中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

Have to とWant to

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で116人、26県で新規感染者ゼロとなっています。オミクロン株はすでに全世界で50を超える国と地域で見つかっていますが、まだ未知数で良く分からないようなので、今日はコロナウイルス関連には触れません。

さて、今日は、ダイヤモンドオンラインの「優秀なリーダーは『メンバーの貢献意欲』を当てにしない」という記事を取り上げます。

部下を厳しく「管理」することなく、それでも「圧倒的な成果」を上げ続けるために、リーダーにはどのような発想の転換が求められているのかについて書かれています。

1.「憧れ」や「貢献欲」の内側にもHave toは入り込む

 チームの成果を上げるためには、メンバーのモチベーションを高めることが重要ですが、外的要因のみでモチベーションを挙げるよりも内的要因でモチベーションを挙げることの方が大切です。

 メンバーを外的刺激によってではなく、内因的な原理によって内側から動かすためには、個々人のWant to(やりたいこと)の解像度を高めていく必要があります。しかし、いきなり「やりたいことは何か」と問いかけても、応えられるものではありませんし、何をやりたいのか分かっていないケースが多いのです。

 この記事では、「その人を縛り付けているHave to(やらねばならないこと)を一つひとつ明らかにして、それを捨てていくことで、個人の真のWant toが見えてくる」と言っています。

 そうは言っても、Have to を見つけることも容易ではありません。それはHave toがWhat toであるかのように装っているからです。

 例えば、「この人の役に立ちたい」という貢献欲や「この人のようになりたい」という憧れも、実はHave to と結びつきやすいのです。会社の上司に尊敬できる人がいて、「この人の役に立ちたい」「この人のようになりたい」というのは「認められたい」と言う承認欲求が潜んでいて、その人が転勤したり他の部署に異動した途端、「自分のやりたいこと」がわからなくなってしまいます。結局は目の前に残されているのは、「上司に認められたいからやるべきだと思い込んでいた仕事」だけということになるのです。

 また、「憧れ」も現実のゴールを設定する際の邪魔になってしまいます。「憧れ」宝と言ってその人になれるわけではありません。むしろ、「あの人のようになりたい」というWant toが「あの人のようにならなければ」というHave toになり、自分を縛り付けてしまうことにもなるのです。

2.Want to(やりたいこと)がなければ前に進めない

 以前書いた「SF思考」も「自分がやりたいこと」を他人に伝わるように形式化する手段です。今の時代に正解と言えるものはありません。誰も先が見通せず、何が正解かわからないのです。だからこそ「何をやりたいか」という意思がなければ前に進めないのです。

 「自分は何のために働くのか」という意思が明確でないまま、上から降りてくる仕事だけをこなすというのでは、どんなに優秀な人でもリスクは取れませんし変化もできません。成長できないのです。

 先日書きました「パーパス経営」も、企業としての意志=存在意義を明確にして、従業員に腹落ちさせようというものです。従業員にパーパスを浸透させ、従業員がそれに共感できなければ、パーパス経営などできません。

 今の日本においては「何をやりたいのか」という意思が必要なのです。

 それでは、どのようにして、真のWant toを見つければいいのでしょうか。われわれの周りに存在する膨大なHave to を捨てて、自分の真のWant to に目覚めるには具体的にどうすればいいのでしょうか?

これには2つのステップがあると言います。

ステップ1 Have to を洗い出し、真のWant toに気づく

ステップ2 Have to を捨てることを決断し、その捨て方を考える

 Have to は自分の行為を決める際の「無意識の枠組み」になっています。したがって、自分がどんな「やらなければならない」ことに縛られているかをまず顕在化したうえで、自分の価値観を探索するのが望ましいのです。

もう1つ重要なことが「決断が先、プロセスは後」ということです。Have toに気づいたら、それを手放していく必要があります。その時「どのように捨てるのか」と言うプロセスに拘っていれば、いつまで経っても捨てることはできません。まずは捨てるという決断をして手放すことです。

 

部下の不満を組織の力に変える褒め方

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で60人、33府県で新規感染者ゼロとなっています。休日のデータとはいえ、低い水準をキープしています。イタリアに滞在歴があり今月1日に帰国した日本人男性がオミクロン株に感染していたことが判明しました。日本人のオミクロン株感染は初めてです。外国人の入国は停止したものの日本人の入国を認めていたのであれば、市中感染するのも時間の問題でしょう。政府は、入国2週間以内の全陽性者を入院させると発表しましたが、入国後2週間は全面隔離し、全陽性者を入院させる、それだけは最低限徹底してもらいたいものです。

さて、今日は、東洋経済オンラインの「部下の不満を組織の力に変える『最強の褒め方』 結果だけでなく、行動や思考も認めよう」を取り上げます。

これまでも何度も「部下の褒め方」については書いています。部下の育成方法は、「認めて、任せて、褒める」ですから、「褒める」ということが最も重要になります。

ある調査によると、自分の仕事にやりがいを感じているのは日本人の2割程度にすぎません。多くの人は自分の仕事に何らかの不満を持っています。その不満を声高に主張する人もいますが、大半は自分の心の中に溜めこんでしまっています。

1.部下の不満とどう向き合うか

 部下が職場で感じている不満や悩みが改善に向かっているかどうかは、組織を率いる上司にとっては重要なテーマです。

 この記事では、「その不満を提案に変える力は上司の『ある技術』によって決まる」と言っています。部下の不満を提案に変え、組織の力にしていく技術について解説されています。

 不満を口にする部下に対して「じゃあ提案して」「反対意見があるなら代案を出して」と要求することはあるでしょう。確かに不満に対して代案を出して提案してくれるなら組織が変わっていくはずです。しかし、闇雲に「代案を出して」「提案して」と言われは部下は、「上司がすべきことを押し付けられた」と感じてしまいます。これは「不満の解消を自分の役割だ」と思っていないいからです。

2.不満の解消は「自分の役割」

 不満を解消するのは会社と上司の役割であり、自分の役割ではない。このようにはっきりと考えているわけでなくても、多くの部下は、職場の環境を作るのは自分の責任範囲外と思っています。部下が「自分の役割でない」と考えている限り、不満は解消されることなく不満として残ったままです。

 これを改善することなく「提案して」と言ってもうまくいくはずはありません。

 「不満を解消するは自分の役割である」と認識させることが重要になります。部下の姿勢を変える技術、それは「褒める」ということです。

 褒めるのが下手な上司の下にいる部下は、不満を解消できず物事を他責にしてしまいがちだというデータがあります。

 何のために褒めるのか、褒める目的について「モチベーションを上げるため」「部下のやる気を出すため」と答える上司は多いでしょう。この記事では「褒める目的は部下の良い行動を習慣化するため」と言っています。

 人は褒められるとうれしくなりまた褒められたいと思い、褒められたことを繰り返そうとするものです。

 部下は、自分がした行動が良かったのか悪かったのか自分では判断できないのです。上司が「ここは良かった」「ここはもっとこうした方がいい」と伝えることで、自分の行動が良かったのか悪かったのかを知ることができます。上司が上手く褒めないということは、部下が走っている道が正しい道なのかどうかわからずに運転しているようなものです。

