休日の本棚 その科学が成功を決める
おはようございます。
昨日の東京の感染者数が再び3桁112人になり、このまま減少傾向に転ずるという夢がかき消されました。しかし、高止まりしていることは事実のようなので、今日から始まるGWの過ごし方でGW後の生活が大きく変わることになります。外出を控え3密を避けてこのGWを家で過ごしましょう。「STAY HOME週間」です。
さて、引き寄せの法則やマフィーの法則などをはじめ自己啓発の本が今なお流行っています。このような自己啓発は科学的にどうなのか、自己啓発の真偽を科学的に検証し本当に役立つ方法を示してくれているのが、リチャード・ワイズマン著「その科学が成功を決める」(文春文庫)です。ワイズマンは英国ハートフォードシャー大学の心理学教授です。膨大な被験者のデータを分析する科学的アプローチを得意としています。本書も「本当に自己啓発は効果があるのか」についていくつかの実験が提示され分析されています。なかなか興味があって面白いです。
実験Ⅰでは、「『自己啓発』はあなたを不幸にする!」のです。プラス思考という考えは、マイナス思考を抑制しようとして却ってその考え(マイナス思考)に取り憑かれてしまうのです。そこで提唱されている方法は、効果の高い日記をつけること、小さな親切を実行すること、感謝の気持ちを持つことです。また、宝くじに当たった人は幸せになれないと言っています。幸せはお金で買えないということです。物を買う満足感は長続きしません。買うなら品物よりも体験を、お金を使うなら自分以外のことに使うということが提唱されています。更に人間の幸福感の50%は遺伝で決まっていて変えることはできないと言います。ここでは明るい気分になるために自分は幸せだと思って行動すべきと言っています。例えば、微笑む、背筋を伸ばす、楽しげに振る舞う…
実験Ⅱでは、「『面接マニュアル』は役に立たない!」です。調査・データ分析の結果、採用の決め手は会社への適性や仕事の能力ではなく好感度にあるのです。好感度を高めるために、「弱みは最初に、強みは後半に出す」のがよいとされています。ミスをしてもほとんど誰も気づかないのでミスを過剰に意識しないことも大事だと言っています。好感度アップの方法として、フランクリン効果としくじり効果が挙げられています。フランクリン効果とは、「誰かに親切を施した人間は、相手にもっと親切な行為をしたいと望む」ということで、「小さなことをお願いすれば、相手はもっと大きな親切をしてくれる」のです。しくじり効果とは、「完璧すぎる印象を与える人物がちょっとした失敗をすると人間的だとして好感度がアップする」ということです。また、傍観者効果についても述べられています。傍観者効果というのは「周りにいる人が多いと誰も助けてくれなくなる」ことです。自分以外の誰かが助けるだろうと責任の分散が生ずるのです。また、「力を借りたければ、まず力を貸すべし」と謳われています。無料のドリンクをサービスすればより多くの物が購入させることになったりキャンディーをサービスすればチップの額が高くなるというわけです。誰かに恩恵を施すと、相手はそれ以上のお返しをするということです。今回で言えば、自粛せよと言うだけでは不十分、しっかりと自粛させようとすれば給付金・補償などの恩恵が必要ということではないでしょうか。
実験Ⅲでは、「イメージトレーニングは逆効果」です。「プラス思考」の実践者はダイエットにも恋愛成就にも失敗する割合が高かった、「試験でいい点を取る自分」をイメージし続けた学生は逆にいい点が取れなかった、「ダイエット商品」を食べる人は逆に太ったというわけです。ではどうすればいいのか、まず小さな目標を立て、立てた目標を人に話し、目標を達成した時に起きるプラス面を考え、小さな目標が達成されるたびに自分にご褒美を出し、自分の立てた計画、進み具合、プラス面や自分へのご褒美について日記をつけることで成功への道は近づくというのです。
実験Ⅳでは「間違いだらけの想像力向上ノウハウ」です。「集団志向」は想像力の欠如を招く、人間の行動性向は簡単な暗示で大きく変わる、モダンアートを見るだけで想像力は引き出せるとされています。発想を柔軟にする方法として①違うことをする②視点を変える③遊ぶ④好奇心を持つノ4つが挙げられています。
