中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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携帯電話値下げとドコモ口座不正出金問題

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で331人、そのうち東京は88人、神奈川38人、大阪67人などとかなり少なくなっています。休日で検査数が少ないとはいえ、緩やかに減少しているのは明らかです。あとはこの4連休での各地の人出がどう影響するか、来週あたりからの感染者数を見る必要があります。緊張と弛緩の繰り返しに応じ感染者数も増減を繰りかえしながら進んでいきます。来週あたりは4連休の気の緩みから増えるのは仕方ありませんが、その増え幅が重要なように思います。余りにも大きく増えることになると、第3波への入り口に向かい突き進んでいくのではないかが心配です。

政府は来月初めから、全世界からの新規入国の受け入れを再開する方向で検討に入りました。観光客は除外されるようですが、ビジネス関係者に限らず長期滞在者、留学生なども含まれるようです。いまだに新型コロナは世界的に猛威を振るっています。先日、世界中の1日の感染者数最多を更新したばかりで、アメリカ、ブラジル、インドなどではいまだに収まりが見えず、イギリスでは再拡大しています。こうした中で旅行者を除外するとはいえ、入国を一気に解禁するようなことになれば、急激な感染拡大につながるように思います。自国の感染状況だけでなく、世界の状況を見ながら段階的に行うべき政策です。まだまだ時期尚早と言わざるを得ません。

さて、菅新総理は、自身の念願の課題である「携帯電話料金値下げ」に積極的に乗り出し、武田良太総務相も「国民生活に直結する問題なので、できるだけ早く結論を出す」「1割程度では改革にならない。海外では健全な競争を導入して70%下げたところもある」と意気込んでいます。

こうした携帯電話料金の値下げは、利用者・国民にとっては喜ばしいことですが、手放しで喜べない現状があります。過剰な値下げは、日本の携帯大手3社の海外勢との技術革新を巡る競争力をそぎ、5Gと言った次世代モバイル通信網の整備に遅れを生み出す恐れがあります。

菅首相が、携帯3社を「過度な利益で不健全」と指摘するのは、東京電力東京ガスと比較しているからです。しかし、ここで比較されるべきは、世界の携帯電話会社のはずです。アメリカの2社AT&Tとベライゾン・コミュニケーションの売上高営業利益率は19.2%に対し、日本の大手3社の平均は18.9%とほぼ互角です。しかし、日本の3社の営業利益は合計2兆7900億円に対し、米国2位のベライゾン単独で2兆9400億円です。菅首相が言うように「過度な利益で不健全」とまでは言えません。携帯電話だけでなくインターネットをはじめとしたデジタル化・DXは日本にとって急務です。日本はこれらの分野でアメリカのみならず中国や韓国にも後れを取っています。米・中・韓と対等に渡り合うための競争力をつけることが大事です。携帯電話料金の値下げの影響は携帯電話会社のみならずそれを製造するメーカーにも影響を与えます。国内メーカーのソニー富士通、シャープも中国のHuawei、Oppo、韓国サムソンのGalaxyなどに後れを取っているのが現状です。

携帯電話料金は若干高いようにも思いますが、各国と金額だけで比較しても意味がありません。実際の通信速度や繋がりやすさ、周波数の不感地域の多寡、トラブル時のカスタマーサービスの充実度などを含めた比較が必要です。そうしたサービス面を加味すれば日本の携帯電話料金はサービスに見合った適切なものになっているようにも思うのですが、それは人それぞれの感じ方・考え方です。

問題は、米・中・韓で昨年から新世代の通信規格5Gを用いた商用サービスが本格的にスタートしています。日本では5G携帯が発売されているのに、サービス地域は限定的で大きく遅れています。こうしたことに対する危機感から、安倍政権は次の世代の通信規格6Gの開発競争に向けて補助金交付や税制優遇を打ち出しました。今政策的に必要なのは、これを引き継いだうえで日本が世界に太刀打ちできる競争力を築き上げることです。携帯料金値下げは国民からすれば喜ばしい反面、却って日本経済の停滞を長引かせることになりかねません。過度な値下げ圧力は政策の方向性を間違っているのではないかと懸念します。今必要なのは国際競争力の回復と強化です。過度な値下げは、利用者が受けることが出来るサービスの質の低下にもつながります。

現在、NTTドコモの電子マネー決済サービス「ドコモ口座」などを用いた不正な預金引き出し問題が底なし沼の様相を見せています。別のスマホ決済サービスやスマホ決済事業者と連携する複数の銀行で新たに被害が見つかるなど、数珠つなぎで被害が拡大しています。今後、益々被害が拡大していきそうです。ここでの問題は、「ドコモ口座」を開設せずスマホ決済を行わない人が標的とされているということです。ドコモ口座と紐付けできる35の金融機関の口座を持っていれば、誰でも被害者になり得るのです。スマホ決済は銀行とスマホ決済事業者が連携して提供するサービスですが、ゆうちょ銀行に限らず、一連の問題対応では、金融機関側と決済事業者の足並みはそろわず、お互いに責任の押しつけ合いをしています。今重要なのは責任の押し付け合いではなく、協力して原因究明と対策を行うことです。

そして、その際に最も重要なのは、デジタル化やDXに際しての情報管理の在り方です。この点がしっかりされていないと情報漏洩は防げません。今回の不正出金もどこから情報が流出したかは別として情報漏洩が端を発しています。

携帯料金の引き上げ圧力が強まり携帯電話の料金が引き下げられると携帯電話会社の収益・利益は減少します。それに伴って開発費も減少し情報管理システムの構築にも遅れが出てきます。そうなると今後もこうした不正出金やサイバー攻撃は増加します。携帯電話料金の値下げ圧力が強まれば、当然サービスの質が低下することを忘れてはいけません。そうなれば個人情報管理にもほころびが出来ます。

あらためて言うと、今必要なのは携帯料金の値下げではなく情報管理システムの構築、インフラ構築を支援していくことです。このことを忘れて携帯電話の値下げにばかり目を向け本質を見誤るなら、いくらデジタル庁を創設してみたところで、日本のデジタル化やDXは進まず、今後も情報漏洩は続いていきます。デジタル化・DXの要は情報管理です。情報管理抜きにデジタル化は進みません。