中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

中小企業経営のための情報発信。中小企業から日本を元気に

休日の本棚 できる人の極意

f:id:business-doctor-28:20210516080848j:plain

おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で6422人、そのうち東京772人、神奈川328人、埼玉246人、千葉140人、静岡120人、愛知596人、岐阜139人、大阪785人、兵庫299人、京都139人、岡山185人、広島238人、福岡522人、熊本116人、沖縄160人、北海道566人などとなっています。緊急事態宣言発令に北海道、岡山、広島が追加され9都府県となり、まん延防止等重点措置の対象地域に群馬、石川、熊本の3県が追加され10県に拡大されました。新型コロナウイルスの人口10万人当たりの療養者数が分科会で示されたステージ4(爆発的感染拡大)に達したのは23都道府県となり、大都市圏だけでなく地方への広がりを見せ、事態は悪化しています。これには、感染力の強い変異ウイルスの流行やGWが明け人流が活発化してきていることが影響していると考えられます。緊急事態宣言を全国に拡大し、ロックダウンに近いより強い対策が必要なように思います。強い対策を短期集中で一気に行いウイルスを封じ込めることで経済へのダメージを最小限にして(一時的にはダメージは大きくなりますが)、その後急激に回復を図る方が中長期的に見ればダメージは少なくて済みます。一年以上も無為無策で後手後手の対策を今後もダラダラ行うよりも逆に国民の理解も得やすく効果も大だと思います。

さて、今日は斎藤孝著「『できる人』の極意!」(マガジンハウス)を紹介します。斎藤氏は、テレビでもおなじみの明治大学文学部教授で、日本語に関する多くの書籍でも知られています。

この本の表紙には、「ビジネスに効く、勉強に役立つ、生きる力がつく!斉藤孝の主要メソッドを、この一冊に集大成! 心地いいカラダ、しなやかなココロ、クリアな脳を実現するカンタン・ノウハウ満載」と書かれています。

この本の構成は次のようになっています。

第1章 話す力・聞く力

第2章 文脈力・段取り力・発想力

第3章 友達力・恋愛力

第4章 呼吸法・シェイク運動

第5章 ビジネス・お金

第6章 子供・教育・家族

第7章 日本語・読書・文学

第8章 スポーツ

第9章 身体感覚を磨く

多くの著名人との対談も載っていて面白いのですが、この本の中から、ビジネスに直接関係する「第1章 話す力・聞く力」「第2章 文脈力・段取り力・発想力」「第5章 ビジネス・お金」の3章について取り上げます。

第1章 話す力・聞く力

 これまでもビジネスにおいて話す力、コミュニケーションスキルや雑談力については取り上げてきました。コミュニケーションにおいて最も大切なことは、相手の話に反応することです。良い関係ができるかどうか、相手に好感を抱くかは、その人が自分の話にきちんと反応してくれるかどうかに関わってきます。

 斎藤氏は、人生の成功者になるための話し方を5か条をまとめています。それはすべて相手の話に反応することに関わっている身体的反応です。

  1. 目を合わせる・・・相手と無防備に目を合わせられるのは精神的に安定している証拠です。しかし、じっと見つめられると相手は居心地が悪くなるので、視線を合わせる時と外すと気をうまく組み合わせることが大切dす。
  2. 微笑む・・・露骨に感情を表に出すとお互い疲れます。ニコニコしながら聞くようにすれば、少なくとも相手は悪い感情を抱きません。
  3. ときどき頷く・・・頷くことは身体的な同意の表現、「理解してますよ」といったサインです。話し手は聞き手と心が通い合ったように嬉しくなります。
  4. 相槌を打つ・・・「ああ」「なるほど」「さすが」など短い言葉で相槌を打つ、あるいは相手の言葉を確認するように繰り返すのでもいいのです。
  5. コメントする・・・相手の話を自分の言葉で要約したり、面白い部分や興味を持った部分を指摘することです。話しを聞きながらコメントするのは相手に対する誠意ですし、故、湯にケーションの重要な柱です。

 以前「雑談力は質問力だ」と書きました。聞き上手は相手に喜びを与え、対話は「質問する」行為によって深められていきます。斎藤氏は、相手が何を話したいのかを踏まえたうえで、自分の聞きたいことを聞くことが大切と言っています。質問を指圧に例えています。なかなか適切な例えです。気持よく話してもらうためには、相手がどのツボを押されたがっているかを良く見極めたうえで、そこに食い込む質問をしなければなりません。質問は思いつくものではなく、練り上げるものです。その意味では質問するということも難しいもので、練習が必要です。

