中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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ベーシックインカムで生活は豊かになるか?

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で628人、そのうち東京248人、神奈川65人、埼玉45人、千葉39人、大阪49人、兵庫27人、北海道29人、沖縄26人などとなっています。東京は5日ぶりに200人を超え、家庭内感染が最多ですが、接待を伴う飲食店の従業員ら「夜の街」関連も増えているようです。そして、6割超が感染経路不明です。大阪では堺市に児童施設でクラスターが発生しています。

新型コロナを巡る政府の対応を検証していた有識者会議「新型コロナ対応・民間臨時調査会」は、「政府の対応は場当たり的な判断の積み重ね」「泥縄的」で「結果オーライに過ぎなかった」との調査結果を公表しました。「日本モデル」と自画自賛していた政府のコロナ対策は、何の根拠もエビデンスもなくその場しのぎの場当たり的に対応の積み重ねにすぎず胸を張って誇れるものではありません。大切なのは、そうした場当たり的な対応がうまくいって理由や要因を分析し、次に備えるための指針とすることです。この有識者会議の報告書では、感染症危機への備えを行うことや、休業要請に応じない店舗等への罰則などの強制力を持った規定を設けるように新型インフルエンザ対策特別措置法を見直すことや、経済的犠牲を強いられる企業や個人への補償を行うことなどを提言しています。

この有識者会議が民間の調査会であり政府の息がかかっていないから表立って批判的に言えることです。

このところ問題となっている「日本学術会議」は、本来、政府への政策提言や科学者のネットワーク構築を目的とする内閣府の組織です。しかし、任命は会議の推薦を受け首相が行うとなっているものの、活動は政府から独立して行うと規定されています。政府から独立して自由に提言・助言できることに意味があるのです。政府の意向に沿わない思想や考えを持つ者を排除していたのでは単なる御用機関にしかならず、自由な提言・助言などできず、全く意味がありません。政府や自民党は「日本学術会議」の在り方を変えようとしていますが、ここに菅義偉という人物の教養のなさ、劣等感、愚かな本性が垣間見えています。

静岡県川勝平太知事が知事定例会議で「菅義偉という人物の教養のレベルが図らずも露呈した」と発言しました。この川勝知事は早稲田大学教授や静岡文化芸術大学の学長を歴任した「学者知事」です。この川勝知事も「政治的な発言・助言・提言は言うに任せるということであり、信教の自由、学問の自由、言論の自由は基本中の基本。そこに権力が介入して、権力の通りいう人たちだらけになったら御用学者ばかりじゃないですか。そんな人は学者じゃないです。まさに日本の学問立国に泥を塗るようなことではなかったか」と言っています。

日本学術会議は、全員が辞表を提出するくらいの覚悟で徹底的に争い、学問の自由、言論の自由、思想の自由と自らの地位を守ってもらいたいものです。

いま、政府・自民党は、自由民主党と名乗りながら自由民主主義を理念として掲げていません。彼らの目指すところは極端な右翼までも容認するような保守主義です。そして彼らの狙いは国民のすべてを掌握することです。マイナンバーで、保険・年金・税・銀行口座を紐づけして個人情報をすべて把握・掌握しようとしています。そうした個人情報に基づき政府にとっての危険分子を把握しようとし、政府の方針に反対する者はすべて排除するようになれば萎縮効果で政府に反対する者はいなくなります。まさにファシズムです。菅が目指すのは、というよりも自民党が目指そうとしているのは、そうしたファズズムなのかもしれません。

かつての保守本流自民党は、穏健な保守主義を標榜していましたが、安倍政権になると極右をも取り込み国家主義ないし権威主義に大きく横揺れしました。菅政権を見ますと、安倍政権を承継し、さらに保守本流から外れ極右に向かっているように見えます。これは菅首相の考えに基づくものなのか、中国共産党と親密な二階幹事長の意向なのかは分かりませんが。中国共産党マルクス主義共産主義なので本来は自由と平等を重視するはずですが、独裁を容認することで権威や秩序を重視することから極右的な思想と重なり専制主義・全体主義ファシズム)的になりました。この意味では日本の自民党の思想や考え(特に安倍・二階・菅の思想)と共感でき結びつく余地があるのです。

菅新政権は発足当初、新型コロナ対策を重要課題だとしていましたが、このところ新型コロナ対策として取られたものはありません。むしろ経済優先でGoToトラベルの東京追加やGoToイーツの見切り発車です。新型コロナ禍で多くの世帯が苦しんでいる中、10月から第3のビールの値上げ、タバコの値上げ、厚生年金の負担増など増税されました。こうした増税から国民の目を逸らさせようという菅政権の政策がスマホの料金値下げ政策です。確かに日本のスマホ代は諸外国に比べて高いですが、多くのオプション料がついています。携帯電話の月額利用料金は「通話料」+「データ通信料」+「オプション料」で構成されており、菅首相が「高すぎる」を言っているのは「通話料」と「データ通信料」です。これらが値下がりしても、映画・ドラマ・アニメ見放題やマンガ読み放題のオプションを追加すれば結局は同じです。

