バイデンの勝利演説で見るリーダーシップ
おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で954人、そのうち東京189人、神奈川79人、埼玉45人、大阪140人、愛知81人、北海道153人、沖縄30人などとなっています。本来ならば、休日の集計のために検査数が少なく新規感染者も少なくなるはずですが先々週月曜は400人台、先週月曜は600人台、そして今日は900人台と明らかに大幅な増加傾向にあることが見て取れます。世界でも感染加速で世界の感染者が5000万人を超えました。10月19日に4000万人に達し、3週間で1000万人増加したことになります。「第2波」に見舞われるヨーロッパと「第3波の席巻」ともいわれるアメリカの感染拡大を抑え込むことが世界的には重要です。ヨーロッパ各国では営業時間の短縮・夜間外出禁止など新たな緊急事態宣言で対処しようとしていますが、大統領選で沸くアメリカでは新型コロナ対策がほとんどなされていないのが現状です。
バイデン候補が、ペンシルバニア州で勝利し、過半数となる選挙人を獲得した模様で、ほぼ次期大統領に確定したと言ってよいでしょう。トランプは「選挙に不正がある」と法廷闘争を画策していますが、明確な証拠も挙げられずマスコミもそっぽを向きました。また、大統領府周辺ではすでに就職活動も始まっています。アメリカの公務員制度は日本とは異なり、幹部職員は大統領が任命し政権交代で異動します。そうしたこともあり、すでに大統領府の幹部職員はトランプ敗北を認めて次の就職先を探し奔走しているのです。また、共和党内部にもトランプ批判があり、自らの敗北を認めるようにメラニア夫人が説得に当たっているとのニュースもあることなどから、思いのほか早く決着がつくかもしれません。
バイデン新大統領は、新型コロナ対策を第1の政策と掲げ、マスク着用の義務化をも検討しているようで、アメリカの感染拡大も次第に収まっていることを期待します。
バイデンが大統領となると副大統領には黒人女性初のカマラ・ハリスが就任します。父親はジャマイカ出身、母親はインド出身ということもあり、トランプ政権で助長されていた黒人差別・人種差別が少しは収まることでしょう。
バイデンは勝利演説で、分断ではなく結束を目指す大統領になると語りました。日本の首相の所信表明演説とは比べものにならず、いかに素晴らしい演説であるかがよく分かります。訴えるものがあり、希望があります。リーダーの演説とはこうあるべきものだと示してくれています。こうした演説力はリーダーシップの重要なところでもあります。少し演説から抜粋します。
- 私は驚きを隠せない。今晩、われわれはこの国、町、あらゆる場所に、世界に広がる、ほとばしる希望の喜びを目にしている。明日への新たな信念と、より良い日を迎える希望だ。あなたが私に与えてくれた信頼と自信を謙虚に受け止める。分断させるのではなく、結束させる大統領になることを誓う。赤い州や青い州ではなく、ただアメリカ合衆国だけを見ることを誓う。
- 心から、あらゆる人の信頼に応えるために働く。米国はそうあるべきだ。われわれは国民のための政権だ。米国の魂を立て直す。米国の屋台骨を建て直し、中間層を再構築し、米国を世界から再び尊敬される国にする。私の人生において、多数の米国人がわれわれの理想像に投票してくれた。そしてその理想像は現実となり、われわれの仕事となる。
- この厳しい悪夢の時代に今ここで終わりを告げよう。民主党員と共和党員が互いに協力を拒否したのは、われわれの制御が及ばない不思議な力によるものではない。すべては決断であり、私たちの選択に尽きる。私たちは協力を選択できる。
- 私たちは今、転換期に立っている。絶望に打ち勝ち、繁栄と目的のある国を築くチャンスがあり、それができると知っている。私たちは米国の魂を取り戻さなければならない。米国は天使と悪魔の絶え間ない戦いによって形作られてきた。今夜、私たちの天使が勝つ時がきた。全世界が米国に注目している。私たちが模範となり導かなければならない。
- 私は常に、米国を一言で定義できると信じてきた。「可能性」だ。米国ではすべての人が夢をかなえる機会が与えられるべきだ。この国の可能性を信じ、常に先を見据えている。自由で公平な米国、尊厳と敬意をもって雇用を創り出す米国、癌やアルツハイマーなどの病気を治す米国、誰も置き去りにしない米国、決して諦めない米国に向かっていく。素晴らしい国で素晴らしい人々がいる。これが米国だ。私たちが力を合わせれば、不可能なことなどない。
バイデンは現在77歳、来月には78歳になります。71歳の菅首相より6歳年上、年を感じさせない力強い演説で聴く人の心に訴えるように思います。誰かが作った原稿を棒読みしているのとは違います。
また、副大統領となるハリスも、勝利演説で、「(自分は最初の女性副大統領になるかもしれないが)私が最後ではありません。これを見つめているすべての小さな女の子が、この国は可能性の国だと理解するからです」と述べて、未来の子供たちへ希望のあるメッセージを送りました。
彼らの演説には、未来に向けた希望があります。未来に向けた希望があれば、これを聞いた人は希望を目指しリーダーに協力しようという気になります。希望が語られることがなければ、不安を助長するだけで、人は場合によっては自暴自棄になります。
このことは政治だけの問題ではありません。各企業において経営者を始めリーダーが希望が持てる将来展望を示すことによって組織が一丸となって取り組めるのです。
以前にも書きましたが、コロナ禍のような不透明な危機に対処するリーダーシップに必要なものは
- 緊急に行動する・・・先延ばしという人間本来の傾向を押さえ込み、緊急に行動を起こす。
- 透明性のあるメッセージを伝える・・・誠意を持って現実を正確に分かりやすく希望が持てるメッセージを伝える。
- 過ちには生産的に対応する・・・避けられない失敗と予期せる困難に直面した時には後ろ向きの言い訳や自己防衛するのではなく、失敗を認め批判に耳を傾け、目標への集中を維持しながら問題解決に取り組む。
- 常にアップデートする・・・先が見通せない危機的状況では、周到に戦略を駆使して新の情報を引き出し、事態の進展と新情報の浮上に応じ、臨機応変に対応し軌道修正していく。
の4つです。
先日書いたような穴熊社長、評論家社長、アイデア社長では駄目です。
リーダーは、自ら積極的に行動を起こし、事実を正確に誠意をもって伝え、相手が共感できる希望を与え、自らの過ちには真摯に向き合い、批判に耳を傾け、事態の変化に応じて臨機応変に対応して行くことが重要なのです。