モチベーションをいかに高めるのかといった様々なモチベーション論が主張され、展開されているのです。

 ここでは、「5%リーダーはつま先立ちでギリギリ届くゴールを設定する」と言い、これを一つの「仕組み」と捉えています。届くかどうかわからない遠いゴールを設定しても、メンバーのモチベーションは上がりません。努力すれば手が届くところに目標があれば、メンバーのやる気を誘発します。「つま先立ちでギリギリ届くゴールを設定する」のは、「仕組み」というよりも、メンバーのモチベーションを高める一つの方法なのです。

2.人を巻き込み、1+1を5にする

 越川氏は、5%リーダーは、「どうやって組織をつくっていくのか「どうやって問題を解決するのか」という「How」の考えを捨て、「Why(なぜ)」にこだわると言っています。このことは、以前5W1Hについて書いた際にも「Why(なぜ)」の重要性を指摘したとおり、間違ってはいません。ただ、その時にも指摘しましたが「why?Why?」ばかりでは答えは見つかりません。「Where?Why?How?」とまずは問題の所在を明らかにして、それから原因探究に向かい、最後にどのように解決するのかを検討するのが良いのです。

 5%リーダーは「短期で成果を出す」のではなく、「長期で成果を出し続ける」と言います。これは当然のことです。企業というのは、ゴーイング・コンサーンで、持続的に成長し続けなければなりません。企業の一翼を担うリーダーに長期的視点に立った成長戦略が求められるのは当然のことです。だからこそ、部下の育成も重要です。

3.異質同士の新結合でイノベーションを起こす。

 越川氏は、5%リーダーは「異質同士の組み合わせ」を行うと言っています。VUCAの字で位には多様な人材を組み合わせて仕事に向かわせることが重要な意味を持ちます。5%リーダーは、各人の強み、弱みを把握し、これらを上手く掛け合わせて大きな成果を上げるのです。

 成果を出す優秀なメンバーにも弱みはあります。その弱みを他のメンバーが補完し、組織全体の成果を2倍、3倍にするのです。また、成果の出ないメンバーでは、メンバーの強みを把握し、その強みを伸ばすのです。

 あらゆる面で、チーム内の強み、弱みを掛け合わせることによって人間関係をも良好にしていくのが5%リーダーです。

4.ストイックにならない

 5%リーダーの目的は、メンバー各人が考えながら自走する組織を創ることで、自分自身が強力なプレイヤーになることではありません。

以前「有能なリーダーと人気のリーダーの違い」で書きましたが、自分が率いるメンバーと同じ仕事をするのではなく、メンバーを率いて仕事をさせることが有能なリーダーの役割です。自らがストイックに業務を遂行するのではなく、チーム全体を上手く取りまとめ、正しい方向に導くのが5%リーダーです。

5.根回しを構造化する

 5%リーダーは、社内のパワーバランスや出身、積極さ、社内人脈などを把握し、誰を巻き込んでいくかを構造化しています。相手に興味や関心があることをアピールして、自己開示で相手の心を開かせるなどして、戦略的に根回しをします。

 5%リーダーは、常にチームの目標達成を考えており、適切な情報共有と教育が重要であることを理解しています。

 ここでの内容は間違っているとまでは思いませんが、あまりにも根回しばかりに気が取られているようでは、リーダーとして失格です。意識的に根回しをするのではなく、普段の行動の中で色々な人が自然と集まり、色んな人を巻き込んで、自然と情報共有ができてこそ、優秀なリーダーです。5%リーダーは自ら意図的に根回しせずとも自然と根回しできているものです。

6.「伝える」ではなく「伝わる」を目指す

 5%リーダーのコミュニケーション術は「伝える」ではなく「伝わる」を目指していると言っています。

 コミュニケーションにおいて大切なのは、お互いが共感し、より良い人間関係を構築することです。これは5%リーダーだけでなくすべてのビジネスパーソンに必要なスキルです。自分の思いが相手に伝わり、相手から共感を得てよいよい人間関係、信頼関係を築くのです。そのためには「伝える」ではなく「伝わる」ことが大切です。これこそが真のコミュニケーションです。

7.「やめること」を決めて、新チャレンジを

 リーダーは多くに仕事に忙殺されています。優先順位を設定することなく、振ってくるタスクにそのまま対応することは生産的ではありません。優先順位を決めることは重要ですし、時には切り捨てることも必要です。

 5%リーダーは、日常的に発生する目先の緊急業務と距離を取りながら、長期的な目標達成に向けて進捗を管理することが必要です。

 時間自体には限りがあります。限りある時間の中で、何か新しいタスクが降ってきたり、新たなチャレンジをしていくには、「やめることを決める」ことが重要になってきます。

8.うなずきのバリエーションが5つ以上ある

 5%リーダーは「聞き上手」であると言われます。以前にも書きましたが、「雑談は質問力」、コミュニケーションは質問から始まります。質問をして相手の答えを聞く、それを掘り下げてまた質問する、時々自分の話をするのです。相手の話を聞くには、「頷くこと」も「間の取り方」も重要です。

 越川氏は、5%リーダーは「はい」「なるほど」「そうですね」「運」「やっぱり」など、多彩なうなずきのバリエーションを持っていると言っています。

ここに挙げられている5%リーダーの特徴は、すべてが正しいとは思いませんが、大筋においては間違いはなさそうです。

休日の本棚 デザイン思考で創造的解決を導く方法

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で2674人、そのうち東京382人、神奈川193人、埼玉212人、千葉150人、愛知213人、大阪425人、兵庫206人、京都51人、福岡65人、沖縄115人、北海道63人などとなっています。東京は34日連続で前週の同じ曜日を下回り、4日連続で大阪が東京を上回っています。月末には緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の解除がなされますが、一気に全面解除するのではなく、緊急事態宣言からまん延防止等重点措置に移行させ2週間程度様子を見る、その間に実証実験を行い、行動制限緩和のガイドラインを作るというのが良いように思います。

さて、今日は、ハーバード・ビジネス・レビューの「イノベーションを実現する7つのステップ デザイン思考で創造的解決を導く方法」という論文を紹介します。この論文はバージニア大学ダーデンスクール・オブ・ビジネスのジーン・リエトカ教授によるものです。

昨日の「イノベーションの罠」は2007年8月号のハーバード・ビジネス・レビューに載ったもので若干古い論文でしたが、今日取り上げる論文は2019年6月号に載ったものです。

デザインを科学における思考方法をしてとらえる見方は1969年のハーバード・サイモン著「デザインの科学」に見られ、1987年のピーター・ロー著「デザインの思考過程」で「デザイン思考」という言葉が顕著に使われました。2000年代に入ってデザイン思考に関する関心が高まり、デザインを重視した職場を生み出しイノベーションを促進する方法が多くのビジネス書で取り上げられるようになりました。

このところ、「デザイン経営」や「デザイン思考」という言葉が流行っています。

デザイン経営」とは、デザインを活用した経営手法のことで、ここでいう「デザイン」とは「『企業が大切にしている価値、それを実現しようとする意志を表現する営み』に基づいてブランドを構築し、『顧客の潜在的なニーズをもとに既存事業に縛られず、事業化を構想する営み』を通じてイノベーションにつなげていくこと」です。

デザイン思考」は、文字通り、デザイナー的に物事を考えること、「生活者がどのような行動をとり、どのような考え方をし、どのような感情を示すかを詳細に観察し、時にはインタビューを行うことでニーズを把握し、そのあとで簡単なスケッチを描いてニーズに合致するかを検証し、求められていることが明確になるまでこの作業を繰り返すこと」、つまり「顧客のニーズを起点にして問題解決を図る思考方法」です。

1.社会技術としてのデザイン思考

 新しい仕事のやり方は時として目覚ましい改善につながります。1980年代に製造業界で広まったTQM(総合的品質管理)活動では、トヨタかんばん方式やQCサークルなどの手法と「現場の作業員は、。通常要求されているよりもはるかに高水準の仕事ができる」という気付きが結びついて著しい改善を実現しました。

