中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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中小企業の再編は必要なのか?

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1660人で、1日の感染者数としては過去最多となりました。その内訳は、東京393人、神奈川147人、埼玉75人、千葉74人、愛知143人、大阪231人、兵庫81人、北海道236人などとなっています。北海道、岩手(10人)、茨城(26人)、神奈川、兵庫が過去最多となっています。東京都のモニタリング会議では、「このままの推移で増加し続けると、4週間後に新規感染者が4.8倍、1日当たり1160人程度になる」との深刻な数字が示されました。また、北海道医師会は緊急会見を開き、「この状態が1週間続くと医療崩壊につながる」「医療の立場から言えば、強くGoToトラベルやどうみん割を考えてほしい。北海道はこれから爆発的に増えていくのではないか」と危機感をあらわにしました。

第3波の入り口に差し掛かったところで、第1波、第2波での感染拡大状況を見れば、4週間後には現在に数倍に膨れ上がることは目に見えています。今、本腰を入れて感染防止対策に取り組まなければ、本当に4週間後には1日の感染者数が5000人を超えることにもなりかねません。こうなれば当然重症者や死者も増加します。GoToキャンペーンの運用にしても感染状況に応じて、臨機応変に柔軟な対応が求められるはずです。

ところが、政府の分科会では、大型イベントについては観客数を50%に制限することを来年2月まで延長する反面、映画館については来月から制限を撤廃し100%入れることが出来るように決定しました。まさに分科会は新型コロナ感染症対策として国民の命と健康を守るために政府に適切な提言を行うのではなく、政府の経済優先を進めるための御用機関と化しています。困ったものです。

今日は、朝日新聞「中小企業再編策 検討へ」という記事を取り上げます。

政府は「成長戦略会議」で、中小企業再編促進策の検討に乗り出しています。狙いは「強い中小企業の創造」です。「強い中小企業の創造」と言えば聞こえはいいですが、生産性が低い(菅首相アトキンソンがそう考えているだけ)中小企業を淘汰することが狙いです。それだけで、本当に強い中小企業が生まれるとは思えません。

菅首相ら再編推進派は「現状で十分な給料を支払えない企業まで政府の補助金で生き残っていることが問題」とし、成長戦略会議のメンバーで菅首相のブレーンの一人、デビッド・アトキンソンは「中小企業の生産性の低さ」を問題とし、「そのような企業は倒産してくれた方がいい」とまで言っています。アトキンソンは、コロナ禍で中小企業を支援する雇用調整助成金について、「そのメリットを受けるのはほとんどが小規模事業者である。本来中堅事業者を守る政策を優先すべきにもかかわらず、小規模事業者を優遇している。支援の方向が間違っている」と批判的です。

こうした再編推進派は、中小企業基本法を改正し、中小企業の「枠組み」を改めることで再編を促し、企業の合併や買収・統合などで優遇税制を検討しています。

再編推進派に対して反対論も根強く存在しています。体力のない中小企業が有力な中小企業に合併された場合、その人員整理で「割を食う」のは、弱い立場の中小企業の従業員です。日本商工会議所の三村会長は、「中小企業の生産性が悪いというが、日本は大企業も含めてみな生産性が劣る」とアトキンソンに反発しています。

政府・自民党内部にも反対論があるようです。中小企業は、伝統的に自民党の支持基盤で、「中小・零細企業は雇用の受け皿だ。手を付けたら大変なことになる」との懸念や「コロナ禍の今は中小企業改革はできない。雇用をしっかり守る施策を打つのが重要」との意見もあります。新型コロナで中小企業のみならず、大企業、多くの国民が疲弊している状況で、一番重要なのは新型コロナ対策をしっかりと行い、バランスよく経済を動かし雇用を守ることです。

10月22日にも書きましたが、日本の生産性の低さは中小企業の問題ではなく大企業の問題です。1990年以降は、中小企業における付加価値の伸びが改善されており、真の生産性改善が実現されています。日本の生産性の低さは中小企業の問題ではなく、我が国の下請けや中間搾取といった構造に問題があるのです。こうした構造にメスを入れない限り、いつまでたっても日本の生産性改善を実践している中小企業は飛躍できません。

こうした日本の構造問題に目をつぶり構造改革を行うことなく、中小企業再編だけに目が行くようでは極めて危険です。本来雇用の受け皿となり全体の95%にも及ぶ中小企業をなりふり構わず淘汰することは大企業にも影響を及ぼし日本経済にとって大きな損失になります。

しっかりと議論してもらいたいものですが、はっきり言って今はその時期ではありません。何度も言うように第1の課題はコロナ対策です。中小企業の支援もまだまだ必要です。中小企業に対する雇用調整助成金に批判的なアトキンソン菅首相のブレーンというのではあまり期待できそうにありませんが、今は雇用を守るためにも中小企業改革に手を出すべきではなく、むしろ積極的に支援すべきです。その結果ゾンビ企業が生まれても仕方ありません。コロナが終わった後で、中小企業の再編ではなく構造改革を行えば、ダメな中小企業は自然と淘汰されます。政府が強制的に中小企業の再編をすべきものではありません。駄目なものは中小企業でも大企業でも自然と淘汰される仕組みや構造を作るべきなのです。

菅首相が、日本学術会議の任命拒否のように、意にそわないメンバーを解任し、賛成派で固めて強引に押し切る、そんなことがなされれば日本は終わりです。菅首相の強権主義に目を光らせ、そういうことが行われないように監視していくしかありません。