日本の携帯代は必ずしも高くはありません。それぞれの携帯大手には傘下の格安サブブランドもあり、利用者が携帯料金を安くしたいと考えるならばそちらに乗り換えればいいのです。携帯電話会社の利益が減れば、ただでさえ遅れている日本の5Gインフラの整備が遅れ、デジタル化やDxにも影響します。

スマホの料金値下げが実現すれば、国民が税金が高くなったことを忘れるのではないかという思惑があるとすれば、それは大きな間違いなのです。

今日は、週刊ポストの「ベーシックインカム」に関する記事を取り上げます。

菅首相のブレーンに一人である竹中平蔵氏が、「コロナ禍では究極のセーフティネットが必要とし、国民全員に毎月7万円支給する」というべーシックインカム案を提案しました。

ベーシックインカムとは、政府が金持ちも貧乏人も生まれたばかりの子供にも、すべての個人に対し、生活に最低限必要な現金を無条件で毎月支給するという制度です。フィンランドやスイス、オランダ、ケニアなどで部分的導入や実験が行われています。

自民党でも、下村博文政調会長をトップに「ウイズコロナ、アフターコロナ 新たな国家ビジョンを考える議員連盟」などがベーシックインカムの支給水準や財源についての具体的検討を進めており、菅首相も乗り気のようです。

1人当たり7万円なら4人家族で28万円が支給され、それまでの年収が360万円の世帯なら合計で倍の約700万円にアップして、素晴らしい案のように見えます。

しかし、1億2000慢人に月額7万円を支給するとすると年間100兆円の財源が必要になります。そこで、竹中氏のベーシックインカム案は、生活保護公的年金などの廃止、財源移譲がセットとなっています。つまり、竹中案では、「社会保障財源」を充てるということです。現在、年金、医療、介護、失業保険、生活保護などの社会保障支給額は年間120兆円、それを国民が支払う年金や健康保険料、国庫負担、地方税、年金積立金の運用益などで賄っているのですが、その財源をベーシックインカムの支払いに回せば足りるというのです。

竹中氏は自書「ポストコロナの『日本改造計画』」の中ではっきりと「年金や生活保護などの社会保障の廃止」を謳っています。年金制度を廃止すれば厚労省の年金局や日本年金機構は不要となり、生活保護を廃止すれば生活保護支給審査業務も必要なくなります。政府の仕事は国民のマイナンバーに紐づけされた銀行口座に毎月7万円振り込めばいいということです。

菅首相が目玉政策としてが勧めるデジタル庁や縦割り行政廃止と言った行政改革は年金制度廃止への布石なのではないかと穿った見方をしたくなります。

竹中案がすぐに菅首相の考えとは思いたくはありませんが、月額7万円という低額では最低限の生活水準を維持できる金額ではなく、単なる福祉削減政策と言わざるを得ません。

更に公的年金廃止というのは厚生年金も廃止するということなのでしょうか。厚生年金を月額7万円以上受給している人も多く、その年金で高額な高齢者施設、介護施設に入所している人たちも多くいます。一律で月額7万円だけ支給して、年金制度や社会保障制度を廃止するなら、却って生活に困窮する人が多く出てくることは予想されます。更に健康保険制度まで解体されたのなら困ったことになります。万が一癌などの罹れば高額な医療費を自ら負担しなければならなくなります。

竹中氏は、所得制限を設けることを主張していますが、ベーシックインカムはすべての個人に無条件に一定額を継続的に支給する政策で、所得制限を設ける時点でベーシックインカムではありません。

本来、ベーシックインカム政策に世界的な注目が集まるのは、社会保障制度が持っている課題を解決してくれそうだからです。

  1. まず、支援が必要な人に支援が届かないという問題を解決してくれます。ベーシックインカムは無条件にすべての人が対象なので支援から洩れるということがありません
  2. 制度の利用には条件があり条件に合致するかしないかで大きな不公平が生まれます。ベーシックインカムは、無条件に支給されるので条件具備の有無での不公平は生じません。
  3. 生活保護などでは不正受給の問題があります。ベーシックインカムでは無条件ですべての人に支給されるので不正受給という問題が生じません。
  4. 役所の仕事の非効率性という問題があります。ベーシックインカムでは一律支給なので審査などが不要で効率的に処理できます。
  5. 新しい生き方ができます。仕事に拘束されることなく、自分の好きな仕事や生活を送ることが出来ます。

しかし、ベーシックインカムは良いことずくめではありません。むしろ、竹中氏のベーシックインカムは弱者切り捨て、社会保障社会福祉の削減以外の何ものでもありません。

今本当に必要なのは、ベーシックインカムという政策ではなく、現状の社会保障制度の課題をあぶりだし、そこを分析し社会保障社会福祉を充実させることではないかと思います。