中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

新型肺炎に対する中小企業の対策

f:id:business-doctor-28:20200227084601j:plain

おはようございます。

今日も新型コロナウィルスの影響を取り上げます。労働組合「ジャパンユニオン」は新型コロナウィルスに関する労働問題美特別相談窓口を開設しました。「職場でマスクをつけさせてもらえない」「無給での自宅待機を命じられた」などの相談が相次いだようです。また、今朝のワイドショーでは「新型肺炎にかかったらクビだ」などと上司から言われたというのもありました。

マスク不足に便乗してネットで高額販売する、取り合いをする、盗むなど、「困ったときはお互いさまで、分け与える」という日本人の和の心はどこへ行ったのでしょうか。新型肺炎に便乗して労働者に不利益を課そうとする企業もあるようで情けない限りです。そのような企業にならないようにだけはしてください。

まず、「職場でマスクをつけさせない」ということについて「お客さんに失礼だ」などというのが会社側の言い分のようですが、この緊急事態ではお客さんの理解も得られるはずですし、逆にマスクをしていない方が失礼ではないでしょうか。企業には従業員の健康に配慮する「安全配慮義務」が労働基準法で規定されています。マスク着用は労働者に対する安全配慮義務の一環として積極的に行われるべきもので、これをしないということは安全配慮義務違反になる恐れがあります。

次に「無給での自宅待機」についてです。

  1. 感染が確認され感染症法によって強制入院となった場合、会社の責によるべき場合ではないので休業手当支給の必要性はありません。一定の要件を満たせば健康保険などから傷病手当が支給されます。ただ、従業員が業務に起因して感染したり濃厚接触したりした場合には、企業の責によるべき場合として休業手当を支給する必要があります。
  2. 感染が疑われる場合で発熱などで自主的に休む場合、通常の病欠扱いと同じで、就業規則の病気休暇制度を活用することになるでしょう。労使間の話し合いによって失効した有給休暇を活用するというのも一つの案です。会社も従業員の生活を考え労使間でしっかり協議してより良い方法を決めるべきでしょう。
  3. 感染拡大防止の観点から企業の判断で休ませる場合は、原則として休業手当を支給する必要があります。また、事業の閉鎖、規模の縮小などで自宅待機にする場合でも会社都合なので原則休業手当の支給は必要です。このような場合、従業員との合意ができれば労働条件を変更して(例えば、労働日数・労働時間を変更)休業手当を支給しなくてよくなる可能性があります。
  4. 中国など海外出張から帰国してそのまま自宅待機とする場合には、海外出張の延長として取り扱い、プライベートの旅行の場合には有給休暇を使えるようにして給料の大幅減となり生活に支障が出ないようにする必要があります。

次に、「感染すればクビ」についてですが、解雇の正当理由にならないことは当然です。このような発言自体がパワーハラスメントパワハラ)となって損害賠償の対象になります。不用意な発言は控えましょう。

事業の縮小で整理解雇という事態が生ずるかもしれません。その場合、「整理解雇の4要素」を判断する必要があります。「整理解雇の4要素」とは①人員削減の必要性②解雇回避努力③人員選定の合理性④手続きの相当性の4つです。これらを総合考慮して決断すべきこととなります。人員整理を行うとすれば、整理された従業員ばかりでなく残った従業員にも過大な負担を強いることになります。新型肺炎はいつかは終息します。それまでできるだけ体力を温存して耐えるようにしてください。安易な整理解雇はすべきではないと思います。最悪の場合でも自宅待機にとどめるべきでしょう。

政府は、新型肺炎対策としてテレワークの推進を呼びかけていますが、これにも限界があります。事業内容に応じてテレワークに向く業務と社内で行うべき業務があります。出社が必要な業務と自宅でもできる業務とを分け優先順位を決めて取り組む必要があるでしょう。自宅でできる業務を優先できるならそれから取り組みましょう。どうしても出社しなければならない場合には時差出勤をするようにしてください。

3月末に大量の新型肺炎倒産?という記事もありますが、そのような事態だけは避けねばなりません。中小企業の資金繰り支援のために、政府や各都道府県、金融機関は中小企業に対する経営相談窓口を設け緊急融資などを行っています。これらを利用して危機を乗り切るのも一つの方法ですが、情報提供が十分ではなく、阪神淡路大震災東日本大震災の時のように融資を必要としているところに貸し渋りで融資が回らないという事態だけは避けてもらいたいものです。