中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

休日の本棚 水平思考の世界

f:id:business-doctor-28:20201122082142j:plain

おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で1148人、そのうち東京301人、神奈川131人、埼玉90人、千葉137人、愛知50人、大阪74人、兵庫36人、京都7人、福岡25人、北海道64人などとなっています。昨日、菅首相は、1都3県の緊急事態宣言を3月21日まで延長すると発表しました。大幅に減少したとはいえ、このところの鈍化・下げ止まり状態からやむを得ない判断と思います。経済への影響を考えると忸怩たる思いもありますが、ここで完全に押さえ込んでおかないとリバウンド・再拡大してしまいます。このところ大阪をはじめ各地で変異株が見つかり増加傾向にあります。政府分科会の尾身会長も「ほぼ間違いなく変異株が置き換わって、もうそのプロセスに入っている」と述べ、厚労省クラスター対策班の古瀬祐気京都大学特定助教は「第4波ができる前に変異種が主流になってしまう可能性はそれなりにある」「(変異株が主流で起きる方が)第4波は早く起きる可能性が高いし、起きた場合には規模が大きくなる」と警鐘を鳴らしています。しっかりと変異株を見極め抑え込むことが必要ですが、そのためには従来株と同様に気を緩めることなく密を避け、手洗い・マスク・消毒など感染防止策を取ることです。

さて、今日は、エドワード・デボノ著「水平思考の世界」(きこ書房を紹介します。この本の副題には「固定観念がはずれる創造的思考法」とあり、帯には、「ロジカルシンキングの限界を軽々と超える!不可能を可能にする発明家の視点」とあります。また「絶体絶命と思われる状況でさえ、極めて自分に好都合な状況へと転換できる。水平思考は、時代の転換期にいるわたしたちの最強の武器になる思考法である」ともあります。そうであるならば、水平思考を身につけて損はありません。

「水平思考」という言葉は著者のデボノが作った造語で、「垂直思考」とは異質かつ正反対の思考法です。従来の論理的思考や分析的思考である「垂直思考」は、論理を深めるには有効ですが、斬新なアイデア・発想は生まれにくいのです。これに対して「水平思考」は多様な視点から物事を見ることで直感的な発想を生み出すことが特徴で、一つひとつ段階を踏まない思考プロセスを通して、あるいは異なる角度から状況を捉えることによって、問題の答えを得たり新しいアイデアを生み出したりすることを可能とする思考法です。

ビジネスにおいても、創造性とイノベーションは進歩や発展のための最も重要な手段ですが、常識的な思考法からいったん離れて様々な難題に取り組み、正解に至るもう一つ別のルートを開拓しようという心構えがなければ、創造性を発揮してイノベーションを起こすことはできません。目まぐるしく変わる社会環境や競争の激しい時代において、革新的な戦略を思いつくことができる能力が不可欠となります。その方法が水平思考であり、誰でもが習得できる技能・スキルだというのです。

第1章 人生には水平思考でしか解決できない問題がある。

 驚くほど単純な解決策が突如として明らかになるまでは、とても解決不能と思われるような問題に遭遇したことは誰でもあるはずです。一旦思いついてしまえば当たり前すぎて、思いつくのにそれほど苦労したのか理解できないほどです。こうした問題は垂直思考を用いているうちは、解決策を見つけるのは難しく、ちょっと視点をずらす・別の角度から見るという水平思考であっさり解決できるのです。

 垂直思考が通常用いる一歩ずつステップを踏んで進めるという手法では、いったん止まってしまうとそこが限界になり前へ進めません。水平思考では全く任意の新しい場所まで一挙に思考を持っていくので、限界を超え、それが強みとなります。

第2章 誰にでも入手可能な既成の情報を新しいやり方で見つめなおす

 新しいアイデアは、それを探し求めたり論理的に考えたりして手に入るものではありませんし、専門的知識を身につけたからといって思いつくものではありません。また、テクノロジー自体が新しいアイデアを生むものでもありません。

 だからと言って、新しいアイデアは運の問題でも天才的な才能の問題でもありません。この能力は知力にのみ関係があるのではなく、ある特定の頭の習慣すなわち特定の考え方により大きくかかわっているのです。それが水平思考です。

 アイデアに対しての唯一の当てにできる報酬は、達成の喜びであり、大きな興奮がそこにあります。ひとたび新しいアイデアが生まれると、それについて考えるのを辞めるのは不可能で、新しいアイデアには永遠性があるのです。

第3章 新しいアイデアと既成のアイデアとの複雑な関係

 水平思考が必要なのは、垂直思考には限界があるからです。一つの穴をどんどん深く掘り進めても、別の場所に穴を掘ることはできません。論理というのは穴をより深く大きく掘って確実な穴にするための道具のようなものです。垂直思考というのは同じ穴をより深く掘ることであり、水平思考はほかの場所でやり直すことです。一つの方向だけに目を向けていれば、別の方向は見えなくなります。

 既成のアイデアに支配されると新しいアイデアの出現を妨げることになります。既成の支配的なアイデアの影響から逃れることは難しいものです。その方法として ①その場面で支配的と思われるアイデアを極めて慎重に選び出し、明確にして書き留めるという方法 ②支配的なアイデアを認識したうえで、それが最終的にアイデンティティ―を失って崩壊するまで徐々に歪めていくという方法が紹介されています。

第4章 水平思考の視覚トレーニン

 私たちが直に接している外界を形作っている世界(状況)には、私たちの注意を直接的に引き付けることができるすべての物が含まれています。しかし私たち人間は、いかなる瞬間にも一つの状況の中のほんの一部分にしか注意力を向けることができません。人間というものは、見慣れない状況は常に見慣れた・見覚えのある状況に置き換えてしまいます。

