中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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人間中心の経営学

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で6006人で、5000人台を飛び越え過去最多を更新しました。その内訳は、東京1591人、神奈川591人、埼玉394人、千葉311人、愛知364人、大阪560人、兵庫248人、京都119人、福岡316人、北海道115人などとなり、東京、大阪、愛知、福岡など17都府県で過去最多を更新しています。全国的な感染拡大に歯止めがかかりません。今日にも1都3県で緊急事態宣言が発令され明日午前0時から実施されます。その内容は、「感染リスクが高いと指摘される飲食の場」が中心で、飲食店などの午後8時までの時短要請(酒類の提供は午後7時まで)、店側が応じない場合の店名公表、協力店舗に6万円の協力金支給、イベントは上限5000人の人数制限、テレワーク7割実施の推進、小中高校は休校とせず、というようになりそうです。また、中韓など11か国・地域からのビジネス関係者に例外的に認めている新規入国について停止する案も浮上したようですが、相手国でウイルスの変異種が確認された段階で停止することになりそうです。相手国に変異種が確認された段階で停止していたのでは、既に変異種が国内に流入している可能性が高く手遅れです。未だに経済優先で中途半端感が否めません。

厚生労働省に助言する専門家組織の座長脇田隆宇国立感染症研究所長は、「首都圏では対策が不十分」と指摘し、この会合に出席した8割おじさんこと京都大学の西浦教授は、実行生産数を基に、春の緊急事態宣言と同じような強力な対策をとっても東京の感染者数が1日100人を下回るのは2月下旬以降、何ら対策をとらなければ2月末に1日3500人、今回の緊急事態宣言のような飲食店中心の対策では減少せず横ばいが続くとの分析予測を立てています。西浦教授は会合後「規制はできるだけ強いものを短期間で出すのが定石。感染者が多い状態で終われば終わるほど、より早く次の山が来ることになる」と危機感を示しました。また、日本医師会の釜萢敏常任理事も「飲食だけを押さえれば、うまくいくわけではないというのが共通認識」「感染地域をまたいだ人の出入りをどのくらい押さえられるかがポイントになる」と強調しています。

日本医師会の中川会長は、「今後の感染拡大の状況によっては全国的な発令も考えなければならなくなる」と言い、全国会議員に対し「夜の会食を人数に関わらず全面自粛してはいかがか。範を示してもらいたい。隗より始めよだ。そのような行動が国民に生じた緩みの解消につながる」と呼びかけました。

また、政府分科会の尾身会長も「国や自治体のリーダーは選挙で選ばれた人たちですよね。自らも汗をかく。自らも難しいことをやるんだと。たとえば、いろんな措置をやる、経済的支援をやる。自らも汗をかく、だから一般の人もやって下さいというメッセージがないと」と言っています。

このような緊急事態においては、リーダーがしっかりとした分かりやすく正確なメッセージを誠心誠意を持って示し、国民と共感し国民とともに汗をかくことが強いリーダーシップを発揮するためには必要なことです。野党が菅首相が直接国会に出席し緊急事態宣言についての報告をするように要求したのを自民党の森山国対委員長は拒否し、菅首相の代わりに西村担当相が出席し報告するというのです。これでは一国のリーダーとしては失格です。尾身会長は1時間半にわたり分かりやすい言葉で心を込めた会見で国民に訴えました。

菅首相は、中川会長や尾身会長の言葉をどのように受け止めたのでしょうか。

リーダーシップについてはこれまでも色々書いていますので参照してください。いかに菅首相にリーダ-としての資質がないか、リーダーの器でないかが分かるはずです(既にみんな分かっているはずですが)。

今日は、ビジネス+ITの「野中郁次郎教授に聞く、コロナ禍で改めて見直される『人間中心の経営学』とは」を取り上げます。

野中郁次郎教授は、先日紹介した「失敗の本質」の著者の一人で知識経営の提唱者である一橋大学名誉教授(組織論専攻)です。この記事は、野中教授と人工知能研究者の松田雄馬氏による対談となっています。この対談を要約して紹介します。

  • 2019年7月にスコットランドエジンバラにあるアダム・スミス旧宅で「新啓蒙会議」が開催されました。この会議は「ダイナミック・ケイパビリティ」のコンセプトで有名なカリフォルニア大学のデイヴィッド・ティースを中心に開催されたものです。ダイナミック・ケイパビリティというのは、変化に対応できる自己変革能力を示す言葉です。今の時代、これまでの行き過ぎた株主至上主義を反省し、利他と利益のバランスをとるようなたらしい啓蒙主義の発信が必要ではないかという主旨で、啓蒙時代に道徳観に基づく社会秩序の維持について説いた「道徳感情」の著者アダム・スミスの旧宅で開かれたのです。
  • ダイナミック・ケイパビリティというのは、いわゆる市場構造分析、経済ベースで最初に理論ありきという風潮に反抗しているものです。市場の構造、戦略、パフォーマンスから演繹的に考える戦略は安定的な環境では機能しましたが、絶えず変化するダイナミックな環境では、もっと人間的な、ダイナミックなファクターがいるのではないかということです。
  • 人間的なファクターが必要だというのは、技術的観点から世界を見た場合にも妥当します。世界でGAFAと呼ばれる巨大企業に対する批判が高まっています。これらの企業が個人情報を独占することに対するリスクの高さだけではなく、グーグルの検索システムなど人間が本来持っている創造性を阻害しているという批判です。「検索すれば答えを出してくれる」創造性のない世界になったのです人間性に関する問題は今や世界の識者が注目し、解決を迫られている問題となっています。
  • 先ほどの新啓蒙会議でも、「株主価値の最大化」の否定、もっと顧客と向き合う顧客第一主義、アジャイル・マネジメント、従業員の復権、つまり人間はヒューマンリソース(資源)というモノではなく資源を作る創造主体なんだという考え方が提言されました。資本主義の道徳論、利己と利他をどうバランスをとるかということが重要になってきています。SDGs(持続可能な開発目標)を重んじる経営もその流れにあります。ダイナミック・ケイパビリティは、突き詰めていくと「CEOのリーダーシップ」であり、人間と人間の相互作用が基本的にベースとなります。
  • 新型コロナ禍で3密回避が叫ばれていますが、これは人間と人間の相互作用という人間の本質を否定するようなものです。それをいかにうまく乗り越えていくかということに今直面しています。新型コロナの問題というのは、改めて「人間とな何なの?」が突き付けられているのです。経営論で、今必要なのは、人間臭い戦略論、戦略というのは人間の根本的な生き方なんだということです。
  • 「物語る」ということが人間の自然な生き方なので、それをベースにした戦略論を考えないといけないというのが基本的な考え方です。物語る力は人間が持つ創造力の源泉で、過去に学び、先人たちの歴史に学び、未来を想像していくことです。それは、今、ここに自分自身が生きているからこそ生み出されるもので、非生命にはできません。最も人間的な営みなのです。

野中教授が主張されるのは、「人間」中心の戦略論です。顧客第一主義や社会貢献ということは日本の多くの経営者が実際に行ってきたことですが、それを経営学・経営理論に取り入れようとする試みは、経営学が机上の学問として終わらず、実経営に役に立つ学問になる第一歩だと思います。今季時は<第2回につづく>ようなので、また次回紹介します。