中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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吉村知事「うがい発言」で再びリーダーシップを考える。

 

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おはようございます。

昨日の新規感染者は、全国で1485人、うち東京360人で各世代に広がっているほか家庭内感染、会食による感染が夜の街関連を大幅に上回ってきています。神奈川119人、千葉76人と過去最多となり首都圏全体に感染者は増加しています。また、大阪も225人と過去最多となり、兵庫61人、京都20人と大阪近郊でも増加しています。兵庫県では宝塚歌劇団クラスターが発生しています。そのほか、愛知140人、福岡136人、沖縄73人と、ほぼ全都道府県で感染者が確認されています。

新型コロナウイルスに感染した人の国内での死亡率は7.5%で、欧米の20%に比べ非常に低いことが判明していますが、その理由は明確ではありませんが、欧米に比して糖尿病や肥満の割合が少ないことが挙げられています。これまで、死亡リスクの高い高齢者や基礎疾患保有者への感染がうまく抑えられていることが日本の死亡率を低くしているのでしょう。ただ、他のアジア諸国では死亡率はフィリピンとともにワーストですが、これも他のアジア諸国に比べれば肥満や基礎疾患保有者が多いということで説明がつきそうです。

先日の吉村大阪府知事のうがい薬発言に対し、多くの批判がなされ大阪府庁にも抗議の電話がかかっているようです。会見場のテーブルにうがい薬をずらりと並べ「嘘のようなホントの話」と切り出せば、見た人はうがい薬が新型コロナに効くと思ってしまうのは当然のことです。あとでどうつくろっても言い訳にしかなりません。勇み足は反省すべきです。先日も述べましたが、リーダーに必要なことは過ちを素直に認めて反省し、臨機応変に軌道修正することです。

この件で、大阪府保険医協会が、「医療現場を混乱させる度重なる知事の安易な会見発言 知事の発言は住民の命と健康にかかわることを肝に銘じて猛省を」という表題で、緊急声明を出しました。その内容を抜粋すれば、

「多くの医療関係者が耳を疑った。ポビドンヨードを使いすぎると甲状腺機能を低下させることや、これまでの研究で、感染予防にはポビドンヨードより水うがいの方が優れているとの結果が出ており、ポビドンヨードの使用は口腔内の成城細菌を破壊し、希釈が不十分だと粘膜障害を招く可能性があることは、医師・歯科医師・薬剤師などの間ではよく知られている。ポビドンヨードは、現在では簡単に購入できるが、本来は医師や歯科医師、薬剤師の指導が必要な医薬品である。」

ポビドンヨード新型コロナウイルスに効くという臨床結果も出ていない。厚労省も『効果があると言うには時期尚早』と言っている。真矢、1日4回のうがいによりコロナ感染疑い患者に対するPCR検査や抗原検査の『偽陽性』が増加する可能性があるのではないか。・・・そもそもPCRが陰性であることと、感染を制御することは全く別問題である」

「知事は報道側の姿勢の問題を指摘しているが、・・・『効く』『効果がある』『治験の対象者は〇〇』などと発信できるような内容ではない。吉村知事の発言は『知事』と言う立場からすればあまりにも無責任な発言で、患者からうがい薬の処方について『保険で処方は可能なのか』『投薬期間はどこまで可能なのか』など質問され、ただでさえコロナ感染症への対応にひっ迫する医療現場は混乱させられている。・・・発言が軽率なばかりでなく、特定の商品を並べた会見は、宣伝であると誤解を招く点からも政治家の会見としては不適切である。関連会社の株が急騰し、インサイダーを疑う声が出ても仕方ないことである」

「『買占めをしないで』と言っても・・・『効果がある』との発言は当然住民の気持ちをあおることになり、現に放送直後からポビドンヨードが薬局で売り切れが続出し、薬事法違反が疑われるネットでの転売も出ており、医療機関はすでに入荷できない状態である」

「医療をめぐる、特に医薬品やワクチンなどには、国民に提供できるまで複雑な基準や規制、ルールがある。それは知事という立場であっても無視することはできないものである。衣料品の不足は人命にかかわることである。吉村知事には自身の発言が招いた事態を鑑み、知事の発言は住民の命と健康にかかわることを肝に銘じ、猛省してもらいたい」

長々と引用しましたが、大阪府保険医協会の声明は至極まことでごもっともと言うしかありません。大したエビデンスもなく、高々40人程度の臨床結果だけで軽率にうがい薬が新型コロナに「効果がある」ように発言し、医療現場に混乱を招いたことは反省してもらわなければなりません。人気に対するおごりが出たのかもしれませんが気を付けてもらいたいものです。

先日(7月29日)の「コロナ禍のリーダーシップ」で書いたようにリーダーには次の4つが必要です。

1 緊急に行動する。

2 透明性をもってメッセージを伝える。

3 過ちには生産的に対応する。

4 常にアップデートする。

新型コロナ禍のような危機的状況で、緊急に行動に移すということはリーダーとして重要なことです。政府と同じく経済優先ににかじ取りして吉村人気が翳りを見せてきている中で、今回の発言は、声明のごとく軽率で「勇み足」というしかありません。吉村知事は「効果があるとは言っていない」と言っていますが、それなら更なる検証を待って発表してもよかったはずです。単に社会や医療現場を混乱に陥れただけという感が否めません。

また、ストーリーとして情報を伝達することは重要ですが、それにはエビデンスに基づいた透明性のあるメッセージでなければなりません。メッセージのどこかに人がエネルギーを注げるような希望が持てる要素が必要ですが、そこにウソがあってはいけません。

危機的状況では、リーダーがいかに賢明でも過ちは生じます。過ちを犯したことは問題ではありません。リーダーは後ろ向きな自己防衛や言い訳、責任を他社に押し付けてはいけません。過ちを素直に認め、批判に耳を傾け、臨機応変に対応して軌道修正すべきです。

吉村知事の今回の批判に対する対応は(今回に限らずこれまでもですが)、うまく言葉をはぐらかし、問題をすり替え、批判者に反論し、あるいは他の者に責任転嫁するという姿勢です。今回で言えばマスコミの報道の仕方を問題視し、マスコミに責任転嫁しています。法廷での論争ならそれでよいでしょうが、政治の舞台ではそれでは収まりません。吉村知事が、この府保険医協会からの批判にどう対応するか見ものです。その対応の仕方で、リーダーとしての資質があらわになります。

吉村知事の発言の仕方、批判に対する対応などリーダーの在り方やリーダーシップを考える際に参考になるように思います。経営者の方々も、会議での発言やそれに対する反対意見に対する対応、間違った判断に対する軌道修正の仕方など、ご自身に置き換えて今一度考えてみてください。