中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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企業の不祥事

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おはようございます。

今日も取り上げようと思えるニュースはあまりなく、「東芝子会社の架空取引」、「脱税した金で株に投資」、「三菱自動車 独で排ガス不正疑惑」といったニュースから企業の不祥事を取り上げることにします。昨年度も、かんぽ生命・ゆうちょ銀行での不適切販売、レオパレス21建築基準法違反、吉本興業の闇営業問題、関西電力幹部らの金品受領、日産・ゴーン問題など大小さまざまな企業不祥事がありました。

インターネットの普及により不祥事を起こした企業は法律や行政規則による制裁・罰則を受けるだけでなく、消費者の信用を失い不買運動、株価下落など計り知れない経済的損失を受けることになります。企業にとって、企業自体だけでなく役員、さらには従業員個人による不正、違法、非倫理的な行為を未然に防止する制度的な取り組みは極めて重要な課題となっています。

企業の不祥事は、大きく分けると次の6つに分類できると思います。

  1. 経営トップが絡むケース
  2. 特定分野・地区主な分野で起きるケース
  3. 企業の文化や風土で起きるケース
  4. 従業員やその他個人の犯罪
  5. 以前は適法であったものが時代の流れによって違法・不正となるケース
  6. ミスを公表せず隠ぺいするケース

また、企業の不祥事につながりやすい要因として次の8つに分類できます。

  1. 競争関係…カルテル、談合、知財侵害、贈収賄など
  2. 消費者関係…有害・欠陥商品、虚偽・誇大広告、悪徳商法など
  3. 投資家関係…内部者取引、利益供与、損失補填、粉飾決算など
  4. 従業員関係…労災、過労死、雇用差別、セクハラ・パワハラなど
  5. 地域社会関係…公害、環境汚染、産廃不法処理など
  6. 政府関係…脱税、贈収賄、不正献金、虚偽報告、捜査妨害など
  7. 国際関係…租税回避、ダンピング、不正資金洗浄、産業スパイなど
  8. 地球環境関係…環境汚染、自然破壊など

企業にとって重要なのは「信用」です。企業の不祥事によって「信用」が失墜します。いかなる企業も、信用を獲得するのに数十年にもわたり血のにじむような努力をしてきたはずです。信用はその努力の結果です。しかし、不祥事があれば一瞬で信用はなくなります。信用はお金で買うことはできません。再び信用を取り戻すためにはこれまでの何倍もの努力と年月が必要になります。大企業だけでなく中小企業においても不祥事を防止するための対策を真剣に考えなければなりません

不祥事を防止するための対策として①内部通報制度を導入する②内部統制システムを強化する③コンプライアンス意識を高めるという3点が重要です。まず、不正を発見した際に従業員が速やかに報告できる内部通報窓口を設置することです。この内部通報窓口は上司ではなくできれば外部の第三者が望ましいと思います。次は、取締役の業務や会社の業務が法令や定款に適合するかを監視できる体制を確保することです。そして、取締役や管理者のみならず従業員全員が法令や規則に適合していると判断できるコンプライアンス意識を醸成することです。そのためには教育・研修制度を設ける必要があります。

それでも不祥事が起こることはあります。その時にはできる限り損害を最小限に食い止めなければなりません。万一不祥事が発生した場合の対処法ですが、①不祥事が起きた原因を究明・特定し、速やかに行動を起こし被害の拡大防止に努めること、二度と不祥事が起きないような体制づくりに役立てること②事実を公表して、真摯に謝罪すること③責任の所在や処分を明らかにすることです。被害を最小限に食い止めることと二度と不祥事を起こさないための対策づくりに役立てることが重要なのです。

企業の不祥事との関連で、「企業の社会的責任」についても簡単に触れておきます。

企業は、自己の利益を追求する存在であるとして企業の社会的責任を否定するフリードマンら古典派経済学者の見解もありますが、「企業も良き市民でなければならない」とするコーポレーション・シチズンシップの考えが有力です。企業は社会の一員として、メセナ(学術・文化支援活動)やフィランソロピー(社会貢献活動や事前・寄付行為)が求められています。また企業に求められる倫理的価値観があります。国連が提唱する企業の自主行動原則であるグローバル・コンパクトでは「人権の保護」「不当な労働力の排除」「環境への対応」「腐敗の防止」の4領域で10の原則(①人権擁護の支持と尊厳②人権侵害への非加担③組合結成と団体交渉権の実効化④強制労働の排除⑤児童労働の実効的な排除⑥雇用と職業の差別撤廃⑦環境問題の予防的アプローチ⑧環境に対する責任のイニシアティブ⑨環境にやさしい技術の開発と普及⑩強要・賄賂等の腐敗防止の取り組み)が規定され、これらは企業が社会の良き一員として行動し持続可能な成長を実現するための普遍的な原則となっています。中小企業の皆さんにも社会的責任が果たせるように頑張っていただきたいと思います。