中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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中高年の活躍阻む3つの壁

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おはようございます。

昨日の新規感染者数は全国で598人、そのうち東京は131人、大阪は87人地、前日よりは大幅に減少しています。しかし、その理由は、26日が日曜で民間の検査機関が休日だったからです。東京ではこのところ4000件以上(366人という最多数が確認されたときは約5000件)のPCR検査が行われていましたが、27日は864件と約5分の1にとどまっており、陽性率は15.1%という高い数字になっています。平日の検査数と同じ件数の検査が行われていたとすれば、計算上は600人の新規感染者数ということになってしまいます。東京でも大阪でもいくつかのクラスターが発生しており、保育施設や老人ホームでクラスターが出来ています。幼児や高齢者、基礎疾患を有する人への感染が広がれば重症化する恐れがあります。市中感染を食い止めなければなりません。政府が経済優先に目一杯舵取りし碌な感染防止策を取らない中(安倍首相はまだ8000万枚のアベノマスクを配布するようですが)、感染防止対策に各都道府県の知事たちは、限られた権限の中で頑張っておられるように思います。大阪府の吉村知事は、「高齢者の第1波での致死率は約15%、高齢者で基礎疾患のある方は約30%、相当高い。いま若い層から高齢者に広がっていることに危機感を持っている」として、「感染の震源地(夜の街)により効果的で戦略的なピンポイントの対応をとることを検討し、決定したい」と話しています。夜の街関連が元々の震源地であることは明らかですが、東京を見てわかるとおり、他所へ感染が広がる前に対策を講じないと家庭内、職場内に感染が拡大し、ピンポイントの対応が遅きに失する事態になりかねません。早急に対応することが必要です。

さて、『2020年、人類の半数が伝染病に』という1990年5月2日付の岐阜新聞朝刊に掲載された記事が「今日の新型コロナを予言している」「見出しがショッキング」などSNSで話題となっています。この記事は、世界保健機構(WHO)が地球温暖化健康被害を予測したもので、「地球温暖化マラリアなどの伝染病の大流行をもたらし、世界人口の半数近くが伝染病にかかる恐れがあること」と「オゾン層破壊で人間の免疫力を低下させる可能性があること」を指摘しています。現在のコロナ禍とは細部で異なりますが、「2020年」「伝染病」「免疫力低下」というキーワードが現在の状況をほうふつさせるものとなっています。また、熱波による死者の急増や海面上昇による洪水被害などにも警鐘を促しています。このところの毎年のように各地で起きる豪雨や洪水は地球温暖化の影響によるところがあるのかもしれません。

今日は日経Biz Gateの「中高年の活躍阻む3つの壁 テレワークが崩す」を取り上げます。昨日、家電量販店のノジマが最長80歳まで従業員の雇用を延長できるようにしたというニュースがありました。雇用契約の上限を今までの65歳から80歳に大幅に引き上げたのです。現場販売員のノウハウを長く活用することが狙いですが、高齢者の就業機会の確保は2021年春から企業の努力義務になることもあり、シニア人材の活用は企業にとっての重要課題となっています。労働集約型の小売業界では人手不足への備えとして雇用年齢の引き上げが拡がっていくものと思われます。

高齢者の就業機会については、定年延長を段階的に実施し、2025年に定年65歳とすることになっており、また70歳までの就業機会確保は努力義務となっています。ノジマが80歳まで雇用するとしたのは大胆かつ思い切った決定だと思います。

この記事では、中高年が継続して働くうえで大きな壁が3つあり、それがネックになっていたと言っています。

まず、第1の壁は、「能力の壁」です。ただ、ここで言う「能力」とは、知的能力のことではありません。人間の知的能力は脳を使い続けている限りいくつになっても発達すると言われています。確かに、想像力や記憶力が低下することもありますが、経験がそれを上回ってカバーします。問題は肉体的能力の衰えです。特に、毎日、満員の電車に乗って通勤するのは重労働になり、それだけで肉体的に疲弊してしまいます。

第2の壁は、「制度の壁」です。第一線で活躍できるのは何歳まで?」と言うアンケートで、欧米では「年齢に関係ない」との回答が約7割だったのに対し、日本では「30歳後半」「40歳台」が全体の6割以上を占めました。こうした欧米と日本の違いは「制度」によると言うのです。能力主義の欧米に対し、年功制が残る日本では能力と無関係に50歳前後まで給与が上がり続け、60歳の定年まで大きく下がることはありません。いっぽう中高年の知的能力は実際に低下しなくとも、上昇する給与との間におのずと開きが出てきます。給与が上がっている割にそれに見合った貢献ができていないということです。待遇との比較によって「能力の限界」とか「能力が衰えた」とみなされるのです。能力主義の欧米では、70歳以上、ときには90歳以上で能力を発揮して活動している人がいます。要するの日本では、「能力」ではなく「制度」が限界を作っているのです。

第3の壁は、「文化の壁」です。「長幼の序」の文化が残る日本では、年長者の扱いが大変だということです。年長者の部下は扱いにくいという声が聞かれます。部下であっても年長者は立てないといけない、敬語で話さなければならないということがでてきます。また、年長者の側でも年下の上司に指示されるのを好ましく思わない人が少なくなく、逆に年下の周囲の人に過剰な気づかいをする年長者もいます。

高齢者の雇用機会を確保するためにはこうした3つの壁を崩さないといけませんが、この記事ではテレワークがこうした壁を壊してくれると言っています。

第1の「能力の壁」、つまり通勤の負担はテレワークで軽減され、高齢者が肉体的な能力の衰えを感じることなく知的能力・経験を如何なく発揮できるというわけです。

第2の「制度の壁」もテレワークで崩されるというのです。テレワークによって、一人ひとりの分担を明確にして仕事のアウトプットで評価する方向に進みます。また、テレワークで組織がフラットになり、必然的に部長や課長と言った役職も減り、年齢や勤務年数によって給与や地位が決まる年功制が維持することが困難になるというのです。

第3の「文化の壁」も、テレワークなら体面的な接触がないので年長者のプライドが仕事の生涯になることは少なく、良い意味でドライな関係で働けるというのです。

テレワークの導入が、この記事が指摘する3つの壁を崩す可能性は否定できませんが、そもそも高齢者に与えられる仕事がテレワークに適したものかどうかが問題です。また、テレワークを行うにはそれなりのパソコンやインターネットといったITスキルが必要です。テレワークに適したスキルを高齢者に教育することから始めないといけない場合もあり、高齢者の生産性という課題が出てくることもあります。

この記事に書かれているようにテレワークの導入が高齢者雇用をばら色にするとは限らないような気がします。最初に述べたノジマも高齢者に求めているのは高齢者の知識や経験を生かした接客です。テレワークで行う仕事ではありません。

段階的な定年延長と70歳までの雇用機会確保の努力義務が課せられ、各企業は中高年の雇用機会を拡大する必要に迫られます。どの企業でも中高年の知識と経験が生かせる場所があるはずです。それはテレワーク出来る仕事かもしれませんしテレワーク出来ない仕事かもしれません。あえてテレワークにこだわる必要はありません。満員電車での通勤がネックなら時差出勤でいいのです。中高年を雇用し適材適所に配置することによって企業の生産性や効率性も上がるはずです。中高年の雇用に躊躇するのではなく、積極的に活用しましょう。