 デザイン思考もTQMが製造分野で成し遂げたのと全く同じ成果をイノベーションの分野で上げることができます。つまり、人材の創造性とコミットメントを十二分に引き出し、業務プロセスを劇的に改善する可能性を秘めていることが判明しているのです。

 しかし、人間は、創造力の発揮を阻む先入観や特定の行動規範への思い入れがあり、それがイノベーションの妨げとなっています。この論文では、こうしたイノベーションの妨げとなる人間のさまざまな傾向を掘り下げ、そこから逃れる際にデザイン思考のツールと明快な手法がどのように役立つのかが解説されています。

2.イノベーションの成果を左右する3つのポイント

 イノベーションプロセスが成果を上げるためには次の3つがそろっていなければなりません。

  1. 秀逸な解決策・・・課題を分かり切った慣例的なやり方で定義すると、従来型の自明な解決策に辿り着く。趣向の違った問いを投げかけると独創性の高いアイデアの発見につながりやすい。ユーザー主体の基準を取り入れると、格段に優れた解決策が導き出されることも多いが、未知の製品やサービスについて尋ねられても顧客の側で判断に窮する。多様な意見を取り入れると解決策が質的に向上するが、異なる意見の収拾を付けることが難しくなるケースもある。
  2. 少ないリスクと変革コスト・・・イノベーションには不確実性がつきものである。だからイノベーションを起こそうとする人は複数の選択肢を用意する。しかし、アイデア・選択肢が多すぎると焦点やリソースが拡散する。有望でないアイデアを排除する勇気が求められるが、残念ながら、創造的なアイデアの方が否定されやすい。
  3. 従業員の賛同・・・従業員の支持を得ない限りイノベーションは成功しない。彼らの支持を取り付けるにはアイデア出しのプロセスに巻き込むことであるが、視点の異なる大勢の人々を巻き込むと混乱や支離滅裂の状況を引き起こすことにもなりかねない。

 上記の3つを上手くそろえるというのは難しく、いざ活用しようとすると、組織は得てして新たな障害や二律背反に遭遇することになります。

 組織が、数々の二律背反に対処するには、問題行動や非生産的な先入観に対処する社会技術が必要で、それがデザイン思考なのです。

3.デザイン思考のフェーズに沿った7つのステップ

 デザイン思考については、経験豊富なデザイナーから、四角四面で手順も決まり、あまりに硬直的で、実際のデザイナーの思考方法とはかけ離れているとの批判があります。

 確かにデザイナーからの批判はもっともですが、デザイン思考で考えるのは、デザイナーではなく経営者をはじめとしたビジネスパーソンです。ある意味デザインの素人です。決まった手順が決められていると脱線することなく、問題の掘り下げに時間をかけすぎたり、先を急ぐあまり途中を飛ばしたりすることを防ぐことができます。さらに、手順通りに行えばいいので、失敗を恐れずに進めることができます。人は、失敗を恐れるあまり、行動を控えるものです。しかし、行動しない限りイノベーションは起こせません。あらかじめ決まった手順があれば、安心感を持って臨むことができます。

 デザイン思考のツールや手順は安心感をもたらすため、イノベーションを目指す人々は、顧客ニーズの発見やアイデアの造像、検証を、確信をもって進めることができるのです。

 リエトカ教授は、デザイン思考は、大きく3つのフェーズに分かれ、その実践に当たっては7つのステップを経ると言っています。各段階で明確な成果が生まれ、次の段階でそれが新たな成果につながり、この繰り返しによって、やがて実用的なイノベーションが実現するのです。

第1フェーズ 顧客の発見

 デザイン思考においては、データの収集や分析に重点を置くのではなく、有意義な顧客経験が何によってもたらされるのかを掘り下げることが大切です。

  • 第1ステップ 顧客の立場に立つ・・・イノベーションの担当者に顧客と同じ経験をさせることで、隠れたニーズを掘り起こす。
  • 第2ステップ 掘り下げる・・・顧客と同じ体験をすると洞察を深めるための材料が得られる。顧客の立場に身を置くことで突き止めた事柄を掘り下げるには、「ギャラリーウォーク」というデザイン思考の訓練が有用である。集めたデータをインタビューの対象者の写真とともに大きなポスターに書き出し、部屋の壁に張り付け、他の人たちもこのギャラリーを歩き回ることで、インタビュー対象者の声を身近に感じることができ、情報の共有ができる。インタビュー対象者を身近に感じることで先入観にとらわれ見たいものだけを見るという罠を避けることができる。
  • 第3ステップ 調整する・・・「何も制約がないとしたら、このデザインはどのような仕事を得意とするだろう」という問いをテーマに、ワークショップとセミナー形式の議論を行う。現状の制約を気にせず可能性に着目すると、多様なメンバーで構成されるチームが、デザイン基準や理想的なイノベーションの主な特徴に関して協調しながら創造的な議論を展開することができる。

第2フェーズ アイデアの創造

 顧客ニーズをを理解した後に自分たちが掲げた基準に沿った具体的な解決策を見つけて、絞り込んでいきます。

  • 第4ステップ 創発・・・まずは考えられる解決策について話し合いの機会を設け、誰を参加させるか、どのような課題を与えるか、どのように話し合いを組み立てるかを慎重に計画する。参加者たちは、デザイン基準をもとに、個別のブレインストーミングをした後、アイデアを持ち寄り、それらをもとに創意工夫をする。
  • 第5ステップ 明確化・・・創発段階では、魅力的で実現できそうな、競合する数々のアイデアが生まれる。ここでは暗黙の前提を引き出し、その妥当性に疑問を投げかける。前提に疑問をさしはさまないでいると、過度の楽観論、。確証バイアス、最初の解決策への執着など様々なバイアスにとらわれてしまう。デザイン思考では「アイデアを実現するには何が真実でなくてはならないか」を掘り下げるために議論を組み立てる。

第3フェーズ 検証

 デザイン思考では、完成に程遠い製品のプロトタイプを作成し、未完成なアイデアを利用者に試してもらうことになります。その過程で、大幅な編子言うが起き、デザインを一から作り直す場合もあります。

  • 第6ステップ 先行体験・・・未知の何かをあたかも現実であるかのように生き生きと思い浮かべる先行体験は、その対象の価値をより正確に評価するうえで有用です。デザイン思考では、実現を目指す顧客経験の本質をとらえた低コストの簡易人工物の作成が望まれます。このような人工物は、顧客に使ってもらって得た知見をもとに容易に変更できますし、意見交換を促します。
  • 第7ステップ 実地学習・・・新しいアイデアを評価し、実用に向けて必要となる変更を見極めるには、実環境での試行が欠かせません。これにより、従業員や顧客が当然のように抱く変化への不安を和らげることにもつながります。

デザイン思考の枠組みは、上述の調査から実地展開への自然な流れを作るものです。

より簡潔化して言えば、

 共感 ⇒ 問題定義 ⇒ 創造 ⇒ プロトタイプ ⇒ テスト

です。

  • 共感・・・ターゲットを決定し、ターゲットの立場に身を置き、何を求めているか観察し、共感してニーズを探る
  • 問題定義・・・ユーザーの視点で具体的なニーズを定義する
  • 創造・・・定義された問題について自由に意見交換して、具体的にどうアプローチするかを考える
  • プロトタイプ・・・選んだアイデアをもとにプロトタイプ(試作品)を早いスピードでつくり、機能性・効果・実現性について検討する
  • テスト・・・プロトタイプをユーザーに実際に使ってもらいフィードバックを受けて改善する

マーケティングの有名な言葉に「ドリルを買う人が欲しいのは『穴』である」というのがあります。ドリルを売る人は製品志向でドリルの性能ばかりを説明しがちですが、顧客が真に求めているのは、商品そのものではなく、商品を使用することで得られる効能、つまり問題解決にあるのです。顧客視点に立って、顧客がなぜドリルで穴をあけたいと考えたのか、を聞き出してみれば、もしかしたら、穴をあける必要はなく、顧客がの問題解決に必要なものは、ドリルではないかもしれません。

このように、デザイン思考は、顕在化している問題に対し、顧客の立場に立って顧客が抱える真の問題の本質はどこにあるかを考えるもので、問題を解決するための真のアイデアを見つけることなのです。

