中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

雇用政策と中小企業政策

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で485人、そのうち東京195人、神奈川58人、大阪66人、愛知34人などとなっています。厚生労働省新型コロナウイルス対策について検討する「アドバイザリポート」は、直近の感染状況について、「7月27日から29日をピークに下降に転じたが、その傾向が鈍化している」と分析しました。先月末以降、複数の自治体で感染者数の減少が止まったり増加に転じたりしていて、「注意が必要」としています。特に、東京、大阪、愛知では、1人が何人に感染させるかを示す「実効再生産数」が「1」をはさんで前後しているとのことです。社会活動が活性化する中、会食や職場、家庭などでの感染が増加し、4連休での人の移動の影響を含め、今後の感染拡大を警戒しなければなりません。そうした中、10月からGoToトラベルに東京が加わり更に小池都知事は都独自の上乗せ案を検討しているようで、感染を全国的に拡大させる恐れがあるのではないかと危惧します。政府は政府で、入国制限を大幅に緩和し、さらに経済優先策を講じ、東京オリンピックパラリンピックを是が非でも開催したいようです。まだまで時期尚早ですし、経済優先にかじ取りしすぎれば感染再拡大につながり東京オリンピックどころではなくなります。条項を冷静に分析しながら臨機応変に段階的に緩和していくしかありません。

中小企業庁は、中小企業が行う体温を測定するサーモグラフィーの設置など新型コロナ対策での設備投資に対し、防災投資特例の対象を拡大することで検討に入りました。中小企業が災害対策として設備投資した額の20%を経費として上乗せし、課税所得を減らせる税制優遇制度がありますが、2020年末までとなっていた期間を延長したうえで、新型コロナウイルス対策まで適用対象を拡大するということです。新型コロナで疲弊している中小企業に対する支援・対策は必要なことです。些細なことですが、こうした点から支援を広げることも大切です。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、解雇や雇い止めが9月23日時点で6万人を超えました。6月以降は4週間で1万人のペースで増えていましたが、8月31日に5万人を超えてから3週間強で6万人に達し増加ペースが加速しています。夏場の「第2波」での感染拡大で収束もめどが立たずリストラに踏み切らざるを得ない企業が相次いだのが原因だと思われます。そして解雇や雇い止めにあう労働者の多くは非正規労働者です。業種別には飲食業、続いて製造業、小売業、宿泊業となっています。年末にかけて倒産、休廃業が増えると予想され、失業者も増加することが予想されます。倒産、休廃業に至らなくても生き残りをかけてリストラに踏み切る企業が更に増えるでしょう。今は非正規労働者が対象とされていますが、今後は正規雇用の労働者までに広がっていくことが懸念されます。

いま菅政権の中小企業政策に注目が集まっています。それは、菅首相が持論とする「最低賃金の引き上げ」です。これを強硬に実施しようとすると経営基盤の弱い中小企業の経営が成り立たず「倒産への道」を進むことになりかねません。菅首相は、デビット・アトキンソンの信奉者です。アトキンソンは、生産性の低い中小企業・小規模零細企業が日本をダメにしているとして、これら中小・零細企業の淘汰を主張しています。菅首相アトキンソンの説に便乗し、中小・零細企業の淘汰に乗り出すようなことになれば(そのために最低賃金引上げを利用すれば)、日本経済を下支えしている中小企業の多くが倒産することになり日本経済は更なる危機に陥ります。今必要なのは、最低賃金を強硬に引き上げることではなく、中小・零細企業が健全な経営ができて最低賃金を引き上げることが出来る、経営基盤や経営環境を整備することです。「引き上げありき」ではなく、賃金を上げることが出来る環境づくりと生産性を高めることが出来る経営基盤に向けての支援です。こうしたことが行われれば自然と中小企業の再編がなされます。「中小企業の再編」というのは、中小企業の淘汰や中小企業を潰すことではありません。

ダーウィンの進化論の柱である「自然選択説」では「たくさん生まれた多少違いのある個体のうち、たまたま環境に適応したものほど生き延びる確率が高くなる」「環境に適応する特徴を保持している個体ほど生き残る確率は高くなる。一方、非適応な個体は生き延びる確率が低いので次第に淘汰される。このような変化が何世代にもわたって繰り返されることで、生物は環境に適応していく」のです。ところが最近では、遺伝子組み換え、ゲノム編集が行われ、合成生物まで作られようとしています。これは神に対する冒涜ではないか、優生学の復活につながらないかと様々な議論があります。

企業についても同様です。競争の中で環境に適応できた企業が生き残っていくのです。国家が強硬に潰すことをすべきではありません。国家が常に正しいわけではありません。それこそ国家の思い上がりです。一旦国家に潰された企業は再生できないのです。国家が行うべきことは、企業同士が公平に競争できる環境を整備することです。環境が整備されれば、企業は切磋琢磨して競争し、生き残る企業と淘汰される企業が自然と別れてきます。これでよいのです。整備された環境の中での自由な競争で中小企業の再編もできるのです。国家が権力を行使するなら、必ずそこに恣意が入ってきます。議員と関係がある企業が優遇され本来生き残るべき企業が淘汰されることになります。菅関連企業、二階関連企業などが優遇されることになるでしょう。これでは安倍政権下で安倍関連企業が優遇されてきたのと同じことになってしまいます。

日本における中小企業は日本経済を下支えしているなくてはならない大切な存在です。国家が政策的に潰すことなどしてはいけません。政府が行うことは中小企業が健全な経営が出来る環境の整備とそのための支援です。最低賃金引上げの話に戻れば、最低賃金を引き上げてもいいと思える環境を整備することです。環境が整備されれば、中小企業の経営も健全になり自然と賃金が引き上げられます。そしてダメな不健全な企業は自然淘汰されます。

中小企業政策と雇用政策は車の両輪のようなものです。菅政権には雇用維持を前提とした中小企業政策を行ってもらいたいものです。