中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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休日の本棚 財務諸表を読む技術 分かる技術

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1140人で、2日連続で1000人を超えました。その内訳は、東京242人、神奈川104人、埼玉114人、千葉42人、愛知82人、大阪169人、兵庫47人、京都24人、北海道115人などとなっています。首都圏、関西圏、愛知、北海道での感染拡大が目立っています。今のうちにしっかりとした新型コロナ感染防止対策をとらないと、第3波は確実に訪れ、欧米のように拡大し改めて緊急事態宣言を発動せざるを得なくなってしまいます。それにもかかわらず、政府の対応を見ていると口先だけで何ら具体策をとらず、逆に経済重視で海外からの入国緩和などを推し進めようとしています。安倍政権時代よりもひどいと言わざるを得ません。また、国会論戦を見ていると野党もふがいない限りで、今何が重要課題なのかという視点が抜け落ちてしまっています。日本学術会議問題も重要ですが、感染者が急増している状況での最重点課題は、新型コロナ対策です。具体的にどのような対策をとり抑え込むのかを真剣に議論することこそが国民の為の内閣であり国会です。第1波・第2波で自治体も資金を使い果たし財政的に自治体任せには出来ません。国が資金的な支援をするしかありません。そうした面も含めて十分な議論がなされるべきです。

さて、昨日、ROEROAという会計上の概念・経営指標を説明しました。その続きと言っては何ですが、会計に関する本の紹介です。小宮一慶著「財務諸表を読む技術 分かる技術」(朝日新書を紹介します。経営者だけでなくあらゆるビジネスパーソンにとって、財務諸表を学ぶことは重要です。会計士や税理士になろうというならば財務諸表の作り方を学ぶ必要がありますが一般のビジネスパーソンにとっては読めればいいわけです。本書は経営実務に必要な「財務諸表を読む力」に絞って、貸借対照表損益計算書キャッシュフロー計算書の勘所をわかりやすく解説してくれています。

具体的には本書を読んでください。今日は本書の内容を紹介するというよりは、本書を読むにあたって前提として持っていていただきたい財務諸表の基本の基本を説明しておきます。これを知ったうえで本書を読んでもらえば理解が深まると思うからです。

財務諸表の読み方というのは、会社の「安全性」「収益性」「将来性」を読むということで、一番重要なのが当然のことながら「安全性」です。いくら「収益性」「将来性」が見込まれても「安全性」がなければ潰れる恐れがあるからです。

財務諸表というのは、企業の財政状況を示す貸借対照表損益計算書などの総称で、そのうち貸借対照表(B/S)、損益計算書(PL)、キャッシュフロー計算書(CF)は財務三表と呼ばれます。いわゆる決算書は大まかにいえば、この三表で構成されています。

決算書は、簡単に言えば、会社の「成績」と「健康状態」を示しています。1年間(会計期間)にどのような活動をしてどれだけ儲けたかという成績を示すとともに、会社がさまざまな活動をして健康なのか病気にかかっているのかといった健康状態をも示しています。会社には、経営者、社員のほかに、投資家、債権者、取引先、顧客といったステークホルダーが存在します。こうした人たちに会社の成績・健康状態を示す書類が決算書です。

まず、貸借対照表は、決算日における財政状態を示す書類です。つまり、企業の活動資金がどこからどのような形で調達され(調達源泉)、それがどのような形で使用されたのか(資金の運用)を示しています。

貸借対照表は、「資産」と「負債」「純資産」の3つで構成され、

     資産 = 負債 + 純資産 

という方程式が成り立ちます。

資産というのは会社の体つきを意味し、負債と純資産はそれを支える骨格(骨・筋肉・脂肪)のようなものです。体つきは同じでも、将来返済しなければならない負債が多く、返済不要な純資産が少なければ、支える骨や筋肉は小さくて脂肪で覆われているようなもので健康とは言えません。逆に負債が少なく純資産が多いと、支えている骨や筋肉が大きく脂肪が少ない健康体と言えます。同じ体つきでも中身で違ってきます。

このように貸借対照表は会社の安全性を見るのに重要な書類となります。

次に損益計算書です。損益計算書は、収益と費用を対比させ、当期純利益又は当期純損失を表示し、会計期間の経営成績(企業活動によって得た利益または損失がどのような活動から生じたか)を明らかにする書類です。簡単に言えば、売上から費用を差し引いたものが利益ということになります。利益には色々あります。売上高から売上原価を引いたのが売上総利益売上総利益から販管費を引いたのが営業利益、営業利益から営業外収益を加算し営業外費用を引いたのが経常利益、経常利益に特別利益を加算し特別損失を引いたのが税引前当期純利益税引前当期純利益から法人税等を引いたのが当期純利益となります。これらがマイナスになれば利益ではなく損失となります。