3.具体的な褒め方

 ここでは、具体的な褒め方の2つのご術が紹介されています。

 ⑴良い行動:アイメッセージで褒めて習慣化させる

 アイメッセージというのは「私は」という主語で始まる文章のことです。「私はいいと思うよ」というメッセージの方が、相手も受け止めやすいメッセージになります。

 ⑵良くない行動:ストレッチゴールで目標に変える

 アイメッセージと共にストレッチゴールをセットにすることです。ストレッチゴールというのは、ゴールを伸ばすということで、次のゴールを決めることです。

 良い部分はアイメッセージで褒め、良くない部分はストレッチゴールで改善を求めるのがいいのです。

 次に重要なのは何を褒めるかということです。職場で上司が部下を褒める場合、次の3つがあります。

 ①「結果」を褒める

 ②「行動」を褒める

 ③「想い」を褒める

 褒めるのが下手な人は「結果」だけを褒めます。「結果」というのは分かりやすいので、褒めるのは簡単ですが、褒められた側からすると、自分の行動のどこが良くて褒められたのかがわかりません。これでは習慣化できないのです。

 「行動」を褒めるというのは、良いことと良くないこととがはっきりとわかり、習慣化につながります。部下の「行動」の中で「良い部分」をみつけられるかどうかは、リーダーの力量にかかっています。

部下が不満を口にするということは、「より良い状態」をイメージしているからで「もっと良くしたい」という想いがあるはずです。人は褒められたことを繰り返そうとするので、「想い」を褒めてあげることで、「部下はもっと良くしたい」という「想い」を繰り返す習慣化させることができます。

 「行動」を褒めるよりも「想い」を褒める方がモチベーションややる気は高まるはずで習慣化も速まるように思います。

この記事の結論を言えば、「不満を聞いたら即座に褒める。思いをアイメッセージで褒め、ストレッチゴールで一緒に改善案を考える。それを続けていくことで、部下は不満を提案に変え、組織の力ななっていく」ということです。

ピッパの法則

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で115人、29県で新規感染者ゼロとなっています。オミクロン株は44の国と地域に拡大し、多くの国で市中感染が見つかっています。一方で新たな変異株の特徴も少しずつ明らかになってきています。①感染力がデルタ株よりも強くなった恐れ ②感染しても軽症・無症状で済む傾向も ③スパイクたんぱく質30か所以上に変異 ④ブレークスルー感染の報告相次ぐ といったところです。軽症で済むというのは良いことですが、「重症化が低かったとしてもそれを上回って多くの人に拡大すれば、重傷者と死者は増加する」という懸念は残されます。これまで通りの感染対策を行いながら様子を見るしかありません。

さて、今日は、ダイヤモンドオンラインの「仕事の生産性が3倍アップする!『ピッパの法則』-利益率29%経営の秘密」という記事を取り上げます。

「利益率29%経営」というのは、圧倒的な商品開発でヒットを連発している「北の達人」です。この記事は、北の達人社長の木下勝寿氏の著書「売り上げ最小化、利益最大化の法則ー利益率29%経営の秘密」からの抜粋です。

売上最大化 利益最大化」がかつての常識ですが、これからは「売上最小化、利益最大化」が常識になるかもしれないと言っています。売上最大化を目指せるのは大企業であり、中小企業では大企業に太刀打ちできません。中小企業が大企業に勝つには、売上最小化の中で最大の利益を上げるしかありません。

1.利益は何のためにあるのか

 高い利益率は社長1人で成し遂げられるものではありません。社員が利益について正しく理解し、行動してくれているからです。

 北の達人では、研修において「利益は何のためにあるのか」と言う点を徹底的にたたき込まれます。そうすると、日々の業務を利益を念頭に置きながら取り組むようになります。5段階利益管理を行いながら、利益につながらない仕事は潔く辞め日々改善していくのです。そうすることで、利益につながる仕事だけが残っていくのです。

 売上重視ではないのです。売り上げを考えている社員には「それは利益に追儺がるのか」と問いかけるのです。投資をするにも「それはいくらになって戻ってくるのか」を考えるのです。

コスト削減で重視するのは時間です。時間を無駄に使うのは人件費を無駄に使っているのと同じです。企業経営において時間とお金は密接に関係しています。常にお時間をお金に換えて話をすることで、時間な無駄な消費はなくなります。

2.『ピッパの法則』は誰でもできる

 木下社長が、サラリーマン時代に中小企業の社長に会って話をする際「すごい人はいないなあ」と思っていたというのです。ただ、「この社長たちはみんな成功しているのに、自分は一介のサラリーマンだ。その違いは何か」と考えたのです。

 社長に「こんなことやったら面白いですよ」と話を持ち掛けると、ほとんどすべての社長は、次に会ったときには実行しているのです。そして「これは良かったけど、これはダメだった」と話すのです。口策ばかりで実践していない人が多い中、成功している社長は忙しいのにすぐに実践しているのです。

「中小企業の生産性を高めるために」の中でも書きましたが、中小企業に足りないものは「実行力」です。成功している会社の社長にはこの「実行力」があります。経営は人と人との信頼関係で成り立ちます。チュウしょぷ企業の社長の場合、ワンマンが多いのですが、社員との間に溝ができていればうまくいきません。大企業と異なり本来垣根が低い中小企業で溝があるのはもったいないことです。垣根を取っ払い溝を埋めて、社長と社員が一段となって目標に向かって邁進していくことが重要です。そのために社長自らが範を示して率先して行動する、これが実行力です。

 成功している社長は「ピッと思ったらパッとやる。面白いと感じたら、すぐにやる。ピッと思ったらパッとやる癖をつけていくとキャパシティが増える」のです。

 やるべきことが起きた時、「できることは今すぐやる」「できないことは、いつやるかをすぐに決める」を習慣にすることです。たったこれだけです。

休日の本棚 ネット・プロモーター経営

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で131人、26県で新規感染者ゼロとなっています。低い水準をキープしていますが、オミクロン株は世界各国で市中感染が報告され、日本での市中感染を食い止めることができるかは水際対策にかかっています。菅政権下での水際対策はあまりにも杜撰でしたが、岸田政権がその反省をどれだけ活かせるかです。オミクロン株については今のところ良く分かっていませんが、南アの科学チームによれば、再感染リスクは約2倍、一部の免疫回避する恐れがあるとのことが指摘されています。しかし、ワクチン接種で重症化リスクを軽減させることができるようなので、ワクチン未接種者へのワクチン接種と3回目のワクチン接種を進めていくことです。後は、これまで通りの感染予防対策をしっかりと励行していくことです。

さて、今日は、フレデリック・F・ライクヘルド著「ネット・プロモーター経営」(プレジデント社)を紹介します。ライクヘルド氏は、ベイン・アンド・カンパニー名誉ディレクターで顧客ロイヤルティに関するビジネス戦略の第一人者です。

「顧客が長く買い続ければ長い目で見ればその顧客からの売上は増えていく」のは明らかで、今の顧客を放置して新規顧客の開拓ばかりに目を向けるのは間違っています。新しい顧客を見つけることも大切ですが、もっと大切なのは今の顧客を大事にすることなのです。

しかし、解約せずに売上があっても「良い売上」と「悪い売上」があります。「良い売上」というのは、満足した顧客が繰り返し購入することで生まれる売上です。一方「悪い売上」というのは、不満を抱いている顧客が仕方なく買うことで生まれる売上です。「他に代わりがないから仕方なく買っている」「解約したいが面倒で続けている」といったものです。この場合、他に良いサービスが現れるとすぐにそちらに乗り換えられてしまいます。

ライクヘルド氏は、この本で顧客ロイヤルティを具体的に把握するNPS(ネットプロモータースコア)という方法を提唱しています。

1.NPSと顧客満足度調査との違い

 顧客満足度を把握するためによく顧客満足度調査が行われます。顧客満足度を100点満点で把握するアンケートです。顧客満足度調査は、言葉の通り顧客満足の度合いを示す指標です。この「満足」の包摂する範囲は幅広くしかもあいまいで、たとえ「満足」という評価を下した顧客がいても必ずリピーターになるとか購入単価の向上といった形で業績向上に貢献してくれるとは限りません。しかも、顧客満足度だけでは、具体的に何をすればいいのか分かりません。単に顧客満足度の向上だけでは、業績向上を実現するのは困難なのです。

