中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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プロトタイプ駆動

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おはようございます。

昨日の新規感染者は、全国で1240人となり、うち東京は309人、大阪193人です。その他、神奈川(89人)、沖縄(83人)、熊本(37人)の3県で過去最多となっています。東京では重症者が増えてきています。また夜の街関連は10人しかおらず、家庭内や会食での感染が増え、着実に市中感染が広がっています。こうしたところを見れば、酒の提供を伴う飲食店の時短営業要請がどこまで有効かと疑問を持ちます。大阪ではまだミナミを中心とした夜の街関連の感染者が多く、エリアに限定してピンポイントの対策がある程度は硬貨があるかもしれません。しかし、人は移動します。ミナミからキタへ移動するのも簡単でミナミの感染がキタへと広がらないことを願います。

さて、昨日、吉村大阪府知事は、「嘘のような本当の話」として「ポビドンヨードを含むうがい薬で陽性率が下がったとうがい薬が新型コロナウイルスに有効である」と発表しました。しかし、40人ほどの患者を対象とした研究で、データ量も少なくどこまで信用できる話か疑問です。ネット上でも、多くの医師や研究者から疑問や批判の声が上がっています。

「水うがいだけでも口の中のウイルス陽性率は減るでしょうし、口(唾液)は陰性でも鼻腔や気道にはウイルスが残って『偽陽性』を増やしてしまうことにつながります。」

つまり、口内からウイルスが消えても、気道や肺、鼻の中にはウイルスが残っている可能性があって、唾液によるPCR検査で正確な結果が出なくなると言う悪影響が出ます。こうした「偽陽性者」が「陰性」として市中で移動すれば市中感染を広げることにつながります。

通常の風邪の予防としてうがいの有効性は認められていますが、水うがいの方がポビドンヨードを含むうがい薬より発症を抑えられたという研究結果もあります。ポビドンヨードは触れる部分にしか殺菌効果はなく、また使いすぎるとがん発症の可能性があることも指摘されています。吉村知事の「勇み足」といった感がぬぐえません。厚労省も「現時点で効果があるというのは時期尚早」としています。

吉村知事の会見後、全国の薬局でうがい薬の買い占めが始まり、うがい薬が品薄になっています。ネットでもうがい薬の高額転売が横行しています。しかし、これは薬機法(旧薬事法)違反の犯罪です。ポビドンヨードを含むうがい薬は「第三類医薬品」に該当し、都道府県知事の許可なく販売した場合には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金となります。注意しましょう。また、販売だけでなく販売目的で所持していただけでも犯罪となり同罪です。

さて、今日はJBpressの「日本の停滞 計画と段取りにこだわり過ぎるから?」を取り上げます。

日本経済全体の成長速度は、世界と比べると極めて遅い、日本が止まっているように見えるのはどうしてでしょう。世界経済はこの30年で大きく成長しました。アメリカのGDPは約30年間で3倍強になっています。一方、日本は1.5倍にしか増えていません。5倍以上に成長したタイ、7倍に成長したフィリピン、30倍の成長を遂げた中国やベトナムと比べると、止まっているように見えます。

日本よりも早く成長した国では、先進国へのキャッチアップだけでなく、ゼロから新しいビジネスが生まれています。例えば、中国やインドでは、銀行口座を持っていない人のためにネット決済を行い、個人融資を行うフィンテック企業が登場していますが、日本では既存の銀行が幅を利かせているため、そのような企業・ビジネスは成長していません。かつて製造業中心のアメリカでは、産業の中心は非連続型の価値創造にシフトしています。今までにないプロトタイプ、例えばインターネットで物が買える、友達と緩くつながれるといったものは元から存在しないため、そこを目指そうという人もいません。プラッシュアップしてできるというよりも、ひたすらトライアル&エラーを繰り返して来た結果、偶然パズルのピースがはまるように、またはいじり回していた知恵の輪がよく分からないけど解けたときのように生まれてくるのです。

プロトタイプを作り続けることによって、何か新しものが生まれてくるのです。ここでプロトタイプというのはもともと「原型」という意味で試作品のことです。

頭でっかちな計画を立てるよりも、手を動かして試作品を作りそれを修正すると言うプロトタイプ駆動とそのためのコミュニティ(プロトタイプシティ)の時代が来ていると言います。ここにいう「プロトタイプシティ」はかつてのシリコンバレーのような都市です。中国の深圳がこのプロトタイプシティに当ります。

残念なのは、こうした世界の流れに日本が遅れているということです。日本企業は「連続的な価値創造」には強く、長期的な計画に則り少しずつ製品を改良し品質を上げていくということには強いのです。しかし、プロトタイプ駆動によって今までにないプロトタイプやサービスを生み出す非連続的な価値創造への取り組みは、まだ主流にはなっていません。世界では、ハードウェアでもサービスでもフィンテックでもユニコーン(評価額10億ドル以上、設立10年以内の非上場ベンチャー企業)と呼ばれる巨大スタートアップ企業が出てきていますが、日本ではごくわずかです。

その理由として、日本の場合、会社や働き方の仕組みが古く、非連続的価値創造の時代に適した仕組みに変わっていないからではないかと指摘しています。日本の場合、もともと大きな目標や計画が先にあって、その計画通りに事を進めていくという手法には長けています。だから、現在でも、ダムや高速道路といった大規模建築物を効率的に組み上げると言うことでは世界最高峰の水準にあります。

だが、非連続的価値創造の時代にはプロトタイプ駆動がどうしても必要です。まず最初に長期計画があるのではなく、取りあえず手を動かして何らかの試作品を作り、それに手を加え修正していくことで、これまでなかった新しいものが生まれることになるのです。何度も手を動かしラフスケッチを行い、未完成品でも「出来上がるとどういうものか」想像できるところまで作り切り、それを前提に実際やるかどうかを考え、しっくりこなければ作り直しながらやるということです。

「再集計を創るためではなく、アイデアを確認するために形にする」「しっくりこなかったらゼロに戻してもいい」そのように考えて手を動かしていくと、最初に始めたところから全く違う正解にたどり着くこともあるのです。

創造性が重要な分野、絵画や彫刻、マンガや音楽と同じようにすることです。日本は、マンガやアートで優れた成果を上げているのに、その手法をビジネスに導入することに関心がないのではないかと言っています。

確かに、日本人は生真面目で、与えられた仕事をこつこつとこなしていきます。自らのアイデアや創造性を表に出すことなく、定められた計画と手法・手順に則って決まったものを創ることには長けています。しかし、世界の趨勢から言えば、インターネット、IT技術、AIといった新しい技術や分野では、決まった手法や手順はありません。試行錯誤の結果新しいものが生み出されるのです。ビジネスにおいてアイデアや創造性が必要になってきています。

今、日本人に必要なのは、「右脳を生かした全体的な思考能力」と「新しいものを発想していく能力」です。かつては「答えがあった世界」で、欧米に追いつけ追い越せでよかったのですが、今は「答えのない世界」です。そこでは自らどうやって生き抜いていくかを考え、自分で答えを見つけるしかないのです。