休日の本棚 スタンフォード式人生デザイン講座
おはようございます。
昨日の新規感染者は全国で7883人、4日連続で過去最多を更新しました。その内訳は、東京2392人、神奈川838人、埼玉496人、千葉455人、茨城127人、愛知405人、大阪654人、兵庫297人、京都147人、広島120人、福岡101人、沖縄82人、北海道181人などとなっています。首都圏の3県、関西圏の2府1県をはじめ全国の17府県で過去最多を更新し、全国的な感染拡大が止まりません。重症者数も826人、1日の死者も78人といずれも過去最多を更新しています。
政府が国会に提出する特措法改正法の原案が明らかになりました。それによれば、休業(営業時間短縮)命令に応じない事業者に行政罰として50万円以下の過料を科すことや、軽症・無症状者で自治体による宿泊・自宅療養の要請に応じない人に入院勧告できるとともに入院勧告や強制入院措置にも応じない場合には100万円以下の罰金を科すという内容が含まれています。特措法は、新型インフルエンザ等の感染症が「全国的かつ急速に蔓延し、かつこれにかかった場合の症状の程度が重篤になるおそれがあり、また、国民生活及び国民経済に重大な影響を及ぼすおそがあることに鑑み」感染症法などと相まって「新型インフルエンザ等に対する対策の強化を図り、もって新型インフルエンザ等の発生時において国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすること」を目的としています(同法第1条)。そのために、まん延防止に関する措置、医療等の提供体制の確保に関する措置、国民生活及び国民経済の安定に関する措置などが定められています。陽性と判断されても入院できず自宅待機を余儀なくされ、重症化しても十分な措置を受けられないような医療ひっ迫状況で(昨日も神奈川で、自宅待機の軽症者がコロナによる肺炎で亡くなっています)罰則規定を創設するのはいかがなものかと思います。また、感染症法は、ハンセン病やエイズに対する差別や偏見の反省から感染症の予防とともに患者等の人権を尊重した医療のための必要な措置を定めています。国民の生命や健康を守るために医療体制を充実させるというこれらの法律の目的からすれば、患者に対する罰則規定というのはそぐわず本末転倒です。更に、十分な補償も受けられない中で、命令や要請に従わない事業者の名前を公表したり罰則を科すというのも本末転倒、まず必要なのは罰則ではなく、すべての事業者の経営が成り立つに十分な補償・支援です。
さて、今日は、ビル・バーネット&デイヴ・エヴァンス著「スタンフォード式人生デザイン講座」(ハヤカワNF文庫)を紹介します。著者のビルはスタンフォード大学デザイン・プログラムのエグゼクティブ・ディレクター、デイヴはスタンフォード大学デザイン・プログラム講師です。
本書ではスタンフォード大学のライフデザイン講座で使われている考え方やツールが紹介されています。デザイナーの視点で未来を想像する方法がデザイン思考ですが、そのデザイン思考のプロセスとは?、デザイナーのように考えるにはどうすればいいのか?こうしたことを教えているのがスタンフォード大学のライフデザイン講座なのです。
本書の日本版の文庫まえがきで著者らは「日本ほどデザインや審美眼をもった社会はないと思っている。だが、こと日本の労働文化に関していえば、どこか調和が欠けているように思う。日本のひとびとの話を聞いていると、仕事にやりがいが持てない、未来への希望が感じられない、やる気が湧かないという嘆きをよく耳にする。実にもったいないことだ。その点、ライフデザイナーになる術を身につけることは、無力感や憂鬱を振り払う手段になることは私たちの調査からわかっている。ライフデザインは未来への希望を高め、調和のとれた人生の可能性を大いに広げる。仕事を人生の前向きな一部にすることができるのだ。だからこそ、ライフデザインの原則を学ぶことは、日本で働くひとびとにとっては特に効果があると思う。きっと日本のみなさんの人生にプラスの影響を及ぼすものと信じている」と言っています。そうならばライフデザインを学ばない手はありません。
本書は、次の13章で構成されています。
- はじめに―ライフデザインで人生の問題を解決しよう!
- 第1章 現在地を知る―だれも自分の問題をわかっていない
- 第2章 人生のコンパスをつくる―なぜ、一流の人は正しい方向に進めるのか
- 第3章 熱中できる道を探す―消耗しない働き方
- 第4章 行きづまりから抜け出すーいつでも新たなキャリアを築ける
- 第5章 人生プランを描くー「最高の人生」を諦める前に考えるべきこと
- 第6章 プロトタイプをつくるー人生を成功へと導く魔法の道具
- 第7章 仕事探しの落とし穴ーほかの応募者を出し抜く就活術
- 第8章 夢の仕事をデザインするー仕事のオファーが舞い込む脅威のアプローチ
- 第9章 幸せを選びとるー「幸福なひと」と「不幸なひと」を分けるもの
- 第10章 失敗の免疫をつけるー「やり抜く力」を伸ばすには?
- 第11章 チームをつくるー一流の仕事の共通点
- 最後にー理想のライフデザインに向かって
内容の詳細は本書を読んで実践してみてください。
ここでは、本書で繰り返し述べられているライフデザインに必要な5つのシンプルな行動と注意点に触れておきます。
1.興味を持つ(好奇心)
どのようなものにも面白さは隠れています。無限の好奇心は、理想のライフデザインの鍵です。
- これは興味のある人なら何を知りたがるだろう?
- これはどういう仕組みなのだろう?