休日の本棚 イノベーションの罠

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で2093人、そのうち東京235人、神奈川251人、埼玉142人、千葉119人、愛知173人、大阪240人、兵庫115人、京都39人、福岡115人、沖縄61人、北海道63人などとなっています。感染者数だけを見ると、第4回目の緊急事態宣言発令前の状態に戻っていますが、緊急事態宣言解除には医療体制のひっ迫度を中心に判断されるべきで、解除期限の直前まで見極める必要があると思います。緊急事態宣言解除後の行動制限緩和について色々と議論がなされていますが、これまでの経験から、解除後一気に気が緩み2週間後にはリバウンドして感染者が増加することが分かっているので、気を緩めることなくこれまで通り基本的な対策をとり続けていくしかありません。韓国では、連休で人出が増えたことや会食の人数制限を緩めたことで、再び感染者数が急増しています。こうした海外での事例も参考にしながら、行動規制緩和も、どうしたらリバウンドを抑えることができるのか、どうすれば普通の生活に戻すことができるのか、一つひとつ段階的に確認しながら急ぐことなくゆっくりと進めていくべきです。

さて、今日は、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネスレビューに掲載された論文の中から、ロザベス・モス・カンター氏の「イノベーションの罠」を紹介します。カンター氏は、ハーバード・ビジネススクール教授で、経営管理論が専攻です。

コロナ禍でイノベーションが脚光を浴びていますが、イノベーションは決して一過性の流行ではなく、流行ったり廃れたりを繰り返しながら企業の成長要因として注目されるものです。

「これからはイノベーションである」などと華々しく宣言しておきながら、その後の施策が凡庸なために尻すぼみに終わるケースが後を絶ちません。その後、コスト削減に傾くとイノベーション・チームは解散に追いやられます。また、経営者が変わるたびに、新たなイノベーション志向が掲げられますが、やがて、イノベーションの阻害要因という、古くて新しい難問に突き当たります。

これまで、環境が変わりイノベーションの種類も様々でしたが、同じジレンマに陥っています。それは、目先の成功に欠かせない既存事業からの売上げと、将来の成功に欠かせない新コンセプトの開発を両立することの難しさです。

クリステンセン教授が「イノベーションのジレンマ」で指摘しているように、業界トップとなった企業が既存顧客の声に耳を傾けすぎ、さらに高品質の製品やサービスを提供することでイノベーションに立ち後れ、新興企業に後れを取ってしまうという事態が生まれます。

このようにイノベーションのジレンマについては多くの知見が示されているにもかかわらず、経営者の多くは、無知や弱気のままです。「更なるイノベーションを」と言いながら「前例はあるのか」と問い、「新しいアイデアを求めている」と言いながら、新しいアイデアが出されるとすべて却下してしまうというのが現実なのです。

カンター教授は、この論文で、イノベーションの罠に関する知識とその忘却を回避する方法を提示しています。

1.イノベーションの罠

⑴戦略面の過ち:高すぎるハードルと狭すぎる視野

 高価格と高マージンにつられた経営者は、大ヒットをもたらすイノベーションを探し求めます。その過程において膨大な経営資源が投入されますが、そもそも大ヒットには当たることは難しく、しかも予測不可能なものです。その間、キラー・テクノロジーを追い求めるあまり、一見すると小粒のチャンスをなおざりにしてしまいます。その小粒のチャンスにこそ、将来の大ヒットにつながる芽があるのを見落としてしまうのです。

 多くの企業では、数年である程度の規模の売り上げが見込めないアイデアはすべて却下されているのが現状でしょう。その結果、既存路線と大差のないおよそイノベーティブとはいいがたいアイデアが採用され、昔ながらの市場調査と測定方法になじまないアイデアや、経験則から外れるアイデアへの投資は控えられているのです。これでは何も新しいものは生まれません。

 画期的なイノベーションとは呼ぶことのできない、せいぜい製品にささやかな変更を施すだけのアイデアは、製品を増殖させるだけで、その結果、ブランド価値が希薄化したり、顧客を混乱させたり、社内プロセスの複雑さを増やしたりして、最終的にはクリステンセン教授が言うように新興企業に後れを取って企業自体が衰退するのです。

⑵プロセス面の過ち:厳しすぎる管理

 既存事業と同じ計画立案、予算編成、業務評価という厳しい管理を通じて、イノベーションを縛ろうとします。しかし、イノベーション・プロセスは、そもそも不確実なものであり、脱線したり、後戻りしたりと想定外の事態は避けることはできません。既存事業のプロセスの枠組みの中で行うには限界があるものです。

⑶組織面の過ち:弱すぎる連携と強すぎる組織の型

 生まれたばかりの新規事業に既存事業と同じプロセスを当てはめるのは危険ですが、さらに、企業文化や相反する重要課題との衝突を避けるには、これら新旧事業体の組織構造にも配慮しなければなりません。

 その場合、新規部門と既存部門の連携が重要になります。縦割り組織では、イノベーションのチャンスが巡ってきても、これを逸しやすいのです。事業の姿を一変させるイノベーションは、既存の販売チャネルをまたぐものや、様々な既存能力を新たな形で結合させたものが多いのです。既存部門と新規部門の連携が図れる組織構造に再編しなければならないのです。

⑷スキルの過ち:弱すぎるリーダーシップとつたないコミュニケーション

 イノベーション活動における人間的側面を過小評価するという過ちです。

 多くの場合、経営者は、プロジェクト・リーダーに向いている人材ではなく、最高の技術者にイノベーションを任せてしまいます。技術志向が強いマネジャーは、アイデアが役に立つかどうかは自明の理であると思い込み、外部とのコミュニケーションを怠りがちになります。チームの結束こそ最重要であるにもかかわらず、任務を優先してチームの結束を固めるチャンスを失ってしまいます。これでは、多様なチームメンバーの強みを活かすことができません。

 素晴らしいアイデアが触発されるような信頼関係や相互作用を、メンバー間に築き上げるには時間がかかります。そのためには強いリーダーシップが必要ですし、コミュニケーションをないがしろにしてはいけないのです。

2.イノベーションを成功させる処方箋

 ブレークスルーとなるアイデアや製品、サービスをいかに追い詰めても、上で述べた過ちのいずれか、あるいはすべてで頓挫してしまう恐れがあります。しかし、カンター教授は、過去に学ぶことによって、イノベーションを成功させる方法を知ることができるとして、次の方法を提示しています。

⑴戦略面の改善策:イノベーションを探索する範囲と活動領域を拡大させる

 カンター教授が「イノベーションのピラミッド」と呼ぶ階層は三層に分かれ、その各層に効果が及ぶようなイノベーション戦略を策定することです。

  • 最上位に属するもの:大規模イノベーション 小さな成功を牽引する作用があるため、ピラミッドの上から下へとその影響が波及していく。下から上へと波及する場合もある。
  • 中層に属するもの:中規模の有望アイデア群 これらのアイデアを広げ、テストを担当するチームが中心となって取り組む。
  • 最下層に属するもの:まだ生煮えのアイデア 継続的改善による斬新的イノベーションからなる、いわばくぃのベーションの苗代である。

 イノベーションは、全員参画の文化から生まれ、育っていくものです。専任チームが大型プロジェクトを推進し、臨時チームが中規模のアイデアの展開を図り、残りの全社員から提案を募ります。全社員がもれなくアイデアの提案者となり、プロジェクトの予備軍になることです。

 アイデアを幅広く募り、小さなアイデアをたくさん集められる企業の方が、大きなアイデアを獲得できる可能性が高いのです。イノベーションを次々に生み出している企業は共通して試行回数が多く、これが成功のカギになっています。

⑵プロセスの改善策:計画立案と管理システムの柔軟性を向上させる

 イノベーションは既存事業と同じプロセスでは上手くいきません。想定外の事象が多く起きます。硬直的な計画策定と管理システムでは画期的なイノベーションを起こすことはできません。画期的なイノベーションには柔軟性が必要です。

