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休日の本棚 ジュラシックパークへようこそ!「マンモスのつくりかた」

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おはようございます。

今日で正月休みを終わります。明日からまた仕事です。

今日は、ベス・シャピロ著「マンモスのつくりかた」(筑摩書房)という本を取り上げます。著者はカリフォルニア大学の進化生物学の准教授です。

かつてジュラシックパークの映画を観た時、絶滅した恐竜が現代に蘇るという話にワクワクしました。琥珀に保存されていた蚊の血液から恐竜のDNAを採取して恐竜のゲノムの空白部分をカエルのDNAで埋めて恐竜を作り出すのです。しかし、死亡した生物のDNAは約500年で半減するという研究結果がありこれに基づけば約6600万年前に滅亡した恐竜のDNAを取り出すことは不可能になります。

しかし、最後のマンモスが滅亡したのは今から約3700年前です。約2万数千年前に絶滅したとされるネアンデルタール人の骨からDNAが採取されています(ネアンデルタール人のDNA解析からわれわれ人類はネアンデルタール人とサピエンスとの混血という説があります(スヴァンテ・ペーボ著「ネアンデルタール人は私たちと交配した」文藝春秋)。マンモスの場合、寒冷地に生存しその骨や遺体は氷の中に保存されかなり良好な形でDNAの採取が可能です。絶滅したマンモスを復活させようという試みが世界各国の大学で行われています。本書の著者もその一人ですし、日本では近畿大学が行い、近い将来(早ければここ数年で)マンモスが復活誕生するというのです。しかし、完全なマンモスではありません。すべてのDNAを復元することは困難で、その空白部分を埋める必要があります。その空白部分を埋めるもの(ジュラシックパークのカエルのように)は象のDNAです。寒冷地に適応した毛足の長い象が誕生するといったところでしょうか。マンモスをどのようにして復活させるのか、そのつくりかたをクローン技術・ゲノム編集技術などを使い分かりやすく説明してくれているのが本書です。なかなか面白い本です。

1978年に世界初の「試験管ベビーが」誕生し、1996年に世界初の哺乳類クローン羊のドリーが生まれました。体外受精の技術が開発され、受精の営みが単純な実験室での手順となり、さらに母親に移植する前に最も優れたゲノムを持つ胚を選んで移植する方法(PGD 着床前遺伝子診断)が用いられるようになりました。これにより男女を産み分けることが可能になるのみならず、さらに進むと病気のかかりにくさや行動や身体的外見、知能まで選択できるようになるかもしれません。

ゲノム編集技術は急速に進歩しており、現在クリスパーキャス9という方法が利用されていますが、この方法は数万円でオンライン購入可能、高校生でも数時間の練習で行うことができるようになると言います。

2015年中国の研究チームがクリスパーを利用してヒト胚を操り人間のゲノム編集を行い成功したと発表し世界を驚かせました。この時は三倍胚を用い、赤ん坊として生まれてくることはありませんでしたが、世界に衝撃を与えたことは事実です。

クリスパー技術によるヒトゲノムの編集は、生命を脅かす病気の予防や治療に用いられるのは良いとしても、将来の子孫に影響を及ぼす方法で導入されれば本来人間が生まれ持つ平等な尊厳を脅かしよいよい生活や向上した生活の希望の実現を装った優生学を復活させる(ユネスコ ヒトゲノムと人権に対する宣言)、あるいは経済的格差が遺伝的階層につながるという批判がなされています。

 アメリカ諜報コミュニティは遺伝子編集技術を最大の大量破壊兵器の一つに挙げています。もし独裁者やテロリストが邪悪な目的のためにクリスパーの悪用を試みた場合、彼らを阻止する手立てはあるのでしょうか。

クリスパーなどの先進技術が悪いわけではありません。重要なのはそれをどう使うかということです。人類の遺伝子を操作して人類を破滅に導くか、それとも人類を明るい未来に導くかは、今のところ分かりません。人類が、きちんとした国際的なルールを決めたうえで、慎重に取り組んでいかなければならない課題でしょう。恐ろしい世の中になりつつあります。

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さらに、ゲノム編集や合成生物学に興味がある方には、小林雅一著「ゲノム編集とは何か」(講談社現代新著)、NHK[ゲノム編集」取材班「ゲノム編集の衝撃」(NHK出版)、須田桃子著「合成生物学の衝撃」(文藝春秋)がお勧めです。

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