中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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休日の本棚 ハイコンセプト

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おはようございます。

今日は、ダニエル・ピンク著「ハイコンセプト 『新しいこと』を考え出す人の時代」(三笠書房)を紹介します。本書は、大前研一氏が訳されています。

大前氏によれば、日本は「一億総中流社会」から中低所得層と高所得層という2つのピークがある「M型社会」に急激に移っています。こうした社会においては、①よその国、特に途上国にできることは避ける ②コンピュータやロボットにできることは避ける ③反復性のあることは避ける という3つを考えねばならないと言っています。今後は、途上国と競争するような仕事やコンピュータと競争する仕事は見込みがないということです。これからは創造性があり、反復性がないこと、つまりイノベーション、クリエイティブ、プロデュースといったキーワードに代表される能力が必要になるというのです。

社会はアルビン・トフラーの「第三の波」(産業社会から情報化社会へ)から「第四の波」であるコンセプチュアル社会へ移行してきています。この「第四の波」(情報化社会からコンセプチュアル社会へ)は既成概念にとらわれず新しい視点で物事をとらえ新しい意味付けを与えていくという流れです。これまでの社会や経済は「情報化の時代」で情報処理の技術や専門的な知識が重視されていましたが、これからの「コンセプトの時代」では創意や共感、総括的展望を持つことによって社会や経済が築かれる時代になるということです。

ピンクは、こうした新しい時代を動かしていく力は、これまでとは違った新しい思考やアプローチであり、そこで必要になるのは「ハイ・コンセプト」「ハイ・タッチ」であると言っています。

「ハイ・コンセプト」とは、パターンやチャンスを見出す能力、芸術出来で感情に訴える日を生み出す能力、人を納得させる話のできる能力、一見ばらばらな概念を組み合わせて何か新しい構想や概念を生み出す能力などです。「ハイ・タッチ」は、他人と共感する能力、人間関係の機微を感じ取る能力、自らに喜びを見出し、また他の人々が喜びを見つける手助けをする能力、ごく日常的な出来事についてもその目的や意義を追求する能力などです。技術や知識が重要視されてきた「情報の時代」を引っ張ってきた「左脳的能力」も重要ですが、これからの「コンセプトの時代」で大きく飛躍できるかどうかを決める重要な要素は「右脳的能力」だと言います。

ピンクは、こうした時代において、「仕事上の成功を収められるか」「生活に満足を得られるか」にとって必要な能力・資質は6つあるとして、「6つのセンス(感性)」と呼んでいます。この6つとは、①デザイン ➁物語 ③調和 ➃共感 ⑤遊び ⑥生きがいです。「コンセプトの時代」には、左脳主導の考え方を、この6つの「右脳主導の資質」を身につけることで補っていく必要があるのです。

  1. 機能だけでなく「デザイン」・・・商品やサービス、体験やライフスタイルにおいても、単に機能的なだけでは不十分。外観が美しく感情に訴えるものを創ることが必要。デザインとはビジネスであり、ビジネスとはデザインである。
  2. 議論よりは「物語」・・・情報とデータが溢れた今日の生活では議論を戦わせるだけでは不十分。説得、コミュニケーション、自己理解に肝心なのは「相手を納得させる話ができる能力」。
  3. 個別よりも「全体の調和」・・・これまでは、何かに焦点を絞ったり、特化したりすることが重視されてきた。これからはバラバラなものを一つにまとめる能力が必要。分析力ではなく総活力、つまり全体像を描き、バラバラなものを繋ぎと合わせて印象的で新しい全体感を築き上げる能力が重要。
  4. 論理ではなく「共感」・・・これからの世の中は論理だけでは立ち行かない。何が人々を動かしているかを理解し、人間関係を築き、他人を思いやる能力が必要。
  5. 真面目だけでなく「遊び心」・・・笑い、快活さ、娯楽、ユーモアが健康面でも仕事面でも大きな恩恵をもたらす。仕事でも人生でも遊びが必要。遊び心があると脳が活性化する。
  6. モノよりも「生きがい」・・・いまは物質的に豊かな世界に住んでいる。より有意義な生きがい、すなわち目的、超越、精神の充足を追い求めるようになっている。仕事でも精神性を持ち込んだ企業が伸びる。

こうして、この6つの資質を養う方法が紹介されています。そのいくつかを紹介します。詳しくは本書を見てください。

  1. デザイン・・・①気になったデザインは記録する。②思いついた悪いデザインの改良点を考える。③「デザイン専門誌」に触れる。➃買い物のチェックポイント…使用に耐え楽しく使えるものを選ぶ。他人の気を引くためでなく自分が喜びを感じられるものを選ぶ。
  2. 物語・・・①ミニミニ短編小説を書く。➁自分史を語る。③質の良い短編を読む。
  3. 全体の調和・・・①優れた交響曲を聴く。➁これまで気にも留めなかった雑誌を買う。③5つの線だけで自画像を描く(脳の右脳で描く)。➃良いたとえ話を書き留める。⑤何か心に訴えてくるものを見つけたらボードに貼り付ける(記録する)。
  4. 共感・・・①相手の感情を読み取る練習をする。➁ボランティアをする。③この人はどんな人?ゲーム(同僚や友人から、財布やバッグを借り(当人の名前がわかるものは除ける)持ち主がプライベート・仕事面・感情面でどのような生活を送っているかを当てる)。➃演技力を養う。
  5. 遊び心・・・①笑う。➁自分のユーモア度を測る。③漫画の「吹き出し」を空白にしてセリフを考える。➃発明に取り組む。⑤テレビゲームで遊びの感性を高める。
  6. 生きがい・・・①感謝・ありがとうを言う(感謝の気持ちが幸福感を増し、自分の存在意義をより深く実感させる)。➁「90歳になった自分の姿」を思い描く。③自分の精神性を測る。➃20-10テスト(もし何の条件もなく20億円の財産を相続したら、もし10年しか生きられないとしたら今の仕事・生活を続けますか?)。⑤瞑想する

これら6つの資質を養うことで、新しい時代に求められる全体思考が培われるというのです。

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