中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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ベーシックインカムという考え方

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おはようございます。

英国世論調査会社の調べによれば、世界26か国で実施した新型コロナウイルスに関する調査で、感染予防対策として「通勤通学を避ける」と回答した日本人は18%にとどまり、世界中で最低だったということです。新型コロナウイルスに恐怖を感じている日本人は87%と最多ということなので、テレワークが浸透せず、通勤せざるを得ない現状を示しているように思います。

さて、今日は夕刊フジの「昭和に学ぶ”恐慌突破”の秘策!」を取り上げてみます。

先日、今回の新型コロナウイルスの影響は、1930年代の世界恐慌以来最悪の景気後退になるという話を書きました。この記事は、「その世界恐慌時に日本がとった政策に今回のコロナウイルスに伴う景気後退に対処できる策があるのではないか」ということです。

世界恐慌は、1929年10月に起こった米国の株式市場の大暴落に端を発し、欧州やアジアの資本主義国も工業生産や貿易が低下し、主要国が取った保護主義的な政策で世界経済が分断され、第2次世界大戦の素地を作ったとも言われています。

各国首脳の中には、今回の新型コロナウイルスとの戦いを戦時中にとらえる首脳もいます。上武大学教授で経済学者の田中秀臣氏は、「戦時の統制経済の手法にまねるべき点があった」とされ、「マスクも政府が転売禁止にしたうえで、生産から流通まで統制する」という方法があったと言われています。台湾はこうした手法でマスクの品不足に対応しました。最近のニュースで言えば、福井県がマスクを大量に確保し、県内全世帯にマスク購入券を配布するというのもこうした手法に似ているように思います。本来なら、政府がこうした手法を取り入れていればマスクの買い占め、マスク不足も解消できたように思います。

また、田中教授は、非常時に必要な経済政策について「自粛や休業が要請される中で、『仕事はないが解雇しない』『お客さんは来なくても倒産しない』ということが重要だ」として「国民にいかに犠牲を出さないかを考えることが必要だ」と訴えています。世界恐慌の際に,日本は昭和恐慌に突入し、輸出は激減、企業倒産や失業が増えました。この時犬養毅内閣で大蔵大臣(現財務大臣)を務めていた高橋是清は、国債を発行しそれを日銀に引き受けさせ、積極的な財政出動を行い、デフレ脱却を図りました。田中教授は、「高橋は、大蔵族の間にあった緊縮財政の考えをトップから否定し、デフレ脱却を金融政策と財政の協調でやっていくという点で斬新だった。当時は生活困窮者は自助努力が足りないと見られていたが、みんな一緒に助けあって経済を盛り上げ、窮地を脱しようとする発想の転換だった」と解説されています。

10万円の国民全員一律の現金給付に反対し条件付きの30万円給付にこだわったのは緊縮財政の考えを標榜する財務省・財務官僚・財務族の人たちでした。まさに昭和恐慌の時と同じです。麻生氏は高橋是清になれず、今回は公明党の山口氏が高橋是清の役を演じました。

昨日、10万円に現金給付が閣議決定されたことは良かったと思います。田中教授も「予算の組み換えは歴史に残ることだ」と評価されています。しかし、田中教授も言われるように、この10万円の現金給付策では2,3か月程度しか効果はないように思われます。この新型コロナとの戦いは下手をすると1年以上続く持久戦になりそうです。第2、第3の経済政策が必要となります。田中教授は、「国民の懐を潤す更なる策が必要になる」と言い、「国民一人当たり毎週1万円を給付するべーシックインカム(最低所得保証制度)の導入も注目されていいだろう。昭和恐慌当時以上に野心的な前例にとらわれない発想が必要だ」とされています。面白い策だと思います。

ベーシックインカムというのは、最低所得保証制度の一つで、政府が性別、年齢にかかわらず、無条件で、すべての国民に生きるのに必要な最低の金額を支給するというものです。4月5日、スペインの経済大臣が「ユニバーサル・ベーシックインカム」制度を導入すると発表し、新型コロナの感染拡大の脅威が去った後も継続するということのようです。また、フィンランドは、既に2年前から実験的にベーシックインカム制度を導入しています。このようにベーシックインカムに対し各国が関心を寄せています。しかし、ベーシックインカム制度を導入するに当たりその資金をどう捻出するのかという問題が出てきます。しかし、田中教授のように、一時的に、例えば新型コロナウイルスが終息するまでの間、実験的に行っても良いかもしれません。今は、こうした新たな試みが試せる時期ではないかと思います。ベーシックインカムという考え方が新たな社会保障、弱者保護に役立つかもしれません。