中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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休日の本棚 ゼロからわかるビジネス数学

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で4199人、そのうち東京609人、神奈川214人、埼玉185人、千葉124人、愛知219人、大阪884人、兵庫337人、京都113人、福岡239人、北海道233人などとなっています。先週の火曜日よりは減少していますが、GW中の火曜日ということで検査数が少ないからだと考えられ、予断を許しません。政府は、4都府県への緊急事態宣言解除を見送り延長する方向で検討しているようですが、やむを得ないでしょう。安易な解除は再拡大を引き起こします。また、北海道、静岡、滋賀、岡山、広島、徳島、長崎などでも感染者は増加し、まん延防止等重点措置の適用を申請しようとしている県もあります。こうした中、GW中の人出は全く減っていません。ニュースを見ると各地の観光地・繁華街は昨年比何倍もの人で溢れています。GW明けの感染者数が懸念されます。

さて、今日は岸本光永著「ゼロからわかるビジネス数学」(日本経済新聞出版社を紹介します。一昨日ビジネス統計の本を紹介しましたが、ビジネス統計ではExcelを駆使します。Excelと言えば関数です。計算自体はExcelが行ってくれますが、関数ひいては数学の素養がなくてはどのような関数を使うのかもわかりません。文系だ理系だと言っている場合ではないのです。

ビジネス統計でもそうですが、ビジネスの意思決定は、基本的にデータを基礎にして、論理的な思考を通して行われます。数字や数学を使うことで確実な情報となり、客観的でより確実な意思決定が可能となります。数学を通じて身につけた数学的思考や論理的思考は、正確なコミュニケーションの基礎となり、説得力も増します。数学の基礎にある論理的思考はビジネスや社会生活でも有用です。

ビジネスパーソンであれば、ビジネス数学を学ぶことは必須です。「数学が苦手で文系に行ったのに」などと言っている場合ではありません。本書は初歩的なレベルから高度な応用まで、丁寧に説明されています。多くの練習問題が載っていますので、中学・高校数学のやり直しだと思って取り組んでみてください。

本書は、【基礎編】【応用編】に分かれています。

【基礎編】では、⑴数学とは何か ⑵「数」と「記号」の基本 ⑶「式の計算」の基本 ⑷論理的な考え方 ⑸関数と微積分 ⑹行列と行列式 ⑺統計と確率 といった課題が取り上げられています。

ここでは、「⑷論理的の考え方」について触れておきます。

BMA学位取得のビジネススクールでは「クリティカル・シンキング」「ロジカル・シンキング」という論理的思考力を育成する講座があります。ビジネスにとって論理的思考力が必須であることの表れです。論理的思考力を養う科目としては数学が最も近いのですが、日本の数学教育は受験に翻弄され、考えることよりもいかに早く問題を解くかということに重点が置かれ論理的思考力の育成には役立っていないのが現実です。改めて、論理的思考力を身につけつ必要があるのです。

ビジネスの世界では、問題分析や意思決定の基本は論理的に考えることです。ビジネスにおいて論理的に考えることができなければ、仕事がうまくはかどらないd家でなく、信用を失うことにもなりかねません。

ビジネスと医師を比較して説明されます。

医師が患者に接し、病名を判断し治療方法を決めるプロセスを考えます。患者が症状を訴えることが基本となります。医師は患者の症状を整理して、必要に応じて検査した後、過去の経験を参考にして、病名を特定します。病名が決まれば、最も良い治療方法が決められます。

ビジネスの世界に当てはめれば、

①症状を確認する ⇒ 結果(情報の確認)

②病名の特定   ⇒ 原因(問題分析)

③治療方法の決定 ⇒ 意思決定(問題解決)

④事後評価    ⇒ 評価(ノウハウとしての経験が積み上がる)

となります。

原因分析ができると、処方箋が決まるのと同様、ビジネスの世界でも、問題の原因分析ができると問題解決方法はほぼ見えてきます。

しばしば、患者が勝手に病名を特定し、医師を困らせる場合が見受けられます。ビジネスの世界でも、結果と原因を混同して、会議が混乱する場合が見受けられます。結果としての真偽の確認は重要で、原因の分析には論理的の能力とスキルが必要なことは言うまでもありません。

第3章では、論理的思考力を身につけるために、集合の基本、論理の基本、必要条件と十分条件背理法数学的帰納法、論理的な考え方の応用としてロジック・ツリー、仮説・検証などが取り扱われています。

【応用編】では、⑴金利と時間の数学 ⑵収益と収益率 ⑶リスクとリターン ⑷資本市場モデル ⑸債券と金利の数学 ⑹デリバティブの基礎 ⑺企業分析と企業価値 ⑻設備投資の数学、⑼マーケティングの数学 ⑽経済学に新しい数学ーゲームの理論 ⑾経済学での数学的な考え方 ⑿ビジネス分析の考え方と技法 が取り上げられています。いずれも極めて実務的で、随所に「Excelなら?」という項目で、Excelの使い方も紹介されています。

ここでは、「⑿ビジネス分析の考え方と方法」に触れておきます。

ビジネスの分野では財務情報や市場情報などの情報が多く蓄積され、これらの数値データを有効にビジネスに使うことが重要になっています。しかも、数量(定量)データだけでなく定性データも含めて、的確なビジネス分析を行う重要性は日増しに増しています。ビジネス分析には、主に統計的な手法が使われ、数学を直接使うことは少ないと思われます。しかし、数学で養われた論理的な思考がビジネス分析の基礎になっていることは否定できません。

また、グローバル化が進むビジネスの世界で、日本型の阿吽の呼吸、以心伝心と言ったコミュニケーションは通用しないどころか場合によっては悪癖となります。定量的、論理的の思考に基づいたコミュニケーションスキルが必要になっています。

「分析」は過去に得られたデータや情報を集め、何らかの方法で意味を明らかにすることです。予測や予想とは全く異なります。

ビジネスにおいて、単純化して言えば「意思決定」とは将来のことを決めることです。また、「問題解決」とは過去あるいは現在と、将来の「あるべき姿」のギャップを解決することです。「分析」は、将来のことを考えるための情報として重要になるのです。

「分析」によって問題点が明確になっても「誰が」「いつ」「どのような方法で」などを決めて実行することが重要になってきます。「分析」で終わっていれば何もしないことと同じです。「分析」は意思決定や問題解決の手段であり、目的達成に向けた実行が重要になるのです。そのために、目的を達成するために設計図を描くことが大切になります。設計図がないと、無駄な作業やデータの収集をすることになり、目的に合致した分析結果が得られなくなってしまいます。

一般的なビジネス分析の流れは次のようになります。

  1. ステップ1 対象案件の概要把握
  2. ステップ2 分析目的の定義と確認
  3. ステップ3 仮説の設定
  4. ステップ4 ロジック・ツリーの作成・検討
  5. ステップ5 情報収集(データ、非定型情報)
  6. ステップ6 分析作業
  7. ステップ7 分析結果の検討(仮説検証、問題解決案策定、結論)→結果によってはフィードバック
  8. ステップ8 レポートの作成
  9. ステップ9 説明、発表

「⑽経済学の新しい数学ーゲーム理論」では、この間紹介したゲーム理論についても、分かりやすく数ページで説明してくれています。

何度も言いますがビジネスパーソンにとってビジネス数学の素養は必須です。だからと言って中学、高校の数学の教科書を復習するのでは味気ないし面白くありません。この本は、【基礎編】で数学の基礎を学べるとともに【応用編】ではビジネスパーソンに必要な素養を十分に与えてくれます。ビジネスに必要な数学を復習するのには打ってつけの良い本です。

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