中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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休日の本棚 2050年の世界(2)

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1301人、そのうち東京307人、神奈川154人、埼玉124人、千葉117人、愛知53人、大阪89人、兵庫38人、京都27人、福岡87人、北海道75人などとなっています。東京は6日連続で500人を下回り、大阪は約3カ月ぶりに100人を下回りました。このまま収束に向かってもらいたいものです。ファイザー社のワクチンが予定よりも2日早く日本に到着し、スピード承認されました。17日から医療従事者への接種が始まりますが、医師や看護師の中には、副作用への懸念から接種を希望しない人もかなりいるようです。日本人にはワクチンに対し慎重な姿勢の人が多く、私自身も基礎疾患を有していますが、ワクチン接種はしばらく様子見しようと考えています。

さて、今日は、先日の「2050年の世界 英エコノミスト誌は予測する」の続きです。

第9章 おぼつかない自由の足取り

 民主主義は、先進国において縮小し、新興国において亢進するだろう。ツイッターやウェブ世界の進展は、民主化に一定の役割を果たすが、民主化された後の影響は限定的だ。

  • 独裁国では民主主義が前進し、自由主義国では民主主義が後退する。
  • 中国は一党独裁国家ならではの脆弱性に直面しなければならないだろう。インドは、複数政党制ならではの欠点と挫折に苦しめられるだろう。
  • 一党独裁の政治体制の下では、民主主義という言葉は、人々がウェブなどを使って反政府活動をする共通のキャッチフレーズになりうる。
  • ある程度民主主義が保証されている国では、ロビイストの暗躍や、圧力団体と官僚・政治家との癒着腐敗、政府の巧妙なマスコミ操作など、民主主義ゆえの欠陥が見えやすくなる。
  • 民主主義のアキレス腱は2つある。①金と②選挙に対する様々な形のバイアスのかかり方である。つまり、①企業や企業の圧力団体が、政治家に献金し、規制当局に圧力をかけるということ と②民意がマスコミ等を通じて操作されやすいということある。
  • 民主主義の脆弱性を補う手段は、①法の支配の貫徹 と②他人を思いやる「公共心」である。2050年までに、すべてを効率と個人の利益に換算して考える「経済第一主義」とこの「公共心」が大きな対立事項となり、民主主義を揺るがしていく。

第10章 高齢化社会による国家財政の悪化をどうするか

 世界的な高齢化によって、国家には年金や保険医療についての国民との約束を果たす余裕がなくなってくる。しかし、市場経済の一定の導入による効率化など「改革」の打つ手はまだある。

  • 社会保障費の増大は、防衛費や教育費などの国家にとって欠くべからざる分野の予算を圧迫する。
  • 先進国のみならず、インドを除く新興国でも、社会保障費の増大に伴う国家財政の悪化の懸念がある。
  • そうした国家財政の悪化は、改革によって防ぐことができるものである。
  • 年金については、雇用期間の延長、あるいは富裕層には選択的に支払わないなどの措置がすでに取られている。
  • 健康医療費については、オランダのように、貧困層や弱者には、政府が援助し、そうでない部分で、民間の医療保険に市場を開放するなどして、費用削減の効果を既に上げている国もある。
  • 開発途上国では、将来の高齢化を見越して余裕のあるうちに、年金の賦課方式から積立方式への転換が比較的容易に行われるだろう。
  • 政府借入金の急増の余地を残すために債務を低く保つ、戦略的な財政備蓄の確保の必要がある。未来の国庫は、気候変動に伴う極端な気象現象による災害に備えての自然災害税など、多数の財源を持つことが要求される。