 計画スケジュールに縛られることなくイノベーション活動を活発化させるうえで、予想外のチャンスに備えて別勘定の資金をプールしておくことも有用です。

 また、イノベーション・チームが予期せぬ障害で再考を迫られた場合、状況に柔軟に対応できるかがカギになります。

⑶組織面の改善策:イノベーション・チームと既存部門を緊密に連携させる

 既存部門と同じ管理体制の下では、イノベーションは途中で潰れることにもなりかねません。そうならないためには、杓子定規な管理を緩める一方、イノベーション・チームと既存業務に携わる社員たちとの連携を強化しなければなりません。

 イノベーションを起こすには、これまでの縦割りではなく、組織横断的に連携する必要もあります。

⑷スキル面の改善策:人間関係を重視するリーダーを選抜し、声安保レーションによってコミュニケーションを支援する文化を醸成する

 プロジェクト・リーダーのスキル開発のたけた企業ほど、イノベーションの成功率は高いものです。

 得てして、新しい製品やサービスを連鎖的に生み出すイノベーションにミドル・マネジメントは反感を抱くものです。ミドル・マネジメント層に生じた緊張を緩和させるためには、自分に協力的な上層部との人間完成を強化し、上層部を通じてイノベーションの必要性、イノベーション・チームの特殊性を伝え、ミドル・マネジャー層へ働きかけてもらうことが重要になってきます。

既存企業が、イノベーション活動をとん挫させてしまう罠に陥るのを回避する方法は、次の4つということになります。

  1. 新しいアイデアを探す範囲を広げること
  2. 厳しすぎる管理と硬直した組織構造を緩めること
  3. イノベーションの推進責任者と既存事業の連携を改善すること
  4. コミュニケーションとコラボレーションのスキルを磨くこと

イノベーションは、企業の将来を創造するアイデアをもたらします。しかし、カンター教授は、「経営陣が真摯に過去に学ばない限りイノベーションを求める旅は徒労に終わる」と言います。

既存企業から得られる利益の最大化と新規事業の探索のバランスを図ることが重要です。そのためには、組織の柔軟性と人間関係への配慮は欠かせません。このことは、昔も今も、そして将来においても不変の事実なのです。

分析しすぎない、直観に従う、時折失敗するのが偉大なリーダー

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で3604人、そのうち東京531人、神奈川259人、埼玉239人、千葉166人、愛知359人、大阪540人、兵庫273人、京都109人、福岡123人、沖縄141人、北海道76人などとなっています。前週の同じ曜日で比べた場合、29日連続で減少しており、月末の緊急事態宣言解除が現実味を帯びてきました。しかし、すべての地域で全面解除するのではなく、首都圏・関西圏・愛知、沖縄については、まん延防止等重点措置に移行させて様子を見るべきでしょう。また、緊急事態宣言解除後は行動規制緩和の動きが加速しそうですが、政府は、まず全国10か所程度の地域を指定し行動規制緩和に向けた実証実験を行うようです。実証実験での結果を踏まえて、今後の行動規制緩和の内容や条件を決めることは良いことだと思います。ただ、どのような行動規制緩和を行った場合に感染者数が増減するのかデータを取り、そのデータに基づいて行動規制緩和の条件や内容を決めるうえでの実験は必要ですが、行動規制緩和ありきの前提で行われるのであれば問題です。ニュースなどで出ている実証実験の内容は、ワクチン接種済みか否かの確認を行いエリアを分けるなど手続き的なもののようであまり意味があるとは思えません。実証実験の目的と検証項目を明確にしたうえで、しっかりと実験を行いその効果が検証されなければなりません。中途半端な実証実験では無意味ですし、逆に差別を助長するなど悪弊を及ぼす恐れすらあります。

さて、今日は、日経ビジネスの「分析しすぎない、直観に従う、時折失敗するのが偉大なリーダー」という記事を取り上げます。

いくら有望な市場でも、いくら優秀な人材を集めても、リーダー次第で組織は停滞します。リーダーに求められる資質として、次のようなものが挙げられます。

  • 明確な意思表示ができる・・・明確な判断ができなければチームの目標も定まらず、チームを一つの方向に導くことができません。
  • 寛容の態度・心構え・・・チームメンバーの多様な意見を聞くこと、そしてそれを取り入れる寛容さが必要です。
  • メンバーとのより良い人間関係・信頼関係の構築・・・メンバーとの信頼関係ができなければ、チームを目標に導くことはできません。
  • 他の人ともコミュニケーションが取れる・・・チームメンバーだけでなく、外部の人とも円滑なコミュニケーションが取れ良好な関係が築くことができることが必要です。
  • 柔軟な対応力・・・判断には時々の状況に合わせて柔軟な対応が求められます。
  • 問題の本質を見抜くことができる・・・問題解決の前に、どこに問題があるのかを提起でき、問題の本質が何かを明確にできなければなりません。

この記事では、リーダーに最も必要なのは「意思決定能力」だと言っています。慢性的に優柔不断なリーダーが多い中、偉大な企業を作るリーダーは優柔不断に陥ることがなく、完璧な情報がなくても決断します。ビジネスの世界で、完璧な情報がそろっていることなどありません。リーダーは十分な情報がない状況でも迅速に意思決定し行動を起こさなければならないのです。その意味では、リーダーに最も必要な資質は「意思決定能力」であるというのはあながち間違ってはいません。

1.分析しすぎて決断できなくなる

 物事をじっくりと分析するのは良いことである反面、分析にだけ拘っていたのでは「分析麻痺」の状態に陥ってしまいます。あらゆるリスクを排除できるほど、あるいは迷いなく決断できるほど十分のデータや情報が集まることはほとんどありません。

 また、あらゆる経営分析は前提をどこに置くかによって結果は変わってきます。全く同じファクトを前提としても、人によって全く異なる結論に達することも多いのです。それは、ぞれぞれが異なった前提に基づいてファクトを見ているからです。同じデータや情報でも、それを見る人の前提によって評価は大きく変わるのです。

 分析しようと思えばきりがありませんし、断定的な結果が出ることも稀です。それでも決断しなければならないのが経営というものです。決断を先延ばしにすることはできないのです。それにもかかわらず、分析ばかり行って決断をなし得ないリーダーは多いのです。

 リーダーの仕事は分析を尽くすことではなく、意思決定を下すことです。無分別な行動や思い付きで闇雲に動くのは論外ですが、ある程度の情報やデータが出そろった段階で、決断し、後は一か八か賭けるしかないのです。

2.直観に従う

 不完全な情報しかない場合、どうやって最終的に判断するのかについて、この記事は「本能あるいは直観に従う」しかないと言っています。

 直感で判断することは非科学的であり、抵抗を感じる人も多いのですが、意思決定が上手い人の多くは、冷静な分析と直感の両方を組み合わせて意思決定を行っています。

 直感が働かないという人はほとんどいません。直観は誰にでもあります。難しいのは、それを認識し、活用することです。

 そのために重要なのは、問題や判断の核心を見ることです。枝葉末節を整理し、メリットやデメリットの長々としたリストは捨て、「問題の本質は何か。細かいことはどうでもいい。重要な点は何か」を問いかけることです。

 問題の様々な特徴や複雑性にこだわるのを止めて、余計な部分はそぎ落とし、問題の本質的要素を炙りだしたうえで、「直観はどう言っているのか」と向き合うことです。

3.直観を磨くには

 直感はセンスです。センスも磨くことは可能です。この記事では、センスを磨く有効な方法は「自分の判断に対する内なる反応をじっくり観察してみること」と言っています。

 例えば、メリットとデメリットが延々と続くリストを抱え、二進も三進もいかなくなったとき、適当に結論を出して、それに自分がどう反応しているかを観察するのです。ほっとしていたら、あんがいそれは正しい判断で、不安や緊張感があり「何か嫌な感じ」がするなら、おそらく間違った判断だろうというのです。

