中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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組織の慢性疾患と組織変革

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で5230人、そのうち東京732人、神奈川248人、埼玉186人、千葉89人、愛知539人、岐阜140人、大阪509人、兵庫249人、京都106人、岡山130人、広島196人、福岡346人、熊本100人、結縄168人、北海道533人などとなっています。全国の重症者は1235人と過去最多となり、全国的に病床がひっ迫しています。今年1月から3月までのGDP国内総生産)が発表され、年率換算で5.1%のマイナス成長と戦後最悪レベルとなりました。3回目の緊急事態宣言発令により4~6月期もマイナスになる可能性が高くなっています。米中のプラス成長と比較しても、また日本と同じくマイナス成長である欧州(マイナス2.5%)と比較しても、日本だけが大きく取り残されていることが分かります。後手後手の中途半端な感染防止対策と遅々として進まないワクチン接種の遅れが大きな要因で、まさに政治の責任です。菅首相、政府は、こうした経済の停滞を解消すべく東京五輪開催に躍起となっていますが、思惑通りに行くか疑問です。東京五輪を強行開催すれば一時的に経済は回復するかもしれませんが、その後に感染拡大が拡がれば五輪によるプラスを大きく差し引くマイナスが待っています。「安心・安全な開催」と御題目のように唱える菅首相ですが、危機管理の感覚は極めてお粗末、人流を抑制しながらの五輪開催など不可能です。来月辺りから五輪関係者へのワクチン接種を進めようとしていますが、高齢者へのワクチン接種も不十分な中、五輪関係者だけを優先する姿勢も納得できません。早急に五輪開催の是非を判断して(国民の8割は中止か延期をもとめています)、新型コロナ対策に全身全霊を注ぎ込むことしか、支持率低下の菅政権が生き延びる道はありません。

さて、今日はダイヤモンド・オンラインの「あなたの会社を蝕む6つの『慢性疾患』と『依存症』の知られざる関係」という記事を取り上げます。一昨日には「組織の慢性疾患を改善する『対話』」について書きました。今日も宇田川元一氏が言うところの「組織の慢性疾患」からどのように組織を変えていけば良いのか、変革を推し進めるための方法についてこの記事とともに考えていきます。

宇田川氏が慢性疾患と呼ぶのは、

  • 新規事業開発を進めようとしても、既存事業部の効力が得られない
  • 部下が積極的に意見を言わない
  • チームのメンバーが向かっている方向がバラバラである
  • 部内の雰囲気が停滞している
  • 忙しいのに数字が上がらない
  • 病欠者が多く、離職者も増えている

といった慢性的なすぐには解決できない組織の問題・課題です。

こうした「組織の慢性疾患」の改善策として、宇田川氏は「対話」の重要性を指摘しています。これまでも書いているように「暗黙知を共有して形式知化する」ために対話が重要な意味を持つことは言うまでもありません。しかし、問題を単純化して解決策を探るだけの対話では何の意味もありません。「本当の問題はどこにあるのか」「問題の本質は何か」ということが対話の前提としてなければならないのです。組織にはびこる慢性疾患はちょちょっと手を加えれば解決できるようなものではなく、じっくりと考えながら解決策を模索しなければならないものです。宇田川氏はこうした状況を「すぐに解決したがる病」と呼んでいます。

1.どうして変革を続けても良くならないのだろうか

 最近「組織改革」「企業変革」に取り組んでいる企業も多いのですが、「危機感がないから変革が進まない」「社員がぬるま湯につかっているから駄目だ」「外部人材を取り入れて組織を変える」という声を耳にします。組織改革や企業変革として、事業部制にしようとかカンパニー制にしようとか、雇用形態をジョブ型にしようと、大きなことを色々やろうとするのですが、足元を全く見ず、足元に残されている問題にきちんと向き合っていないのです。本来組織改革や企業変革は足元にある問題や課題から手を付けて徐々に大きな課題や問題に取り組んでいくべきものです。足元を疎かにしていたのでは組織は変わることはできません。