実験Ⅴでは「婚活サイトに騙されるな」です。ハードルを高くして「いい女」を装う術は何の効果もなかった、マニュアル通りの会話をすると以西から最低の評価を下される、大勢の異性からよく思われようとすると逆に異性は逃げていくという実験結果などが紹介されています。
実験Ⅵでは「ストレス解消法のウソ」です。大声で叫んだりサンドバッグを叩いてもストレスは増すばかり、不愉快な体験のプラス面を書きつけることで怒りは収まる。自分は健康だと思い込むと本当に健康状態は改善されるということが実証されています。人は一生のうちに何度もつらい体験をし、不安になったり思い悩みます。こうした体験が昨日も書いたように怒りや苦しみや攻撃につながります。こうした気持ちを鎮める最もいい方法は、ペットと遊ぶこと。また「いいこと探し」と呼ばれる方法です。ストレスを解消するためにボクシングのグローブをはめたり叩いたりすると攻撃的な感情は高まり逆効果です。代わりにマイナスの出来事からプラス面を見つけようと努力すると怒りの感情を大幅に鎮めることが出来るというわけです。一分間でできるストレス解消法が載っています。①ほかの人のために祈る②クラシック音楽を聴く③太陽を浴びる④笑う です。
実験Ⅶでは「離婚の危機に瀕しているあなたに」です。いくら夫婦間で話し合いを重ねても関係改善に効果なし、夫婦で一緒にゲームをするだけで恋人時代の感情は甦る、ぎくしゃくした関係は自分たちよりダメな夫婦を思うことで改善されるということが検証されています。
実験Ⅷでは「決断力の罠」です。意思決定を集団で行うとリスクの高い決断になりやすい、人間は「したこと」より「しなかったこと」を後悔する、正直者とうそつきを見抜く絶対的方法は存在しないということが検証されています。集団は暴走するので大勢で考えるより一人で考えた方が優れた決断ができるというわけです。今回の新型コロナでも共産主義・独裁主義の中国が民主主義の欧米より強権力を発揮し封じ込めに成功したのもこうしたことからかもしれません。また、何でもやる方が後悔が少ないとされています。更に、「嘘をつくときに人は緊張する」というのも必ずしも本当ではなく急に口数や動作が少なくなった時が要注意だとされます。顔が見えない相手には嘘がつきやすいということから、オレオレ詐欺・振り込め詐欺で電話でころりと騙されるのも納得できるように思います。
実験Ⅸでは「『ほめる教育』の落とし穴」です。褒められて育った子供は失敗を極度に恐れるようになる、「我慢すること」を覚えた子供は挫折しても立ち直れる、子供を脅して注意すると逆に禁じられた行為をしたがるようになるということが検証されています。
実験Ⅹでは「心理テストの虚と実」です。筆跡鑑定による性格判断は間違いだらけ、人間の性格はある程度まで生まれた順番に左右される、性格は指の長さに現れるということが検証されています。人間の性格の基本要素は、「開放性」「勤勉性」「外向性」「協調性」「情緒安定性」の5つで「ビッグファイブ」と名付けられています。研究によると、持って生まれた脳の機能と育ち方の違いが人の基本的な性格に影響を与えるのです。外向性の高い人は大脳皮質の覚醒レベルが低く、外向性の低い人は大脳皮質の覚醒レベルが高いのです。また、人の開放性の度合いは生まれた順番に左右され、あとから生まれた子供は長子より開放的で、想像力や独自性、冒険心や反抗心に富む子供が多いというのです。指の長さに関して言えば、人差し指(2D)と薬指(4D)の比率で男性は薬指が人差し指より長く、女性はほぼ同じ長さだというのです。2D:4Dの比率が低い(薬指の方が長い)人は男性的特徴をより多く持ち、比率が高い(人差し指の方が長い)人は女性的な面が多いというのです。議論を呼びそうな考えで批判もありましたが、大規模な研究でこの説の正しさは実証されているというのです。比率が低い人の方が強靭な肉体を元運動能力も高いのです。また、別の研究では性格的な特徴にも及び、比率が低い女性は自己主張が強くリスクを冒したがるなど男性的な傾向が強いというのです。また音楽の能力は女性的な脳より男性的な脳と結びついており、優秀な音楽家は2D:4D比率が低いというのです。本当なのかと疑いたくもなりますが、なかなか面白いです。