 これまで、日本の企業は対話の重要性を理解せず、職場で生産的な対話をする文化を育ててこなかったので、グローバル化が進む中でそのツケが回ってきています。会社を変革する、ビジネスのスピードを上げていくためには、上司は部下を巻き込み、部下も会社の動きにコミットしていくことが不可欠になっています。斎藤氏は、そのために必要なのが「生きた対話」だと言っています。

職場での「生きた対話」というのは、話し合うことで具体的なアイデアや戦略など、「新しい意味」を生み出す対話のことです。ビジネスにおける重要な知識の多くは「暗黙知」、つまり、まだ言葉になっていないが直観的・身体的に体得された知識として蓄えられているものです。職場での対話の狙いは、お互いの暗黙知を共有して形式知化することにあります。「企業の知識の多くが暗黙知なのであり、それをどのように活性化し、形式知化し、活用するかのプロセスこそが重要」(野中郁次郎・紺野登著「知識経営のすすめ」)なのです。

 対話力というのは、お互いの持つ経験値を混ぜ合わせることで新しいものを生み出す力です。ビジネスに勝つための攻撃パターンを生み出すための濃密な対話力が今日本の会社組織に求められています。日本人が職場においてスムーズな対話ができない理由の一つはその場の力関係が作用しているからです。斎藤氏は、上司も部下も同じフィールドに立ち、共に戦うプレーヤーだと言います。下の者が上の者に遠慮して発言を控えたり、上の者が下の者を抑え込むような態度をとれば、生きた対話は生まれません。

 部下の話を聞く場合、部下の緊張や不安を除いてやることが大切です。自分の言ったことが相手に届いている、受け止められているという実感を得たときに人は安心します。聞いている、受け止めているという合図を出すことが重要になるのです。聞く側がきちんと対応すれば対話はスムーズに流れます。上司は対話力で部下の経験値を掘り起こし、指導者として部下を育てることも重要な役割です。そのためにコメント力が重要なのです。

 部下、つまり知識も経験も浅い人にとっては。優れた先輩や上司の技を盗むことが大切です。そのために、対話力で上司の暗黙知を引き出して自分の暗黙知へとしみこませる作用をしなければなりません。その時に大切なのが「質問力」です。日本では目上の人への質問はタブー視されてきたこともあって、質問が下手です。斎藤氏は、「部下から上司への良い質問というのは、上司が質問されることによって暗黙知が刺激され、自分一人では思い浮かばないような発想が出てくるような質問だ」と言います。しかし、このような質問をするというのは難しいと思います。このような質問は具体的かつ本質的な質問です。抽象的な質問では上司の暗黙知を刺激することはできません。

 上司の苦労や経験を掘り起こすような質問も、それが現在の文脈を絡めた質問であれば、上司が気付かなかった暗黙知や経験値が引き出され、それが現在抱えている課題を解決する糸口になることもあります。そこまでくれば、部下の質問力、対話力としては申し分ないものになります。

第2章 文脈力・段取り力・発想力

 斎藤氏は、頭がいいから勉強ができるのではなく、勉強することで頭がよくなると言っています。勉強するうえで重要な力が「文脈力」と「段取り力」です。「文脈力」とは、意味と意味を正しくつなぐことができる力で、「段取り力」は、いきなりやり始めるのではなく全体の展開を考えて取り組む順番を決めて順序立てて行う力です。

 この「文脈力」と「段取り力」はビジネスにおいても重要な力です。

 物事がうまくいかないのは段取りが悪いからです。才能は変わらなくても、段取り力は繰り返し鍛えれば確実にパワーアップします。段取り力を鍛えれば、何かをしようとするときに、まず段取りのイメージが頭に浮かび、物事をスムーズに行うことができます。これは仕事においても然りです。段取りをつける習慣を身につければ、時間に追われて何から手を付けていいか迷うようなこともなくなります。段取りにおいて重要なのは優先順位です。何を優先させるかの判断力を身につけることも必要ですが、これも日ごろの訓練で身につきます。また、締め切りを決めて仕事に取り掛かることで効率がアップします。締切がなければついつい先延ばしにしてしまうのが人間です。本来の締め切り日より若干早めの締め切りを決めることで、締切直前に慌てなくて済みます。

