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本日の本棚 思考術を読む

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大阪城 梅林

おはようございます。

今日は、思考術に関する本を何冊か紹介します。

まずは、ブライアン・クリスチャン&トム・グリフィス著「アルゴリズム思考術ー問題解決の最強ツール」(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)です。

アルゴリズムというのは、現在ではコンピュータ・プログラミングに関連する用語ですが、広くは「問題を解くための一連の単純な手順」を意味します。この本は、様々な問題を「アルゴリズム思考術」で解決するための指南書、日常生活にコンピュータ科学の視点を応用することによって効率的な解決策を示してくれる本です。

例えば、次のような課題・問題に直面することはあるでしょう。これらにも「アルゴリズム思考法」は役立つのです。

  1. 社員を採用する場合、何人目の応募者で決断すべきか(何人目の交際相手と結婚すべきか)
  2. 業務の向上には、定番の商品を強化すべきか、新商品を投入すべきか
  3. たくさんの名刺を並び替えるのにどのような手順がいいか
  4. 書類をどう分類し収納したら、後で必要になった時に探しやすいか
  5. 遅れている仕事を納期に間に合わせるにはどの作業を優先したらいいか

1は「最適停止問題」と言われる問題で、「37%ルール」を適用するのが良いとされています。最初の37%までは誰も選ばずただ見て、37%以降はそれまでに面接したどの応募者よりも優秀な人材が現れたところですかさずに採用するのです。このルールは入居する部屋を借りる場合、持ち家を有利に売却する場合、お見合いや結婚などのタイミングに利用できるというのです。

2は「多腕バンデット問題」と言われる問題で、複数のスロットマシンがあるとき、どの程度試して他のマシンに移るかという問題です。「勝てばキープ、負ければスイッチ」という戦略が紹介されています。

3は「ソート(整列)」と言われるもので、マージソートと言われる方法が紹介されています。マージソートというのは、データの集合を細かく分割し整列しながら次第に併合していく方法です。

4は「キャッシュ」と言われるもので作業場のスペースが限られているときの効率的な出し入れの問題で、「どの情報を取っておいてどの情報を捨てるか」に関わってきます。これは、図書館での本の置き方、在庫の配置、不要なものを捨てる断捨離などに役立ちます。

5は「スケジューリング」という問題で、本書で、冷蔵庫の中の食材を例に説明されています。最早納期優先という戦略では、痛みそうな順番で食べていくことになり、ムーアのアルゴリズムという戦略では、日持ちの悪いものから順番に食べていくが、消費ペースが間に合わないと分かった段階ですぐに計画を変更して最も大きな食材(食べるのに日数を要する食材)1つを廃棄するというのです。これによって廃棄せざるを得ない食材を最小限に抑えることができます。どのようなスケジュールに基づいて作業を進めれば最適化が分かるのです。

本書では、多くのビジネスの問題が取り上げられています。アマゾンのべゾス、アップルのジョブズ、グーグルの技術者たちのエピソードなどを見ると、彼らは「アルゴリズム思考術」をみごとに応用していることが分かります。こうした点からも、本書で紹介される「アルゴリズム思考術」はビジネスに有用ですし、また日常生活にも役立つ内容が満載です。

次に、マリア・コニコヴァ著「シャーロック・ホームズの思考術」(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)を取り上げます。本書はコナン・ドイルシャーロック・ホームズの思考法を心理学・脳科学の立場から分析した本です。われわれの思考には二つのシステムが備わっていると言います。著者はそれを「ワトソン・システム」と「ホームズ・システム」と名付けます。「ワトソン・システム」は反応が早く直感的で反射的であり、意識的な思考や努力を必要としないシステム、「ホームズ・システム」は反応が緩く、検討を重ね、より徹底して、論理にかなった動きをするシステムです。この本の中に、以前紹介したカーネマンの「ファースト&スロー」が取り上げられていますが、「ワトソン・システム」はカーネマンの「速い思考(システムⅠ)」、「ホームズ・システム」はカーネマンの「遅い思考(システムⅡ)」に当てはまると思います。

本書は、自分自身を理解するために科学的思考法を身につけ、脳という屋根裏部屋を知ることからスタートして、観察力、創造力、推理力を身につける方法がドイルの小説・シャーロック・ホームズシリーズでのホームズとワトソンの会話などを引用しながら論じられています。自分の思考方法を考えるうえでなかなか面白く役に立つ本です。

直截的にビジネスに役立つ思考法をというのであれば、リュック・ブラバンデール&アラン・イニー著「BCG流最強の思考プロセス」(日本経済新聞出版社)がお勧めです。この本は、頭の中に「新しいボックス」を作れば、創造力は一気に広がるとして世界的コンサル集団BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)が、事業開発、戦略ビジョン策定に役立つ5つのステップ(①あらゆる物事に疑いを持つ②正しい問いを発するために可能性を探る③大胆なアイデアを出し尽くす④適切なボックスを選び出す⑤徹底的に評価しなおす)を伝授してくれている本です。

 

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