 「これが正しい行動と思うが、○○の不安がある」という時は、直観に反して危険な判断を下そうとしているサインなのです。

4.判断は「誤る」方が「しない」よりましなことが多い

 ビジネスの世界で打率10割は不可能です。流石に野球のように3割というわけではいけませんが、6割ならば合格です。4割の失敗は許されるのです。

 何もしないで決断を先延ばしにするのは、リスクに直面せずに安心できるかもしれませんが、足を止めることが許されない中小企業の世界では、結論を先延ばしにすることは足元をすくわれ、致命的な大失敗につながることもあります。差し迫った問題があるならば、先送りするのではなく、直ちに決断を下し、やっていくしかありません。

 決断して行動を起こさなければ前に進みません。決断した結果間違いでだったのであれば、問題を分析し、その本質的なところを見極めて軌道修正していけばいいのです。

 判断をしないということは、往々にして、誤った判断を下すより悪い結果につながります。問題に正面から向き合い、追いつめられる前に攻撃に出て、決断を下すのです。間違っても仕方ありません。結果はすぐに跳ね返ってくるので、解決に向けて動き出すことができます。

 失敗するのは当たり前、失敗してそこから学ぶということが重要です。この記事では「失敗はアスリートの筋トレのようなもの」と言っています。失敗するまで負荷をかけ続けるのです。失敗すればそれに適応してさらに強くなります。

 意思決定して、そのうち何度か失敗をし、そこから学習するのです。一つも失敗しなければ、いつまで経っても成長はありません。時折失敗するから強くなれるのです。

失敗を恐れるな。知恵はたいてい失敗から生まれるものだ」(ポール・キャビン)です。

分析ばかりで決断を下すことのできない優柔不断なリーダーでは組織は疲弊します。ある程度分析して得られたデータや情報に基づいて意思決定を下し行動すること、それが間違っていれば軌道修正する柔軟さを備えていることがリーダーには必要です。

休日の本棚 経営に終わりはない

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で3245人、そのうち東京537人、神奈川173人、埼玉192人、千葉140人、愛知270人、大阪591人、兵庫267人、京都61人、福岡96人、沖縄162人、北海道57人などとなっています。全国的に減少傾向にありますて、10歳以下の感染が拡大し、横浜では10代の女性の死亡が確認されています。また岐阜の老人ホームや茨城の高齢者福祉施設クラスタ-が発生していますが、感染者のほとんどは2回のワクチン接種を終えているとのことで、ワクチン接種後のブレークスルー感染が増えています。デルタ株になってこうしたブレークスルー感染は増えています。2回のワクチン接種で血液中に抗体ができていれば、入ってきたウイルスを交代がブロックしてくれますが、血液中の抗体は鼻やのどの粘膜では効き目が弱く、後退を防ぐ効果はあまり強くないと言われています。ワクチン接種したとしても、新型コロナウイルスが鼻やのどの粘膜から侵入し増え続けるとワクチンの効果はほとんどないとのことです。重症化を防ぐ効果はあるようですが、ワクチン接種後長い時間が経過すると中和抗体も減少するので、今後ますますブレークスルー感染は増えていくでしょう。政府は来年早々から高齢者への第3回目のワクチン接種を行う予定を立てていますが、十分な検証もないままワクチン接種の回数を増やしても、更に4回目と延々とワクチン接種を続けなければならないことになってしまいます。3回目の接種(ブースター接種)は何を目的とするのか、副反応はどうか、誰を対象とするのは、未接種者とどちらを優先するのかと言った加害を十分に議論・検証したうえで行うべきです。

さて、今日は、藤沢武夫著「経営に終わりはない」(文春文庫)を紹介します。著者の藤沢氏は、本田技研工業の副社長を務め、本田宗一郎氏の名参謀として二人三脚でホンダを一流の世界的企業に育て上げた経営者です。この本は、そうした名参謀が自らの半生と経営理念・経営哲学について熱く語っています。古い本ですが、今なお経営者の心に響く言葉があると思います。

この本の中から、いくつかの言葉を紹介します。

  • 私は人間を判断するときには、その人の過程を見るようになりました。人と人との間を結びつける条件は、まず信頼であり、いた割合であると思います。その基本は家庭にあるんです。だから、家庭を大事にしない人、奥さんを大切にしない男はダメです。芸術というのも人と人とのふれあいから生まれる元であるとすれば、家庭も芸術でなければならないし、経営も芸術だろうと思うんです。物ではなく心である、ロマンチストとしての私と企業経営の接点はそこにあるんじゃないでしょうか。
  • 中国文学の吉川幸次郎先生が「経営の経の辞はタテ糸だ」と書いておられるがうまいことをおっしゃる。布を織るとき、タテ糸は動かずにずっと通っている。営の字のほうは、さしずめヨコ糸でしょう。タテ糸がまっすぐに通っていて、初めてヨコ糸は自由自在に動く。一本の太い筋が通っていて、しかも状況に応じて自由に動ける。これが「経営」であると思う。
  • 帰りのお客さんの顔をよく見て商売しろ、ということでした。つまらなさそうな顔をして帰ったら、もう二度と来ない、それが商売の鉄則だということですね。
  • 古い知識を今振り回していたら時代に取り残される。私たちはそういうものを知らないからいいのだ、ということはその通りかもしれない・・・昔を知らないから、戦後の急激な流れの変化に対応できたのでしょう。
  • なんと言っても金には魅力、というより魔力があります。しかし、金儲けをする能力ならば、本田宗一郎より私の方が上です。しかも、和足はやろうと思えばできないことはない地位にいた。しかし、どんな場合でも本業以外で儲けることはやりませんでした。個人でもやりません・・・自分の身の回りはいつも身ぎれいに押している。だから、みんながついてきてくれる。つまり、私が何を言っても安心していられるのは、私の身ぎれいさ、それが重要なポイントです。そうすれば、私が苦しむ時に、みんなにも苦しんでくれと言えます。
  • 本田技研において、国家の軍事力に相当する者が技術力だとすれば、外交に当たるものは営業力です。この技術とウィ業とのバランスが取れていなければまらない。ところが、往々にして、技術はその力を過大に思いがちになる・・・やっぱり、どんな場合にもバランスを取っていかないとつまずくということです。対語術の力に過大な期待を持ちすぎてしまった。現場の方から楽観的な見通しが出ても、それを冷静に判断して、絶対にバランスを崩してはいけない。
  • 課で一つの書類を持てばよろしい。それぞれの書類はファイルで閉じて、夏全体で利用する・・・帰宅するときには、その日に未処理の書類以外、一切机の上にはおいてはならない・・・自分の机にいろいろな書類が溜まっているのは、能力がないという査定になる。能力のある人は、さっさと片付けて、書類棚に入れて今うわけです。
  • 技術者がほかの従業員にお金の説明ができるような企業体にしたい。お前が働いている仕事が一体いくらになるか、こういう方法に変えるとどのくらいのコストが安くなるかということを、第一線で働いている人たちに分からせるようにしたい。そのためには技術者自身に説明できる知識が必要です。経理の人が説明しても、威張って話すものだから聞いている者がよく呑み込めない。技術についても同じことが言える。どうせ素人だからわからないだろうという態度で、分からないことだらけにされてしまう。これでは困るんです。議z筒矢がお金を知らないと、部長になっても、工場長になっても、十野kぅになっても大変です。毎日ハンコを押す仕事ばかりが増え、お金のことも知らないと判断できないものがいっぱいあります。
  • 課長や部長は、未来を見通す力、リードできる力を持っていなければなりません。商品の価値は技術屋だからわかるんですが、その価値とお金の流れとの両方を知らなければ経営はできないということです。
  • 人間に欠点などないということはありません。社長には、むしろ欠点が必要なのです。欠点があるから魅力がある。付き合っていて自分の方が勝ちだと思ったとき、相手に親近感を持つ。理詰めのものではダメなのです。あの人(本田宗一郎)には、それがあります。欠点があるから他人から好かれないかと言えば、あれだけ人に好かれる人もめずらしい。社員からも好かれている。本物の自分を持っていること、技術では本物だということ、それで十分です。後のことは他の人がやればいい。
  • 本田宗一郎のつぎを、一人で賄えるという人はいない。また、その必要もない。一人でやったら、これはかえって危険です。そこで、複数の知恵を集めれば、本田宗一郎よりもプラスになる。本田宗一郎の持っている力よりもレベルの高い判断力が生まれる。そういう体制を作らなければならないのです。
  • 私は仕事を片付けるとき、後でそれがガンにならないよう、多少手荒なことがあっても、将来のことを第一にいつも考えていました。企業には良いことも悪いこともあるのだから、禍を転じて福とする、その橋を見つけ出すことが経営者の仕事なのだと思います。
  • 禍を福に転ずることができるかどうかは、経営者が仕事の根本にかえって問題を考えるかどうか、そして大胆に行動しうるかどうかにかかっていると思います。
  • ホンダがここまで成長してこられたのも、万物流転の法則に載っているからです。けれども、本田がいつか大きくなったときに、やはり新しく進出してくるものに負けるというのが万物流転の掟です。こんどはその万物流転の法則を避けることができるかということを考えなければなりません。それが新しい組織づくりの元本になるのです。
  • 「人間に一番たまらない苦痛は何か」と聞かれれば「する仕事のないことである」と私は答える。する仕事をいっぱい持てる会社に一生務められれば幸いと言えるもしれない。その仕事を皆で組み合わせて、作り上げるのが会社という組織だ。
  • 「企業は人だ」という。私もそう思った。とすれば、その中で働いている人たちの記録こそ、企業の成長の姿と言えるのではないだろうか。それぞれの個性と業績を明らかにしておく場、この人とこの人を結び付ければ、新しいものを生み出せるかもしれない、ということになるし、またこういう能力を持った人が欲しいという時にも役立つわけです。万物流転の掟の元に衰えていった企業は、そういう人間の使い方をしていなかったからだと思います。極端に言えば、従業員の様々な功績を社長が全部取ってしまう。そうしてその下にはおべんちゃらのビラミッドができてしまう。
  • ホンダも私も、面白がって企業をやってしまう方ですが、もしもこれをつぶすようなことをしたら、企業を起こした功績どころか、かえって社会に害悪を残すことになってしまいます。やらなければ迷惑を被る人はいないけれども、やる以上、迷惑をかけないようにするためにはどうあるべきかを考えて組織を創らない限り、創設者の意味はない、というのがわたしたちの考えだったわけです。
  • 日本は、戦前の受注生産といったようなやり方でやってきた。それが戦後になって、急に大衆こそお客様ということになって、一切合切がむしゃらに進んできてしまった。企業の将来性ということ、企業の基本的なあり方というものを、ろくに掘り下げもせず、検討されないままに、大衆が欲しいといっているからといって、作りまくり、それを三角形の組織でやってきた。ここが問題だと思うんです。
  • 世界をリードしていける、つまり、ここ1年や2年の勝負ではなく、50年、100年というものをリードしていける体制を作って、次の人にバトンを渡していく義務をわれわれ(経営者)は持っています。重要なことは、いつでもリードしてゆけるには、どうすればよいかということですが、これは、刻々と変化する情勢を的確にキャッチして、企業の中に入れ、組織の中でこなして、それを安定さdセ、次の人にバトンを渡すということです。
  • 私の経営新庄は、しべ手シンプルにするということです。シンプルにすれば、経営者も忙しくしないで済む。そのためには、とにかく一度決めたら、それを貫くことです。状況が変わっても、一筋の太い道を迷わずに進むことです。
  • たいまつは自分で持て。これは人から教わったり、本を読んでいた知識ではなく、自分の味わった苦しみから生まれた実感なのです。どんなに苦しくても、たいまつは自分の手で持って進まなければいけない。これが私の根本の思想であり、またホンダのモットーにもなりました。

