中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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中小企業の構造改革を促す3つの柱

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おはようございます。

昨日の新規感染者は2386人と連日最多を更新しています。内訳は東京534人、神奈川205人、埼玉108人、千葉106人、愛知219人、大阪338人、兵庫132人、沖縄54人、北海道266人などとなっています。東京、千葉、愛知、大阪、兵庫、和歌(15人)、山口(18人)、北海道の8都道府県で過去最多を更新しました。菅首相は「静かなマスク会食をお願いしたい」と言うだけ、西村担当相に至っては「今後感染がどうなるかは、神のみぞ知る」と言い出す始末。昨日も言いましたが、日本医師会会長が「コロナを甘く見ないでいただきたい」「秋の我慢の3連休」と警戒感をあらわにされたのに対し、加藤官房長官は「移動の自粛の必要はない」と反論するなど、政府の緊張感・危機感のなさ、無責任さが際立っています。

東京では、経済優先で営業時間の短縮要請はせず、今日から東京版GoToイートの食事券の利用をスタートさせます。更に感染を拡大させる意向のようです。大阪府の吉村知事は「重症者病床の使用率が50%を超えたら休業要請を出すことになる」と一応の基準を示したので、少しはマシですが、既に約37%が埋まっており50%を超えるのは時間の問題です。

はっきり言えば、早急に営業時短など休業要請、GoToキャンペーンの一時中止など強力かつ思い切った対策をとらない限り、ずるずると感染者数を増加させ、欧米並みの大爆発が起こりかねません。今強力な対策をとることが将来の感染拡大を防止する唯一の方法のように思います。「神のみが知る」などと無責任なことを言うのではなく、やるべきことをきっちりとやったうえで神(天)に任せるべきでしょう。

いみじくも、橋下徹が言っていましたが、政府が何もできないのは「緊急事態宣言の検証ができていない(やっていない)」からです。なぜ緊急事態宣言の検証をやらないかと言えば、「検証の結果効果がなかった」となると大変な批判を浴びるからです。コロナ禍のような未曽有の危機においてはやってみなければわからないもので、仮に失敗であったとしてもそれを将来に活かせればよいのです。なんら検証することなく放置すれば、その成功や失敗を後世に残し活かすことが出来なくなります。検証の重要性は否定できないにもかかわらず、新型コロナ禍での対策について何一つ検証がなされていません。それどころか、専門家会議の議事録などのまともに作成されていないようなので、検証のしようもありません。

菅首相の唯一の著書「政治家の覚悟」(文藝春秋が復刊され、復刊に当たり元の単行本中の記述一部が削除されていると話題になりました。その削除された部分には

 「政府がどう考え、如何に対応したかを検証し、教訓を得るために、政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録は最も基本的な資料です。その作成を怠ったことは国民への背信行為であり・・・

とあります。菅首相の「政治家の覚悟」とはどんなものなんでしょうか?

さて、今日は、「中小企業の構造改革を促す3つの柱」というヤフー・ニュースの記事を取り上げます。

コロナ禍で、飲食、小売り、宿泊など全業種にわたって、中小企業は大きな痛手を受けました。政府の給付金や助成金で何とか持ちこたえてきた企業もあれば、コロナ倒産や廃業をやむなく選択した企業もあります。

この記事では、「今後は中小企業の生産性を向上させるなどの構造改革を進める施策へと比重を移していくことが求められる」と言っています。

政府は成長戦略会議で、中小企業の再編(淘汰)を推し進めようとしていますが、中小企業の淘汰が問題であることは先日書きました。しかし、政府がそうした方向にかじ取りしようとしている以上、そうした動きに巻き込まれないためにも、中小企業自体も生き残りをかけた構造改革が必要です。

この記事では、中小企業の構造改革は、3つの側面から進めることが重要だと言っています。その3つとは、

  1. 業態転換
  2. M&A
  3. ITなどを通じた個々の企業の生産性向上

という3つの柱です。

1.業態転換

 経産省は、将来を見据えて中小企業の業態転換を促す考えを示し、新たな補助金や融資、資本性資金の提供と言った支援策を検討しています。

コロナ禍が落ち着いても人々の生活様式が元に戻らず、個人の消費行動が構造的に変化することが考えられ、企業には業態転換を通じた事業の立て直しが求められます。

すでに、飲食業界では、宅配やデリバリー・お持ち帰りサービスを提供する店舗も増えてきていますし、ホテル業界もテレワーク用に客室を貸し出すサービスを行っています。ワタミでは需要の減る居酒屋の一部を焼肉店に切り替えたりしています。

倒産・廃業という道を選ばず、業態転換という道を選ぶことが出来れば、失業増加などといった社会的損失を最小限に抑えることができ、期待が持たれます。

政府が、こうした業態転換に補助金助成金を出して支援するというのはいいことです。

2.M&A

 企業経営者が高齢化し後継者がいないといった事由によって優良企業が廃業することを回避できるという意味でM&Aは重要な手段です。廃業を決定した企業の中にも優良企業が少なくありません。こうした優良企業が後継者不足・不在という理由で廃業に追い込まれるのは社会的損失です。M&Aを通じて廃業を避けることができれば中小企業の生産性向上にもつながります。

政府は、「経営資源集約化税制」で投資額に応じた減税を検討していて、①自社の技術と買収先の技術を組合わせて新製品を製造する際の設備投資 ②原材料の仕入れや販売管理に使う共通システム導入などを減税対象とすることが検討されています。また、M&Aには回収見込みのない売掛金をはじめとした簿外債務が生じるケースがあってそれがM&Aを躊躇させる要因になっていることもあります。そこで、中小企業が将来の支出や損失に備えて準備金を積み立てた場合に、損金算入を認める制度も検討されています。

3.IT活用による生産性向上

 中小企業の経営環境の改善策を官民で話し合う「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」の会合(11月18日)では、中小企業への支援策を取りまとめる方針で一致し、収益向上が見込める業態への転換やデジタル化の促進などを柱とした施策が検討されるようです。また、独立行政法人中小企業基盤整備機構は、中小企業へのIT導入の支援を強化しています。

この記事では、「中小企業の構造改革は菅政権の大きな手腕の見せ所」と言っています。確かにこの記事が言うように、「消費行動が構造的に変わる中、業態転換やM&Aを通じて、産業構造の変化を先取りする中小企業構造改革を政府が支援するという政策が次第に重要になってくる」でしょうが、菅政権・菅首相が推し進めようとしているのは、このような構造改革を念頭に置いたものではなく、先日も書いた「中小企業悪玉論」にアトキンソンと一緒に乗っかり、生産性が低いと彼らが考える中小企業を強引に淘汰しようとしているだけです。

何度も言いますが、日本企業の生産性の低さは大企業の問題で、大企業が下請け・孫請けといった中小・零細企業からの搾取を止めない限り、日本の生産性は向上しません。先ずは、こうした大企業による搾取に構造的なメスを入れることが先決で、そのあとで、中小企業の業態転換やM&Aなどの構造改革を行っていくべきでしょう。