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休日の本棚 タイムトラベル

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おはようございます。

昨日、33の思考実験で、「祖父殺しのパラドックス」に触れました。そこで、今日はタイムトラベル関連の本を取り上げます。

タイムトラベルと言えば、映画では「バック・トゥ・ザ・フューチャー」、村上もとかの漫画「JIN-仁」とそれを原作とするテレビドラマが有名です。過去や未来を自由に行き来する「時空もの」「タイムトラベルもの」は日常では味わえない世界を楽しめるので、映画やドラマで流行ります。

バック・トゥ・ザ・フューチャーでは「祖父殺しのパラドックス」に似た状況が出てきます。当然「祖父殺しのパラドックス」を意識して作られています。バック・トゥ・ザ・フューチャーは高校生マーティと科学者ドクのタイムトラベルをめぐる物語です。マーティーがタイムトラベルした年である1955年は、マーティの父ジョージが母ロレインと出会った年。ロレインの父がジョージを車ではね、救護のために自宅に運び込まれたジョージがロレインに一目ぼれするはずが、マーティーが父ジョージを助け代わりにはねられたために母ロレインは未来から来た息子マーティーに一目ぼれしてしまうのです。このままでは父と母が結婚することはなく自分が生まれないと悟ったマーティーが父と母の間を取り持つという話になります。

何度見ても面白い映画シリーズです。よくできています。

「時空もの」「タイムトラベルもの」の小説をいくつかあげます。

  • 筒井康隆著「時をかける少女」(角川文庫)…時間を超越する能力を身に着けた少女が様々な経験・体験を重ねていく物語で、原田知世で映画化され、内田有紀主演でテレビドラマ化されました。
  • 北村薫著「ターン」(新潮文庫)…ダンプと衝突した主人公真希、気付くと自宅の椅子に座っています。その日から、毎日同じ1日が繰り返します。次第に無気力、絶望感に陥る中、突如電話が鳴り・・・必死で希望を持ち未来を描こうとする真希。この作品は「時と人 三部作」のひとつで、「スキップ」「リセット」も時空をテーマにしています。
  • 西澤保彦著「七回死んだ男」(講談社文庫)…主人公の”僕”は1日を9回繰り返す「反復の落とし穴」に嵌っています。そんなある日、祖父が亡くなります。”僕”は祖父の死の真相を突き止めようとします。
  • 東野圭吾著「ナミヤ雑貨屋の軌跡」(角川文庫)…訳アリの3人が逃げ込んだ雑貨屋、そこは時空を超えた雑貨屋で、過去と現在との手紙のやり取りが可能だった。2017年に映画化された作品です。東野圭吾著「時生」(講談社文庫)も時空を超えた感動ミステリーです。
  • 重松清著「流星ワゴン」(講談社文庫)…外出が増え時に朝帰りする妻、中学受験に失敗し苛めにあい引きこもりになった息子、最悪な暮らしの中でリストラを受け「死んじゃってもいいかなあ」と絶望していた僕は、ある夜、5年前に交通事故で死亡した親子の乗る不思議なワゴン車に拾われ、時空の旅に出かけます。「泣ける」「感動する」と評判になった名作です。本当に泣けます。
  • 宮部みゆき著「蒲生邸事件」(文春文庫)…受験生の主人公孝史が受験のために上京し宿泊していたホテルで火災にあい、助けられたと思うと2.26事件の前にタイムスリップしていたという話です。

それでは、タイムトラベルと言うのは、映画や小説でもてはやされる絵空事・空想の世界なのでしょうか?実は物理学者がタイムトラベルについて真剣に研究しています。以前カルロ・ロヴェッリ著「時間は存在しない」を紹介した時にも書きましたが、時間は過去から現在、そして未来へと流れるものという考えは間違っているのです。物理学の原理・理論によれば、タイムトラベルを否定する理論や原理がないのです。

過去に行くには、情報を逆向きに送るという方法と時空の通り道が曲がっているところを進むという二つの方法があるのです。アインシュタイン特殊相対性理論では、第1のタイプの時間旅行(超光速による逆向きの因果関係)が可能であり、一般相対性理論では第2のタイプの時間旅行(時間的曲線を介した時間旅行)が可能というのです。

かつて車椅子の天才物理学者スティーヴン・ホーキングが「時間旅行が可能ならどうして未来から現代に来ている旅行者はいないのか」と言って「時間順序保護仮設」を唱えました。しかし、その後、タイムトラベルを不可能とする物理法則を見つけられず、タイムトラベルは可能かもしれないと自説を変えました。

第1の可能性のあるタイムマシンはワームホールを利用するものです。これはカリフォルニア工科大学のキップ・ソーン教授が提唱したものです。ワームホールとは空間内にできた仮想的なトンネルで、物理学者は一般相対性理論によれば存在可能であるとしています。別のタイムマシンとして考えられるものが回転する宇宙です。宇宙が回転していたら、そしてその宇宙を充分に速く周回することができれば、過去にいて出発した時よりも前にいるというのです。これは数学者ゲーゲルの見解です。第3の可能性が、無限に長い回転する柱の周りをまわっても出発した時よりも前に辿り着けると言います。これはゲーゲル解より早くストックムが気付きました。一番新しいタイムトラベルの解はプリンストン大学のリチャード・ゴッドが見つけました。2本の巨大な宇宙ひもが衝突する寸前にこの宇宙ひもの周りを素早く回ると時間をさかのぼることができるというのです。

どの説も今すぐに実現可能というものではありませんが、物理学の法則でタイムトラベルが可能だというのは驚きです。もしタイムトラベルが可能だとしたら、「祖父殺しのパラドックス」はどのように解決されるのでしょうか?

1つに考え方は、過去に行ってもただ過去の歴史を繰り返すだけなので、過去は変わらず実現されることはないというものです。第2の考え方は、自分が生まれる前の祖父を殺そうとしても何らかの不可抗力が働いて祖父を殺すことはできないというものです。第3が、並行宇宙、マルチバース(多宇宙)を前提とする考えで、祖父を殺した世界と祖父が殺されていない世界が枝分かれして並行して存在するというものです。突拍子もないような説ですが、ヒュー・エヴェレットが提唱した多世界解釈を前提とするもので多くの支持者がいる見解です。

こうした物理学の見解を眺めるのも面白いです。