 業績向上を図るためには、顧客満足度に代わる新たな指標が求められ、ライクヘルド氏が試行錯誤を重ねた結果生み出されたのがNPSと言えるのです。

2.NPSの計算方法

 まず、次の2つの質問をします。

  1. 当社を友人や同僚に勧める可能性は0~10段階でどれくらいありますか?
  2. その数字を選んだ理由を教えてください

 どの回答かで、回答者が次のいずれかであるかがわかります。

  • 推奨者(10~9):群を抜いて再購入率が高い。さらに他の人にも商品を進めてくれるので、口コミを通じて商品が広がっていく
  • 中立者(8~7):再購入率は推奨者より低いがそれなりに満足している。他には勧めてくれない。
  • 批判者(6以下):再購入率はとても低く、他の人が購入するのを妨げる。悪い噂と否定的な口コミの源。SNSで拡散されるおそれもあり怖い存在。

 次にNPSのスコアを計算します。

   NPS=推奨者の割合-批判者の割合

 当然のことながら、推奨者が多く、批判者が少ないほどスコアは上がります。批判者しかいない-100から、熱烈なファンしかいない+100のどこかに当てはまることになります。

3.NPSの勘所

 顧客満足度では数字が出ても対応策が明確ではありませんが、NPSでは、推奨者を増やし、批判者を減らせばいいのです。そのために何を行うのか、顧客が求めているニーズは何か、批判者の不満を減らすにはどうすればいいかを考えるのです。万が一、批判者の不満を解消する方法がないのであれば、彼らをそもそも自社の顧客として取り込む必要があるのかを考えることです。漠然と顧客として捉えていると、批判が拡散され、中立者、更には推奨者にも影響を及ぼすかもしれません。むしろ切り捨てて、中立者や推奨者のニーズに特化する方がいいのです。

 NPSを最大限活用する勘所は次の通りです。

  1. 数字はありのまま把握する・・・見かけのスコアをよくしても意味がありません。顧客の実態をありのまま把握して、対策を練ることです。
  2. 回答率を高める・・・回答しない人には中立者や批判者が多いのです。NPSの回答率が低い場合には何らかの問題があると考えて、その後の顧客行動を追跡調査するなどの対応を考える必要があります。
  3. 設問数は絞る・・・設問数はできる限り減らし、顧客が回答する負担を減らすことが大切です。不満な顧客は質問数が多すぎると益々回答しなくなり、顧客の実態を把握できなくなります。
  4. 継続性が重要・・・常に顧客の実態を把握し、課題を探り改善を継続することが顧客ロイヤルティを高めることにつながります。

 会社の仕組みに顧客から学び改善し続ける活動を組み込むことは必要なのです。しかし、NPSも万能ではありません。こっそりと自分だけが使用し人に勧めるような商品でない場合にはNPSで顧客ロイヤルティを把握できません。この場合には顧客満足度調査が有効です。顧客満足度調査とNPSをうまく使い分けることも重要です。

 「顧客第一主義」を標榜する会社でも顧客の状況や実態が把握されず、「見える化」できていないケースは少なくありません。把握できず「見える化」できていなければ、改善するにも何をどのように改善すればいいのか分かりません。

 「顧客第一主義」を実現するには顧客ロイヤルティを見える化し、具体的に高めるのにはNPSは有効な方法です。

休日の本棚 ブルー・オーシャン・シフト

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おはようございます。

昨日の新規感染者は145人、23県が新規感染者ゼロとなっています。オミクロン株ががインドやギリシャで新たに見つかり32の国と地域に拡大しています。最初に見つかった南アフリカでは、10月にはデルタ株が主流でしたが、11月には感染者の7割以上がオミクロン株に置き換わっています。オミクロン株の感染力の強さがうかがえます。オミクロン株はワクチンの効果を弱めるようで2回のワクチン接種を終えた人も感染するようですが、重篤化のリスクは避けられるとのことです。従って、水際対策の強化と平行して、3回目のワクチン接種が医療従事者から始まりましたが、前倒してワクチンして進めていくことです。

さて、今日はW・チャン・キム&レネ・モボルニュ著「ブルー・オーシャン・シフト」(ダイヤモンド社を紹介します。

以前「ブルー・オーシャン戦略」を紹介しましたが、この本はその続編といった本で、「ブルー・オーシャン戦略」よりもより実践的な内容になっています。

「ブルー・オーシャン戦略」はベンチャー企業のような振興の企業には役立つものの、衰退している市場環境のもとで古くから存在する一般の企業がどのようにブルー・オーシャン戦略をとればいいのか、今ひとつ明確に示されていませんでした。この本では「衰退し上でも新規事業の立ち上げは可能である」として普通の会社がブルーオーシャン市場を開拓できる方法を紹介しています。「ブルー・オーシャンへ移行(シフト)する」という意味で本のタイトルがつけられているのです。

キム教授らが「ブルー・オーシャン戦略」を執筆したのは、「競争戦略がすべてではない」という考えからです。かつて成長のためには破壊的な創造が必要だと考えられていましたが、キム教授らは成長のためには非破壊的な創造も必要であると考えたのです。

ブルー・オーシャン戦略は競争するのではなく、新しい市場を創造する戦略です。前書「ブルー・オーシャン戦略」では、理論しか書かれておらず、レッド・オーシャンからブルー・オーシャンに転じるための具体的方法論やエビデンスを見せて欲しいという声が上がりました。

キム教授らが「ブルー・オーシャンシフト」で強く訴えているのが、人間の感情を戦略と組み合わせることの重要性です。

戦略を作り実行しようとすると、どうしても「そんなものは机上の空論だ」「非現実的だ」「今のままで十分」などの声が上がります。これは反対する人が心から納得していないからです。新しい課題に挑戦し戦略を作り実行するのは、組織にいる生身の人間です。人間だからこそ、心から納得して動くことが必要なのです。そのため、この本では「人間らしいプロセス作り」を重視しています。

ブルー・オーシャン・シフトの流れは、5つのステップと競れに対応する分析ツールや指針が定義されています。そして、それが、感性と知性、人間らしさ、自身、創造性とうまく調和され、みんなが行動を起こしてくれるように配慮されています。

各ステップには「細分化」「実体験に基づく発見」「公正なプロセス」の人間らしさの3つの要素が組み込まれているため、自身と創造性が増すような仕組みが備わっているのです。

この手順は、ステップ1からステップ5までで完結しますが、出発点は組織によって異なるとされています。

1.【ステップ1】準備に取りかかる:PMSマップ

 PMSマップでブルー・オーシャンの創造性を目指すに当たり、何処に的を絞るかを判断します。

 ブルー・オーシャン戦略の対象範囲を決められるよう、縦軸に「パイオニア」「安住者」「移行者」の3つのセグメント、収益を縁の大きさで表したPMSマップを作ります。これにより、既存の事業ポートフォリオや製品・サービス全体を1つの図表上にプロットして評価し、業績の先行きを見通すことが出来るようなります。

 目的は。現金を創出して収益安定に寄与する安住者と、将来に向けた成長源であるパイオニアを、健全に調和されることにあります。

 PMSマップの作り方

  • ポートフォリオのカギを握る製品やサービスを特定する
  • 製品やサービスを、パイオニア、移行者、安住者に分類する
  • 個々の事業や製品、サービスに関する評価を書き入れる

