中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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新型コロナ禍・アフターコロナ時代の危機管理

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で5759人で、その内訳は、東京1592人、神奈川795人、埼玉433人、千葉428人、愛知218人、大阪464人、兵庫289人、京都154人、福岡300人などとなっています。全国的には先週よりも僅かに減少していますが、東京・埼玉・千葉・福岡などは日曜日としては過去最多となり、京都も1日の感染者数として過去最多を更新し、緊急事態宣言の効果が見えていません。新たに緊急事態宣言の対象として追加された大阪・京都・神戸・福岡では先週に比べ週末の人出は若干減少していますが、東京では先週よりも人出が増加している場所もあります。テレビで行っていた外出中の人へのインタビューを見ると、危機感・緊張感のなさが目につきます。「午後8時以降の飲食店の営業自粛」から「昼間は出歩いてもいい」というような誤った認識が見えますし(実際は「昼夜を問わず不要不急の外出自粛」です)、「周りに感染者がいない」「若者は軽症・無症状」ということからの気の緩みが見られるようです。菅首相をはじめ、しっかりとしたメッセージが伝えられていないことが原因です。今日から、通常国会が開かれ、新型コロナ対策が最重要議題となりそうですが、改めて、しっかりと誠意を持って正確かつ丁寧にメッセージを伝えるとともに、早急に特措法・感染症法の改正などさらに強力な新型コロナ対策をとってもらいたいものです。

26年前の1月17日の阪神淡路大震災、2011年3月11日の東日本大震災・福島原子力発電所事故、更に今回のコロナウイルスによるパンデミックと、そのたびに日本政府だけでなく企業も危機管理が脆弱であることを思い知らされています。

これまでも何度か書いていますが、今日も、改めて新型コロナ禍、アフターコロナ時代の危機管理について考えてみたいと思います。

近年、自然災害や事故によるリスクのみならず、社会リスク(政治・経済・金融・社会)や経営リスク(製品・環境・人事・雇用・法務・財務)など多くのリスクが企業を取り巻いています。東日本大震災に伴う倒産は阪神淡路大震災時の3倍を超え、失業者も1万人を超えました。新型コロナ禍では政府の支援策もあって倒産件数はある程度抑えられていますが、失業者数は増加し、今後の感染状況によってはどれだけの企業が倒産するか分かりません。

企業にとって重要なことは生き残るということ、つまり企業の存続を図るために最善を尽くすということです。危機的状況ではリスク回避を徹底し、被害を最小限に食い止める体制・方策が必要です。こうした危機管理体制の構築やリスク回避の方策は一朝一夕でできることではありませんから、危機的状況になってから取り組むのでは遅いと言えます。「泥棒を見て縄をなう(泥縄)」では駄目なのです。危機的状況を想定して、あらかじめ緊急時の体制や行うべき方策を決めておくということが重要です。

1.「危機管理マニュアル」の作成

 危機管理マニュアルとは、危機管理における作業手順を示したものです。危機管理マニュアルを作成している企業でも、内容があいまいで抽象的過ぎて役に立たないものが多いと言えます。危機管理マニュアルは、緊急事態に直面した際にすぐに機能しなければならないものですから、具体的かつ明確な内容でなければなりません。危機管理マニュアルは、危機に直面した場合にどのような作業手順で対処するのか、具体的な内容を適切にわかりやすく示したものでなければならないのです。このような点に注意して危機管路マニュアルを作成してください。既に危機管理マニュアルを作成されている企業は、今一度見直しましょう。

2.「コンティンジェンシー・プラン(不測事象対応計画)」の策定

 コンティンジェンシー・プラン(不測事象対応計画)とは、予測外の不測事態に対処するための計画を予め決めておき、それが起きた際にそれに対応した計画に切り替えることによって迅速な対応を果たし企業の損失を最小限に食い止めるものです。不測事象には、地震等の災害、石油資源・食料等の供給(輸入)ストップ、資源購入価格の高騰、為替市場の変動、政変・テロなどが礼として下られますが、今回の新型コロナのパンデミックも不測事象に該当します。漠然としているものの起こり得る可能性がある問題ごとに、それら不測事象に対応した複数の計画をあらかじめ作成しておき、これらの不測事象が起きた際に、それに対応した適切な計画に切り替えるのです

3.「BCP(事業継続計画)」の策定

 中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」の「BCP(事業継続計画)」もコンティンジェンシー・プランの一環と言えるものです。これは、「企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法手段などを取り決めておく計画のこと」です。BCPにおいては、当該企業の「存続に関わる最も重要性・緊急性の高い事業」である「中核事業」というものを特定することが重要な作業となります。中核事業を絞り込むと同時に、緊急時においてそれをどの程度復旧させることが可能か、また目標復旧時間をどのように設定することが可能か、あるいはそれを実現するために必要となるバックアップ措置は何かなど、あらかじめ確認しておくことが重要です。BCPも絵に描いた餅であってはなりません。実際に運用できて役立つものでなければならないのです。緊急事態が発生したときに、どのような基準でBCPを発動させるか、BCP発動時にどのような体制で組織を動かすかといった、平常時の体制から緊急時に体制の切り替えについてもあらかじめ具体的に取り決めておくことが重要です。

4.「ローリング・プラン」の策定

 多くの企業で長期経営計画が策定されていますが、長期経営計画も引き続き繰り返しその内容の見直しが必要で、環境変化が生じれば計画を修正しなければならないことは言うまでもありません。ローリング・プランは、当初立てた長期経営計画が、経営環境の変化によって意味が亡くなった場合にそのズレを埋めるために計画の見直しを行い、元の計画の一部を修正し、手直しすることです。コンティンジェンシー・プランやBCPが不測事象が発生した場合に別の計画に全面的に切り替えるのとは異なりますが、緊急事態の程度や状況によっては、長期経営計画の一部修正で事足りる場合もありえるので、ローリング・プランも一つの方法となるでしょう。

以上述べた危機管理は、主に「外敵襲来型リスク」つまり外的要因に対する危機管理への対処法です。この場合には、危機管理マニュアルを作成し、コンティンジェンシー・プランやBCPを作成するという事前準備が重要となりますが、危機的状況はさまざまなので、場合によってはマニュアルや計画通りにいかないことも多々出てきます。こうした場合には、そのときの状況に応じ臨機応変に対応することが求められます。

そのほかにも「内部崩壊型リスク」「レピュテーション型リスク」もあります。

「内部崩壊型リスク」は、事故、情報漏洩、企業不祥事などに起因する危機で、隠ぺいを図るという姿勢は最悪です。これには早期発表と原因究明、対策の立案が重要になります。「レピュテーション型リスク」は企業のレピュテーション(評判)に起因して経営にダメージを与えるリスクで、近年SNSの炎上や不利な世論形成などで問題視されているリスクです。これには、企業が現在どのような評価を受けているかを正しく認識し、企業の評判を調整すべく情報発信することが重要になります。

いずれにしても、大企業のみならず中小企業においても、今後ますます危機管理は重要なものになってきます。予めしっかりと危機管理の体制と方策を決め危機的状況に対処しましょう。