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休日の本棚 宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らないあなたの強み

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おはようございます。

昨日の新規感染者は481人で、そのうち東京162人、神奈川60人、大阪60人、愛知33人などとなっています。全体的に緩やかな減少傾向にありますが、4連休の人出や密状態を考えると今後再び増加傾向に転ずるのではないかと心配します。

さて、今日は、古野俊幸著「宇宙兄弟とFFS理論が教える あなたの知らないあなたの強み」(日経BP)を紹介します。

先週は「鬼滅の刃」でしたが、今日は「宇宙兄弟」です。「宇宙兄弟」は「鬼滅の刃」と同じく人気コミックで映画化もされています。「鬼滅の刃」は読んだことはありませんが、「宇宙兄弟」は実写版の映画は観ました。主人公の南波六太を小栗旬、弟の南波日々人を岡田将生、ヒロインの伊東せりかを麻生久美子が演じています。物語は、日本人初の宇宙飛行士という夢を追いかける兄弟の話です。幼いころから南波兄弟の夢は宇宙飛行士になること、弟にの日々人は宇宙飛行士となり月面長期滞在クルーとして期待と注目の的となっていますが、弟の六太はメーカーをクビになり無職。ここから話は始まります。色々な人の協力を得て、六太はJAXAの宇宙飛行士選抜試験を受け、再び幼いころの夢に向かい歩み始めるという成功物語です。そうした中、弟日々人が乗った月面探査機が消息を絶ちます。ネタバレになるのであらすじはこれくらいにします。

宇宙兄弟とFFS理論が教える あなたの知らないあなたの強み」は、「宇宙兄弟」の登場人物のうち25人をピックアップしその個性を明らかにすることで「人の個性への理解を強め、個性の活かし方を学ぶ」ことを目的としています。ビジネスパーソンによくある悩みや問題を取り上げて、「宇宙兄弟」に登場する個性豊かなキャラクターがそれにどのように立ち向かっていくか、人の個性を分析する「FFS理論」を用いながら解説しています。

FFS理論というのは、質問に答えることで、5つの因子(凝縮性・受容性・弁別性・拡散性・保全性)とストレス状態が数値化され、それらの数値から、自分の個性に影響を与えている因子を特定し、自己理解が深まるとともに、他者との違いも明らかになって、すれ違いの原因やよりよいコミュニケーションの取り方・他者との関係構築まで分かるというものです。この本では読者向けにFFS診断が用意されています。私も無料診断してみましたが当たっています。

まず5つの因子ですが、次の5つです。

  1. 凝縮性因子・・・固定・強化させようとする力の源泉となる因子で、自分の中に確固たる価値規範を持ちブレない一方で、自分の価値観に合わないものは受け入れない頑固さを持っています。
  2. 受容性因子・・・無条件に受け入れる力で、優しく面倒見がよく、柔軟性があるのが特徴です。頼もしい存在ですが、周りの要望を全部受け入れてしまいキャパオーバーになることもあります。
  3. 弁別性の因子・・・白黒はっきりさせる力で、合理的で計算的であることが特徴です。常に合理的に考え割り切ることが出来る一方で、機械的で冷たく見られる面があります。
  4. 拡散性因子・・・飛び出していこうとする因子で、活発で行動力があります。挑戦的に取り組む面がある一方で飽きっぽいために回りを振り回すタイプです。
  5. 保全性因子・・・維持しながら積み上げる力でプランを立てコツコツ進めるのが得意です。周りと強調しながら行動することが出来ますが、慎重なためになかなか行動できないときもあります。

複数の質問(80)に答え、その答えの数で順位付けをします。第一順位だけを見るのではなく、重要なのは順番と第二因子・第三因子の差分だそうです。

宇宙兄弟」の南波六太がFFS診断を受けると、「受容性・保全性・弁別性」が高い人となります。変革よりも身近なところから目標を立てて、確実に進めていくことが得意な人、弁別性の高さから合理的な判断ができる人と診断されるでしょう。仕事面では周囲との関係を大切にしつつ、継続的に工夫改善を行うことに向いていて、一つの枠組みの中で無駄なく合理的に仕上げていくタイプ、安定期には重宝されますが、変化や挑戦には尻込みするので変革期には向いていないということになりそうです。

因みに私は「受容性・拡散性・保全性」が高く、登場人物で言えば、北村絵名タイプでした。柔軟で面倒見がよく和気藹々と盛り上がることが好きですが、慎重なところと大胆なところが共存していて動きたいけど動けないところがあるというのです。

日本人の特徴は、まず「受容性」が高いこと、そして「保全性」が高いことです。日本の社会は「受容性と保全性が高い人は55%、受容性と拡散性が高い人は45%」で構成されています。私は「受容性・保全性・拡散性」と日本人の典型のように見えますが本来対極にある「保全性」と「拡散性」とが共存しているため全体の4%しか存在しない日本では少ないタイプのようです。