 次に重要なのは「発想力」です。発想とかインスピレーションというのは偶然のひらめきや思い付きではなく、必然的に生み出されるものです。斎藤氏は、「偶然に浮かび上がるというよりは、手順をしっかり踏んで、力を出し尽くすと、絞り切った時になぜか1個か2個アイデアが転がり出す」と言います。発明家のエジソンも「天才は1%のひらめきと99%の努力」であると言っています。

 発想力もトレーニングで高めることができます。斎藤氏は、「発想も一人でするよりは誰かとやり取りしながらチームで行った方が有効である」と言います。お互いの間で多くの暗黙知を共有していると、発想は生まれやすいのです。

第5章 ビジネス・お金

 ビジネスの世界でも「これだけはやっておいてくれ」のこれに当たる「」があります。この型を学ぶことは基本中の基本です。相撲でも芸事でも「型」を学ぶことから始まります。今の日本の会社組織の中で、そういう「型」が共有されにくくなってきています。それは「暗黙知」と言っていいのですが、新入社員が先輩や上司から代々教えられてきたものです。最近の新入社員はあまり強く言うとすぐに辞めてしまう、飲んでコミュニケーションを図ろうにもアフターファイブの付き合いは避ける、コロナ禍でそれもできない、テレワークで会話も十分でない、という状況で、延々と酒を酌み交わしたり日ごろ話し合ったりする対話の中で語り継がれてきた暗黙知の伝承ができなくなってきているのです。

 ここでは、上司は部下、特にこれから仕事を覚えていく段階の人に、どのように「型」を伝えていけばいいかが語られています。

 斎藤氏は、「言葉を型として、セリフを型として捉える。そして、それを超えに出して言うことで、ビジネスの構えづくりができる」と言っています。部下や後輩に「このセリフを口に出せ!」とやるだけで、仕事の型を身につけされることができると言っていますが、やり方を間違えればパワハラになりかねないので注意が必要です。

 また、「この監督・コーチに学ぶビジネス力工場ののヒント」では「選手の実力以上の戦術を要求しても試合に勝てない」と言います。選手の自由にプレーさせれば攻撃の選択肢が増えるということはありません。型が明確でなければ選手はかえって迷うだけです。ビジネスにおいても然りです。現有戦略のレベルに合わせた戦術=型を選ぶことです。その戦術は独創的なものである必要はなく、現在のレベルを考えて適切なものであればよいのです。チームや組織の実力に合わせた戦略のレベル設定をすることも、上司やリーダーの重要な役割です。

 日本の会社では会議が事あるごとに開かれますが、それらの会議の生産性は総じて低いと言わざるを得ません。とりとめもない話題ばかりで時間が経ち、有益な会議とは言えません。会議の場を活性させるためにどうすればいいのかについて見ておきます。

 斎藤氏は、会議で一目置かれるためには次の4つが必要と言います。

  1. 文脈力・・・周りが混乱しているときに議論を整理できるような一言を言える力があるか、それが文脈力です。実際の会議において、議論の道筋が見失われてしまうことも少なくありません。話を生産的な方向に引き戻す、あるいは議論が行き詰った場合に一旦分岐点に戻ったうえで別の道を行くという作業が必要です。それを成し遂げるのが文脈力です。
  2. 引用力・・・他者の発言をつないでいく力です。時間の経過とともにあいまいになってしまった意見を再び明確にし、発言をつないでいくことでアイデアや発想につなげることです。そのためには会議の中で「これは意味がありそうだ」という発言を取り上げて、それをきちんとクローズアップする役割が重要になってきます。
  3. 換骨奪胎力・・・否定的な発言を繰り返せば敵意が生まれます。一回は同調したうえで、代案を出していく方策が望ましいのです。あくまでも「ちょっとずらす」ということです。元のものを組み替えることで自分流のものを作る力です。
  4. 具体化力・・・会議で役立つのは具体的なコメントだけです。抽象的な発言は無意味です。現実を打開するにはアイデアが必要です。具体的なアイデアを出さなければ、会議が実りあるものにはなりません。

以上、ビズネスとの関係で、第1章、第2条、第5章だけを取り上げましたが、それ以外の章でも有益な話題が満載です。時間があればすべてに目を通してください。ビジネスだけでなく、人生、家族、人間関係、スポーツ、健康などにも有益な情報が与えられます。

f:id:business-doctor-28:20210516111519j:plain