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「週休3日制」「副業容認」柔軟な働き方を手放しで喜べないワケ

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で483人、そのうち東京139人、神奈川47人、埼玉33人、千葉40人、大阪65人、沖縄21人、北海道31人などとなっています。東京では家庭内感染が最多で、施設内感染が続き、感染経路不明者が約6割ということです。大阪ではここしばらく50人台で推移していたのに60人台に上がりました。北海道では釧路市内の接待を伴う飲食店や特別老人ホームでクラスターが発生し、大阪では関西大学クラスターで1500人を超える学生が自宅待機になっています。そのほかにも岐阜県多治見市でカラオケをしていた男女が感染するなど各地でクラスターが相次いでいます。

いつも言っていますが、気を緩めることなく密を避け新しい生活様式を実践し、新型コロナとインフルエンザに打ち勝ちましょう。

今日は、ITmedia ビジネスオンラインの「『週休3日』『副業容認』は各社様 ”柔軟な働き方”を手放しで喜べないワケ」を取り上げます。

先日も、みずほフィナンシャルグループが週休3~4日制導入、全日空(ANA)も社員の副業を認める範囲を広げ個人業務委託形式だけでなく雇用契約形式を認める方針というニュースがありました。

週休3~4日制や副業容認は、「柔軟な働き方を選びやすい雰囲気が醸成されてきた」とポジティブにとらえることもできます。

この記事は、「こんな働き方を待っていた」と歓迎する声に対し、企業が副業や週休3日制などの施策を導入するようになった背景を探り、各社各様の違いを明らかにしようとしています。

まず、企業が、このような柔軟な施策を取るようになった背景には3つの重大な変化があると言っています。

  1. 変化1 生産年齢人口の減少・・・日本の人口は2010年頃から減少を続け、労働力を確保したくても人材がおらず、少ない人材を各社で取りあうことになり競争が激しくなります。リーマンショック後、経済の回復に伴い人手不足感が強まり、これまで十分に戦力化されていなかった主婦層やシニア層などの労働参加が促され企業は柔軟な働き方が選択できるような施策を打つようになりました。
  2. 変化2 グローバル化による市場環境の変化・・・グローバル競争の激化やテクノロジーの著しい進化がもたらす厳しい市場環境です。企業はこれまで以上に先が読みにくい市場の中で戦わなければならず、デジタル化やDXが叫ばれる環境の中でITテクノロジーに長けた人材をグローバル市場の中で奪い合わなければならなくなっています。もはや「終身雇用」は守られず、1社の中で生涯働き続けるという社会システム自体を変えていかなければならなくなります。終身雇用が守られないということは、企業と社員との関係性が変わっていくということです。これは、「1社で拘束する代わり企業が社員の生活を守る責任を負う」という関係性から、「拘束力を弱める代わりに企業が社員を守る責任も軽くなり、社員自身が自己責任で自分の生活を守らなければならない」という関係性に代わるということです。
  3. 変化3 新型コロナの感染拡大・・・新型コロナの感染拡大がわれわれの働き方に大きな影響を与えました。新型コロナの感染拡大がなければ、これほど急速に働き方が変わることはなかったと思われます。日本では、新型コロナの感染拡大により失業者は抑えられているものの、休業者が急増しています。今後、休業者の一部は失業者へ転換させられる可能性があります。観光業や飲食業などは壊滅的なダメージを受けています。あらゆる企業が、存続をかけて守りに入らなければならない状況にあります。企業が自社を守るために取る手段はさまざまです。手っ取り早く人員整理や派遣止め・非正規労働者の解雇などを行う企業も増えつつあります。人件費削減のために給与削減や賞与カットを行う代わり副業を認めるというのも選択肢の一つには行ってきます。

コロナ以前でも、ファーストリテイリングユニクロなどを展開)や佐川急便など週休3日制をとる企業は存在しました。これらは採用難を見越して新たな応募者を確保したり退職を防止したりする目的で、勤務形態を柔軟にしたのですが、変形労働時間制を用いて労働時間の総数は変わらない仕組みでした。これでは人件費の削減になりません。

それに対して、先日週休3,4日制を導入したみずほフィナンシャルグループでは、週休日数に応じて基本給も減額される仕組みになっています(週休3日なら80%、週休4日なら60%)。働く側としては給料が減りますが、労働時間も減少することから、その時間を勉学に当てたり、家庭と仕事の両立・介護と仕事の両立に当てたり、副業に当てたりすることができ、柔軟な時間の使い方が可能になります。主婦やシニア層も働くことが出来るようになりこうした労働力を活用することもできます。

こういう観点から見れば、合理的な施策のように見えます。

しかし、この記事では、「気を付けなければならないのは、(企業にとっての)経済的合理性が必ずしも働き手にとっての合理性と合致するとは限らない」と言っています。

企業が経済的合理性に基づいて施策を打つのは当然のことですが、結果的に働き手の自由を奪いモティベーションを下げることになっては、回り回って企業にも不利益を及ぼします。

今まさに、週休3日制や副業といった施策は企業の立場から取られているものです。

例えば週休3日制を導入する場合、これを望まない働き手もいます。「給料は減らしたくない、副業ではなくこの会社で働いて給料を維持したい」と考える働き手に、説得され嫌々選択するようになれば、働き手にとっては不合理な施策です。あくまでも、希望しゃうをつのろ希望者だけに選択させ、選択した者も選択しなかった者もそのことが理由で不利益を受けることがあってはいけないのです。

この記事は、「企業には経済的合理性を踏まえつつも、柔軟性と安心感を両立させる選択肢を働き手に提示する努力が求められます」と言い、「厳しい市場環境の中、すべてを企業努力にだけ委ねるのは限界があり、企業が市場競争力を高め、働き手が柔軟性と安心感を両立できる社会システムの構築に向けて、政府のリーダーシップ発揮を求めたい」と言います。全くその通りです。

政府が推し進めているハンコ廃止にしても、デジタル化やDXにしても、前に述べたように手段であってそれ自体が目的ではありません。しかし、現在の政策を見ていますとそれら自身が目的化しています。「何が目的で、その目的達成のためにどのような手段を取るのか」ということを明確にしたうえで、目的達成に最も効果的な手段を取るべきです。雇用政策や働き方改革も然りです。週休3、4日制や副業容認も目的ではありません。市場環境変化に対応するという目的のための手段の一つにしかすぎません。週休3,4日制や副業容認だけが素晴らしいわけではありません。市場環境変化に対応するための手段はほかにもあるはずです。各社が自社に応じた方策を見つけ出しそれを行うことが重要です。政府もこうした企業の施策を支援する政策を行ってほしいものです。