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休日の本棚 進化論を読む

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おはようございます。

先日の新聞に「私たちの『先祖』?培養に成功」という記事が載っていました。それによれば、海洋研究開発機構産業技術総合研究所などのグループが我々ヒトを含む「真核生物」の祖先に最も近いとみられる微生物の培養に成功したというのです。

地球上の生物は、細胞内に核を持たない「バクテリア真正細菌)」と「アーキア古細菌)」、核を含む複雑な細胞組織を持つ「真核生物」の3つに大別されます。今回培養に成功したのは、真核生物に最も近いアーキアの1群アスガルドアーキアの仲間で紀伊半島沖推進2500mから採取された堆積物にに含まれていたものを12年の歳月を経て分離培養に成功したということです。DNA解析の結果、アクチンやユビキチンなど真核生物特有とされてきた遺伝子を数多く持つことも判明しています。真核生物は今回培養されたようなアーキアバクテリアを取り込むことで誕生したという説が有力ですが、研究グループは新たな進化モデルを提案しています。

約27億年前、光合成をするシアノバクテリアの登場で地球の酸素濃度は上昇しましたが、無酸素状態で生きてきたアーキアにとっては酸素は毒です。そこでアーキアは酸素を消費するバクテリアと共生し生き延びる道を選んだのです。バクテリアを職種のような突起で内部に取り込み、細胞内小器官のミトコンドリアとするなどの過程を経て、真核生物となったというのです。ミトコンドリアというのはほとんどすべての真核生物の細胞に含まれている細胞小器官です。ミトコンドリアの主な機能は電子伝達系による酸化的リン酸化によるATP(アデノシン三リン酸)の産出で、細胞の様々な活動に必要なエネルギーのほとんどが、直接的、間接的にミトコンドリアから供給されます。子のミトコンドリアには細胞核が有する遺伝情報とは別の遺伝情報を有しています(ミトコンドリアDNA)。ミトコンドリアは好気性細菌でαプロテオバクテリアが真核細胞と共存することによって獲得されたと考えられています。

今回の分離培養に成功したアーキアによって、細胞の形や増殖の仕方、遺伝子の特徴などを調べることによって、真核生物の起源、ひいては進化の過程が明らかになることが期待されています。

そこで、生命の起源について書かれている本として、ジム・アル=カリーリ、ジョンジョー・マクファデン著「量子力学で生命の謎を解く」(SBクリエイティブ)を紹介します。この本は量子力学を使って生命現象の謎を解き明かす「量子生物学」の最新の成果と可能性を豊富な実例を通して説明してくれる本ですが、かなり難しい内容です。

何百年も前から科学者や哲学者や神学者は生命の起源について深く考察し、神による創造説から、宇宙から地球に種がまかれたという説まで、ありとあらゆる説が出されました。チャールズ・ダーウィンは、「暖かい小さな池」の中で起きた化学プロセスが生きた物質の誕生につながったと提唱しました。このダーウィンの推論を組み立てたオパーリン=ホールデン仮説によれば、初期の地球の大気には水素やメタンや水蒸気が豊富に含まれており、それに稲妻や太陽放射や火山の熱が作用し単純な有機化合物の混合物が生成し、それらの化合物が原始の海に蓄積し暖かく希薄な有機化合物のスープが何百年も水中を漂い、泥火山のような場所に流れ着いて偶然にもそれらの化合物が結合し、やがて自己複製能力を持つ新たな分子ができたというのです。この現巣の複合体はだーヴィン的な自然淘汰の洗礼を受け変異を繰り返し、最も成功した変異体が最も多くの子孫を残し、分子レベルのダーウィン的自然選択によって複製隊の集団は次第に効率を高め、次々に複雑となっていったのです。このオパーリン=ホールデン仮説が地球上で生命がどのようにして誕生したのかを理解するための科学的な枠組みにおなります。しかし、この説の検証は長年行われず、また行われた実験でも明確に証明がなされていません。著者は、量子力学がこの解明に役立つのではないかとされています。

次に、進化論についてわかりやすく説明してくれているのが、池田清彦著「進化論の最前線」(インターナショナル新書)です。池田氏早稲田大学国際教養学部教授の生物学者で、ホンマでっか!テレビにも出演されています。

この本で、池田氏は、ダーウィンの自然選択と突然変異だけでは大きな進化は起こらず進化を説明できないし、またネオダーウィニストらはファーブルの批判にもこたえられていないとされています。生物の進化は、自然淘汰と突然変異、遺伝子だけでは説明できず、細胞と言った遺伝子を取り巻く環境(構造)のもとで、遺伝子の発現パターンが変化するというのです。そのような構造の違いによる変化が生物の進化に影響を与えるというのです(構造主義進化論)。小保方氏のSTAP 細胞やゲノム編集にも触れられていて面白い本です。著者は、まえがきの中で、テクノロジーや医療の発展が人間の生活や社会を大きく変えてしまうことに、より自覚的になる必要があります。人間と技術のより良い関係を築くためにも、『人間とは何か』を見直すことが、これからの時代には求められるのです」とされています。その通りだと思います。

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