第11章 新興市場の時代

 新興国の経済は、今後40年間、先進国が経済成長を達成した速度を上回る速さで成長する。中でも教育に投資している国のスピードは速い。急速に高齢化する中国は減速する。

  • ブラジル、ロシア、中国は、予想をの2倍を上回る規模で成長した。これは経済成長が指数関数的に、すなわち規模が増えた分を利用してさらに増えるからで、現在の先進国のうち、2050年までの経済規模で上位7か国に残るのはアメリカのみ。他は中国、インド、ロシア、インドネシア、メキシコにも抜かれる。
  • ある国の工業化の時期が遅れれば遅れるほど、その速度は速くなる。しかし、その速度は他の要因にも左右される。もっとも大きなファクターは教育である。生産性を向上させるさまざまな手法や技能は、教育程度の高い労働人口を持つ国で速くなる。
  • フィリピン、エジプト、メキシコ、インドネシアバングラデシュパキスタン、ナイジェリアなどの新興国で、教育年数が著しく伸びて、生産性の高い労働力を生み出し、その国の経済成長を後押しする。
  • 中国は2025年を境に急速に高齢化が進み、人々はそれまでに海外にため込んだ海外純資産を取り崩し始める。そして、労働力不足に陥る。

第12章 グローバリゼーションとアジアの世紀

 グローバリゼーションは、どれほど反発を受けようと、今後数十年後戻りすることはない。グローバリゼーションは、アジアが世界経済の支配的勢力に返り咲くのと同時に進む。

  • 今後の世界経済は、3つのシナリオに分かれる。その1つは、「コントロールされたグローバリゼーションの状態で進む」と考えられる。リーマンショックや欧州危機などで市場主義に対する警戒から政府は一定の規制を課してくるが、市場は開かれたままだ。
  • 第2のシナリオは、「後戻りするグローバリゼーション」で、不穏な空気の中で保護主義の機運が高まるというものだ。先進世界の大半で、経済の弱体化と高失業率が不安を生み、保護主義をあおる。これにより「コントロールされたグローバリゼーション」に比べると、世界の年間成長率は1%削られ、世界の生産高が大きく落ち込む。
  • 第3のシナリオは、「凋落したグローバルゼーション」であり、1914年から1945年の縮小の時代に似る。これが起きると、成長に悲惨な結果をもたらす。世界の成長率は年率約1%にまで低下し、その結果、一人当たりの所得も減少する。最も大きな打撃を被るのは、新興市場、とりわけ貧困国だろう。
  • 最も蓋然性が高いのは第1のシナリオで、世界経済において今後、最も重要な地位を占めてくるのはアジアの経済で、2050年には世界の半数がアジア経済となる。その中で、日本は相対的に急速にプレゼンスを失っていく。
  • 今後一人当たりの実質GDPが最も大きく成長するのは自アの発展途上国で、サハラ以南のアフリカ諸国、中東と北アフリカがこれに続く。ラテンアメリカと東ヨーロッパは新興市場地域の中で最も早く成長する国々に後れをとる。

第13章 貧富の格差は収斂していく

 世界の貧富の差は、2050年には今よりはるかに縮小されている。貧富を左右する要因としては、どこに住んでいるかより、どんな教育を受けるかの方がずっと大きいだろう。

  • 「格差」を考える場合、「各国間の格差」と「それぞれの国内での格差」を考える必要がある。
  • 各国間の格差は、1990年代までは開く一方だったが、1990年以降、新興経済の大多数がアメリカより急速に成長し、キャッチアップのペースががってきている。今後も、欧米や日本などの国々が高齢化による財政の悪化に苦しみ、低成長を余儀なくされる中、出生率が高く人口の配当が大きい新興経済国との差は益々縮小し、世界的な規模での貧富の差は縮小していく。
  • 一方、1990年代から国内における格差の拡大が起きている。富裕層がかつてない規模の収入を得るようになっているからだ。その理由としては、トップ層の職業の収入がグローバル化による市場の拡大で増えたこと、金融業の異常ともいえる肥大化が挙げられる。