次に、ブルー・オーシャン・シフトにふさわしいチームを作ります。リーダーに求められることは、チームの窓口役として、方向性と高揚感を維持し、全員への情報提供を怠らず、チームが組織内オデウマク活動できるように先導することです。

2.【ステップ2】現状を知る:戦略キャンパス

 戦略キャンパスで、チーム全員で競争の現状を簡単な図表にまとめることによって、戦略転換の必要性を悟り、合意します。

 戦略キャンパスの横軸には、業界が競争及び投資する要因を記録し、縦軸にはこれらの競争要因から買い手が得る提供レベルを記録します。

 戦略キャンパスは、自社美製品・サービスが何にどれくらい力を入れているかを、他社製品と比較・分析し、ビジュアル化したもので、①競争要因 ②各要因の提供度合い  ③自社と他社の戦略プロフィール ④自社と他社のコスト構造を明確に示すことが出来ます。

 競争キャンパスの作り方

  • 業界を特定する
  • 業界の主な競争要因を特定する・・・買い手の視点で選ぶ(最少5,最大12)
  • 比較対象に敵した主力競争企業を選ぶ
  • 主な競争要因に対して、自社と業界リーダーそれぞれの製品を評価する・・・5段階のリッカート爵位度を用い、競争要因ごとに評価する
  • 現状の戦略キャンパスを描く・・・横軸の一番左に価格を書き入れ、次に価格以外の競争要因を並べる

 戦略キャンパスが完成したら、作成を通して得た主な地券をチーム全員に各出してもらい、各自の意見を掘り下げ、チームとしての戦略的知見を浸透させます。

3.【ステップ3】目的地を描く:買い手の効用マップ、非顧客層グループ

 買い手の効用マップは、「自分たちの業界を含むほぼすべての業界が解決すべき大きな問題を抱えている」という気づきを引き出す役割を果たします。

 縦軸に効用を生み出す6つのテコ、横軸には顧客の6つのステージを並べ、全体で36の効用スペースを作ります。

 ⑴縦軸(効用を生み出し6つのテコ) 

  ①顧客の生産性 ②シンプルさ ③利便性 ④リスク低減 

  ⑤楽しさや好ましいイメージ ⑥環境への優しさ

 ⑵横軸(顧客の6つのステージ)

  ①購入 ②納品 ③使用 ④併用 ⑤保守管理 ⑥廃棄

 効用マップの作り方

  • 顧客体験のサイクルから始める
  • 効用を生み出し6つのテコを理解する
  • 買い手の効用マップを完成させる

 次に非顧客層の3つのグループで、開拓可能な需要全体を把握します。

  • 第1グループ 潜在的な非購買層は市場の縁にいて、すぐに離反しかねない顧客
  • 第2グループ 断固たる非購買層で、この業界の製品やサービスを検討した結果、意識的に購入を見送る人々
  • 第3グループ 未開拓の非顧客層で、現状では一見したところ無関係な市場にいる人々

4.【ステップ4】目的地への道筋を見つける:6つのパスと4つのアクション

 6つのパスで体系的な経路をもとに市場の境界を引き直します。

 6つのパスは、市場を見るためのレンズを変えて新しい価値コスト、フロンティアを開拓するためのものです。

⑴6つのパス

  • パス1 代替業界に学ぶ
  • パス2 業界内の他の戦略グループから学ぶ
  • パス3 別の買い手グループに目を向ける
  • パス4 補完財や補完サービスを見渡す
  • パス5 機能志向と感性志向を切り替える
  • パス6 外部トレンドの形成に加わる

⑵4つのアクション

 次に4つのアクションで、差別化と低コストを元に実現する戦略案を考えます。

  • 減らす 業界標準と比べて、大幅に減らすべき要素は何か
  • 創造する 業界で、これまで提供されていない、今後創造すべき要素は何か
  • 増やす 業界標準と比べて、大胆に増やすべき要素は何か
  • 取り除く 業界常識として、製品やサービスに備わっている要素のうち、取り除くべきものは何か

5.【ステップ5】戦略を絞り込み、実行に移す

 ブルー・オーシャン見本市で、実行すべき戦略を決め、短期の市場テストを行い、戦略を改良します。

 自社と顧客の両面に恩恵をもたらすタイ夫局的なビジネスモデルを仕上げ、戦略を完成させ、製品やサービスを市場に投入し展開します。

異常の5つのステップを踏んでいきますが、最初に書いたように重要なのは「人間らしいプロセスづくり」です。そこで重要なのは次の3つです。

  1. 進め方を細分化する
  2. 実体験を重視する
  3. 公正と信頼

現在レッド・オーシャンの中にいても、ブルー・オーシャンの芽は至る所にあるはずです。顧客は何らかの不満を抱いているものです。その不満がブルー・オーシャンの芽になります。重要なことは顧客を観察することです。

 

中小企業の生産性を高めるには

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で127人、28県で新規感染者ゼロとなっています。低い水準ではありますが、小康状態になっているように思います。オミクロン株に関し、日本に到着する航空機の予約停止要請が1日で撤回されました。国土交通省の航空局が先走ったようで、斉藤国交大臣も岸田首相も知らなかったとのこと、内閣と実務を担う官僚との意思疎通が出来ていないことは問題です。また、国交省の出した一時予約停止要請に対して憲法違反と宣っているコメンテーターらがいますが、憲法によって保障された人権も公共の福祉によって制約を受けることは当然で(もちろん厳格な審査基準が要請されます)、オミクロン株の国内流入を阻止し国内の国民の生命・安全を守るという目的のためにはやむを得ない措置ではなかったかと思います。もし入国させるのであれば、宿泊施設に隔離し厳重に監視すること(要請ではなく義務化すること)、そのための法整備とルール作りを急がねばなりません。

さて、今日は、PHPオンライン衆知の「『なぜ達成できないんだ』と社長が迫る中小企業ほど、生産性が下がり続ける理由」という記事を取り上げます。

中小企業の「労働生産性」が低いことは否定できません。かつて管元首相のブレーンであったアトキンソンなどは労働生産性の低い中小企業の淘汰を主張しています。中小企業の労働生産性が低いことは、中小企業に問題があるのではなく大企業による搾取にも問題があることは以前にも指摘しました。しかし、中小企業にも問題がないわけではありません。そのひとつが、多くの中小企業に明確な経営戦略がないことです。

1.中小企業が苦手な「経営計画」

 中小企業が労働生産性を高めるには経営戦略が欠かせません。

 労働生産性は、労働者1人(あるいは1時間)あたりの労働により生み出される付加価値(額)のことです。日本の1人あたり労働生産性OECD35カ国中22位、1時間あたりは同20位です。これは全企業の約99%を占め、全雇用者の69%が働く中小企業に原因があるとされているのです。

 確かに、中小企業の労働生産性上位10%は大企業の平均を上回っていますが、残り90%は大企業の平均を大幅に下回り、その差は約2倍になっています。それもすべての業種について言えることです。

 この差を生み出しているのが、設備、IT化、人材といった将来への投資です。

 企業が成長、発展していくためには、こうした将来への投資は必要不可欠で、この投資計画が「経営計画」であり、何にどれだけ投資していくのかを具体的に決めるのが「戦略」です。

 中小企業において、この「経営計画」と「戦略」の立案が出来ていないというのが現実なのです。

2.結果だけを求めても目標は達成できない

 先日も書きましたが、「経営が数字」であることは否定できません。永守重信氏が言っているように、単に細かい数字を積み上げても意味がありません。長期的な目標と短期的な堅実な成果が重要なのです。

