中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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休日の本棚 中村天風

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おはようございます。

今日は中村天風を取り上げます。中村天風の説く天風哲学は、自己強化の哲学で、東郷平八郎から双葉山松下幸之助稲盛和夫といった各界の成功者に大きな影響を与えました。

天風は、明治9年に旧柳川藩主橘家の遠縁に生まれ、福岡の修猷館中学に入学するものの、柔道の試合に敗れた相手から闇討ちに遭い相手を刺殺し正当防衛は認められましたが退学になります。その後玄洋社頭山満に預けられ頭角を現します。日清、日露戦争で軍事探偵として満州、蒙古で活躍し、「人斬り天風」と恐れられたという逸話もあります。鉄橋に爆弾を仕掛けたり、馬賊と笑利あったり、コザック騎兵にとらえられ銃殺寸前に投げられた手りゅう弾に吹き飛ばされ九死に一生を得たりと波乱万丈の活躍をします。113人いた軍事探偵のうち日本に帰還したのは9人だけ、期間後が帝国陸軍の通訳を務めていましたが、奔馬性肺結核にかかり北里柴三郎の治療を受けましたが病状は悪化し、名医も匙を投げるほど重症化し、もはや死期を待つような状態になりました。「不治の病にかかった時、心はかくも弱くなるものか、弱い心を強くしたい」という思いで天風は止むにやまれぬ思いで人生探求の旅に出ます。国内はもとよりアメリカ、イギリス、フランス、ドイツの高名な医師や学者を訪ね教えを請いますが、納得のいく答えを得ることが出来ませんでした。失意のうちで帰路に立った船の中でヨガの聖人カリアッパ師と邂逅し藁をもつかむ思いで弟子入りしヒマラヤのカンチェンジュンガ山麓にあるゴーク村で2年半修行を行います。この修行を通じ「人間とは強いものである。信念を持って積極的に生きる時、人は奇跡をも起こす」という真理を発見し、それとともに病を克服したのです。

帰国後は、東京実業貯蔵銀行頭取、大日本製粉重役など5つの企業の経営に携わりました。その遊びも桁外れで「金を湯水のごとく使うという人はいるけれども金をまいて遊んだのは中村天風だけだ」嘆息させましたが、天風の心は晴れることはありませんでした。大正8年6月8日、「統一哲医学会」を創設、一切の社会的地位と財産を放棄し、この日から上野公園や芝公園で天風による辻説法が始まります。最初は聞く人はいませんでしたが、徐々に人が増えていきます。統一哲医学会は発展し、政財界の実力者も多く入会し、現在は「財団法人天風会」となっています。

中村天風自身の本も多数ありますが、その教え子らか書いた本が、天風の言葉を分かりやすく解説してくれていますのでそのいくつかを紹介します。

まず、神渡良平著「中村天風『幸せを呼び込む』思考」(講談社+α新書)です。帯に「『先が見えない時代』を照らす『暗夜の灯火』」とあります。今の時代にふさわしい本です。「「ありがとう」「ごめんなさい」がもたらす幸福」「心に『感謝』と「歓喜」を常に持てばあなたも『人生の主人公』になれる」とあります。「ありがとう」と「ごめんなさい」という言葉を唱えると言えば、ハワイの「ホ・オポノポノ」を思い起こさせます。「ホ・オポノポノ」は「ごめんなさい」「許してください」「ありがとう」「愛しています」の4つの言葉を唱え、悪い記憶を消していくというヒーリング方法です。

