中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

休日の本棚 「知」を読む

f:id:business-doctor-28:20200212111831j:plain

おはようございます。

今日は、「知の逆転」(NHK出版新書)と「知の最先端」(PHP新書)を取り上げます。どちらも、現代最高の知性といわれる人々にインタビューを試みそれをまとめたものです。

まず、「知の逆転」です。これは限りなく真実を追い求め学問の常識を逆転させた現代最高の知性6人に対し、元NHKディレクター吉成真由美氏が、人類の未来についてどのように予見しているか、インタビューしたものです。

  • ジャレド・ダイヤモンド…「銃・病原菌・鉄」「文明崩壊」(いずれも草思社)の著者 西欧の発展は、そこに住む民族の能力が他より優れていたから起きたのではなく、単にたまたま地の利が良かったことと、農業を可能にする動物・植物がその地域にまとまって生息していただけのことで、文明はわずかな決断の誤りによってもろくも崩壊するのです。文明崩壊には①環境に対する取り返しのつかない人為的な影響②気候の変化③敵対する近隣諸国との対立④友好国からの疎遠⑤環境問題に対する誤った対処が関係していると言います。そして5つの国際問題(①人口爆発核兵器国際紛争④環境問題⑤種の保存と自然環境保護)についての解決法にも及んでいます。
  • ノーム・チョムスキー言語学者・「普遍文法」理論の提唱者 「すべての言語には共通する数学的な普遍文法があり、人はあらかじめそれを持って生まれてくる」と提唱し、「エリートは必ずや体制の提灯持ちに堕する」として米国の覇権主義を批判しました。
  • オリバー・サックス…「妻を帽子と間違えた男」(晶文社)「火星の人類学者」(ハヤカワ文庫)の著者 脳の不調は思いがけずも見事なほどに深い物語を紡ぎ、その物語は人によって実に様々な色彩を持つとしました。
  • マービン・ミンスキー人工知能の父とも言われ、AI研究のほか哲学に関する著書も出す 膨大なメモリー力にばかり頼って方向を間違ったために、役に立つロボットを福島に送ることができなかった現在のコンピュータ研究を鋭く批判しています。
  • トム・レイトン…MIT応用数学科教授 数学者でありながら、アルゴリズム・暗号法・分散コンピューティングなど自らの理論を実践すべくインターネットの世界に乗り出しています。
  • ジェームズ・ワトソン…クリックと共にNDAの二重らせん構造を解明しノーベル生理学・医学賞受賞 DNAの二重らせん構造を解明し、コールドスプリングハーバー研究所を第一線の研究所に育てつつも、「二流の研究に時間と労力を費やすくらいなら死んだほうがまし」など正直な発言が物議をかもしてきました。

6人の知性が未来をどう見ているかを示してくれていますが、異なった見解を提示しているところもかなりあります。核を廃絶する以外に人類存続の可能性はないというチョムスキーに対し、ダイヤモンドは霊長類である人類にはもともと暴力性が備わっているので、人類の欲望を制御するために武器も必要になるがどうやってお互い使わずに済ませるか知恵を絞るしかないと言います。また、ワトソンは16歳くらいまでに人生の方向は大体わかっているので早い段階でアドバイスすることが大切というのに対し、サックスは人によって将来どうなるかは15歳位ではわからないから、その後の良い先生との出会いが将来を大きく左右すると言っています。ダイヤモンドは「人生に意味などない。われわれはただ存在するというだけ」と言い切りますが、全く悲観的で否定的でもなく、むしろ人間の問題解決能力に楽観的でm多様な価値観や多様性を受け入れています。この6人の知性の考え方から学べるところは多いと思います。

次に「知の最先端」です。「知の逆襲」が科学や文明に関する知性であったのに対し、こちらはどちらかというと政治・経済・経営に関する知性です。こちらはジャーナリストで執筆家の大野和基氏がインタビューしています。

  • シーナ・アイエンガー…選択の科学(文春文庫)の著者 自らの人生は運命に従ったからなのか、それとも選択の結果なのか。自分自身あるいは自分の置かれた環境を独力で変える能力である選択の原理を理解することは重要です。
  • フランシス・フクヤマ政治学者で歴史の終わり上・下(三笠書房)の著者 ネオコン新保守主義)の立場で、イデオロギー対立の終わりという新しいビジョンを示しました。
  • ダロン‣アセモグル…国家はなぜ衰退するのか上・下(早川書房)の著者の一人 国家はなぜ繁栄するのか、なぜ衰退するのかという本質論を知ることは、われわれの意識づけによって、国家が繁栄への道をたどるか衰退するかという結論は変わることをも示しています。
  • クリス・アンダーソン…雑誌WIREDの元編集者 インターネットの中のイノベーションに留まらず、製造業の在り方をも根本的に変革する「メイカーズ革命」とは?に答えています。
  • リチャード・フロリダ…トロント大学ニューヨーク大学教授 「クリエイティブ・クラス」という新しい価値を提唱し、グローバルに活躍できる人材こそがよくある都市の形成要因であるとしています。
  • クレイトン・クリステンセン…「イノベーションのジレンマ」(翔泳社)の著者 高性能の製品を開発し、市場をリードしていたはずの企業が技術でお鳥企業の新製品によってトップの座をいとも簡単に奪われる現象が「破壊的イノベーション」です。アップルやサムソンの勢いに押されている日本企業にとって自らを省みる良い機会になるはずです。
  • カズオ・イシグロ…小説家でノーベル文学賞受賞 人間とは何か、運命とは何かを問う作品が多いです。「私を離さないで」(ハヤカワ文庫)は、外界と隔絶された寄宿学校で過ごす子供たちが、自らの出生の秘密を知り成長する過程を描き出しますが、彼らはクローン人間で臓器を提供する存在として生を受けたという考えさせられる話です。 

f:id:business-doctor-28:20200301085033j:plain