 業績目標や数値目標は多くの中小企業でも決めています。この目標を達成できなかったときに経営者・社長が社員に「なぜ達成できないんだ」と詰め寄るケースが見られます。原因や課題を共有し、指導やアドバイスをせず、結果だけを求め、結果が得られなければ責任を問うという姿勢に問題があるのです。

 中小企業の経営者は、営業から資金繰りまで色々なことをしなければならず多忙です。しかし、目標だけ数字で示し。あとは社員任せでは人も育ちませんし、企業も成長・発展することはありません。中小企業だからこそ、経営者が高いビジョンを示し、従業員にそれを伝え、一緒になって目標達成に邁進できるはずです。

3.「戦略」のある会社とない会社の違い

 単に数値目標だけを設定しあとは社員任せではいけません。長期的なビジョンとともにそれに向けての「戦略」が必要です。

 目標があっても「戦略」がなければ、方向性が全く示されていないのと同じで、社員は目先の自分の仕事にしか目が行かず周りのことを考えません。それでは社員はそれぞれ自分のことばかりに集中しそれぞれがバラバラの方向を向いているのと同じです。ベクトルを一つにすることができず力が分散してしまっているのです。

 目標があって、それへのプロセスが「戦略」として明確に示されていれば、社員はその戦略に基づいて自ら考え動くことができます。また、方向性が示されているので、社員は情報を交換したり、成功・失敗体験を共有したりして、ベクトルを一つの方向に合わせようとします。

 戦略のある会社とない会社で、どちらが目標を達成しやすく、生産性が高い組織かは言うまでもありません。

4.重要な「実行力」

 中小企業に足りないものに「実行力」があります。

 中小企業の経営者の多くはワンマンで、端から見れば「実行力」があるように見えます。しかし、社長だけが忙しく動き回っていても、結局は空回りしていることが多いのです。社長だけが動き回っても社員は「笛吹けど踊らず」になっています。

 それは、社長と社員の間に溝があるからです。いつも言うように経営は人と人との関係、信頼関係で成り立ちます。得てしてワンマン社長の場合、高圧的になり、社員との間に溝ができるのです。大企業と異なり社長と社員の垣根が低いはずの中小企業で大きな溝が出来ているようでは中小企業の良さが活かされません。垣根を取っ払い溝を埋めて、社長と社員が一致団結して目標に向かって進めていくことが重要です。そのために社長自らが率先して範を示し行動することです。それが実行力です。多くの中小企業経営者は、間違ったところで行動し、本来率先して行動しなければいけないところでは口先だけになっているように思います。

 この記事では、「戦略を学ぶ経営者は多いが、『戦略を理解する』ところで終わっていて、実行に移せていない」と言っていますが、大多数の中小企業経営者は「戦略すら学んでいない」のではないかと思います。

5.なぜ「戦略」が業績につながらないのか

 この記事では、戦略のうち70%はどの企業にも共通し、自社の状況に応じて選択し実行すべきものが20~30%、自社の独自戦略は10%未満だと言っています。この通りだと思います(自社の独自戦略はほとんどなく、もっと少ない思いますが)。

 この記事では、最後に【中小企業に必要な戦略メニュー15】が示されています。

 (1)顧客戦略

   【戦略1】顧客情報管理・活用の仕組み

   【戦略2】顧客育成の仕組みづくり

 (2)営業戦略

   【戦略3】営業プロセスの標準化

   【戦略4】営業ツールの整備

   【戦略5】販促・プロモーションの推進

 (3)人財戦略

   【戦略6】人事評価制度の導入・運用

   【戦略7】要員計画にもとづいた戦略的採用

   【戦略8】幹部・リーダーの計画的育成

 (4)組織戦略

   【戦略9】会議・コミュニケーションルールの整備

   【戦略10】マニュアル・手順書の整備

 (5)IT戦略

   【戦略11】ホームページ・SNSの活用

   【戦略12】社内システムの整備

 (6)商品戦略

   【戦略13】商品企画・開発プロイジェクト

   【戦略14】商品ランク分類

   【戦略15】生産計画と実行

 このうち、【戦略1】~【戦略9】【戦略11】がどの企業にも必要な必須の戦略であり、【戦略10】【戦略12】~【戦略15】が自社の状況によって選択・実行すべきものです。ここで重要なのは、戦略を実行していくこと、戦略のPDCAを回し、計画的に推進していくことです。

 

 

失敗と向き合う

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で121人、25県で新規感染者ゼロとなっています。依然低い水準にとどまっていますが、オミクロン株の状況によっては今後どのようになるかは分かりません。一昨日には全世界でオミクロン株が確認されたのが13の国と地域であったのが今朝の段階で28の国と地域に広がっています。また日本国内では2例目のオミクロン株の感染者が判明しました。いずれも海外からの入国者ですが、同じ飛行機に乗り合わせた者は濃厚接触者とされているものの隔離されておらず、すでの市中感染していてもおかしくありません。日本政府は、更に水際対策を強化し、航空会社に日本に到着する国際線の新規予約を停止するように要請しました。オミクロン株の流入を押さえ込むためには妥当な判断だと思います。

さて、今日は、日経トレンドの「アレクサ成功の陰に幻のスマホあり? 失敗から成功企業が学ぶこと」という記事を取り上げます。

今はVUCAと呼ばれる先行きが見通せず何が正解か分からない時代です。このような不確実な時代には試行錯誤を繰り返しながら成功にたどり着くしかありません。今こそエジソンの「私は失敗したことはない。ただ1万通りの上手くいかない方法を見つけただけだ」「決して失望などしない。どんな失敗も新たな第一歩となるからだ」という言葉が活かされる時代になっています。

この記事は「世界『失敗』製品図鑑」を上梓した荒木博行氏に話を聞いてまとめたものです。この本は、グーグル、フェイスブック(現メタ)、ソニー、豊田などのグローバル企業の「失敗」事例を分析した本で、こうした失敗を学びに変えて共有しようという意図で書かれています。

1.失敗から学べる教訓がある

 この本(記事)で紹介されている失敗事例にアマゾンが手がけたスマホ(ファイアフォン)が挙げられています。このスマホは、カメラで撮影した商品や、音声認識された音楽や映像を特定し、ウェブページに飛んで瞬時に購入できる機能が備えられていました。アマゾンの「世界をすべてのショールーム化する」という野望が詰まった製品でした。ところが、アマゾンが思うほどの反応はなく、発売1年あまりで製造中止に追い込まれました。ユーザーがスマホに期待していたのは電池の持ち時間や通信量の改善であって、買い物が多少便利になったからと言ってそこまで魅力的に映らなかったのです。要はユーザーのニーズとアマゾンのビジョンとの間にずれがあったということです。

 アマゾンは自社が描く輝かしいビジョンにばかり目が行ってユーザーの視点が欠落しユーザーのニーズを把握できていなかったのです。

 しかし、アマゾンは、この失敗経験を見事に活かし、AIアシスタント「アレクサ」を搭載した「アマゾンエコー」を発表し、大成功に導いています。

 「他社の失敗事例だから」とか「大企業の失敗事例だから」といって他の企業や中小企業にとって役に立たないものではありません。企業において失敗はつきものですし、規模は違えど同じような失敗を繰り返しています。こうした「失敗」事例から、我々の日々の生活や企業活動に活かせる教訓や知恵が見いだせるはずです。

2.5球投げて1球だけ成功する

 失敗学の権威でもある畑村洋太郎東京大学名誉教授によれば、失敗とは「人間が関わって行う一つの行為が、はじめに定めた目標を達成できないこと」です。つまり、「従前の予想通りには行かず、想定外の結果に終わる」ことです。  

