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休日の本棚 世界から猫が消えたなら

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おはようございます。

都道府県をまたいだ移動自粛の解除から1日経った週末、テレビのニュースやワイドショーでは空港や新幹線、夜行バスなど人が戻っている状況が映し出されていました。沖縄行きの飛行機も満席とのこと。観光地に人が戻るのは良い半面、蜜を避けなければ、再び感染が拡大します。 注意しながら新しい生活様式を守る必要があります。

さて、今日は、川上元気著「世界から猫が消えたなら」(マガジンハウス・小学館文庫)を取り上げます。

「世界から猫が消えたとしたら。

この世界はどう変化し、僕の人生はどう変わるのだろうか。

世界から、もし僕が突然消えたとしたら。

この世界は何も変わらずに、いつもと同じような明日を迎えるのだろうか。

くだらない妄想だ、とあなたは思うかもしれない。

でも信じてほしい。

これから書くことは僕に起きたこの7日間の出来事だ。

とても不思議な7日間だった。

そして間もなく、僕は死にます。

なぜそうなったのか。

その理由について、これから書いていこうと思う。

きっと長い手紙になるだろう。でも最後まで付き合って欲しい。

そしてこれは、僕があなたに当てた最初で最後の手紙になります。

そう、これは僕の遺書なのです。」ではじまる物語です。

月曜日。

30歳、郵便配達員の「僕」は、体調不良で単なる「風邪」と思って医師の診察を受けます。ところが、医師から、進行性の脳腫瘍で余命あとわずかを宣告されます。家に帰ると、自分そっくりの容姿をした「悪魔」が現れます。悪魔は「世界から一つ何かを消すと1日寿命が延びる」と告げ、僕の周囲にあるものを消すことを提案します。僕は、たまたま近くにあった電話を世界から消すことにします。悪魔は、電話を消す前に、1度だけ電話を使ってもいいと言い、僕は3年前まで付き合っていた元彼女に電話を掛けます。

火曜日。

僕は彼女との待ち合わせ場所に向かいます。彼女と再会し、思い出話や両親のことなどを話します。彼女は「あなたもうすぐ死ぬんでしょう」「最後にあなたの好きな映画を一緒に見よう」と提案します。彼女の「私が一番好きな場所は?」という質問に答えられなかった僕は、彼女と別れた後で「映画館」と気づきます。しかし、電話がなく彼女に伝えることが出来ません。また、家に戻ると、悪魔は「今度は映画を世界から消してしまおう」と提案します。

水曜日。

夢で見たチャップリンの言葉「人生は近くで見ると悲劇だけれど、遠くから見れば喜劇だ」「生きていくことは美しく素晴らしい。クラゲにだって生きている意味がある」。最後に見る映画を探すため友人が務めるレンタルビデオ屋に行き、「ライムライト」のDVDを借ります。だが、DVDディスクは入れ忘れられていました。僕は映画館に勤める彼女の元で、2時間の空白のスクリーンを鑑賞します。僕の心の中に家族と観た「ET」のストーリーと家族のこと、癌で亡くなった母のこと、疎遠になった父のことに思いを巡らせます。

木曜日。

次の悪魔の提案は世界から「時計(時間)」を消そうということでした。僕は時計屋を営む父のことが気になります。この日から飼い猫のキャベツが人間の言葉を話し出します。キャベツと散歩に行くと、時間にとらわれることなく日々の生活を送るキャベツの姿から人間がいかに時間に追われて生かされているかに気づきます。キャベツが自分を拾って育ててきた亡き母のことを覚えていないのに驚き、僕は僕と母・父、キャベツで行った最後の家族旅行の写真を見つめ思いに浸ります。

金曜日。

悪魔は僕に、世界から「猫」と消すことを提案します。僕はキャベツの前に飼っていて癌で亡くなったレタスを思い出し、レタスと同じように癌で死を迎えた母を回想します。そして、世界から猫を消してしまうことは、自分の家族とその記憶を消してしまうことだと思い、世界から猫を消すことに迷いを覚えます。キャベツの姿がなく、僕は走り回ってキャベツを探します。そして、彼女が務める映画館でその姿を見つけます。彼女は生前に僕の母から預かったという手紙を僕に渡します。その手紙には・・・

死ぬまでにしたい10のこと

「もう私の命は、あとわずかだと思います。

だから、私が死ぬまでにしたい10のことを考えてみることにしました。

旅行に行きたい、おいしいものを食べたい、オシャレしたい・・・いろいろ書き出していくうちにわたしは思いました。

私が死ぬまでにしたいことは、本当にそういうことなのかと。

それで改めてゆっくりと考えてみたら、気づいたことがありました。

私が死ぬまでにしたいことは、全部あなたのためにしたいことだったのです。

あなたの人生はこれから何年も続くでしょう。

辛いことや、悲しいこともたくさんあると思います。

だから、私はあなたがこれから生きていくうえで、辛くなったり、悲しくなったりしたときに、それでも前を向いて明日を生きていけるように、あなたの素敵なところを10個伝えておきたいと思います。

そしてこれをもって、私の”死ぬまでにしたい10のこと”に変えさせてもらいます。

あなたの素敵なところ

あなたは人が悲しいときに、一緒に泣くことができる。

あなたは人が嬉しいときに、一緒に喜ぶことができる。

そのかわいらしい寝顔

笑うとできる、小さなえくぼ

不安なときに、ついつい鼻を触さわってしまう、その癖

必要以上に周りに気を使ってしまう、その性格

私が風邪を引くと、いつも家事を張り切ってしてくれたあなた

私が作った料理を、本当に美味しいそうに食べてくれたあなた

いつもすぐに悩んで、考え込んでしまうあなた

でも悩んで、悩んで、最後には正しい答えを出すことができるあなた

あなたの素敵なところ、これだけを忘れずに生きてください。

これさえあればあなたも幸せだし、あなたの周りの人もきっと幸せだと思うから。

今までありがとう。そしてさようなら。

いつまでもあなたの素敵なところが、そのままでありますように」

僕の心の中に「何かを得るためには、何かを失わなくてはね」「ほとんどの大切なものは失われた後に気づくのよ」と言う母の言葉が蘇ってきます。

「母さん、死にたくないよ。死ぬのは怖いよ。でも、母さんの言うとおりだ。何かを奪って生きていくのはもっとつらいよ」

キャベツが人間の言葉で言います。

「お代官様、簡単のことでござるよ。拙者を消せばよいのでござる」「拙者はお代官様に生き続けてほしいでござる。どうせ拙者は猫の身。いつかはお代官様より先に死ぬ身でござる。それにお代官様のいない世界でこれから生きていくのは辛いのでござる」

母の手紙の最後には「あなたの父さんと仲良く暮らしてください」と書いてありました。

土曜日。

僕は、世界から猫を消さないことに決めます。そして最後の日を迎えるために支度を始めます。片付けの最中に見つけた思い出の詰まった箱を見つめ、子供の頃や父母のことに思いを巡らします。そして、父に手紙を書くことにします。

日曜日

父宛ての手紙を書き終えて投函し、キャベツを預けるために父の元へ向かいます。

この小説は、佐藤健主演で映画化もされています(観ていませんが)。

この小説の中に出てくる「悪魔」とは?「猫」とは?何でしょうか?

人生にとって大切なものは何かを考えさせてくれるよい本です。

 

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