 藤沢氏は、最後に

 「採算に合うか合わないかということより、いちばん大事なことは、自分たちは何をしてきたかということ。金なんてものは、いつかなくなる。自分が思い切りやりたいことをやってきたからには、子供にも、自分のやったことを語り継げるような人生を送らせたいと思っているのです」

と言って締めくくっています。

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イノベーションに挑戦する企業経営者の行動指針

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1767人、そのうち東京253人、神奈川188人、埼玉121人、千葉93人、愛知151人、大阪245人、兵庫76人、京都29人、福岡75人、沖縄55人、北海道36人などとなっています。東京は3か月ぶりに300人を下回りましたが、相変わらずステージ4の段階で今なお厳しい状況にあります。街の人出は増えてきており、マスクをしていない人も見受けられます。新型コロナウイルスは、一旦下火になったかと思うとすぐに火の気が燃え上がるということを繰り返していて、気を緩めた途端爆発的に拡大します。まだ気を緩めることなく、これまで通り、マスクや手洗い、換気、不要不急の外出自粛を行っていくしかありません。

さて、今日は、ダイヤモンド・オンラインの「一流ビジネススクール教授陣が指南『イノベーションに挑戦する企業経営者の指針』とは」という記事を取り上げます。

今は「VUCAの時代」と言われます。以前にも書きましたが、VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉で、「先行きが不透明で、将来の予測が困難な時代」のことです。何が正しいか全くわからない時代と言っていいでしょう。コロナ禍で、ますます先行きが見通せなくなってきています。

企業がこの混迷する環境の中で、生き残るためには、継続的なイノベーションを起こしていくしかありません。そのためには、継続的なイノベーションを起こし続ける企業文化をいかに生み出すか、イノベーションを促す企業文化へ変革できるかが重要です。

この記事は、ビズネススクールの教授陣に、イノベーションに挑戦する企業経営者の行動と意思決定の指針について聞いたものです。

1.平時の「思い込み」の排除が従業員の創造性を開放する(ブライアント大学・マイケル・ロベルト教授)

 多くの企業では、創造性豊かな人材の採用、新規事業担当組織の構築など新な仕組みを取り入れてイノベーションを起こそうとしていますが、上手くいかないケースが多いのです。その原因は、組織に強く根付いた「組織的な思い込み」にあるのです。新たな仕組みを作るよりも、まずは「思い込み」を取り除くことが先決です。

 昨日も書きましたが、リーダーは自分が率いる人たちと同じ仕事をすることではなく、人々を率いて仕事をさせることです。ロベルト教授も「ゴールへの道のりを片付けることであって、メンバーに答えを与えて何をせよと指示するのではなく、チームを一つにまとめ、問題にアプローチする視角を考え、分析を求めるのが良いリーダーである」と言っています。

 イノベーションを成し遂げるうえで、実験やプロトタイピングはとても重要で、多くの企業で取り入れられていますが、企業文化に根付いた「完璧主義」が問題となります。実験やプロトタイピングはを行うことは、完璧でないものを受け入れるということです。実験やプロトタイピングを通じて完璧でないものを修正しながら完璧なものに近づけていくというプロセスが重要なのですが、企業に根付いた「完璧主義」が実験やプロトタイピングを台無しにしてしまいます。

 最初から完璧なものを作ろうとすると、イノベーションのプロセスを遅らせることになってしまいます。「早期に、何度でも、粗削りでも」をモットーとした企業が生き残ります。ある段階では完璧でないことを受け入れることが大切です。

 「完璧主義」という思い込みを捨てて、完璧でないことを受け入れる企業文化を醸成することが、イノベーションを起こし続けて生き残る近道だというです。

2.実験重視の企業異文化構築に向けて(ガーバード・ビジネススクール、ステファン・トムキ教授)

 実験重視の企業文化を構築することが、既存企業にとって最も挑戦的な課題であると言っています。

 そのためには、組織の底辺からトップリーダーに至るまで「スプライズ(驚き)」を価値あるものと考えるようになること、つまり「好奇心を啓発する」企業文化を創らなければなりません。企業文化として、組織全体がサプライズをよいものと受け入れるようになり、こうしたマインドセットが定着すれば、好奇心が組織全体に広がり、人々は失敗をコストのかかった過ちではなく、学習機会と捉えるようになります。

 トムキ教授は「データが意見に勝るという原則に固執すべき」と言います。意見や直感に基づいてなされると、組織のヒエラルキーが影響を及ぼすようになります。上司の意見が部下の意見よりも重視されるのです。だからこそ客観的なデータが得られる実験を重視すべきだということです。データ至上主義には問題もありますが、データ無視はもっと厄介な結果を引き起こします。