 先ほどの書きましたが、今はVUCAの時代で、外部環境は全く予測できません。それを前提として事業を展開しなければならないわけですから、一つに絞って資源を投入するのはあまりにもリスクが高すぎます。色々な領域にアンテナを張って万が一の場合に備えておかなければなりません。

 この記事では「事業の持ち玉は5つぐらいあった方がいい。5球投げて1球ぐらいが当たる、そんな世界に我々は生きている」と言っています。

 5球投げて1球だけが成功するというのは、残りの4球は失敗です。これを認めることが重要です。エジソンは1万通りの失敗(上手くいかない方法)をしています。4つの失敗などエジソンからみればたいしたことではありません。

 この不確実な時代では、失敗は我々と隣り合わせにあります。失敗と共に生きる覚悟が必要ですし、失敗を恐れる必要もありません。

 以前「アダプト思考」で書きましたが、「失敗を恐れず、失敗したらそれを認める勇気を持ち、失敗を学びに変えていく、このプロセスの繰り返しが、発展・成長のカギとなる」のです。

3.失敗と向き合う

 事業を永続させるためには、失敗とどう向き合うかが大切になってきます。

これは生易しいものではありません。「失敗はしてはいけない」「失敗は表に出すものではない」といった風潮が未だに多くの企業や社会に見られます。そうなると失敗は良くないことで隠そうとするようになります。これでは、失敗と向き合うことも出来ませんし、失敗から学ぶことも出来ず、ひいては成長も発展も望めません。

 それではなぜ「失敗は恥ずべきもの」という風潮が生まれるのでしょうか?

 この問いについて、この記事では、「失敗をどの時間軸で捉えるかが関係している」と言います。失敗した時点で捉えれば、それは失敗かも知れませんが、時間軸を延ばした途端成功の一部になることもあるのです。その失敗を糧として、次の製品や事業の成功に繋がっているのならば、それは失敗ではなく成功の一部、成功の芽となっているのです。失敗も長期の時間軸でみると、成功の一つの経験や過程になるということです。

 しかし、往々にしてビジネスの世界では、短期的な結果を求める傾向にあります。四半期ごとの業績を問われたり、1ヶ月ごとでKPI(重要業績評価指標)が達成できているかチェックされたりしています。これを達成しようとすれば「失敗しないように」というプレッシャーが組織全体にかかります。

 確かに短期的な結果達成も重要ですが、長期的な視点とのバランスです。

 「稲盛経営と永守経営」で書きましたが、永守重信氏も経営における数字を重視しますが、単に細かな数字を積み上げることは無駄であるとし、長期的な目標と短期的な堅実な成果を重要視します。

 また稲盛氏は、「失敗しないために漠然と無意注意ではなく、目的を持って意識や神経を集中させる有意注意」と言います。

 失敗したことを気にしてその場にとどまっている限り前には進めません。だから早く忘れて次の挑戦へと踏み出さなければなりません。挑戦し続ければ、前の失敗が活かされます。無意注意ではなく「これを目指してやっていこう」と目的を持って意識や神経を集中させる有意注意で望めるようになるのです。

 失敗にとらわれていてはいけません。少し客観的にみてみることです。重要なのは俯瞰することです。特に経営者は、常に長期的視点で事業を俯瞰し、失敗した際にどう総括するかという視点を持つ必要があります。大きな失敗だったとしても「当時は苦しかったけれど、それが現在にこういう風に繋がっている」と振り返ることが出来ればいいのです。

この記事では「過去は変えられないと言いますけれど、実はその失敗をどう解釈し、どのようなストーリーを語るかで過去は変えられるんです」と言っています。

「基本のき」を守る

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で132人、27県で新規感染者ゼロとなっています。成田空港に到着したナミビア人男性がオミクロン株に感染していることが明らかになり、同じ飛行機に同乗していた70人が濃厚接触者の認定されました。しかし既に彼らは入国しており、アプリで健康管理を要請する方針だと言います。これは、宿泊施設での隔離は出来ていない(自宅待機を要請)ということで、既に同乗者の1人に発熱の症状がみられます。オミクロン株に感染しているかは分かりませんが、結局は水際対策を強化すると言いながら笊で編み目から水が垂れ流れています。これでは市中感染するのも時間の問題です。岸田政権が早々に外国人の入国停止に踏み切ったことは評価して良いと思いますが、日本人や定住外国人に対する扱いはまだまだユルユルで、「最悪の事態を想定した対応」をとるのであれば、これについても厳格化すべきです。水際対策をとって外国人が入国できないことに伴う経済損失と水際対策の失敗により再び自粛生活を強いられることに伴う経済損失は明らかに後者の方が大きいと言えます。今一度水際対策の徹底を行ってもらいたいものです。

さて、今日は、プレジデント・オンラインの「トヨタやホンダはそこが違う 『最強の企業』と呼ばれる会社に共通するシンプルなこと」という記事を取り上げます。

トヨタやホンダと言った強い企業は、確固とした企業風土を築き上げています。

業界の最前線を走り続ける企業に共通していることは、非常にシンプルで、ごく当たり前のことを当たり前に行っているだけです。

1.「基本のき」が守られていること

 「挨拶をする」「ゴミを見つけたら拾う」「仕事の締め切りを守る」といった小学校で教わるような、人として「基本のき」が社員に浸透していること、これが強い企業にみられる共通点です。今年MLB で大活躍した大谷翔平選手も、礼儀正しく、球場のゴミを拾っていました。かつて日本人にはこうした躾が行き渡っており、だれもが「基本のき」を身につけていました。しまし、今はこうした「基本のき」が身についていない者が多いのです。これは若者だけに限らず、中高年にも言えることです。

 この記事では、「人としての基本が組織の風土・社風をつくり、これが最後の砦となって、組織を守っていける」と言っています。

 この「基本のき」が守られていないのであれば、その企業には危険信号がと灯っています。業績が悪化している企業は、この「基本のき」が守られていません。

 この「基本のき」を徹底し社員に体得させるためには、ただ単に言い聞かせるだけでは不十分で実行できているかどうかを確認する必要があります。実行できていなければいくら言ったとしても意味がありません。社員全員に浸透してこそ、企業風土や社風になっていくのです。

 社員からうんざりされようとやると決めたことはやりぬく、それがリーダーに必要な実行力です。別段難しいことを言っているわけではありません。「挨拶をする」「ゴミを拾う」「締め切りを守る」という当たり前のことです。当たり前のことなので当たり前に出来て当然です。しかし、まずは、この当たり前のことを当たり前にしなければ、土壌が緩いところに城を築いてもすぐに崩れ落ちてしまうのと同じです。まずは足場をしっかりと固めることです。足場を固めた上で業績をアップさせる戦略を積み上げていけば、足腰の強いチームや組織ができあがります。

2.まずは「挨拶」

 以前「心理的安定性の高い職場」について書いた際に、「朝の声かけ」の重要性について指摘しました。そのときに書いたように、上司が社員一人ひとりに声かけしている職場ではメンタルの不調を訴える社員が少なく、職場でのミスや事故も少ないのです。

 挨拶はコミュニケーションの基本です。コミュニケーションについては何度も書いていますが、より良い人間関係、信頼関係を構築するためのもので「言葉と思いのキャッチボール」です。

 確かに職場でのコミュニケーションというのは面倒くさいものです。ついつい、部下は上司とのコミュニケーションを避けて通ろうとします。それでは風通しの悪い職場になってしまいます。上司の方から声かけをすれば、嫌に思う部下はいないはずです。簡単に「おはよう」と挨拶すればいいだけです。それだけで終わってもいいですし、「最近調子はどう」などと一言二言会話をすればいいのです。