この損益計算書は会社の成績を表します。つまり収益性を示す書類となるわけです。

最後にキャッシュフロー計算書ですが、これは会社の現金の流れを示した書類です。実は、損益計算書での売上や利益は必ずしも実際の現金の流れを表しているものではありません。損益計算書発生主義というルールに基づいて書かれていますので、現実に現金の動きがないのに、モノやサービスが売れた時点で売上や利益として計上されてしまっているのです。キャッシュフロー計算書は現実のお金の流れを示しています。これは人間の身体で言えば、血液の流れのようなものです。損益計算書貸借対照表上では健康で売上があり利益を上げているように見えても、キャッシュフロー計算書を見れば、貧血状態(現金不足)や出血状態(現金流出)ということもあるのです。損益計算書上は利益が上がっているのに資金繰りに詰まって倒産する黒字倒産ということが起こりますが、これはキャッシュフロー計算書を見れば貧血状態・出血状態が見て取れます。

以上の3つの表は密接につながっており、これらを合わせて読むことで会社の本当の姿が理解できます。そして、この3つの表を読むためには「安全性」(倒産しないか?)「収益性」(儲かっているか?)「将来性」(今後大きく成長するか?)という3つの視点で読むことが重要なのです。

まずは、「安全性」を見てみます。

安全性分析の1は、貸借対照表の右側の上下(負債・純資産)を見ます。返す必要のある負債と返す必要のない純資産のバランスです。つまり、返すものが少なければ少ないほど、言い換えれば自己資本(純資産)が多ければ多いほど安全ということです。これを示す指標として、自己資本比率(自己資産(純資産)を総資産(負債+純資産)で割ったもの)がありますが、30%以上が望ましく50%以上あれば安全性が高いと言われています。

安全性分析の2は、貸借対照表の左右を見ます。先ず①短期的な資金繰りの安全性を示す流動比率です。これは、流動資産を流動負債で割ったものですが、1年以内に返済しなければならない流動負債に対し、1年以内に現金化できる流動資産がどれだけあるかを示すものです。流動比率は100%を超えて高いほどよく150%以上あれば安全性が高いと言われます。次に②中長期的な資金繰りの安全性を示す固定比率です。これは、固定資産を純資産で割ったものです。この数字が100%を超えると固定資産の一部を負債で賄っていることになり、このすうじは低い方がよいということになります。

安全性分析の3は、キャッシュの流れを見ることです。会社が自由に使えるお金(フリーキャッシュフロー)がどれだけあるかを見るということが重要です。

次に「収益性」です。

収益性分析の1が売上高利益率です。先ほども言いましたが利益には5つあります。この利益を売上高で割ったものが売上高利益率で、利益の取り方で5つの利益率が導き出されます。これらの利益率を分析することで、会社がどれだけ効率的に利益を上げているか、収益を上げるための戦略などが見えてきます。

収益性分析の2は昨日書いたROEROAです。これらについては省略します。

最後に「将来性」です。これは「成長性」と言ってもいいでしょう。

将来性分析の1は、前期の損益計算書と比較して「売上高増加率」で伸び・成長度を見ることです。売上高成長率は、(当期売上高ー前期売上高)を前期売上高で割って求めます。増加率については、「時系列分析」(過去数年の増加率と比較)と「他社比較」で判断します。他社の増加率が自社よりも大きいとなれば増加しているからと言って安心できません。自社のシェアが他社に奪われていることになり十分な成長が出来ていないということになります。売上が伸びていても利益率が低下していれば問題です。売上高増加率とともに利益率が下がっていないかにも目を向ける必要があります。

将来性分析の2は、資産の成長度合いが重要です。会社は、「資本⇒資産⇒売上⇒利益⇒資本」というサイクルで大きくなります。会社が順調に成長しているかを確かめるためには、ROAが役に立つのです。ROA総資産利益率は資産に対してどれだけ利益を上げられたかを示す指標ですが、時系列分析を行って、ROAの数値が変わらなければ、資産の増加とともに利益も増加していることを示しています。一方でROAの数値が下がっていれば、資産の増加に利益が追い付いていない、収益性が低下していることを表しています。

今説明したようなことを頭の入れて本書を読んでいただければわかりやすくなると思います。

本書の最後に銀行が企業を見る(審査する)5つのポイントが挙げられていますので、それを紹介しておきます。

  1. 安全性・・・流動比率自己資本比率などで、確実に返済してくれる貸出先かどうかを見る。銀行ごとに独自の基準。
  2. 収益性・・・赤字が続くと格付けが下がる。場合によっては取引停止も。
  3. 将来性・・・業界の将来性とその会社の将来性。
  4. 経営者・・・性格・経験・経営者としての年数などから点数化。
  5. 銀行の収益性・・・融資する銀行に利益が出るかどうか。自己資本比率の維持を重視。

銀行から融資を受けていない企業は存在しないと思われますので、参考にしてください。こうした点を頭に入れて経営を行うことが重要です。

中小企業経営者にも、ビジネスパーソンにも、財務諸表を読んでわかるというスキルは必要です。そのために本書は最適な本と思います。

 

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