 また、トムキ教授は「コンセンサス重視の企業文化は障害になる可能性がある」と言います。コンセンサスは意思決定後の行動を迅速化しますが、それまでのプロセスに時間がかかりすぎます。実験という環境では、すべてを遅らせることになり、実施の障害になるのです。

 イノベーションは、不確実性を機会に変える行為で、実験の前の段階でコンセンサスを得ようとしても、どのような結果が出るかわからないので時間の無駄、無意味です。まずは実験すること、その結果によって次の行動を考えていくべきです。

3.ビジネスモデルイノベーションで競争優位に立つ(ハーバード・ビジネススクール ラモン・カサデサス=マサネル教授)

 多くの企業がDXに挑戦しながら、成果を上げることができていません。この原因について、ビジネスモデルイノベーションBMI一般に言える、諸活動のコーディネーション問題が生じている可能性があるからだと指摘されています。

 つまり、デジタル化した時にうまく機能するような諸活動の調整のあり方が、ノンデジタルの時の調整のあり方と大きく異なっているということです。そのことに気づかずにDXを推し進めてもうまく機能するはずはありません。

 ここで、マサネル教授は次の4点を指摘しています。

  • 進んで実験せよ
  • 不確実性を歓迎し、リスクを取れ
  • 失敗を心地よいものと考え、イノベーションを起こそうとしてうまくいかなかった人々に汚名を着せるな
  • 異なるバックグラウンドやキャリアを持つ多様な人々からなるチームがなしうる、視野を広げる貢献を過小評価するな

VUCAの時代において、多様性はもっとも重要な要素です。多様性や相違を受容することは、単に社会的責任であるばかりでなく、自社の競争優位性を高めるイノベーション重視の企業文化を育むことになります。

4.カイゼンから、製品やサービスのカクシンへ(ウェスタン大学 ロバート・オースティン教授)

 トランスフォーメーションと呼ぶような大きな変革を成し遂げるのは相当難しいことです。今日のリーダーにとって最も困難な課題の一つです。

 オースティン教授は、2種類の変化を混同しないことが大切だと指摘しています。その2種類とは、①自分自身が起こしたものでないこと(世界情勢や自社を取り巻く環境など) ②リーダー自身が起こし、そちらへ組織を向かわせようとする変化 です。

 どちらの変化も対処することは難しいのですが、①外から与えられた変化への対応が喫緊の課題です。この変化に対応できなければ生き残ることができなくなるからです。

 日本企業は、プロセス・イノベーションカイゼンなどで比較的容易くできるようですが、ラディカルなイノベーションを起こし、顧客やビジネスモデルに大きな変革をもたらすことは容易にできません。

 オースティン教授は日本型のカイゼンに代表されるようなプロセス・イノベーションを否定しているのではありませんが、プロセス・イノベーションは、価格引き下げなどの間接的なインパクトしか与えず、効果が極めて薄いのです。ラデカルなイノベーションBMIはより直接的なインパクトを与え効果も大です。

 オースティン教授は、「日本企業は、もっと後者のことを真剣に考えるべきだ」と言っています。

5.価値創出の手段としてのM&A(ハーバード・ビジネススクール カール・ケスター教授)

 日本企業でもM&Aは増えてきていますが、買収側の企業が変わるというよりも被買収側の価値創造を目的とするものが多く、更に買収後の統合がほとんど進んでいないということです。日本のM&Aで、買収後の減損件数が3割程度あり、M&Aによる価値創造が困難であることを示しています。

 M&Aの買収時のプロセスにおいて、資本コストの意識を高める必要があります。これまで、日本企業は、資金調達を銀行に頼っており、資本コストの認識が十分にあるとは言えません。価値をどうやって創造し、計測するのかを根本に資本コストの概念があるのに、その出発点があやふやだというのは問題です。

イノベーションを起こし成長を続けるためには価値創造の手段としてM&Aを考える必要があります。

有能なリーダーと人気のリーダーの違い

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で2224人、そのうち東京302人、神奈川257人、埼玉155人、千葉157人、愛知183人、大阪268人、兵庫117人、京都47人、福岡75人、沖縄80人、北海道50人などとなっています。検査数の少ない月曜とはいえ、大幅な減少になっています。このままの減少傾向が続くと、今月末で緊急事態宣言解除となりそうですが、新規感染者の増減の検証をしっかりと行って次につなげていかないと、再び感染拡大に転じ第6波襲来となりかねません。冬には感染が広がりやすく、ワクチンを接種したからと言って感染しないわけではありませんから、国民一人ひとりが気を緩めることなく、引き続き感染予防対策をとり続けるしかありません。

総裁選も佳境に入りつつあります。こうした中、コロナ対策に打ち込むと言っていた菅首相が訪米するようです。辞める人間が行く必要はありません。単に最後の実績づくりにしかすぎず、無意味です。野党がコロナ対策のために国会開催を要求しても、国会を開催せず、「憲法無視」を続け、「謝罪しない 責任を取らない」まま退陣をすることになりました。リーダーとはどうあるべきかを考える機会を与えてくれた菅政権だったように思います。

さて、今日は、Forbes JAPANの「有能なリーダーと人気のリーダーの違い 人々が捨てるべき固定概念」という記事を取り上げます。

この記事では、リーダーシップ分野のコンサルタントであるジョン・ラザフォードによるリーダーシップのあり方が示されています。

多くの人はリーダーになるべく努力したり、自分がリーダーになったらどう振る舞うかについて妄想したりしていますが、リーダーシップの実像が理想と一致することはほとんどありません。

1.忙しいことは良くないこと

 周囲から働き者とみられていたとしても、そうした印象は実際の生産性や成果とほとんど関係がないことが多いのです。従業員がデスクに座っているときは仕事をしていると思い込み、その時間を計測することはたやすいことですが、仕事をしているのか仕事以外のことをしているのかを区別するのは難しいことです。特に日本では、出社してデスクにいれば、勤務時間内は仕事をしているとみなされる傾向が高いのです。しかし、多忙なふりをすることが問題なのです。

 ラザフォードは「会社があなたに給料を払うのは、投資に対して見返りがあると信じているからだ。価値は時間ではなく、アウトプットにある。そのためには、上の人々と期待値を合わせなければならない。私たちは、成果を出すため報酬を得ているのだ」と言っています。

2.過去の職務をやめ、リーダーになる

 出世してリーダーとしての責任を負うようになっても、以前と同じ仕事を続けてしまう人は多いです。しかし、リーダーがすべきことは、自分が率いる人々と同じ仕事をすることではなく、人々を率いて仕事をさせることです。

 ラザフォードは「リーダーがすべきなのは、チームにとって最善のことであって、自分や自分のプライド、自尊心にとって最善のことではない。難しいが、それがリーダーの仕事だ。部下から『この人は自分たちにとって正しい判断をしてくれる」という信頼を得られれば、時間と共に尊敬や人気はついてくる」と言っています。その通りです。

3.自分にしかできないことをする

 上に行けば行くほど、リーダーがすべき実務はなくなるはずです。それにもかかわらず、以前と同じように仕事をしているリーダーは多いのです。大切なのは、これまでと同じことをすることではなく、リーダーとして自分にしかできないことをするということです。

ラザフォードが言うように「階級が上がれば上がるほど実際に『する』ことは少なくなり、障壁の除去やリソースの提供、向かう方向やペースが適切であることの確認がより重要になる」のです。

4.人気のリーダーではなく、有能なリーダーになる

 ラザフォードは、「リーダーには、効果的な指導を行うための時間を作り、時には距離を置くことも大切だ」と言います。これによって短期的には部下からネガティブな印象を持たれるかもしれませんが、長期的には多くのメリットがリーダーとチームにもたらされます。リーダーは人気取りではありません。自らがチームを率い成果を上げる責務が課されています。有能なリーダーは、自己の責務を理解し、時に厳しくメンバーを指導し、時には成長を促すために突き放すことが必要なのです。

 メンバーを甘やかしメンバーに気に入られるように振る舞う人気取りのリーダーは不要です。まずはリーダーとしての責務を自覚し、自らリーダーとして正しい行動を起こせるリーダーでなければなりません。

