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休日の本棚 世界一やさしい経営戦略のトリセツ

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で5792人、そのうち東京925人、神奈川257人、埼玉224人、千葉144人、愛知323人、大阪1260人、兵庫600人、京都140人、奈良104人、福岡440人、沖縄63人、北海道219人などとなっています。大阪、福岡で過去最多となり、東京では3か月ぶりに900人台となっています。北海道でも3カ月ぶりに200人台と全国的に変異株が広がってきています。今日からGWが始まり、朝のニュースを見ると、空港や新幹線のホームは緊急事態宣言下の昨年のGWと比べれば人出が増え、コロナ慣れによる危機感のなさが如実に表れています。今年のGWは自宅でゆっくりと読書でもして過ごしましょう。

さて、今日は、西村克己著「世界一やさしい経営戦略のトリセツ」(日本実業出版社を紹介します。

著者の西村氏は芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授で、専門はMOT(技術経営)・経営戦略・プロジェクトマネジメントなどです。西村氏は、富士フィルム日本総合研究所での実務経験を経て大学教授となられ、単に机上の学問のみを研究されていたわけではなく、本書は実践的な内容になっています。本トリセツの効用として。次のようなことが挙げられています。

  • 経営戦略の重要性から策定の仕方まで戦略にもとづく具体的計画に立て方・実行まで、全体の流れがすっきり分かります。 
  • 理論はもちろん実務にも精通した著者が、基本の基本から、必要なポイントをわかりやすく解説します。
  • お役立ちマメ知識や関連情報を「豆知識」「ウラ技」として随所に紹介。豊富な図解と相まってすいすい理解できます。
  • 新規事業にチャレンジする電機メーカーのストーリーに沿っているので、実際のプロセスをリアルに知ることができます。

西村氏は、戦略を単なる知識としてではなく、実際に使えるツールとして身につけてほしいので「経営戦略のトリセツ」とタイトル付けをしたと言っています。このトリセツ(取扱説明書)に従って、経営戦略を使いこなせるようになるのに、最も適しているのは、物語形式です。単に理論の説明がなされているだけでは、全体像も見えず、何をどうして良いか分かりません。リアルな物語の中で戦略策定が行われるシチュエーションを想定し、その場で実際に必要な戦略策定手順が示されているので、読者も一緒になって戦略策定に参加でき、戦略策定を実践できるようになるのです。

序章 戦略なき新規事業は失敗する。

 本書の主人公山口くん(イトー電気社員)が社内ベンチャー公募で新規事業を始めました。しかし、同じく新規事業に取り組んだ後輩の川田さんとともに、事業は上手くいきません。そこで、新規事業推進を担当する伊藤専務(創業者の長男)が、経営コンサルタントの財前先生に支援をお願いするところから話が始まります。

レクチャー0-1 新規事業の陥りやすいワナ

  1. そもそもビジネスとは何か・・・①ビジネスとはお金をモノやサービスに変換してより多くお金を戻す活動 ②ビジネスは継続的に収益を上げる経済活動
  2. 在庫が経営を圧迫する・・・在庫の山ではキャッシュフローが回らない
  3. 失敗しやすい新規事業や新製品開発・・・自社の本業無視、マーケティング無視の新規事業は失敗する。

レクチャー0-2 成長戦略で投資対効果を最大化せよ。

  1. 戦略の基本は成長戦略・・・成長戦略とは新規と撤退の新陳代謝の継続。成長戦略はやみくもな規模拡大ではない。安易な規模拡大は投資対効果を低減させる。
  2. 撤退戦略も重要である・・・事業撤退のためには、撤退基準を明確化する必要がある。

レクチャー0-3 戦略とは何か?