この本の中からいくつかの天風の言葉を挙げておきます。

  • 感謝と歓喜の感情は、宇宙例に正しい力を呼びかける、最高にして純なる合図ともいえる。否、それは、我々の運命や、健康や、成功などを建設し、また成就してくれる、造物主の力の流れを、いのちの中へ導き入れる「筧」のようなものである。だからこそ、何事にも感謝せよ、歓喜せよというのである(天風著「運命を拓く」講談社
  • およそ、人間の心の中の思い方、考え方という者、いわゆる「思念力」という者は、それはそれはすごい魔力のような力を持っているということを知っていなければ駄目だよ。魔力のような力を持って、もっともっと幸福に、もっともっと恵まれた人生に生きられるように生まれてきていながら、まだ意に満たない人生に生きている人が随分いるんじゃないかしら。だからそれを忘れないようにしなければ駄目だぜ。人間の地獄をつくり、極楽をつくるのも心だ。心は我々に悲劇と喜劇を感じさせる秘密の玉手箱だ。(天風著「ほんとうの心の力」(PHP))
  • 私は力だ。力の結晶だ。何ものにも打ち克つ力の結晶だ。だから何ものにも負けないのだ。病にも、運命にも、否、あらゆるすべてのものに打ち克つ力だ。そうだ!強い、強い、力の結晶だ。(「運命を拓く」)
  • 我は、今、力と勇気と信念とをもって甦り、新しい元気をもって、正しい人間として本領の発揮と、その本文の実践に向かわんとするのである。我はまた、わが日々の仕事に、溢るる熱誠を持って赴く。我はまた、よろこびと感謝に満たされて進み行かん。一歳の希望、一切の目的は、厳粛に正しいものをもって標準として定めよう。そして、常に明るく朗らかに統一道を実践し、ひたむきに、人の世のために役立つ自己を完成することに努力しよう。(甦りの誦句)
  • 人の心の奥には、潜在勢力という驚くべき絶大なる力が、常に人の一切を建設せんと、その潜在意識の中に待ち構えているがゆえに、いかなる場面においても心を虚に、気を平にして、一意専心この力の躍動を促進せざるべからず(「運命を拓く」)
  • 人の運命は常に見えざる宇宙霊の力に含まれている。したがって、宇宙霊の持つん王の力もまた、わが生命の中に当然存在しているのである。ゆえに、いかなる場合にも、またいかなることにも、怖れることなく、また失望する必要はない。否、この真理と事実とを絶対に信じ、恒に高潔なる理想を心に抱くことに努めよう。さすれば、宇宙真理の当然の帰結として、必ずや完全なる人生を作為される。今ここにこの天理を自覚した私は、なんと恵まれた人間であろう。否、真実、至幸至福というべきである。したがって、ただこの上は無限の感謝をもってこの真理の中に安住するのみである。(「運命を拓く」)
  • あなた方の心の中の考え方や思い方が、あなたたちを現在のあるがごときあなた方にしているんです。俺は体が弱いと思ってりゃ体は弱くなる。俺は長生きできないと思ってりゃ長生きできない。俺は一生不運だと思ってりゃ不運になる。つまりあなた方が考えている通りのあなた方にあなた方がしているんです。自分の念願や宿願、やさしく言えば、思うことや考えていることは必ず叶います。叶わないということは、原因が外部にあるんじゃない、みんな、あなたたちの命に与えられている心の重いよう、考え方の中にあるんだということを知らなきゃいけない。(天風著「盛大な人生」日本経営合理化協会)

また、特にビジネスマンや経営者にとって役に立つ本が合田周平著「中村天風と『六然訓』ー変革を実現する哲学」です。この本は、天風哲学を創建する転機となったと言われる中国の古典「六然訓」の言葉を元に天風に人物像と思考と行動を考察しています。

天風哲学の中心にあるのが「心身統一法」です。この方法について書かれているのが池田光著「中村天風 君だってここまでやれる!」(三笠書房)です。まず、積極的に生きるための方法として、①観念要素の更改法 ②積極精神養成法 ③クンバハカ法があります。観念要素の更改法には、㋐連想暗示法 ㋑命令暗示法 ㋒断定暗示法があります。連想暗示法では、毎夜、寝がけに、「明るく、勇ましく、微笑ましいことだけを連想する」のがよいとされています。命令暗示法では、鏡に映る自分の顔を見て、自分の望んでいる念願を命令口調で言う(例えば、「お前は・・・なる」)のがよいとされています。断定暗示法では、寝がけに命令暗示法で行ったことを翌朝断定的口調で暗唱する(例えば、「おまえは・・・だ」)のがよいとされています。積極精神養成法は、実在意識に働きかけ「プラスの思考回路づくり」を行うことで、明るくおおらかに、生き生きと勇ましく、溌溂颯爽と何人にも接し、不平不満を言わず、感謝の言葉に置き換えるのがよいとされています。クンバハカ法は、ヨガの用法で止息と訳され、「瓶に水を満たした状態」になるために①肛門を締める②肩の力を抜く③下腹に力を充実させるという3ポイントを同時に行い、④瞬時に息を止めるのです。

積極化した生命を統一的に活用するための方法として「安定打坐法」があります。これは、意識を一点に集中させるという天風流の座禅です。また、ほかにも呼吸操練という呼吸法と体操を組み合わせたようなものもあります。

天風の心身統一法は肉体と精神を同時に鍛えていこうとするものです。天風の言葉に触れると積極的な気持ちになれます。新型コロナで先が読めない時代に役立つ言葉が載っています。

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