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休日の本棚 諸葛孔明の兵法

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で576人、そのうち東京195人、神奈川79人、愛知38人、大阪62人、北海道25人などとなっています。阪神球団の5選手が感染しクラスター化していますし、川崎(神奈川)の警察署など各地でクラスターが発生しています。政府分科会の尾身会長は、全国の感染状況について「下止まりしている」との見解を示し、10月1日から東京が追加されるGoToトラベルについて4つある感染状況のステージがより深刻な段階の上から2番目に当たるステージ3になった場合には「除外することも含め躊躇なく行う」と提言しました。千頭辛い書いていますが、政府は10月から入国制限を大幅に緩和するようですが、アメリカでは感染者総数が700万人を超え死者も20万3000人を超えていますし、ブラジルでも感染者総数470万人、死者14万人超となっています。7月末をピークに減少傾向にあるものの日本の比ではなくとてつもなく大きい数字です。入国制限緩和で再び海外からの新型コロナウイルス流入が起きるのではないかと懸念します。各国の感染状況を見て新規感染者数が少ない国から段階的に入国制限を緩和していくべきです。すべての国を一律に緩和するのは時期尚早です。

今日は高畠譲著「<戦わずして勝つ>諸葛孔明の兵法 何を考えどう行動すべきか!」(三笠書房 知的生き方文庫)を紹介します。

諸葛孔明と言えば、中国史の中でも人気の高い三国時代に活躍した軍師です。小説や漫画、ゲームなどでの三国志は後世の脚色が入った「三国志演義」という明の時代に書かれた小説が基になっています。

後漢末の184年黄巾の乱に始まった動乱をきっかけに群雄割拠の状況になります。群雄の中で頭角を現したのが、華北を支配した曹操、四川を支配した劉備、江南を支配した孫権の3人です。力関係で言えば圧倒的に曹操が強く劉備は3番手です。劉備がこの不利な状況の中で、「三顧の礼」を尽くして迎え入れた諸葛孔明関羽張飛などの豪傑に支えながら、曹操をはじめとする巨大勢力に立ち向かっていくところに「三国志演義」の最大の魅力があります。中でも劉備孫権が同盟を組み「赤壁の戦い」で劉備を打ち破るところがクライマックスです。三国志を描いた小説には、吉川英治著「三国志(全5巻)」(講談社文庫)、北方健三著「三国志(全14巻)」(角川文庫)などが面白いです。

さて、本書「諸葛孔明の兵法」は、次の4部構成になっています。

  1. 第1部 生涯 ー 人生に挑み続けた大器量に学ぶ
  2. 第2部 将苑(心書) ー 孔明の心の責め方に学ぶ
  3. 第3部 便宜十六策 ー 孔明の「作戦・情報・人事」術に学ぶ
  4. 第4部 出師表 ー 軍神・孔明の「遺書」

