休日の本棚 本多清六を読む
おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で429人と2カ月ぶりに400人を超え、そのうち東京は242人と過去最多を更新しています。昨日の新規感染者は、1都1道2府20県に広がり、ここしばらく新規感染者0を続けてきた県にも再度感染が広がっているようです。
小池都知事は、感染者の増加に検査件数が増加したためと言っていますが、専門家からは疑問の声が上がっています。第2波の入り口と言ってよい状況です。それにもかかわらず、政府は経済優先に大きくかじを取り、昨日イベント制限の緩和に踏み切り、プロ野球やJリーグにも観客を入れての開催がスタートしました。大阪吉村知事は、イベント開催について「5000人全員が感染するわけではない」との発言をしています。イベントに参加した5000人全員が感染することが問題ではなく、イベントに参加した人の何人かが感染し、そこから他の人に感染させることが問題なのです。何を寝ぼけたことを言っているのかという感じです。経済を優先したい気持ちは分かりますが、ここは「しっかりとした感染対策をして開催してもらうので安心してください」と言うべきところです。これまで総理候補などと持ち上げられてきていましたが底が見えた感じです。政治家にとって重要なのは言葉です。新型コロナ禍のような未曽有の危機では国民をいかに安心させる言葉を使えるかが政治家にとって重要なのです。
こうした中、政府は、GoToキャンペーンの前倒しを発表しました。本来8月とされていたGoToキャンペーンの開始を7月22日に前倒しするというわけですが、感染者数が増加し再度緊急事態宣言を発出すべきではないかという専門家の意見もある中で、なぜこのタイミングなのか全く理解できません。GoToキャンペーンが実施されればさらに移動が自由となり感染者が全国に広がることは目に見えています。政府の考えることは理解できません。こうした政策に国民が乗らないことです。旅行代金の半額の補助があったとしてもコロナにかかったのでは元が取れません。慎重に判断して行動すべきです。
さて、今日は本多静六著「成功するためにシンプルな話をしよう」(三笠書房 知的生き方文庫)を紹介します。本多博士は、日本の林業の創始者で東京帝国大学教授・名誉教授で大富豪です。1866年に埼玉県に生まれ、11歳で父が亡くなり祖父母に育てられ苦学します。東京山林学校(現東京大学農学部)に入学・卒業、本多家に婿養子に入りドイツに留学し、2年でドクトル・アカデミーの学位を所得して帰国、東京帝国大学の助教授から教授になって、日本初の林学博士になります。日比谷公園の設計者であり、国立公園の設置にも尽力、山林、土地、株の売買で巨万の富を築いた蓄財家としても有名です。2024年の新一万円札の顔になる渋沢栄一や大隈重信とも親交を深めます。本多博士は常に「人生で最高の幸福は家庭円満と職業の道楽化である」と言っていて、これに感心した渋沢栄一は青年たちに向かい「諸君も本多博士の説に従って大いに職業の道楽化をやりなさい。そして道楽のかすと言ってよい金や名誉などをうんとためなさい」と語ったと言われています。
本書は、大きく、第1章「より良い自分をつくる」シンプルな話 第2章 今より「稼ぐ人になる」シンプルな話 第3章 「確実に頭がよくなる」シンプルな話 第4章「人を育て、人を動かす」シンプルな話 第5章「器の大きな人になる」シンプルな話の5章に分かれます。そのポイントは、第2章の最後にまとめられています。それは
①努力して職業を道楽化する。
➁努力と生活の単純化によってそのかすをためる。
③そのかすを精神的享楽に使う。
の3つです。ここで言う「職業の道楽化」は、本書を解説している竹内均氏は「自己実現」の意味だと言っています。マズローの欲求5段階説によれば、人間の欲求には回想があり、低次のものから高次のものへと、生理的欲求→安全欲求→社会的欲求(所属と愛の欲求)→尊厳と自尊心の欲求(自我の欲求)→自己実現の欲求と段階的に上がっていきます。その最高位に位置するのが自己実現です。
第1章では、幸福になる秘訣が語られます。本多博士によれば、自分の努力によって精神的・物質的欲望が満たされる状態が当面の幸福です。最高の幸福状態は、他人のために働いて、しかもそれが自分のためにもなるという状態です。
第3章と第4章では、静甲及び人付き合いの秘訣が語られています。第5章では、ゆるぎない自分を作る「品格」の磨き方が語られます。
成功の第一条件は勤勉です。それには身体の健康が必要であり、また希望と自信を失わず努力を継続することが重要です。勤勉に働けばやがて本多博士が言う「かす」つまり金や名誉・信用が貯まります。そして、本田博士は持論である4分の1天引貯蓄法(月給その他の毎月の通常収入の4分の1と臨時収入全額を天引きし貯蓄する)について語っています。
人間は一人では生きられないので人付き合いの問題が生まれます。第3章で ①縁の下の力持ちになれ ➁他人とは長所でもって交われ ③言動を慎み反感を買うな ➃施した恩は忘れ、受けた恩は忘れるなと言ったことが述べられています。
第4章、第5章ではさらにこの考えが詳しく述べられています。本多博士によれば、人生の最大の幸福の一つが温かい家庭である。お互いの長所と短所を認め合い、長所を伸ばし短所をなくすこと、独断と偏見を退け感謝と報恩が大事だと言っています。また、「頼まれごとはよく考えたうえで受ける」と「一度引き受けたことは、どんなに些細なことでもできるだけ親切に確実に行う」と言うことが重要です。
第3章から5章までをひとまとめにすれば、成功と人付き合いの秘訣は、「勤勉」「正直」「思い上がりをしないこと(謙虚さと感謝)」の3つにつきます。第1章と第2章の「職業の道楽化(自己実現)」をするための具体的方法が第3章から第5章で述べられている「勤勉・正直・謙遜と感謝」と言うことになります。
人生の幸福や成功が何か、それをどのようにして手に入れるかは今も昔も変わりません。この本に書かれていることは極めてシンプルです。いつでも実行することは可能です。時代を超えた良い本です。