中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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従業員シェア

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おはようございます。

昨日の新規感染者数は、東京で41人、大阪で4人、全国で71人となっっています。東京の41人のうち10人が「夜の街」関連(接待を伴う飲食店)で、感染経路不明者は22人とのことです。この数にはこれまで新宿が行っていた集団検査の感染者数は含まないということなので、集団検査の結果を含めるとどの程度の数になるのか心配なところです。また、大阪ではミナミのバーでの感染がさらに広がりクラスター化しています。更に、これまで感染者数ゼロが続いていた滋賀県新潟県福島県宮城県で、26日~51日ぶりに新たな感染者が見つかっています。

こうした中、政府は、都道府県をまたぐ移動の自粛要請を19日(本日)全面解除し、コンサートなどのイベントや接待を伴う飲食についてもガイドラインを守ることを条件に休業要請を撤廃しました。東京都もこれに伴い接待を伴う飲食店などの営業が再開されます。「夜の街」関連の新規感染者が出ている現段階で緩和すれば、感染対策のガイドラインを守りそうにない新宿のホストクラブやキャバクラなどで、ますます感染者が出るように思います。それが地方に広がることが心配です。

また、政府は感染状況が落ち着いているベトナム、タイ、オーストラリア、ニュージーランドの4か国との間で出入国制限の緩和措置を進めることを表明しました。しかし、専門家によれば、冬の季節に入った南半球での感染拡大が予想されるとのこと、現時点では落ち着いているオーストラリアやニュージーランドも、これから本当に大丈夫かを気になります。インバウンドや観光業のためには段階的に出入国を緩和しなければなりませんが、国内外の感染状況を見極め慎重に行う必要があります。どうも経済優先で緩和が速いように思います。「緩和は早く、支援は遅い」では洒落にもなりません。中小零細企業個人事業主、生活困窮者は切羽詰まっています。支援こそスピードです。

さて、今日は、AERAの「コロナショック『解雇しか選択肢がない』を変える 雇用を守る『従業員シェア』の仕組み」を取り上げます。

新型コロナウイルスの影響で、需要が激減する企業もあれば、人手が足りない企業もあります。こうした状況に、従業員をシェアして雇用を守るというアイデアが出てきています。こうしたネットワークの構築は、人材の流動性を高め社員の成長にもなり、アフターコロナ・ウイズコロナでの新しい雇用の在り方の提言につながると期待されています。

このネットワークはレジャー関連のオンライン事業を展開する「アソビュー」の山野智久社長が「災害時雇用維持シェアリングネットワーク」構想を発表したことに始まります。一人でも多くの雇用維持を実現させるという思いから、社員の出向と受け入れを希望する企業を同時に募ると、多くの企業から「参加したい」と言う声が上がりました。企業間ネットワークを生かし、新型コロナの感染拡大で休業状態にある企業の従業員が、「巣ごもり消費」に伴う需要増で活況を呈する宅配やオンライン系の他業種で一時的に働くことで収入や雇用の維持を図るというものです。

山野氏のシステムの仕組みの概略は次に様なものです。企業間の人材マッチングは、登録メンバー内で閲覧・発信できるフェイスブックのグループ機能を利用し、元の企業に籍を置いて別の企業で働く「在籍出向型」で、出向期間は1年以内、給与は全額出向先が負担し、出向前の給与を原則維持するということです。

山野氏発案のネットワークは、現在、出向元企業が約10社、出向先企業が約50社で、受け入れ企業は新型コロナで急激な需要増となった遠隔医療やWeb会議システムなどの業務を展開するITベンチャー企業が主だということです。

こうした従業員シェアは、山野氏のネットワークだけでなく、国内外の様々な企業間で同時多発的に広がっています。タクシー利用者が激減する中、国土交通省はタクシー事業者に飲食などの貨物配送を認めました。それに伴い、飲食デリバリー「出前館」と業務提携したタクシーアプリ運営会社を通じ、日の出交通の「タクシーデリバリー」がスタートしました。タクシーとフードデリバリーのピーク時間が異なるため、タクシーの予約や路上の客がいないタイミングで出前館の注文を取ることができタクシーの減収を補うことが出来るというのです。

企業間の従業員シェアは契約内容によって雇用形態や給与システムは異なりますが、人件費は受け入れ側が支払うという点は一致しています。

従業員シェアに当たり重要なのは、労働者の権利が損なわれないことです。労働者には従業員シェアを拒否できる権利がなければなりませんし、それによって不利益処分がなされてもいけません。また、労働災害の際にどちらが補償義務があるか明確にされる必要があります。従業員シェアに当たり、契約内容を従業員にも提示し、従業員の同意のうえで行う必要があるでしょう。

このような従業員シェアの試みは、各企業が雇用を維持し、必要な時に人材をシェアできるという点では、コロナ後も残っていくように思います。労働者としても解雇という最悪の事態を避けることができますし、他社での経験がスキル向上に役立ち本来の業務にプラスになるという面もあるでしょう。

中小企業において、従業員の解雇という最悪の事態を避けるための最後の手段として、従業員シェアに登録し受入先を探すというのもよいかもしれません。