すべてを紹介するわけにはいきませんが、今でも役に立つと思われる諸葛孔明の兵法について触れたいと思います。

  • それ兵権は、これ三軍の司命、主将の威勢なり・・・軍権は三軍(全権)の生命、統率者の威信のカギである。統率者が自在に将兵を指揮し、計画通りに軍隊を動かすことのできる軍権を把握して部下に臨めば、猛虎に羽を付けたように自由に大空を飛翔し、拘束されることなく、その効力な力を発揮できる。もし軍権の掌握に失敗すれば、水を離れた魚のように、計画通りに将兵を指揮することが出来なくなる。「野武士経営」は勝つこともあるが結局は「管理経営」にかなわない。管理とは、権限と責任を武器として集団の能力を最大限に発揮するための最良の方法である。
  • 党を結びて相連なり、賢良を毀̪せんす・・・軍隊であろうと組織であろうと、その内部崩壊の原因となるのは、①徒党を組み派閥を作って私利私欲を図ろうとする者 ②目立つような華麗な服装を身に着け好んで奇をてらう者 ③妖術や神がかりの言葉で人を惑わす者 ④規律を守らず扇動を好む者 ⑤損得を計算して秘かに敵と共謀する者 である。これらの者を遠ざけて、親しんではならない。
  • 上は天文を知り、中は地理を知り、四海の内、視ること室家のごときは、これ天下の将なり・・・統率者の器量にも大小がある。人間の善悪を見分け、わざわいの到来を予知して防ぐことが出来れば人々が服従する。そうした人は十人の統率者になれる。朝早くから夜遅くまで仕事に励み、言葉の端々から人の求めることを察し、審議に厚く慎み深い人はは九人の統率者になれる。ことの処理に当たって剛直、しかも思慮は周到、勇敢でよく戦える人は専任の統率者になれる。見るからに威厳があり内に厚い心を秘めて人々の苦労や飢えや寒さを思いやることが出来る人は一万人の統率者になれる。有能なものを採用して日々慎み、誠実、韓台で知覧庭ずらされることがなければ十万人の統率者になれる。あまねく天下の人々をいつくしみ、その真偽に隣国も心服する。天文、地理、人事に通じ、その変化に応じてすべてを深く洞察し、全国の人々を一族のように見なす。そうした人は天下の統率者になることが出来る。
  • その将たるの道に八弊あり・・・統率者としての資格に欠ける者は、①貪欲で厭くことを知らない者 ②有能なものを嫉妬する者 ③好んで他人の中小に耳を傾け、ごますりを近づける者 ④相手のことは推測するが、自分のことを知ろうとしない者 ⑤優柔不断で、自ら決定できない者 ⑥酒食を好み、限度を知らない者 ⑦腹黒く、臆病な者 ⑧言葉巧みで、傲慢無礼な態度をとる者 である。
  • 兵は凶器にして将は危任なり・・・軍隊は一種の凶器であり、その総凸者は重大な責任を負わなければならない。凶器を過度に重んずれば、たちまち失敗し、軽率に取り扱えば、身を破滅し名は廃る。それゆえ、優れた統率者は、強大な軍隊を掌握しても、それだけを頼りにして奢ることなく、新任されてもそれに満足することなく、辱めを受けてもそれに屈することなく、利益に接しても貪婪になることなく、美人に会っても誘惑されることがない。優れた統率者は「身をもって国に殉ずる」ということだけを念頭に置く。
  • よく将たるものは、その剛折るべからず、その柔巻くべからず・・・優れた統率者hs、剛と柔を兼ね備えて不敗後に立たなければならない。つまり、弱をもって強に勝ち、柔をもって剛に克つ力を培わなければならない。
  • 将に五彊、八悪あり・・・統率者には5つの必要要件・五強(①高潔な心意気 ②孝悌 ③信義 ④熟慮 ⑤全力投球)と8つの失格条件・八悪(①是非の判断が出来ない ②有能な人材を冷遇する ③信賞必罰の方を厳正に執行できない ④富裕でありながら貧窮を救済できない ⑤未知を予測してそれに備える知恵がない ⑥機密漏洩を防ぐ思慮がない ⑦出世しても才能のある友人を推挙することができない ⑧戦いに敗れて恨みや不満を持っている)がある。
  • 智者は天に逆らわず、また時に逆らわず、また人に逆らわず・・・戦いの中で勝利を勝ち取るには、天に従い、時に応じ、人に依存するという3つに条件をうまく配合しなければならない。統率者の責任はこの点に十分に配慮することである。
  • よく戦う者は敗れず、よく敗れる者は滅びず・・・作戦に優れた君主は簡単に負けなかった。美味く負ける君主は滅亡しなかった。うまい負け方は下手な勝ち方に優っている。
  • それ将たる者は、必ず腹心、耳目、爪牙あり・・・将軍となる者は必ず、自分の腹心、耳目、爪牙となる者を持たなければならない。腹心がいなければ、苦諦夜道を手探りで歩くようなもので、手の下しようがない。
  • よく将たる者は、機に因りて勝ちを立つ・・・智者が智者に勝つためには闘いに有利は「機」をとらえなければならない。「機」には①事機(事態の変化) ②勢機(態勢の変化) ③情機(情勢の変化)の3つがある。優れは統率者はこの3つの機を逃さずにとらえ、活用しなければならない
  • 古のよく将たる者は、人を養うこと己の子を養うがごとし・・・昔の優れた統率者は、部下を我が子のごとく慈しみ、関心を寄せた。困難なことがあれば、率先して解決に当たり、功績があればそれを部下に譲り、傷ついたものがあれば心から労わり戦死した者がいれば心から悲しんで低調に埋葬し、飢えた者がいれば自分の食べ物を与え、凍えた者がいれば自分の衣服を脱いで与え、知謀ある者は礼を尽くして優遇し、勇気ある者は賞与を与えて励ました。統率者がこのような態度で部下に接すれば、向かうところ必ず勝利する。
  • 難を易に図り、大を細になし、先ず動きて後に用い、無刑に刑するは、これ用兵の智なるものなり・・・「戦わずして勝つ」ことこそ最高の勝利法である。例えば、敵の意図を洞察してあらかじめこれを封鎖してしまうとか、先ず敵の同盟関係を断絶させて孤立させるとか、そうした子底と「戦わずして勝つ」最高の方法である。城を攻撃したり、土地を奪ったりというようなことは、ほどこす計が何もない場合にやむを得ず用いる最後の手段である。
  • 戦地を知らずして勝ちを求むるは、いまだこれあらざるなり・・・地勢の優劣は軍隊の勝敗に関わる。これまで戦地の地勢を知らずに戦って勝った者はいない。知性を活用するためには綿密な調査が必要である。地勢に応じて戦い方を変えなければならないし、地勢に応じた聞きなり方法なりを開発しなければならない。
  • 小善は必ず録し、小功は必ず賞すれば、志勧まざるなり・・・統率者の部下に対する5つの心得 ①よい地位と待遇を保証すれば有能な人材は懸命に働こうとする ②丁重で信義ある態度で接すれば部下は死をも恐れず戦う ③たえず恩恵を与え、放棄を厳正に施行すれば部下は心から服従する ④率先して事に当たり、その上で他人にも要求すれば部下は勇敢に全力を傾注する ⑤小さな善行でも必ず記録し、小さくても功績があれば必ず褒賞する。そうすると部下は自発的に力を尽くす。
  • 軍は奇計をもって謀となし、絶智をもって主となし、よく柔によく剛に、よく弱によく強に、よく存しよく亡す・・・軍事行動をとるにあたって、奇計と知謀を同等に重んじ、柔弱と剛強を両立させなければならない。そうすれば完全に敵の強弱、存亡を掌握することが出来る。

この諸葛孔明の兵法は、孫子の兵法と似ているところもあれば違うところもあります。いずれも現代にも通ずる戦略論と言ってよいでしょう。ビジネスでも人生でも役に立つところは大いにあると思います。

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