- なぜみんなこういう風にやるのか?
- 昔はみんなどうやっていたのか?
- この分野の専門家は何を議論するのか?
- ここで起きている一番面白いことは?
- ここで起きていることについて私の知らないことは?
- どうすればそれがわかるだろう?
2.やってみる(行動主義)
行動主義があればもう行き詰りません。生き方について心配することも、分析することも、迷うことも、答えを探そうとすることもありません。とにかくやるだけです。
- 今日中にこれを試す方法は?
- 何をもっと知りたいのか?
- それを知るために何ができるか?
- 実行可能なことは?それを試したら、何が学べるのか?
3.問題を別の視点でとらえなおす(視点の転換)
視点の転換はリフレーミングとも言い、デザインの問題では必ずと言っていいほど役に立ちます。
- わたしはどういう視点を持っているか?
- その原因は?
- ほかのひとならどういう視点で考えるだろう?その人の名前を挙げ、あなた自身ではなくそのひとの視点で問題を捉えよう。
- その問題は実際にはごく些細ではないか?
- ごく簡単に解決できる可能性は?
- 問題ではなくチャンスではないか?
- まるまる無視できないか?
- 問題自体をまだ全く理解できていないのでは?
- 本当にあなたの問題か?
- その問題は1年後にどうなっているだろう?
4.人生はプロセスだと理解する(認識)
人生がプロセスだと理解すれば、イライラしたり道に迷ったりしなくてすみます。また途中であきらめることもなくなります。あなたの頭に浮かんだ疑問、不安、アイデア、希望をすべて書き出し、「次はどうするべきか」を自問してみましょう。
- あなたの前後にはどういう人生のステップがあるか?
- あなたが思い描いているステップは、あなたが今いるステップと本当につながっているだろうか?
- いあ、あなたは適切なステップにいるだろうか?先走りすぎたり遅れをとったりしていないか?
- 一歩先だけを考えるとしたら?
- 起こりうる最悪の出来事は?起こる確率は?それが起きたらあなたはどうするだろうか?
- 起こりうる最高の出来事は?
5.助けを借りる(過激なコラボレーション)
あなたの人生は一人旅ではありません。あなたが置かれている状況について話せるサポーターを今すぐ見つけ、5分間であなたの状況を説明し、5分間で感想をもらい、話し合いましょう。今の気分はどう?ほかの人とすっかり心を打ち解けた気分は?コラボレーションを始める方法はたくさんあります。
- チームをつくる
- コミュニティをつくる
- あなたのライフデザインに関係するグループや人々をすべて洗い出す。あなたはその全員と連絡を取り会話しているだろうか?そうでないならすぐに連絡を取り話そう。
- 「頼み事日誌」をつける。あなたが悩んでいる疑問を書き出し、日誌を常に携帯し、日誌に書いた疑問を解消してくれそうな人を見つけ相談する。その答えや結果を日誌に書く。
- メンターを見つける。
以上の5つのマインドセットを常に生き方の指針として、ライフデザインやイノベーションプロセスの一環として活かすことが大切です。
また、この5つのマインドセットに加え、理想の人生を生きるうえで注目すべき2つのものがあると言っています。それは「コンパス」と「自己鍛錬」です。
1.コンパス
これは、人生を導いてくれる「仕事観」「人生観」のことで、あなたの人生観・あなたの考え方・あなたの行動の3つが矛盾のない生き方ができているかの判断基準になるものです。自分自身に疑問を問いかけ、常にこの3つの答えを把握し、コンパスを点検し、再調整することが大事です。
2.自己鍛錬
自己鍛錬、つまりヨガ・瞑想・詩の読み書き・祈りなどが持つ価値は少しずつ評価されてきています。自己鍛錬を通じて、心を鍛え、判断力を高めていけば、大きな成果が得られます。こうした自己鍛錬を習慣化することで、理想的な人生を生きる上で役立ちます。
どうして人生がうまくいかないのか? 今の仕事を続けるべきか? これからの人生をどのように生きようか?
誰もがそのような疑問を抱え、悩みながら生きています。コロナ禍で不安や悩みはさらに増えています。
われわれは答えのない社会・世界に生きていると言っても過言ではありません。人生も何が正解か分かりません。様々な答えがありうる複雑な問題を解決するには、究極の解を求めるエンジニアの視点(収束的思考)ではなくデザイナーの視点(発散的思考)が必要になってきます。目の前の問題を別の視点からとらえなおし、色々なアイデアを出しプロトタイプ(試作品)を作りながら試行錯誤を繰り返していく、こうしたデザイナーの思考プロセスは、正解がない「人生」と言う問題と向き合うにはもっとも適したものだと言えそうです。
人生には「唯一の正解」がないということは極めて重要です。「唯一の正解」がないからこそ、自由に発想を広げられますし、試行錯誤を繰り広げられます。一つを選んだあとも不正解を選んだ(正解がない以上不正解もありません)という後悔の念に必要以上に苛まれることもありません。絵の描き方に正解がないのと同じく、人生の描き方にも正解がありません。著者は「最高の自分は何通りもある」と言います。こうした楽観的な視点がデザイン思考にはあるのです。
本書は人生や仕事の設計において「デザイン思考」の考え方を取り入れ、自分に合った人生を、実際に頭や体を動かしながらデザインしていくことを目的としています。
各章末にワークシートがります。これらを実践しながら自分のライフデザインに取り組むのがよいと思います。