休日の本棚 ブルー・オーシャン戦略

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で3401人、そのうち東京565人、神奈川394人、埼玉224人、千葉213人、愛知277人、大阪467人、兵庫188人、京都73人、福岡133人、沖縄107人、北海道75人などとなっています。検査数の少ない日曜日とはいえ、先週の同曜日よりも大幅に減少しており、悦ばしいことですが、何故これほど急激に減少しているのかが全く分かりません。むしろこのところ人流は増えており、ワクチン接種が進んだことが大きな要因であると思われます。しかし、日本よりもワクチン接種が進んでいる国で再び感染拡大が起きており、ワクチン接種率だけが感染者減少の要因とは考えられません。これまで4度の緊急事態宣言が発令され、5度にわたって大きな波が押し寄せ増減を繰り返したのですから、多くのデータが蓄積されているはずです。遅きに失している感はありますけれど、いまこそ感染増減のメカニズムを検証すべき時期ではないかと思います。

さて、今日は、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネスレビューに掲載された、W.チャン・キム&レネ・モボルニュ教授の「ブルー・オーシャン戦略」を紹介します。

キムとモボルニュは、ともにINSEAD教授で戦略論が専門です。この論文は2005年に掲載されるや大ブームとなり、ブルー・オーシャン、レッド・オーシャンという言葉は一般用語となりました。

レッド・オーシャンとは、ライバル同士が激しく市場を、限られた餌の小魚(顧客)を多数のサメ(企業)が食い合って真っ赤な血で染まる海に譬えたもので、ブルー・オーシャンはライバルのいない市場を静かな真っ青の海に譬えたものです。

この論文はダイヤモンド社から2015年に書物化されています。

この論文の最初に、ブルー・オーシャン戦略の成功例として「シルク・ドゥ・ソレイユ」が挙げられています。大道芸人集団シルクが結成された1984年当時、スポーツイベント、テレビ、テレビゲーム流行のあおりをうけ、サーカス業界は低迷していました。当時サーカスの上得意客は子供たちでしたが、彼らはプレステに嵌り、動物愛護運動の余波を受けて動物使いへの風当たりが強くなりました。さらに観客が減る中で人件費は高騰しコストはかさむ一方でした。こうした環境の中、シルクは創業20年で世界90都市で公演を行い、22倍も売り上げを伸ばしました。(皮肉なことに、現在、シルクは新型コロナウイルスの影響で経営破たんし、会社更生をめざしています)

シルクの興行のうたい文句は「全く新しいサーカスを」です。シルクは業界の既存の枠組みに従って競争したわけでもなく、リングリングなどの先行者たちの客を奪って成長したわけでもありません。むしろ競争とは無縁のマーケット・スペースを創造し、大人や法人顧客など、これまで客層と見なされていなかった全く新しい顧客を掘り起こしたのです。演劇、オペラ、馬齢などに慣れ親しんだ目の肥えた大人の顧客に、全く新しい切り口のサーカスという娯楽を提供し、今までの何倍も高い料金を支払わせることに成功したのです。

1.レッド・オーシャンとブルー・オーシャン

 ビジネス界には「レッド・オーシャン」と「ブルー・オーシャン」の両方が存在しています。

 レッド・オーシャンでは、誰もがライバルを出し抜き、既存の需要の中でより大きなシェアを獲得しようとしていますが、競争相手が増えれば増えるほど収益性や成長性は減少していきます。商品は何の特徴のないコモディティと化し、競争が激化し、市場は血の海と化すのです。

 一方、ブルー・オーシャンは、知られざるマーケット・スペースであり、手あかのついていない市場です。ブルー・オーシャンでは、需要は勝ち取るものではなく、自分で作り出すものです。しかし、成長の機会に事欠かず、収益性も成長性も多く望めるものです。

 ブルー・オーシャンを生み出す方法として、全く新しい事業領域を立ち上げるという方法がありますが、ブルー・オーシャン戦略で成功した企業の多くは、既存市場の境界線を押し広げることでブルー・オーシャンを作っています。シルクもその方法で成功しました。それまでサーカスと劇場を隔てていた境界線を消滅させることで、サーカス業界というレッド・オーシャンの中に、収益性の高いブルー・オーシャンを作り出すことに成功したのです。

 残念なことに、たいていの企業はレッド・オーシャンの中にどっぷりとつかっています。その理由として挙げられるのは企業戦略の中心が競争戦略にあるということです。特に「競争優位」という考え方です。ポーターをはじめとした競争優位の戦略論が経営理論の中心となっています。企業は、競争相手を出し抜き、既存市場でより大きなシェアを獲得することに駆り立てられているのです。

 競争は大切ですが、この論文では競争にばかり気を取られて重要なポイントを2つ見逃していると言っています。それは、

  • 競争がほとんどないブルー・オーシャンが存在すること
  • ブルー・オーシャンを発見し、その市場を開拓し守っていくで成長できること

です。

2.ブルー・オーシャン戦略の特徴

 両教授は、過去100年の事例を分析し、ブルーオーシャン戦略の共通する特徴として次のものを見出しています。

  1. ブルー・オーシャンは技術革新の産物ではない・・・基盤となる技術は既に存在している。ブルー・オーシャンは技術革新ではなく、それを顧客に高い価値をもたらすことへと結実することで創出されるものである。技術の簡素化がカギになることが多い。
  2. ブルー・オーシャンは既存のコア事業から生まれやすい・・・既存企業が創出したブルー・オーシャンは身近にあるコア事業の中から生まれる。新規市場ははるか彼方にあるというのは先入観にすぎない。
  3. 企業や業界を単位に分析してはいけない・・・永遠にエクセレントであり続ける企業も産業もない。ブルー・オーシャンを分析するのに最も適した単位は、市場を創出するような大胆な戦略行動である。
  4. ブルー・オーシャンはブランドを育てる・・・ブルー・オーシャンは大きな力を秘めているため、数十年にわたって輝く続けることのできるブランド・エクィティを築き上げることができる。

3.レッド・オーシャン戦略とブルー・オーシャン戦略

レッドオーシャン戦略

  1. 既存市場内で競争する
  2. 競争相手を打ち負かす
  3. 既存需要を取り込む
  4. バリュー・ポジションとコストは相反する関係にある
  5. 差別化か低コスト化のいずれかを選び、最適な形で事業活動に結び付ける

ブルー・オーシャン戦略

  1. 競争相手のいないマーケットスペースを作り出す
  2. 競争と無縁になる
  3. 新規需要を創出し、これをものにする
  4. バリュー・ポジショニングとコスト削減は両立できる
  5. 差別化と低コスト化の両方を、最適な形で事業活動に結び付ける

 ブルー・オーシャン戦略は、コスト構造とバリュー・ポジショニングが好循環を形成するときにのみ成立するものです。コスト削減は、競合他社が競争している要素を自社の事業活動から取り除くことで実現可能となります。また、バリュー・ポジショニングは、これまで誰も提供していなかったものを提供することによって生まれます。そのような特徴を備えた商品やサービスのおかげで、売り上げが伸びるにしたがってスケール・メリットが生まれ、さらにコストが下がるという好循環が生まれるのです。

 レッド・オーシャンにおける戦略の基本的な考え方は、産業構造は与件であり、企業はその中で競争しなければならないという構造主義的、環境決定論的な考えです。その背景には、「企業経営は自社ではどうすることもできない経済環境に翻弄されるもの」という意識があります。

 一方で、ブルー・オーシャン戦略は、市場の境界線は自ら広げることができる者であり、信念や行動によって業界を再構築することも可能であるという考えに基づいています。言わば再構築主義です。

新型コロナの影響で多くの企業が疲弊し、事業の再構築が求められています。政府も中小企業再構築促進事業を展開し、再構築に取り組む中小企業に補助金を出そうとしています。

この論文は2005年に出されたものでありますが、ブルー・オーシャン戦略は今なお廃れることのない、むしろ混迷する現在においてこそ、取るべき戦略の一つではないかと思い、この論文を紹介しました。