 この「足元の問題・課題」が宇田川氏の言う「慢性疾患」と呼ぶべき問題・課題なのです。部内の雰囲気が停滞しているとか、部下が接触的に意見を言わないとか、前述の「慢性疾患」は組織の中で繰り返し起こり、背後に何か別の問題が潜んでいるように感じますが、その正体がよく分からない、といった「解決策の決め手がない」問題なのです。こうした「慢性疾患」はどこから手を付けていいのかよくわからず、そのうち誰かが何とかしてくれるのではと問題の先送りをし、どんどん悪化していくのです。

 何から手を付けていいのかわからないから、組織構造を変えようとか雇用制度を変えようとか大きなところに手を付けて何とかしようと頑張るわけですが、これでは足元にある問題自体の解決になりませんし、足元を疎かにして大きなことをやろうとしても大きなこともうまくいくはずはありません。

 困っていることは何か、足元の課題は何かを解きほぐしながら、地道に考えながらアプローチしていく以外に道はありません。

2.組織の慢性疾患の6つの特徴

 宇田川氏は、組織の慢性疾患の特徴として次の6つを挙げています。

  1. ゆっくりと悪化する
  2. 原因があいまいで特定できない
  3. 背後に潜んでいる
  4. 後回しされがちである
  5. 既存の解決策では太刀打ちできない
  6. 根治しない

3.「依存症」と「組織が抱える問題」の構造がよく似ている理由

 どの企業や組織には、「慢性疾患」が見られます。あらゆる組織に通じる根本的な問題です。それにもかかわらず、その足元の本質的な問題に目が向けられず、表面的な議論に終始したり、既存の解決策を適用してその場しのぎに乗り切ろうとしたりしています。この点については、宇田川氏は「困っていることが実は当人にもわかっていないからだ」と指摘し、依存症ケアの視点が参考になると言っています。

 アルコール依存症を例に挙げれば、アルコール依存の人は、楽しく陽気になりたいために飲むのではなく、「つらさをリカバリーするため」に飲まないといられない辛さを経験しています。辛い状況があって、一人でどうしていいのかわからない中で、必死に自分でできる解決方法に手を出し続けなければならない状態が続いているのが依存症です。問題は表面に現れている「アルコールを飲んでしまうこと」ではなく、背後にある「つらい状態がずっと続いていること」なのです。

 組織において「慢性疾患」が継続的に繰り返し起こっていることは「つらい状態」にあるといっていいのです。依存症と同じく、その問題の正体はよくわからず、何が問題かも分からず、どうしたらいいのか、どこから手を付けていいのかわからないのです。どこから手をつけていいのかわからないから、手っ取り早い解決策に手を出すというのも依存症と同じ構図です。

 どこから手を付けていいか分からないから、安易にノウハウ本のあんちょこな理論に飛びついたり、流行りだからといって目的と手段を混同して飛びついてしまうのです。何度も書いていますが、ジョブ型雇用が流行りだから、D✕が流行りだからと自社の目的や状況も考えずに飛びついても何の問題解決にはならないのです。

 問題解決には、背後に抱える問題の本質を解きほぐし、少しずつ変革していくしかありません。具体的に一歩ずつ前に進むように問題の背後にある課題を解決していくしかありません。一気に大きなことをやろうとしても、元の苦しい依存状態に逆戻りするだけです。

 宇田川氏も「組織の慢性疾患に向き合うには、『すぐに解決できる』という即効性のあるメソッドはなく、むしろ『解決モード』に入る前に『何が問題か』を丁寧に見つけていくことしかない」と言っています。

企業や組織は多くの慢性疾患を抱えています。この慢性疾患を改善するには、その足元にある根本的な問題を把握し、地道に一歩ずつ改善していくしか方法はありませんが、そのためには、対話を通じて各人の知恵を出し合い暗黙知を共有して形式知化していくしかありません。