 この記事では、「挨拶強化月間を決め、そのときには役員が毎朝交代で『挨拶当番』としてエレベーターホールに立ち、出勤する社員に率先して挨拶をする」、「挨拶を達成できたかを社員に自己申告させる」ということが書かれています。そこまでする必要があるかという点で疑問がないわけではありませんが、挨拶ができておらず風通しの悪い職場では、挨拶が習慣化するまではそのように強制的に挨拶をさせる手段をとるのもいいのかも知れません。

3.リーダーが率先して行動しているか

 なぜ、今「挨拶」が重要なのかというと、チームや組織の根本的な問題は「能力」に起因しているわけではないからです。どのような組織やチームでもある程度優秀な人材がいて能力的には大きな差はありません。むしろ、結果を出せていないのは、社員同士のコミュニケーションや信頼関係の希薄さが不振要因になっている場合が多いのです。

 そのような状況ではいくら優れた戦略を行っても、高い目標を設定しても、どんな改善策を講じても、勝てるチームにはなりません。前述のように土台がしっかりと出来ていないからです。

 部下に長々とした訓示を垂れるよりも、「おはよう」「お疲れ様」というような朝の声かけ、挨拶の方が効果的です。これだけで信頼関係やより良い人間関係が構築でき、風通しのよう職場に変わります。

 一流の企業、一流のチームを作り上げるには、毎日の小さな事、当たり前のことを当たり前に行えるように徹底することです。部下に徹底するには上司・リーダーが率先して行動することです。挨拶をするのに年齢も立場も関係ありません。

 この記事では「部下は自分を映す鏡である。部下が動いてくれないの奈良、自分自身に問題があると考えた方がいい」と言っています。

 何事においてもリーダーが率先して行うことで部下もついてきてくれます。

4.トヨタやホンダは確固とした風土を築き上げている

 実行力のある会社にするには、何をすべきでしょうか。この問いに対する答えはシンプルで、この記事では「企業の風土を変える」ことだと言っています。答えはシンプルでも「企業の風土を変える」ことはシンプルではなくなかなか難しいものです。

 しかし、どのような時代でも生き残っていける企業になるには他社にまねできないような風土に変えていくしかありません。強い企業の代名詞でもあるトヨタやホンダは、確固とした風土を築き上げているから、トラブルに巻き込まれても、すぐに立ち直る底力を持っているのです。

 企業風土を変えるには時間がかかります。企業風土というのは長年にわたって醸成されてきたものだからです。

 声を上げるだけでは企業風土を変えることは出来ません。企業風土を変えるのに必要なのは行動です。この際に重要なのは、社員とのコミュニケーションの機会を重視し、自らの言葉で語りかけ、自ら行動を起こすことです。それは小さなことからでかまわないのです。「挨拶する」「ゴミを拾う」「締め切りを守る」という当たり前のことを自ら率先して行えばいいのです。

 これが強い企業に変わる第一歩となり、それが全社員に浸透していけば企業文化も変わっていきます。

知的謙虚さ

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おはようございます。

昨日の新規感染者数は全国で82人、28府県で新規感染者ゼロとなっています。WHOがオミクロン株が世界的に平狩り深刻なリスクをもたらす可能性が高いと発表しました。世界的に急速に感染が広がっています。日本では、10日間の待機期間の対象国であったナミビアからの入国者の1人にオミクロン株の感染者が見つかり、これを受けて岸田首相は外国人の入国停止に踏み切りました。菅元首相と比べると迅速な対応ですが、それならば2日前にEUイスラエルと同じような強力な水際対策をとっておくべきでした。今回税関で見つかった感染者と同じ飛行機に乗り合わせた者は10日間宿泊施設で隔離ということになるのでしょうが、昨日書いたように向かいの部屋にいても感染するほど強力な感染力を持っています。全員が大人しく宿泊施設に留まっているかは疑問で、監視の目をかいくぐってコンビニにでも外出する者が出てきます。そうなれば一気に市場感染が広がります。絶対に宿泊施設から出られないように万全の対策・措置を取ってもらいたいものです。

さて、今日は、lifehackerの「ジェフ・ベゾスが指摘する『成功するために最も重要な資質』」という記事を取り上げます。

1.知的謙虚さとは

 アマゾンのCEOを務めるジェフ・べゾス氏が、最も重視していた資質が「知的謙虚さ」です。

 以前にも、リーダーに最も必要な資質として「謙虚さ」を挙げました。そこでの「謙虚さ」とは「ひたすら低姿勢でいること」ではなく「確固たるポリシーや理念」を前提として「謙虚」であることが求められているのです。そのうえで、次の4つの姿勢が求められるのです。

  1. 役職や年齢に関係なくすべての人に等しく接し、その声に耳を傾ける姿勢
  2. 自分と違う意見や相反する考えを否定せず、真摯に受け止める姿勢
  3. 知らないことはもちろん、多少知っていることでも、改めて教えを乞う姿勢
  4. 常に自分を振り返り、自分の足りない部分を知り、認める姿勢

 この記事で言っている「知的謙虚さ」は上述の「謙虚さ」とは若干違います。

 それは、「自分の考えを常に見直し、既に解決したと思っていた問題についても考えることを止めない」という姿勢であり、こうした「知的謙虚さ」を持っている人は「新しい視点、新しい情報、新しいアイデア、矛盾、自分の意見への異議申し立てに常に心を開いている」のです。

 自らの可能性を最大限引き出すためには、積極的に学び向上する姿勢がなければなりません。そのためには、自分がすべての答えを持っているわけでないことを認める必要があります。少しでも成長しようと新しい情報や矛盾した情報に対して心を開く必要があります。これが「知的謙虚さ」の本質です。

2.知的謙虚さが強みになる

 デューク大学のマーク・レアリー教授は「知的謙虚さは人生の目標を達成するための大きな強みになる」と言っています。

 なぜ、知的謙虚さが強みになるのでしょうか?

 レアリー教授の研究によれば、「知的謙虚さの高い人は、記事(ある情報)のエビデンスの信ぴょう性を、より慎重に見極め、強いエビデンスと弱いエビデンスをより明確に区別している」のです。また、別の研究では、「知的に謙虚な人は、自分の意見に反対するエビデンスをより慎重に検討し、最終的には反対意見に対する理解を深める」ことが分かっています。このことは、共感や説得、妥協点の交渉にも大いに役立っているのです。

 知的謙虚さは、新しい情報を学びたいという欲求とも関連し、知的謙虚さが高いレベルの人は、新しい知識やアイデアを追求する動機となる知的好奇心のスコアも高い傾向にあります。反対に、知的謙虚さが低いレベルの人は、意見の合わない人に対して感情的になる傾向があり、自分は相手から嫌われていると考える傾向にあります。こうした人は、妥協することが少なく、満ち足りた人間関係を構築しづらくなります。

3.知的謙虚さを高める方法

 これまで「知的謙虚さ」というのはあまり話題になる特性ではありませんでした。しかし、レアリー教授やその他の研究によって、あらゆる種類の卓越した能力を発揮するために不可欠な要素であることが判明しています。

 自信過剰になりがちな人間の性質を抑え、自らの意識の限界に対して謙虚になるように自分を仕向けるにはどうしたらいいのでしょうか。

 レアリー教授によると、まずは、より知的で謙虚な方法で世界にアプローチすることが合理的かつ有益であることを理解することがスタートです。

 知的で謙虚であることが合理的というのは、意見の相違がある時に全員が正しいということはあり得ないこと、人は自らを過信しがちだということ、私たちが抱く信念や見解は弱いエビデンスを根拠としていることがよくあることを考えればわかります。合理的な人間は、過剰な自信を持つことはありません。