 既に適切な説明がなされたものについて、新しい情報に照らして慎重に考え直してみようとする人はほとんどいません。

 ここでは、多くの図形を用いて人間の視覚の問題点が指摘されています。

 遊びの中で偶然生まれたような図形によって、それまで説明できなかったものを説明できるようになることがあります。遊びの偶然性が別のやり方では思い浮かばないような配列を生み出すのです。

 見慣れた図形の組み合わせ方ではなく、見慣れた図形そのものを疑問視しなければならなくなるときがやがてきます。

第5章 言葉の硬直性が、物の見方の硬直性につながる

 垂直思考の原則は次の4つに分けて考察できます。

  1. 支配的なアイデアを認識すること
  2. さまざまなものの見方を探し求めること
  3. 垂直思考の強い支配から抜け出すこと
  4. 偶然の機会を利用すること

 ある一つの方法を選んだ時点では、その選択がに任意だったことを承知していながら、時間が経つにつれ、任意で選択したことを忘れて、これしか選択肢はなかったと思い込んでしまいます。当初は、最善のものの見方を見つけようとして吟味を重ねて選んだわけではなく、つまり偶然で選んだにすぎないのです。

 人間の頭は、自分を取り巻く世界の連続的な移り変わりを別々の単位に分解しています。移り変わりの連続的なプロセスがある都合のいい時点で便宜的に切断されると、原因と結果という見慣れた関係によって切断前と切断後がつながってしまいます。

 一定の決まりきった方法で分断された情報には、名前が付けられます。ひとたび名前が付けられると、それは固定し不変のものになります。ある種のレッテルが貼られてしまうのです。名前が付けられ言葉が硬直化すると、物の見方まで硬直してしまいます。

 言葉の硬直性を避けるためには言葉を使わない視覚的イメージでものを考えるということが有用です。視覚的思考というのは、線、図、色、グラフなどを用いて、普通の言葉では表現することが極めて難しい関係を説明することです。視覚的イメージには言葉では決して得られない流動性と柔軟性があるのです。

第6章 新しいアイデアを生む最大の障害

 垂直思考は新しいアイデアを生み出すのに役に立たないばかりま、それを積極的に妨げます。垂直思考では、既成のアイデアに修正を加えることができても、まったく新しいアイデアを生み出すことはできません。

 新しいアイデアを生み出す際に最大の障害となるのは、すべての段階で常に正しくなければならないという考え方です。

 垂直思考の弱点は、①結論に至る道を1本でも見つけ出したら他のもっと良い近道を探す必要がなくなるということと ②新しいアイデアを探す際に論理を用いて間違った方向に突き進んでしまうことです。

 水平思考では、固定した方向というモノがないので、問題を解決するためなら一旦問題から遠ざかるということも可能になります。

 アイデアというモノは初期の段階では、論理的に受け入れがたいような矛盾した形で存在することがあります。垂直思考では、こうしたアイデアは否定されます。しかし、そのアイデアが有益な新しいアイデアに発展する可能性がないということにはなりません。

第7章 偶然を味方につけた発明家たち

 ここでは偶然を味方につけて新しいアイデアを生み出した発明家たちが紹介されています。

 新しいアイデアを生み出すことにおいて偶然が考えてもみなかったであろうことに目を向けるきっかけを与える働きを持っているとすれば、それを後押しする方法として「遊び」が理想的な方法になります。「遊び」は偶然の働きを引き出そうとする実験でもあります。遊んでいるうちにアイデアが生まれ、そこからまた別のアイデアが生まれます。アイデアは論理の展開通りに生まれてくるものではありません。頭で管理しようとせず、好奇心を失わずに追い求めれば、次々と沸き起こってきます。気になる者は何でも試してみるという姿勢が重要です。脳が行き当たりばったりにあらゆる情報源から情報を受け取れるようにしておくことが理想的です。

第8章 水平思考の活用例

 ここでは、水平思考の活用例が挙げられています。

  1. 「~が不可欠」という考え方から抜け出す
  2. それまでに得た成果のすべてを捨てる
  3. 何かを意識的に取り上げて待つ
  4. 1つの物をただ眺めてアイデアを発展させてみる
  5. 身の回りのものからヒントを得る

第9章 垂直思考をする人は、他人に利用されやすい

 垂直思考は論理的に物事を考える思考方法ですが、垂直思考をする人が頭の中で考えることは予測がつきやすく、他人に利用されやすいのです。また、騙されやすいのも垂直思考の人です。

 水平思考が理想とするのは極端に洗練された単純性、すなわち実践的で非常に役に立つと同時に、携帯としては基本的な、アイデアの単純性です。それは豊かな単純性であって、空虚で不毛な単純性ではありません。

 本当の水平思考は、より単純でより有効な新しいアイデアを探し求めるためのものであるだけでなく、1つのアイデアからより良いアイデアを生み、そこからまた更に良いアイデアを次々に生み出すための流動性を持つものです。

第10章 水平思考の可能性は無限

 水平思考は、他の誰もがしないようなものの見方です。それは問題が起きたときにどのように対処するかに関わります。水平思考は新しいアイデアを生み出すためだけに有効なのではありません。研究開発から経費削減まであらゆる分野で役に立つ思考法です。水平思考の持つ創造性や柔軟性はビジネスだけでなく、あらゆる場面で役に立ちます。

f:id:business-doctor-28:20210306114636j:plain