  1. 戦略と戦術の違い・・・What思考(目的思考)の戦略とHow to思考(手段思考)の戦術。戦略なき戦術では勝てない。
  2. なぜ戦略が必要なのか・・・戦略の目的は継続的競争優位を確立すること。戦略がなくても勝てた時代は終わった。大量生産・大量販売のビジネスモデルはもはや通用しない。
  3. 戦略のフレームワーク3C・・・フレームワークとは全体を把握するための構成要素
  4. 戦略とは選択と集中・・・戦略とは勝ちを取りに行く領域を選択すること、選択した領域に経営資源ウィ集中させて競争優位を確立すること。

第1章 戦略の定石を理解しよう。

 イトー電気に経営企画室が正式に発足し、伊藤室長のもとに山口くんと若田さんがスタッフとして加わり、財前先生の戦略勉強会が本格的に始まります。「戦略」と「戦術」の違いをようやく理解した3人に、財前先生は、過去2つの新規事業がなぜ失敗したのかを説いていきます。その説明過程で出てくるキーワードは「ドメイン」「コア・コンピタンス」「ソリューション」「シナジー」などです。財前先生は専門用語の基本解説に続いて、「多角化戦略の定石」、戦略の極意を秘めた「孫子の兵法」「ランチェスター戦略」へと話を進めていきます。

レクチャー1-1 専門用語を理解しておこう。

  1. どこで戦うかドメインを明確にする
  2. コアコンピタンスで競争優位を確立する。
  3. 主要成功要因(KFS)とビジネスモデル
  4. 戦略の定石ー3S

レクチャー1-2 多角化戦略の定石

  1. 多角化戦略とPMマトリックス
  2. 多角化リスクを低減するアライアンス(協働)
  3. スピードの多角化M&A
  4. 株式上場による資金調達のメリット

レクチャー1-3 「孫氏の兵法」から戦略の極意を知る。

  1. 闘わずして勝つのが最上級
  2. 勝ちやすさに勝つ
  3. あらかじめの兵法
  4. 小が大に勝つ3つの戦法
  5. 小規模の利点を生かして大組織を動かせ
  6. 負ける理由は我にあり、勝てる理由は敵にあり

レクチャー1-4 「ランチェスター戦略」から戦略の極意を知る。

  1. 日本企業にマッチするランチェスター戦略
  2. 強者の戦略と弱者の戦略
  3. 敵の弱みにつけこむ、弱い者いじめの法則
  4. 一点集中・一点突破でナンバーワンを目指せ
  5. グー・チョキ・パー理論で事業を発展させる

第2章 戦略分析による経営戦略策定のヒント探し

 財前先生による勉強会が一通り終わり、経営戦略立案の第一歩を踏み出すことになりました。あいにく、伊藤室長と河田さんは所用で外出、今日は財前先生が山口くんに個人レクチャー。今回の内容は、後日山口くんが室長と河田さんにレクチャーしなければなりません。財前先生は、山口くんに最も簡単な戦略分析法である「SWOT分析」の説明を行い、財前先生が市場分析の重要性を強調すると、「先生、片っ端から調べましょう」と山口君が俄然やる気を見せます。徐々に山口くんは戦略分析の奥深さに引き込まれて行きます。

レクチャー2-1 簡易分析としてSWOT分析を活用しよう。

  1. 簡易版の戦略分析としてのSWOT分析ー全体を把握する
  2. クロスSWOT分析から経営課題を抽出する

レクチャー2-2 イトー電機の外部環境分析

  1. 戦略分析のフレームワーク 「3C+マクロ環境分析
  2. マクロ環境分析ーイトー電気のマクロ環境分析
  3. 顧客分析に市場分析を加える。
  4. 競合分析ー競合の強みと弱みの分析をする

レクチャー2-3 イトー電気の自社分析をしよう

  1. 自社の強みと弱みの分析
  2. 多角化分析
  3. 成功・失敗分析
  4. 販売チャネル分析
  5. 財務分析

第3章 経営戦略を体系的に作成してみよう。

 第2章で紹介した戦略に関する財前先生の講義は山口君から伊藤室長と河田さんにもれなく伝わり、社内外の環境分析、戦略分析は山口くんと川田さんを中心に支障なく進められました。いよいよ推進体制を固め、経営戦略を体系的に作成する段階に入ります。戦略推進体制の事務局を務める3人にもそれぞれ成長の跡が見えます。糸井室長は「戦略の信者」となって、自分たちで会社を儲かる体質に変えるという意欲が出てきました。山口くんは中堅社員としての自覚にようやく目覚め、川田さんから突っ込まれるような言動もなくなりました。

