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逆・タイムマシン経営論 優れた経営者には『いつか見た風景』という引き出しがある

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で614人、そのうち東京116人、神奈川66人、埼玉33人、千葉24人、愛知48人、大阪123人、沖縄27人、北海道69人などとなっています。本来であれば、休日の検査件数が少ない時の結果なのでもっと減少していてよいはずですが、これまでと比べ大きな数字になっています。特に北海道と大阪が心配です。第1波の時、北海道での感染拡大で鈴木知事が北海道独自の金融事態宣言を発令し、そこから全国的な感染拡大が始まりました。今回も北海道の感染拡大が全国的な感染拡大の幕開けとならなければよいのですが。

大阪は東京を超える感染者数になり、危機的状況です。大阪都構想住民投票も終わり、僅差で否決されました。都構想のメリットについて合理的な説明がなされず、説得力を欠いたことが大阪維新の会の敗北の一要因ですが、昨日も書いたように「今はそのタイミングではない」ので、それを拒否した大阪市民の良識に安堵しました。都構想は大阪維新の会の旗印、存在理由と言えるものですが、それが否定されて、大阪維新の会の求心力が低下するように思います。都構想というのは制度・システムの改変にしかすぎません。つまり、都構想は目的ではなく手段にしかすぎません。ここ最近何度か書いていますように、「手段の目的化」「手段と目的とを履き違えている」というケースが往々にしてあります。大阪維新の会が都構想で実現しようとしたことは、現行の都市制度の中でも必ずしもできないというものではありません。府市の連携を強固にして府市のねじれをできるだけ解消することも必要ですし、2025年大阪万博、インバウンドの再拡大をどのように大阪の成長、大阪経済の発展に取り込むのかを考え、その未来像を描くことが重要です。また、大阪に多数存在する中小・零細企業や町工場の後継者不足の解消も少子化問題と関連して重要課題です。それ以前に、新型コロナ感染防止対策です。

大阪都構想は決着がつきました。あとは、吉村知事、松井市長には全力を挙げて新型コロナ感染防止対策と大阪経済の復興とをバランスよく行ってもらいたいものです。

今日は、これと言って取り上げようと思った記事はありませんでした。そこで、日経ビジネスの「優れた経営者には、『いつか見た風景』という引き出しがある」という記事を取り上げます。

一橋ビジネススクール教授の楠木建氏と社史研究家の杉浦泰氏が共同で行うオンラインゼミナール「逆・タイムマシン経営論」というのがありますが、先日それが書籍化されました。タイトルの面白さから購入し読み始めていますので、近いうちに「休日の本棚」で取り上げる予定でいます。

これまで多くの企業が、日本よりも先を行く米国などのビジネスモデルを輸入する「タイムマシン経営」に活路を見出そうとしてきました。しかし、それで経営の本質を磨き、本当に強い企業になれるのでしょうか?むしろ、大切なのは技術革新への対応などの過去の経営判断を振り返り、今の経営に活かす「逆・タイムマシン経営」だと主張しています。

詳しくは、「休日の本棚」で紹介しますが、人間は「今、目の前で起きている状況がこれからもずっと続く」という錯覚に陥りやすく、それは高度成長期でもバブル期でも、現在の新型コロナ禍でも同じです。そして、過去の様々な時点で、未来予測をしてきましたが、予測というものは本質的に間違うものです。予測は誰にもできない、誰でも外すと言った方が正しいのです。しかし、変わらない本質的な部分が存在します。

本質が分かっている人と、そうでない人との違いは、「何か起こった時に『いつか見た風景』という引き出しがあるかどうか」だというのです。そして、経営判断のためにそうした「引き出し」を増やしておくことが有用であると言っています。

本書に登場する、サイゼリアの堀埜社長は、「キャッシュレス決済」の話が入ってきた時に、瞬時に、店のオペレーション・什器・来客時間・性別などが変わっていくと読み取り、その上で「すぐに導入しない。ある程度普及してからで十分」と決断しました。「引き出し」のない経営者だと「時代がキャッシュレスを求めている」とすぐに飛びつき、無駄な投資をすることにもなりかねないのです。「引き出し」を持っていると適切な経営判断ができるのです。

「歴史は繰り返す」と言われますが、過去の歴史的事象の中にも変わらない本質的な部分があります。自分の会社の社史の中にも変わらない本質的な部分があるはずです。それらをしっかりと掴まえて「引き出し」にしまっておく、そして必要な時に「引き出し」から出して考える素材にするということが重要なのです。

何事においても変わらない本質的な部分は存在します。その本質的な部分をしっかりと理解していないと時代の流れに翻弄され、何度も言うように「何が目的で、何が手段か」が分からなくなってしまいます。目的達成の手段にしか過ぎないものが目的に昇華され、本来の目的・本質を見失った結果、目的化された手段だけで自己満足化してしまうのです。

これまでも取り上げているデジタル化やDXにしても、社会の流れで飛びついても、何の役にも立ちません。自社が抱える課題を解決するに本当に必要かを判断したうえで導入すべきなのです。そして、その判断には、「引き出し」が必要なのです。この「引き出し」に仕舞われている「いつか見た風景」というのは、過去に自分や先人たちが経験した事象が含まれるのです。過去に同じような事象が起きたときに自分や先人たちがどのように対処したのかということです。当然、全く同じ事態は起こりませんが、変わらない抽象化された本質が存在するはずです。それを思考や判断の指針として現在の課題に対処するということです。経営においても過去から学ぶということが重要です。日本の企業の場合、特にアメリカのカタカナ経営論や最先端の経営理論を振りかざしてみても、その土台が違うのでうまくいしません。その意味では「逆・タイムマシン経営論」は役に立つはずです。

面白い本なので読み終われば紹介します。