中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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人財で勝つ会社を創る

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1216人、そのうち東京276人、神奈川121人、埼玉121人、千葉155人、愛知43人、大阪119人、兵庫33人、京都21人、福岡57人などとなっています。昨日から緊急事態宣言が延長されましたが、大幅な減少で、政府は、今週末にも緊急事態宣言の前倒し解除に向けて検討が始まるようです。岐阜、愛知、福岡などがその対象になるとのことですが、大阪の吉村知事は、府独自の基準を満たしたとのことで、今日にも対策本部会議を開き、政府に対し緊急事態宣言解除を要請するようです。緊急事態宣言解除には大阪・兵庫・京都の足並みがそろえて行われることが大前提です。法後県は、国よりも厳しい基準を定めていて、現在のところ県独自の基準を満たしていませんし、イギリス型の変異株のクラスターが発生しています。金食う事態宣言解除には、単に新規感染者数だけでなく、陽性率、病床使用率など医療のひっ迫状態を加味して判断されるべきです。多くの医師は、緊急事態宣言解除よりも、第4波を懸念しています。感染力の強い変異株を抑え込むことができるかは首都圏、関西圏などの都市部で、変異株封じに成功するかにかかっています。「市中感染しているが、面的広がりはない」という説明をするよりも、変異株の検査体制の確立、ゲノム解析、感染実態の正確な把握しなど、徹底的に行って、全国的な感染拡大につながらないようにすることが第4波を防ぐ有効な手段ではないかと思います。

さて、今日は、JBPressの「AGCが進める『人財で勝つ組織』はどう創られるか?」を取り上げます。これまでも企業経営における人材の重要性は繰り返し書いてきました。

AGCは、テレビcmでも有名な「素材の会社AGC」で、世界最大手のガラスメーカーです。この記事は、AGCの常務執行役員・人事部長の簾孝志氏による「AGCの組織カルチャー改革とワークスタイル変革」という講演を要約したものです。AGCの取り組みは多くの企業の参考になると思いますので、この記事を取り上げました。

AGCは、2025年に高収益でグローバルな優良素材メーカーになるという目標に向けて、従来に事業を「コア事業」と位置づけ、長期的安定的な収益基盤を構築するとともに、戦略事業として高付加価値ビジネスの拡大による「高収益事業」の確立を目指し、「モビリティ」「エレクトロニクス」「ライフサイエンス」と言った事業ドメインを定め、「コア事業」と「高収益事業」の2本を柱として進めていくというのです。イノベーションが叫ばれる今日、イノベーティブな事業にばかり目が向けられ、本業である「コア事業」がおろそかになり、それが経営を圧迫するというケースが見られます。イノベーティブな戦略事業を行うにしてもその前提として、本業である「コア事業」で長期安定的な収益基盤を構築していることが重要です。

簾氏は、「未来戦略を推進していくうえで、新しい時代を担う人材マネジメントへの期待が必然的に高まってくる」と言い「AGCは、人事制度から働き方・組織文化まで一体となった変革を推進し、『人財で勝つ会社』を目指している」と言っています。

具体的取り組みとして、

  1. 多様な個の意欲・思いに真摯に向き合う。
  2. 個々のキャリア開発・評価・育成に対する労力を惜しまない
  3. 組織運営や働き方の無理・無駄をなくし、従来以上に人材マネジメントに時間を充てる

の3つを行っています。

簾氏は、「人財で勝つ会社」を実現するために、まず「経営人材の育成」を挙げます。AGCでは、社内の各カンパニーや事業部門から経営人材候補者を選び出し、更にその中からグループ経営の能力を見込んで人材候補者を選抜し、継続的に育成・教育を続けることで、経営ポジションに抜擢するピラミッド型の選抜システムを運用しています。

従来の組織におけるリーダーは、各分野の専門家がその部門のトップに就くことが多いのですが、先行きの不透明な時代では、必ずしも専門性を持たなくても、全体を見て調整・指示を行ことができるタイプのリーダーが必要になります。簾氏は「広い視野で社会やビジネスに目配りし、それらの変化に合わせて学び続け、動ける感性が必要だ」と言います。

簾氏は、在宅勤務制度の実態と考え方についても触れています。AGCでの在宅勤務制度の利用は、職種によってかなりの開きがあるようです。在宅勤務できる仕事と在宅勤務ができない・困難な仕事があることから、このことはどの企業でも言えることでしょう。職種によって否定的な部署も、肯定的な部署もありますが、通勤機関がなくなるというメリットはあるのでできる限り必要な範囲で続けていくことが重要です。

在宅勤務では成果を評価するうえで、職務記述書を作成する必要があるといまれます。昨日書いた「ジョブ型」雇用です。簾氏は、「AGCは、あくまでも自社の業種・業態に最適な形での運用を意識している」と強調しています。「もともとジョブ型雇用というのは会社のミッションが明確であって、そこに合わせて人を割り当てていくという考え方。導入するには、自社だけでなく社会全体の人財の流動性、社員のキャリア設計といった視点は欠かせない」と言います。コロナ禍で緊急措置的に在宅勤務を導入するという流れとは別に考えなければならないということです。

簾氏は、AGCの「ワークスタイル変革プロジェクト」について触れています。この目的は、①企業の競争力の強化 ②人財に選ばれる魅力ある企業 ③自律的に生き生きと働く社員の実現です。このプロジェクトのユニークな点は、従来のDXの取り組みを広げ、すべてのテーマ、ITインフラ・ツール、業務プロセス、オフィス環境、教育、人事施策までを含んだ項目を対象としているということです。

人事施策では、「生産性向上」「個の自立・成長・チャレンジ」「多様性の需要と成果」などを検討軸に多彩な施策を進めています。簾氏は「以前から柔軟な働き方を促す人事制度の整備には力を入れてきたが、今後はきめ細かな制度改善や管理手法の導入、在宅に関する支援などを充実させていきたい」と言います。

コロナ禍で在宅勤務が一般的になり、個人が自分の意志で働き方を変えられるようになると、会社側もその存在価値や目的をより明確に発信し、求心力を高めていく必要が出てきます。その中で重要なのは、人財であり、さまざまな取り組みを通じて「人財で勝つ」組織を作り上げる必要があるでしょう。

AGCの取り組みは参考になると思います。