レクチャー3-1 経営戦略立案のための体制作り

  1. 経営戦略立案チームを立ち上げる
  2. 経営戦略立案で何を明確化するのか

レクチャー3-2 イトー電気の経営理念確認と戦略分析活用

  1. 企業における経営戦略の体系・・・経営理念から基本戦略へ、機能別戦略から重点施策へ
  2. 経営理念の確認と見直し
  3. 将来のあるべき姿の明確化

レクチャー3-3 イトー電気の基本戦略策定に挑戦

  1. ドメインコアコンピタンスの明確化
  2. ターゲット市場とターゲット顧客の明確化
  3. KFS(主要成功要因)とビジネスモデルの明確化
  4. 基本方針と整数計画の明確化

レクチャー3-4 イトー電気の機能別戦略と重点施策明確化

  1. 12の機能別戦略と新規事業戦略
  2. 新規事業戦略を具体化する。
  3. 重点施策の明確化

第4章 新商品のマーケティング戦略の策定

 未知の新規事業に安易に進出すると、マーケティングの障壁が大きく立ちふさがります。そうした反省から、イトー電気は既存事業である得意分野である小型家電療育の革新的な製品づくりとそれを売るた目の仕組み作りに取り組むことになりました。今回も新規事業企画を社内公募しましたが、前回と違い「これならわが社の力をもってすれば新市場を切り開けるかもしれない」と期待を抱かせる提案が多く寄せられ、その中から「対話型お掃除ロボット」の開発に取り組むことが経営会議で決まりました。敬枝お企画室スタッフの関心も、マーケティングへと移っていきます。

レクチャー4-1 マーケティング戦略の基礎

  1. マーケティングとは
  2. マーケティングの概要手順

レクチャー4-2 リサーチ(市場調査)とマーケティング目標の設定

  1. 市場リサーチ
  2. 製品コンセプトの仮設定とマーケティング目標の設定

レクチャー4-3 ターゲット顧客を明確にするためのSTPマーケティング

  1. STPマーケティングでターゲット顧客を明確化する
  2. セグメンテーション(S)とターゲティング(T)
  3. ポジショニング(P)

レクチャー4-4 売れるしくみ作りのためのマーケティング・ミックス

  1. 製品(Product) どんな製品を作るか
  2. 価格(Price) いくらで売るのか
  3. 販売チャネル(Place) どこで、誰に売るのか
  4. 販売促進(Promotion) どうやって売るのか

第5章 新商品開発プロジェクトの推進

 お掃除ロボット「ロボ太郎」の新商品企画が役員会議を通過し、いよいよイトー電気の製品開発プロジェクトが始動することになりました。プロジェクト大好き人間だとカミングアウトした伊藤室長の指導のもと、山口くんと川田さんはプロジェクトマネジメントの基礎から学んでいきます。このプロジェクトは社長直轄で、技術者12名と営業3名が加わる本格的なものとなりました。開発に8カ月、量産体制確立4か月、1年後に「ロボ太郎」の第1号製品を市場に華々しく登場冴えmヒット商品に育てるのがプロジェクトチームの使命です。

レクチャー5-1 プロジェクトマネジメントの基礎

  1. プロジェクトと通常の仕事の違い
  2. プロジェクト成功の条件

レクチャー5-2 プロジェクトの終結

  1. プロジェクト解散後の対応
  2. プロジェクトの終結と評価
  3. 新製品のマーケティング戦略の実践

イトー電気では、ロボ太郎の販売は順調で、販売データによると20~30代の女性の売れ行きがずば抜けています。そこで急遽ショッキングピンクの新機種を販売し「ロボ子」と名づけました。ロボ子も大人気、ロボ太郎とロボ子をペア―で購入する客も増えました。そこで、対話型機能をバージョンアップし、ロボ太郎とロボ子で対話できる機能を追加しました。既に購入の顧客にはインターネットでソフトウェアをインストールできるようにし、限定色の販売はインターネットのみとしました。イトー電気のインターネット直販サイトは大賑わいです。

戦略は、この本のイトー電気のようにハッピーエンドで終わるとは限りませんが、結果を恐れていたのでは前に進めません。この本を参考にすれば、戦略は思いのほか簡単に立てられるものです。

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