中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

休日の本棚 ライフスパン

f:id:business-doctor-28:20201017083436j:plain

おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で625人、そのうち東京235人、神奈川50人、埼玉45人、千葉33人、大阪50人、愛知28人、沖縄34人、北海道27人などとなっています。朝日新聞の記事によれば、前週の感染者に比べ今週の感染者は増加し、陽性率も上がっているようです。青森、福島でもクラスターが発生し、一部の地方で感染者が増加しています。一人一人が気を緩めることなく密を避け新たな生活様式を行っていかなければなりません。急に冷え込んで、冬の到来を感じる時期になりましたが、そうなるとインフルエンザの流行期に入ります。コロナとともにインフルエンザへの備えも必要ですが、コロナ対策がそのままインフルエンザ対策になります。一人一人がコロナ対策をしっかりと取っていれば、今冬はインフルエンザの流行は避けられそうです。お互い気を緩めることなく頑張っていきましょう。

昨日は、ゲノム編集の本を紹介しました。ゲノム編集で遺伝子を改変し病気治療に応用したり、長寿遺伝子を組み込んだりということで不老不死を得る研究も進められています。米グーグル傘下の投資会社グーグル・ベンチャーズCEOビル・マリスは、「人はいつの日か500歳まで生きることが出来る時代が来る」と真面目に語り、グーグルの技術開発責任者として雇い入れられた著名な発明家カーツワイルは不老不死に強い願望と関心を抱き「ナノボット(極小ロボット)を人間の血管内に注入することによって、体内の病原菌やがん細胞などの健康と生命の阻害要因を除去することで、人間の寿命を大幅に伸ばし、永遠の若さを保つことが出来る」と主張しています。

  • 果たして人間は不老不死や健康で若さを保ちながら寿命を延ばすことが出来るのでしょうか?

この疑問に答えてくれているのが、今日紹介するデビッド・A・シンクレア著「ライフスパン 老いなき世界」(東洋経済新報社です。

著者のデビッド・A・シンクレアは、ハーバード大学大学院で遺伝学の教授をつとめ、老化の原因と若返りの方法に関する研究で知られる科学者です。ハーバード大学ポール・F・グレン老化生物学研究センターの共同所長も務め、タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」(2014年)の1人にも選出されています。

「人生100年」と言われるようになってかなり経つように思います。100歳まで生きることが出来ても健康でなければ意味がありません。誰が、寝たきりで100歳まで生きたいと思うでしょうか。

著者のシンクレア教授は、「老化は病気の一種であり、それを治癒することが出来れば、100歳になっても50歳並みの活動レベルを保てる時代が来る」と予言しています。

何故、そのような時代が来ると予言できるのかと言えば、最先端技術とテクノロジーによって老化のメカニズムが明らかになってきているからです。

本書は、本文で491ページ、参考文献リスト98ページと読むのも大変な分量になっていますが、老化の原因や若返りの方法に興味のある人には知的好奇心が掻き立てられ面白いと思います。

人は何歳まで生きられるようになるのか

この点についてシンクレア教授は113歳までは生きられると言います。現在の先進諸国の平均寿命は80歳くらいです。それが情報技術の進歩によって10年は伸びると言っています。現在進行中の情報技術の発展により多くの疾患の早期発見が可能になり治療法の開発と相まって、その寿命延長効果は少なくとも10年はあるというのです。更に、今後は「寿命は伸ばせる」という新しい常識が広まり人々の健康管理に関する意識も変わり、それによる寿命延長効果は5年とみます。更にDNAレベルで人体が持つサバイバル回路を作動させることで10%、つまり8年は寿命を延ばすことが出来ると言います。加えて人工臓器などの普及により10年、これらすべてを合わせると113歳になるのです。

それでは、更に110歳以上に寿命を延ばす魔法のようなものはあるのでしょうか?

