中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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休日の本棚 高校生が学んでいるビジネス思考の授業

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で5123人、そのうち東京759人、神奈川226人、埼玉207人、千葉139人、愛知284人、大阪1162人、兵庫567人、京都130人、奈良91人、福岡239人、沖縄85人、北海道158人などとなっています。全国では3日連続で5000人を超え、兵庫、福島、滋賀、大分で過去最多を更新しています。政府は東京・大阪・兵庫・京都の4都府県で緊急事態宣言発令を正式に決定しましたが、4月25日から5月11日までの2週間余りの期間で本当に新型コロナウイルス(変異株)を抑え込むことはできるのでしょうか?菅首相は短期集中型で延長は考えていないような発言をしましたが、分科会の尾身会長は「延長もありうる」と発言し、専門家との間で齟齬があります。人の流れを抑制するために、百貨店・ショッピングモール、テーマパークなどの休業要請は妥当ですが、酒類を提供しなければ飲食店はこれまで通り午後8時まで営業できるというのはいかがなものかと思います。2週間という短期集中でやり成果を上げようとするなら飲食店も休業とするのが妥当でしょう。当然売上に応じた補償は必要ですが。

さて、今日は、大森武著「高校生が学んでいるビジネス思考の授業」(阪急コミュニケーションズ)を紹介します。以前にも思考法の話の中で簡単に名前を挙げたことがありますが、今日はこの本を取り上げます。著者は、早稲田高校数学科・情報科教諭です。

私が高校生であった40年以上前には「情報」という課目も授業もありませんでした。

高度情報化社会に対応した人材を育成するため、情報の収集・分析から発信までを総合的に学ぶ教科として、2001年度から課程認定がなされました。

平成25年に、これまでの「情報A」「情報B」「情報C」の3科目構成の見直しがなされ、「社会と情報」「情報の科学」が設けられました。

情報及び情報機器等の活用が社会生活に必要不可欠な基盤として発展する中、これらを活用してより高い付加価値を創造することができる人材を育成することを目的に、情報や情報技術に関する科学的あるいは社会的見方や考え方について、より広く深く学ぶことを可能とする科目構成がなされています。

現行科目である「社会と情報」と「情報の科学」の内容は次にようになっています。

  • 社会と情報・・・情報が社会に与える影響を理解させるとともに、情報機器等を効果的に活用したコミュニケーション能力や情報の創造力・発信力等を養うなど、情報化の進む社会に積極的に参画することのできる能力・態度を育てることに重点を置く。
  • 情報の科学・・・現代社会の基盤を構成している情報に関わる知識や技術を科学的な見方・考え方で理解し習得させるとともに、情報機器等を活用して情報に関する科学的思考力・判断力等を養うなど、社会の情報化の進展に寄与することができる能力・態度を育てることに重点を置く。

本書は、「ビジネスに必要なコミュニケーション能力と問題解決能力の基礎はすべて高校の必修教科『情報科』で身につけられる」と言っています。

本書では、著者が早稲田高校の「情報科」で教えてきた内容がコンパクトにまとめられていますが、その内容は高校レベルの学習内容を超えています。しかし、どの項目も授業時間では4~5時間程度のもので、分かりやすくなっています。

この本では。著者が実際の授業で実施されているものの中から、ビジネスパーソンにとって役に立つと思われる6つが紹介されています。それは、

  1. デジタル論理式
  2. 1行作文
  3. ゲーム理論
  4. マインドマップ
  5. モデル化とシミュレーション
  6. 統計

です。さらにこの6つと合わせて必要なのが道具であるコンピュータです。これらを合わせて、著者は「考えるための7つの道具」と言っています。

情報科で教えられていることは、コンピュータという便利な道具を使いながら、コミュニケーション力と問題解決力を高めるということにつきます。

この本では実験としていくつかの課題が与えられていますので、自分の頭で考えてながら読み進めるべきです。

第1章 デジタルな論理式ー論理の効用と限界を知って使いこなそう

ここでは「論理式」(記号論理)が扱われています。コンピュータにとってはONかOFFのどちらかの状態しかありません。それは論理式の真か偽かと本質的には同じです。

ここでは論理式の説明がなされ、それを日常言語を分析する道具として使い、前提から正しく結論を導いているかどうかの判定する方法が説明されています。

論理は何か新しいものを生み出しません。論理ができることは「前提から正しく結論を導き出す」ことだけです。それはやむを得ない論理の限界です。だから論理は便利に使える道具にすぎません。

第2章 考え方の作法ー根拠も反論も1行で書いてみよう

ここでは「議論の論理」が扱われています。先ほどの「記号論理」は単なる道具にすぎず、「自分の頭で考えるとき、他人の論を理解するとき、人と人とがコミュニケーションしているとき」に主に働いているのは「議論の論理」です。ここで重要なのが「考え方のひな型」で、著者は根拠と反論を1行で書くことを薦めています。

記号論」は「そぎ落とす論理」です。あらゆるものをそぎ落とし骨格だけを抜き出して審議判定します。これに対して、「議論の論理」は「取り込む論理」で、いろんな意見や考え方、異論や反論までも取り込んだうえで判断することになります。両社はともに「論理」と言いながら全くの別物、異質のものです。2つの違いを理解してそれぞれの限界と効用を知ったうえで使い分けることが大事です。

第3章 視点を立てるーゲーム理論マインドマップ・モデル化・統計

「論理的である」ためには「広い視野を持っている」ことが大切です。「広い視野を持つ」というのは「知識が豊富である」というのとは異なります。大事なのは。自分が取り組んでいる(考えている)課題、あるいは議論のテーマにたくさんの視点を立てることです。そのために便利に使える道具が「ゲーム理論」「マインドマップ」「モデル化」「統計」なのです。

ゲーム理論については何度か本の紹介をさせてもらっていますが、経済学・政治学社会学に留まらず進化論(生物学)やネットワーク論(通信工学)などでも使われるようになっています。ここでは「囚人のジレンマ」「シカ狩りゲーム」「キンゲーム」といった「ゲーム理論」がとりあげられています。

マインドマップは、真ん中から外へ外へと枝分かれしながら描きます。自分の中には生まれてから今日に至るまでに見たり聞いたり考えたりした経験が蓄積されています。興味・関心も疑問・問題意識も動機も、自分の中にあります。そしてそれを持つに至った背景も自分の中にあります。それらを芋づる式に引き出す術、「見える化」する技がマインドマップです。

自然現象であれ社会現象であれ、現実の姿は色々なものが複雑に絡み合って雑然ととらえどころがないように見えます。この雑然ととらえどころのない自然現象や社会現象から特定の要因を抜き出して「モデル化」し、その現象を「シミュレーション」してみようとするのが「モデル化」です。作業は「条件設定→図解モデル→数式モデル→シミュレーションやグラフ化」というように進みます。

2012年度から新たに導入されたのが「データ分析」です。「正規分布」「P値」「ベイズ推定」などが課題となります。

このように見ると、高校で習う「情報科」の授業は、ビジネスパーソンにとって必須だと思います。高校で習っていない人はもとより、習った人も、実務経験がなく漠然と分からなかったことも、いま改めて学びなおすことで実践につながると思います。 

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