 次に重要なのは、新しい情報やアイデアに対して十分に心を開かているのかについて、常に細心の注意を払うことです。

謙虚さというのはある意味持って生まれた性質のようなところがありますが、磨いて鍛えることは十分に可能です。それは知的謙虚さにも言えるところです。

謙虚さ・知的謙虚さというのもセンスと同じで、好奇心を持って色々なものや事にふれ、自ら体験してつかみ取っていくことができるものです。 スキルのように決まった修得方法はありませんが、それでも磨けば高めていくことができると思います。

 

 

 

 

ファシリテーョンの本質

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で73人、31県で新規感染者ゼロとなっています。低い水準を維持していますが、心配なのは「オミクロン株」です。オミクロン株の話題が出て数日ですが、世界で13の国と地域で感染が確認され、急激に拡大しています。EU各国では南アフリカなど感染者が出ている国からの飛行機の乗り入れを禁止し、イスラエルではすべの外国人の入国を禁止しました。これに引き換え日本は、昨日も書いたように9か国からの入国者に10日間の待機という極めて生ぬるい水際対策しかとっていません。オミクロン株の特徴は良く分かっていませんが、感染力の強さとワクチンの効果を低下させ再感染のリスクを高める可能性が懸念されています。感染者の向かいの部屋にいただけで感染したという事例が報告され、感染力の強さが分かります。日本では、緊急事態宣言が解除され、行動規制が大幅に緩和されつつあり、人々の気も一気に緩み、各地の人出は大幅に増えています。こうした中で、オミクロン株が流入すれば、全国に一気に広がってしまいます。今必要なことはイスラエルや欧州のように強力な水際対策ではないかと思います。

さて、今日は、東洋経済オンラインの「議論が進まない『ダメ会議』を救う3大テクニック~『ファシリテーション』の本質を知っていますか」という記事を取り上げます。

日本企業では、極めてムダな会議が多いのです。それは、会議を開くこと自体が目的化してしまっているからです。会議を開けば、参加するだけで仕事をしている気分になり、会議で決まったことなら責任を取らなくてよいことになり、延々と会議が繰り返されるのです。会議というのは、抱えている課題や問題があり、その解決策を検討するために開かれるものです。そうした目的をないがしろにして、ただただ会議を開くことが目的化してしまってウィます。会議を開けばそれで問題が解決された思い込んでしまっているのです。

この記事では、こうしたムダな会議に終始符を打つ方法が紹介されています。

1.会議とは「大縄跳び」のようなもの

 この記事では「会議は大縄跳びに似ている」と言っていますが、言い得て妙、素晴らしい例えです。

 両端に縄を持って回す人がいて、その中に、次々と色々な人たちが入っていきます。ファシリテーターが縄を回す人、会議の参加者が飛ぶ人です。

 ファシリテーターというのは「会議や研修、ミーティングなど様々な活動の場で、良質な結果が得られるように活動をサポートする人」を言います。

 大縄跳びには参加者それぞれの個性が出ます。最初に飛び込んでそのままずっと中で飛び続ける人、なかなかタイミングがつかめずまごまごしている人、積極果敢に飛び込んでくるものの過ぎに足を引っかけて流れを断ち切ってしまう人など様々です。

 回し手であるファシリテーターは何に気を付けるべきでしょうか?

 大縄跳びの理想は、参加者たちが輪の中に入ったり出たりしながら、心地よく長く飛び続けられることです。中に入ることができない人がいれば入りやすいようにタイミングを計って優しく声を掛け背中を押してあげることです。

 会議にも同じ構図があります。一部の積極的な人ばかりに発言の機会が偏ったり、最後までほとんど発言せずに終わる人もいます。こうした状況はファシリテーターとしては避けるべきですし、こうした会議はある意味失敗です。

 どのような会議でも、冒頭からいきなりフルスロットルのテンションで始まることはありません。序盤はアイドリング状態で、場の様子をうかがい、徐々にテンションが上がっていくものです。

 ファシリテーターとしては、序盤にどれだけ多くの意見を言わせるかにかかってきます。会議の序盤は、議論の材料をできるだけ多く集める時間です。大切なのは、安心して自分の意見を言える場であるという認識を参加者すべてに持ってもらうことです。したがって、会議の序盤には他人の意見を否定したり反論したりするのは極力排除すべきです。最初は言いたいことを自由に発言してもらう場で、「反論やご意見がある人は後ほどお聞きします」という姿勢で場を仕切っていくのがいいのです。

 最初はできる限り多くの意見を引き出すことです。そのためには、相手の話を聞くという姿勢が重要です。相手が話しやすいように相槌を打つこと、さらに深めた質問を行い相手が何を考えているのか、なぜそのように考えるのかまですべて話してもらいことで、後半の議論が深まります。

2.話下手は人をさりげなくサポートする方法

 どのような会議でも、話のうまい人や話し好きな人ばかりではなく、話し下手な人や苦手な人もいます。話し下手や話すのが苦手な人、シャイな人をさりげなくサポートして会議がスムーズに進むように手を尽くすこともファシリテーターの重要な役割です。

 大人数での会議で話すのが苦手な人でも、素晴らしいアイデアや意見を持っているものです。話し上手な人や話し好きな人が優秀なわけではありません。

 最初は弁の立つ人を中心に意見を言わせて、ある程度そうした人の意見が出た段階で、話下手な人やシャイの人に「ここまで聞いて何かご意見はありませんか」と緩めに話を振るのがいいのです。それでも相手がしゃべりにくそうなら、打ち切るのではなくて、相手が答えやすいように質問形式ででも問いかけてあげるべきです。

 進行役のファシリテーターは、必要以上に言葉を重ねるべきではありませんが、間を埋めてあげることは不慣れな発言者に安心感を与えます。これによって、相手も次第に頭の中が整理され発言しやすくなります。これもファシリテーターの重要な役割です。

3.オンライン会議を上手に仕切る方法

 コロナ禍で、働き方が大きく変わり、どこにいてもいつでもオンラインで会議や打ち合わせができるようになりました。これはメリットでありますが、一面「対面でなければやりにくい」「細かなニュアンスが伝えられない」といった意見もあります。

 ファシリテーションもオンラインでは難しくなっています。何か言いたいことがある場合でもどう切り込んでいいかタイミングが掴めなかったり、声があぶることもあり、オンラインではイニシアティブを握った人だけが延々と発言するようになりがちです。また、名指しされれば何か発言しないわけにはいきませんが、具体的な意見がない人では喋らされることになってしまいます。

 ファシリテーターの役割は対面の場合とそれ程は違いませんが、より話しやすい場・雰囲気をつくっていくことが求められます。そのためには、リアルな場面よりもオーバーなリアクションを心がけるべきかもしれません。相槌にしてもやや大きな声で大きめで頷くことで、相手の話に関心を持って聞いているということを伝えることで、相手に安心感を与えることができます。

 この記事では「オンライン会議は、自分の声がきちんと届いているか、こういう話でいいのかと誰でも不安になるはず。相槌を巧みに利用して、はrツ源する人に寄り添うことが大切」と言っています。

 会議はコミュニケーションの場です。コミュニケーションは人と人との関係です。会議は自分の意見を通して勝つための場ではありません。色々な意見を出し合い、それぞれの意見のメリットデメリットを比較しながら、みんなが共感しながら、より良い結論をみんなで導き出していくものです。相手に寄り添うという姿勢が重要なことはいうまでもありません。