第14章 現実となるシュンペーターの理論

 これからのビジネス界では、創造的破壊の嵐が、主にいい方向で、一層猛威を振るう。予想もしないような技術革新は、これまでのビジネス環境を一変させる。

  • インターネットの発明・普及によるグローバリゼーションはシュンペーターの言う創造的破壊のスピードを高めている。想像もできない技術革新によって、これまでのビジネスのやり方が陳腐化し、それに固執してきた企業は淘汰され、新しい企業が生まれる。
  • 製造業では、確信をもたらす可能性がある一つの技術として3D印刷の技術が挙げられる。
  • あらゆるものがネットと常時接続され、そのネットワークが生活を変える。ロボットの技術革新、電子秘書の機能を持つ自立型のソフトウェアなど、仕事の効率化が起き、さまざまな技術革新による経済の変化が予想される。
  • 先進国に早く追いつきたいという新興国経済の要求も様々な技術革新を生む。
  • 契約型雇用者が、複数の企業に自らの技能を売るようになると、会社の形態もより複雑化する。
  • さまざまな技術革新に伴い、グローバル市場においては、知識階級に富が偏在するようになり、労働者の勤務はグローバル化により過酷化する。
  • しかし、総じて、人々は創造的破壊の荒波の中恩恵を受けるだろう。

第15章 バブルと景気循環のサイクル

 株式市場では1966~82年の弱気な過程を経て1982~2000年まで強気の過程だ続いた。こうしたサイクルは今後も繰り返すのだろうか?地価は?商品価格は?

  • バブルの世紀には、必ず、それを引っ張る新興産業がある。19世紀は運河と鉄道、1990年代はインターネット産業だった。バブルは、新興産業への投資として必要だとする考えもある。
  • 歴史を振り返ると、バブルによって新産業に投資した投資家よりも消費者が得をしている。その分野がすぐに過当競争になり、価格が引き下げられるからだ。
  • 2008年のリーマンショック以来のバブル崩壊によって、各国は債務超過に苦しむようになった。これは緊縮財政を呼んだが、それに耐えきれなくなった国民が政治的な反乱を起こし、不安定化が促進される可能性がある。
  • この景気後退においても、物の価格は上昇に転じている。これは、中国、インドという二大新興国がグローバル経済に組み込まれ、成長の過程で、エネルギーなどの需要をより欲しているためという見方がある。
  • 日本型の鈍化した市場が、欧米などで長期間続く可能性がある。
  • 過去の実績のある株価を実績順に勝っていくモメンタム理論。バブルの崩壊など、経済に断層が生じると、巨額の損失を被ることになる。

第16章 次なる科学

 人類の知へのタンク右派新たな領域に入り、そこでは上下関係に苦しむ東洋より、リベラルで序列に囚われない欧米諸国の方が、より多くを研究し、より多くの実りを手にする。

  • 次なる科学のフロンティアは、化学でも物理学でもなく生物学にある。
  • 生物学とナノ科学、情報科学天文学が結びつき、さまざまな発見と人類にとっての進歩をもたらす。
  • 2030年ごろまでに、われわれの知る生物のほとんどが遺伝子のサンプル化を終え、そのサンプリング過程で多くの未知の生物の存在を明らかにする。生命の歴史の未知の部分が解明されていく。
  • 宇宙も、制覇の対象というよりも探索の対象、特に生命の起源を知る意味で様々な研究や発見がなされるだろう。
  • 生命誕生の仕組みの解明は、われわれの細胞を研究していくことで開けていく道もある。
  • 物理学は、未知の物質の探求の時代に終わりを告げ、現在あるものへの分析に向かう。その最大のターゲットは宇宙を覆う暗黒物質の正体だ。
  • 経済成長によって東アジアの国々は、化学分野でもさまざまに進出しているが、真に独創的な研究は、権威を根こそぎひっくり返す革新性を必要とする。東アジアの儒教的な上下関係、中国の専制的な政治体制はマイナスに働く。
  • 非西洋では唯一の技術大国である日本も、本格的な基礎科学の研究は立ち遅れている。日本人研究者で科学部門のノーベル賞を受賞したのはわずか15人で、日本の7%以下の人口しかいないオーストリアとほぼ同数だ。その理由は、日本の若手科学者が先達の理論に迎合しがちなことが挙げられる。欧米では旧来の理論を否定することでキャリアが築かれる。
  • 政治体制が専制的な中国より、民主的なインドにおいて化学は発展するだろう。

