中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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リーマンショックと比較して

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大阪 桜開花

おはようございます。

新型コロナウイルスの世界的拡大で、英国は3週間の外出禁止令を出しました。昨日、小池都知事は、「この3週間が分かれ道」としてイベントなどの自粛継続を呼びかけるとともに専門家対策班の「今後2週間余りで東京都の感染者が500人以上増える」という試算をもとに「事態の今後の推移によっては、都市の封鎖、いわゆる『ロックダウン』などの強力な措置を取る可能性」についても言及しました。今後日本における感染拡大がどうなるかはわかりませんが、そうした異常事態にならないようにしっかりとした対策を講じることこそ急務です。危機感をあおるのではなくしっかりとした対策を行い国民に安心を与えることが大切です。

今日はWedge(JR東海の雑誌)の「リーマンショックに比べ鈍い、政府の中小企業対策」を取り上げます。

新型コロナウイルスの感染拡大でヒトとモノの動きが止まり「コロナ不況」の長期化が懸念されています。新型コロナウイルスの経済への影響は、2008年に起こった「リーマンショック」と比較され、「リーマンショック級」とか「リーマンショック超」とか言われています。この記事は、今回の新型コロナウイルスリーマンショックの違いを明らかにして、政府の中小企業対策の鈍さを指摘しています。

まず、両者の大きな違いですが、リーマンショックは金融セクターから始まり、ほぼ同時に大企業、グローバルに広がり、そのあとで中小企業に影響が広がりましたが、新型コロナウイルスは、旅館・飲食・小売などのインバウンドから全国に広がり大企業にも影響が及ぶという展開になっています。リーマンショックの場合は「上」から「下」への流れに対し、新型コロナウイルスは「下」から「上」への流れです。大企業重視の政府の対応からすれば動きが鈍くなったのは当然のことでしょう。大企業にも影響が出始めて初めて本腰を入れるようになり後手後手の対策をとりようになったのです。

企業の倒産を見るとリーマンショックでは2008年に1万5646件、2009年1万5480件となり、その後2014年になってようやく1万件を下回るようになり減少してきました。2019年は消費税増税の影響もあり個人消費の落込みから8383件で前年よりも増加しました。これには昨年3月に終了した中小企業を対象とした金融円滑化法も影響していたと思われます。この記事では、今後の倒産についてはいつ終息宣言が出るかにかかっているとして、3月、4月に倒産が急増することはないが年間1万件を超す可能性があるとしています。しかし、世界的な感染拡大から早期に終息宣言が出るとは思えませんし、オリンピックの延期が確定的な状況では、早期に第3弾‣第4弾の中小企業対策を推し進めていかない限り、昨年度の消費税増税の影響と相まって倒産件数は急増しリーマンショック時を超える事態になりかねないと思います。

リーマンショックの時には政府は即座に30兆円の信用保証枠を設定し、金融円滑化法を制定して中小企業の経営支援に乗り出しましたが、今回は1兆6000億円の中小企業向け対策を発表しましたが動きが鈍いと言わざるを得ません。ようやく22日になって、政府はコロナ対策30兆円規模にすると発表しました。具体的にどのような対策が取られるかは未定です。早急に対策を打たないと経営者は疲弊し効果が薄れてしまいます。対策をとった時点で倒産回避できない企業が多数出ていたのではリーマンショック時より悪い数字になってしまいます。早急に中小企業に対する対策がなされることを期待します。

さらに、この記事は、倒産に至らなくても従来型の赤字リストラが増加するのではないかとしています。また、倒産よりも現実化するのが休廃業の増加であるとしています。休廃業というのは、人手不足や高齢化が経営の重荷になっている企業がコロナを契機に事業を継続するよりもたたんでしまおうと考えて事業を閉鎖することです。昨年度の休廃業は約4万件ありましたがコロナの影響で今年度は5万件を超えるのではないかとしています。その可能性は十分にあります。繰り返しになりますが、早急にしっかりとした中小企業対策が望まれるところです。

多くの中小企業及びその経営者は、新型コロナウイルスに立ち向かおうと必死に頑張っています。その中で、倒産という最悪の事態だけは避けたいがために「解雇」「賃下げ」などを行おうとしています。これは従業員にとっては死活問題になります。そこで新型コロナウイルスによる「解雇」賃下げ」が法的に有効なのかについて触れます。

整理解雇の正当性を判断する4要素が裁判例で認められています。新型コロナウイルスによる業績悪化の場合でもこの4要素は必要です。この4要素とは、①人員削減の必要性 ②解雇回避努力 ③人選の妥当性 ④手続きの妥当性 です。この4要素を総合的に考慮して解雇の正当性が判断されます。この場合特に重要になるのは②解雇を回避する努力を尽くしたかということです。すなわち、解雇せずに済むよう、別の部署や子会社への移動、解雇より前に希望退職を募るなどの努力をしたかということです。また、その際、雇用調整助成金の特例措置を講じたかも重要な要素になりそうです。この特別措置は、新型コロナの感染拡大に伴い、一部従業員の休業や一斉休業、濃厚接触者に銘じた休業などを対象に、その休業手当の一部に助成金が支給される制度ですが、こうした助成金制度を利用したかどうかも判断材料になりそうです。いきなり整理解雇に及ぶのではなく従業員のことも考えて、整理解雇はあらゆる措置を講じたのちの最終手段として考えてください。

正規社員に先立って、アルバイト・派遣社員・パートを解雇することは正当性が認められることはありますが、何度も雇用契約が更新され正社員と大差ない社員については合理的理由が必要です。

次に、「賃下げ」についてですが、合意がない限り就業規則を変更して一方的に給料を下げることはできません。ただ、給料の引き下げが少額の場合、引き下げが新型コロナの影響が見込まれる期間に限定される場合、新型コロナが終息した後に元に戻すなど、社員の不利益の程度が低く、手当がある場合には認められる場合もありそうです。

中小企業及び経営者の方々も倒産という最悪に事態を避けるべき努力してください。そのためにあらゆる方策を講じて下さい。しかしこれまで一緒に働いてきた社員のことも考えてください。この未曽有の危機を「ONE TEAM」として乗り切れれば、その先に明るい未来があるように思います。