シンクレア教授は、先ほども出てきた「サバイバル回路」だというのです。

このサバイバル回路は、40億年前の原初の生命からわれわれ人間だけでなくすべての生物が受け継いでいるものです。地球上に生命が誕生した当初、地球環境は今とは全く異なり、超高温・超低温、宇宙からの放射線物質や極端な乾期など生命が生き残るには極めて過酷な厳しい環境でした。そこで原生生物は生存が厳しい環境でDNAが傷つくと細胞分裂や生殖といった自己増殖(自己の再生産)はいったん中止し、傷ついたDNAの修復に専念するという生存戦略をとり、「修復モード」に入るのです。

この生き残り戦略のお陰で40億年もにわたり次世代に生命を引き継ぐことができ、生物は進化していったのです。現在地球上に現存するすべての生物が遺伝子レベルでこの「サバイバル回路」を持っているというのです。

シンクレア教授によれば、老化とはDNAの劣化・DNA読み取りシステムの劣化です。そこで、人為的に修復モードを起動させ、体内にある劣化したDNAを修復させれば老化を防ぐことができるというわけです。われわれは現在40億年前のような過酷な環境に生きているわけではないので、騙して「修復モード」を発動させるために、時には、寒い思いをするとか空腹を味わうとかストレスを身体に与えることも老化を遅らせるためには必要だと言っています。

ではどのようにすれば老化を防ぐことが出来るのでしょうか?

シンクレア博士が実践している方法が紹介されています(ただ、博士は、あなたがすべきことがこれと同じとは限らない、私がそうしていることが正しいかどうか私にもわからない、と言っていますが)。

  • NMN1グラム、レスペラトロール1グラム、メトホルミン1グラム、毎朝摂取する。
  • ビタミンD及びK2の1日推奨量を摂取し、8.3ミリグラムのアスピリンを服用する。
  • 砂糖、パン、パスタの摂取量をできるだけ少なくする。デザートを食べるのを40歳で辞めたが、こっそり味見することがある。
  • 1日のどれか1食を抜くか、少なくとも少量に抑える。
  • 数か月に1度、採血をしてバイオマーカーについて分析する。
  • 毎日できるだけ歩くことを心掛ける。
  • 植物をたくさん食べ、ほかの哺乳類を食べるのはなるべく避けるようにする。
  • タバコは吸わない。電子レンジにかけたプラスチックやレントゲンやCTスキャンを避ける。
  • 日中と就寝時は涼しい場所にいるようにする。
  • 健康寿命を延ばすうえで最適な範囲内にBMIを保つようにする。

NMNは老化に効果があるとされていますが、日本ではまだ効果でその信憑性には疑問があるとされています。以前NHKのテレビ番組で、生後2年(ヒト年齢60歳相当)のマウスにNMNを1週間投与すると生後6箇月(ヒト年齢20歳相当)の運動能力、見た目、活動レベル、細胞活性レベルなど若返りが証明できたと紹介されていますので、ある程度効果があるのではないでしょうか。このNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は、人間の細胞内でも作られていますし、アボカド、ブロッコリー、キャベツなどにも含まれています。

シンクレア教授が言うように「老化が病気であり治療できる」として、われわれは本当に120歳にもなっても生きたいのだろうか」という疑問が出てきます。

日本において、かつて「2000万円問題」がありました。老後資金として2000万円が必要だというのですが、寿命がさらに延びれば2000万円では到底足りません。保険、仕事、介護、痴呆など老後の生活においての不安は尽きません。120歳まで平均寿命が延びる世の中を想像すると世界中が人であふれかえることになります。食糧問題も出てきますし、格差社会がさらに拡がるのではないかと思えてきます。

シンクレア教授もそうした課題に1日でも早く取り組む必要性を訴え、そのためにも「老化は病気である」という前提での議論を始めるべきだと言っています。

最後に、シンクレア教授は言います。

 やりたいことがたくさんある。助けたい人が大勢いる。私はこれからも人類の背中を押して、私が信じる道を進ませていきたい。その道の先には、より一層の健康と幸福と、繁栄が待っている。そして、その道を振り返ることができるほど、長く生きたい。

変えられない未来などない。

f:id:business-doctor-28:20201018115223j:plain