保全性」の高い人と「拡散性」の高い人は、思考行動パターンが大きく異なります。

両者の中で生じる誤解や衝突が日本の社会・組織や企業の中でコミュニケーションを妨げたり、個人の成長の足を引っ張ったりしています。逆に言えば、「保全性」タイプと「拡散性」タイプが理解し合えれば、無用な摩擦は減り、お互いの意図するところをくみ取りやすくなり、仕事がスムーズにはかどり成果や生産性が高まることになるはずです。「拡散性」の高い人の方が行動力があって成功しやすそうですが、他人を思いやり慎重な「保全性」タイプの方がエースに成長することが多いのです。まさに「宇宙兄弟」も「保全性」の典型である南波六太が成長する成功物語となっています。

保全性」と「拡散性」は両極にように見えますが、どちらも「好き/嫌い」「快/不快」「興味あり/興味なし」といった「情動」が判断軸となる個性です。そして「やりたい」と情動が人を突き動かすのは同じで、そのあとの行動が異なります。「すぐやる」のが「拡散性」タイプで、「確実にやりたい」が「保全性」タイプです。「保全性」の高い人は確実に準備してから行動に移すのです。対照的な「拡散性」を無理してまねる必要はありません。「保全性」の強みは、情報を幅広く集めて体系化することです。自分の専門領域で徹底的に情報を集め理論武装できるなら、それが自信となって前に踏み出すことが出来ます。

同じチームで助け合って同じ目標を達成しなければならないのに、お互いライバル視して仕事に支障が出るということがあります。南波六太と真壁ケンジはどちらも「保全性」が高いタイプです。本来仲間意識の強い「保全性」同士はすぐに打ち解けた関係になります。ところが、「月に行けるのはお前ら2人のうち1人」と告げられると両者の関係が変わります。こうなると「保全性」の特徴の一つである「相手に負けたくない」という心理が出てきます。「保全性」の高い人は組織の中で身の安泰を守りたいという思いが強いのです。そのためには周りの人よりも少しでも良い地位を確保したいという心理が働きます。ここで重要なのはお互いに足を引っ張り合うことではありません。どうしても「保全性」の人は発想が「内向き」になりますが、前向きにお互い切磋琢磨して成長させていくということが大切です。

今まで述べてきた「保全性」「拡散性」は気質に由来するのですが、日本人に多い「受容性」は後天的な性質です。「凝縮性」の高い人は自分の価値観がはっきりしているため、自分の夢や目標をしっかりと持っています。それに対して相手軸で物事を考える「受容性」の高い人は、どうしても周りの状況に合わせてそれを柔軟に受け入れようとするために自分の夢や目標を語ることが苦手です。主人公の六太もその典型です。一緒に選抜試験に臨む者には宇宙飛行士を目指す明確な理由・動機があるのに六太にはそれがありません。六太は落ち込みますが、それでいいのです。「誰かのため」に人生をかけることが出来るのが「受容性」の高い人なのです。六太が前職をクビになったのも弟の日々人のことを悪く言った上司に頭突きをくらわせたためでした。「人の喜びが自分の喜び」これが「受容性」の大きな強みです。

「受容性」の高い人にとって「決められない」ということが大きなストレスになります。しかし、「決められない」というのは立派な個性であり武器です。「宇宙兄弟」で、六太は宇宙飛行士選抜試験の3次審査に進みます。ここでは5人一組になって課題に取り組み、その様子は快石カメラで審査員が見ています。最大の難関は、5人で課題に取り組みながら最終日には5人の中から全員一致で宇宙飛行士にふさわしい者を2人を選ぶということです。選び方は自由です。わざとトラブルが仕掛けられチームにはギスギスした雰囲気になります。六太はメンバーを信じ互いの融和を図ろうと動きます。どのようにして2人を選ぶのか、話し合いなら、各メンバーの「弱点」を突く消去法にならざるを得ません。六太も悩み、「話し合い」という名の消去法に決まりかけたとき、六太が提案したのは「じゃんけん」でした。色々と議論を続け決められずに最後に残ったのが「じゃんけん」と言う方法です。その意味では「じゃんけん」も「質の高い意思決定」となるのです。十分な議論もなく多数決で決めたとしたらその結果は質の高い意思決定とは言えません。

 「受容性」の高い人の面倒見と丁寧さを武器にすればいいのです。異論を切り捨てるのではなく、会話を重ね、同意を得るプロセスを回した結果、自然に全員が納得できるプランに昇華できれば何も切り捨てなくてもいいのです。

 本書では、以上のほかに、5つの因子に基づいて、上司と部下との関係や理想とするリーダーの在り方などが「宇宙兄弟」を例に説明されています。

FFS理論は、ソニー、ホンダ、リクルート、LINEなど800社で導入されています。

興味のある人はこの本でFFS診断を行ってみてください。自分の強みが分かりそれを伸ばせる方法が見つかるかもしれません。またほかの人との付き合い方や強いチームや組織を作る方法が分かるはずです。

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