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ジョブ型=成果主義は誤解?

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1631人で、そのうち東京429人、神奈川164人、埼玉187人、千葉121人、愛知72人、大阪117人、兵庫54人、京都30人、福岡93人、北海道69人などとなりました。6日ぶりに2000人を下回り、喜ばしいことです。しかし、週末の人出は先週と比べると各地とも大幅増になっているようで、気の緩みが懸念されます。緊急事態宣言解除に向けた動きが加速しそうですが、WHOでは「陽性率5%未満が2週間続くことがロックダウンの条件」としています。これと比べると、日本の基準は甘々で、陽性率が10%を下回ればステージ2に移り(ほかにも基準はありますが)緊急事態宣言解除となります。このような甘い日本の基準や各都道府県独自の基準で解除を早めてしまうと、再燃することは目に見えています。緊急事態宣言を解除する際には慎重に判断するとともに、時短営業を継続・営業時間を今の午後8時から午後9時に変更するなど、状況を見極めながら段階的に行うべきだと思います。当然負担を強いる店舗には十分かつ公平な補償がなされなければならないことは当言うまでもありません。

今日は、日経Biz Gate の「『ジョブ型=成果主義は誤解』は本当か?」という記事を取り上げます。これまでにも、ジョブ型雇用と成果主義については色々書いてきましたし、私もジョブ型雇用と成果主義を結び付けて書いてきました。

この記事によれば、ジョブ型と成果主義を結び付ける風潮に対し、専門家は「ジョブ型=成果主義ではない」と釘を刺していると言っています。確かに、欧米の雇用形態であるジョブ型と成果主義を短絡的に同一視するのは問題ですが、全く別物であるというのも問題があると思います。両者は明らかに密接な関連性を有しています。

この記事は「欧米の働き方やジョブ型雇用が成果主義的なのかどうかは、今後の日本人の働き方や日本企業んマネジメントを考えるうえでも重要なポイントになる」と言っています。その意味でも、改めてジョブ型雇用と成果主義の関係を考えておく必要がありそうです。

1.欧米の管理職は成果主義

 「ジョブ型雇用」と「成果主義」という言葉が語られていますが、その概念を明確にするところから始めなければなりません。

 ここでは、「ジョブ型」を「一人ひとりのジョブ(職務)を明確に定義したうえで契約する欧米型の『職務主義』を意味するもの」と理解しておいて充分です。

 混乱をもたらす原因の一つが、組織のどの段階に焦点を当てるかによって話が違ってくるということだと言います。欧米では、非管理職、特に現場労働者の場合、原則として査定は行われません。むしろ、現場労働者まで人事評価によって処遇に差が付けられる日本企業の方が成果主義的です。一方で、管理職の場合は各部門の目標達成などに応じて報酬が決まり、日本と比較にならないほど報酬に差が付きます。管理職だけをとれば、まさに「欧米は成果主義だ」と言って間違いはありません。

2.積極的成果主義と消極的成果主義

 議論を混乱させている第二の原因は、成果主義」の定義にあると言います。「成果主義」を「成果を重視するマネジメント」と定義すれば、成果主義には2種類あります。それが「積極的成果主義」と「消極的成果主義」です。

  • 積極的成果主義=個人またはチームの成果に応じて給与や報酬が決まる成果主義
  • 消極的成果主義=個人が決められた役割を果たし、成果を上げているかどうか(目標を達成しているかどうか)を問われる成果主義 

 欧米では一人ひとりの職務が明確に定義され、果たすべき役割や期待される成果が職務記述書に明記されます。したがって、成果を上げることが絶対であり、求められる成果が下られない場合には、報酬が減額されたり、場合によっては解雇につながります。だからといって必ずしも成果がすべてというわけではなく、仕事によってはプロセスも重視されます。そこで言う「プロセス」は日本企業のように成果は上がらなかったが努力したとか頑張ったという精神的なものではなく、どれだけ進捗しているか・どこまで交渉がまとまりかけているかという「成果につながるプロセス」が評価されるということです。

 「成果主義」を「成果に応じて報酬が支払われる制度」ととらえれば、欧米企業のジョブ型雇用が直ちに成果主義だとは言い切れませんが、「成果主義」を「成果を重視する制度」と理解すれば、欧米は成果主義と言っていいということになります。

3.どちらの成果主義をとるかは雇用システムとセットで考えるべき

 日本企業において成果主義が普及するとした場合、積極的成果主義か消極的成果主義のどちらでしょうか。この記事では、テレワーク導入を機にジョブ型雇用が拡がるとしたら、その場合には消極的成果主義だと言っています。仕事の分担や役割が細かく決められている中では成果に極端な差は生じにくく、そもそも普通の職務において個人が特別に高い成果を上げてもシステム全体から見ればあまり価値がないと言います。ここまで言い切っていいかは問題ですが、日本企業の場合にはチームワークが重視されることとも相まって、積極的成果主義ではなく、消極的成果主義が普及するというのは間違いなさそうです。

 それでも、社員の意欲と能力を最大限に引き出すために積極的成果主義を導入しようとするなら、「ジャブ型」ではなく「自営型」がいいと言っています。「自営型」というのは「特定のプロジェクトや製品開発などまとまった仕事を一人に任せるもの」で、「外注」に出すような発想です。

テレワークを定着させるということを前提に考えるならば、仕事のインプットではなく、結果・成果というアウトプットに注目したマネジメントが必要になることは言うまでもありません。そのアウトプットをどのように評価し処遇に反映させるか、雇用システムとセットで考えることが重要です。

 そうしたことからも、「ジョブ型」と「成果主義」は全く無関係のものではなく、両者を関連付けてとらえることも大切です。