第17章 苦難を越え宇宙に進路を

 栄光の有人飛行競争の時代は終わりを告げた。米国は月への飛行を取りやめ、周回軌道を回る人工衛星に様々な用途を見出す時代になった。中国が独自宇宙国家として台頭してきた。

  • 冷戦時代に予想されたフロンティアとしての有人飛行競争は終わりを告げ、宇宙の商業利用の時代が来ている。
  • アメリカが宇宙へ独自の有人飛行を取りやめた半面、中国の台頭が目立ち、2025年をめどに月面着陸を目指している。
  • 軍事的な宇宙利用の主眼は、情報収集という機能に集約される。
  • 民間会社による観光目的の宇宙飛行は、今後費用が下がり、金持ちの娯楽となる。
  • 当面の大きな宇宙探索の目的の一つは、暗黒物質の正体の解明だ。宇宙の膨張が速度を増していることが近年観測され、それを説明するための暗黒エネルギーの正体も解明が待たれる。
  • 太陽系以外に生命の可能性のある惑星はいくつもあり、観測技術の発達によって地球以外の生命の発見が今後なされるかもしれない。

第18章 情報技術はどこまで進歩するか

 インターネットは極めて短期間に社会を変容させた。生み出され処理されるデータの量は指数関数的な割合で増えていくので、経済、社会ともに今後の変化はさらに加速する。

  • 今後の開発は、ハードなスペックそのものよりも、人間の思考、発見、知識の共有を拡大するものに重点が置かれる。
  • 同じく技術そのものよりも、その使われ方に開発の重点が移っていく。
  • 情報過多がわれわれの時代の本質的な現象である。情報の蓄積は世界経済の成長率の4倍、コンピュータの演算能力は9倍の速さで増大している。
  • マイクロチップの小型化と高性能化は、あらゆるものをネットワークコンピュータ化するユビキタス・ネットワークを推し進める。
  • ウェブ技術の革新によって以前は集めることのできなかったデータが集められるようになり、社会、経済ともに変容する。
  • 企業は上意下達から、ウェブを使った知識共有が型の組織に変わっていく。

第19章 距離は死に、位置が重要になる。

 テクノロジーが距離を葬った。通信費は限りなく無料に近づき、さまざまなソフトウェで人はこれまで以上につながれるようになり、「どこにいるか」がかつてないほど重要になる。

  • 通信費は技術革新で安くなり、距離は障害でなくなった。携帯電話に搭載されるさまざまなソフトで、距離はさまざまな分野で意味をなさなくなっている。
  • ウェブ空間上で人を集えるソフトは、専制的な政府が集会の自由を圧迫しているときも、それを迂回できる道を提供した。
  • 距離が意味をなさなくなったことを利用し、各地域、各文化圏の労働力、技術力の特長を生かした国際分業がやりやすくなる。その分、どこで何をするという位置が重要になる。

2日にわたり書いてきたことが、エコノミスト誌による「2050年の世界」の予測ですが、当たるかどうかは分かりません。1970年代になされた予言は、ことごとく間違っていました。エコノミスト誌は、「それは悲観的な予言だったからだ」といい、この「2050年の世界」では未来に希望が持てる楽観論が展開されています。

しかし、2050年の世界で、日本の影は極めて薄いのです。それは人口減少と高齢化、それに伴う経済成長の低迷だけではありません。エコノミスト誌は、ノーベル賞の科学部門の受賞者の少なさを「権威に挑戦することを自己規制する」ことに見出しています。科学分野だけでなく、政治、経済、ビジネス、社会のあらゆる分野で、日本人がより積極的に権威に挑戦し、イノベーションを起こすことに注力することが求められているのです。まだまだ、日本や日本人が努力することで日本の未来を変えることができます。「2050年の世界」での予測が日本では当らなかったというように頑張るしかないのです。