中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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企業の危機管理

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で2046人、そのうち東京439人、神奈川189人、埼玉110人、千葉102人、愛知171人、大阪148人、兵庫50人、京都41人、広島32人、福岡42人、沖縄166人、北海道182人などとなっています。確かに減少傾向にあり、6月20日に緊急事態宣言を解除するのか延長するのかということが俎上に上ってきます。6月20日に緊急事態宣言解除し、まん延防止等重点措置に移行、飲食店の時短・酒類提供禁止を緩和するという流れで進んでいるようですが、時期尚早です。今ですら繁華街の人出は増えています。これでは7月中旬以降に(オリンピックが開催されていればその期間中に)第4回目の緊急事態宣言発令という事態になってしまいます。3度にわたり緊急事態宣言が発令されているにもかかわらず、緊急事態宣言解除の要件が何ら決められていないというのが問題なのです。

今日は大した記事がなかったので、危機管理について改めて考えたいと思います。

コロナ禍の今、多くの企業が危機管理の重要性を認識していると思いますが、政府ですらこのような状況で危機管理能力の欠如を露呈し、企業、特に中小企業は何をしていいのかわからないというのが現実でしょう。

危機管理と似た言葉にリスク管理という言葉があります。両者は同一に論じられることもありますが、全く別物です。

リスク管理(リスクマネジメント)は、近い将来から遠い将来まで、これから発生するかもしれないリスクを洗い出し、それらのリスクを回避するための管理活動です。ここでいうリスクとは、「今後発生し得る不確定事象」のことで、マイナスの影響を及ぼす出来事だけがリスクではありません。思わぬ出来事で企業に利益をもたらすものもリスクとなるわけです。

一方、危機管理は、事業の目標達成や事業継続を脅かすような危機が発生した際に、その影響を最小限に食い止めるとともに、危機的状況からいち早く脱出し、正常状態への回復を図るための管理活動です。ここでいう危機は、今回の新型コロナウイルスによるパンデミックを含め、大規模な自然災害やサイバーテロなどによる影響などを意味し、万が一の事態が発生した際の事業復旧計画を立てることが危機管理の基本です。

リスク管理では事業目標達成や事業継続を妨げるようなリスクについて細部まで考えを巡らせて今後発生するかもしれないリスクを想定し、そのリスクに優先順位をつけて優先順位に応じた対策をとることになります。一方、危機管理はすべての企業が等しく陥る可能性がある危機的状況に対し、実際に危機的状況に陥った際にどういうプロセスで被害を最小化し、できるだけ速く正常に戻すためにどうするかを計画することになります。

危機管理において重要なのは、危機が発生する前の、危険予知・予防・発生時の準備です。危機が発生してから慌てて泥縄(泥棒を捕まえて縄をなう)で対処しても失敗するだけ、準備が大切だということです。危機的状況を予知・予防するとともに、仮に回避に失敗した時に備えて対処の方法を平時のうちから準備しておかなければなりません。

そして、十分な準備を行ったうえで、万が一危機的状況に陥った場合、

  1. 現在発生中の被害を最小限に食い止めること
  2. 危機のエスカレーション・2次被害を防止すること
  3. 危機を終息させ正常な状態に戻すこと

の3つが必要です。これができなければ危機管理は失敗です。日本のコロナ対策はこの3つのいずれもができておらず、完全な失敗です。

もっと詳しく言えば、危機管理の方法は次の6段階で構成することができます。

  1. 予防・・・危機発生を予防する
  2. 把握・・・危機事態や状況を把握・認識する
  3. 評価・・・①損失評価=危機によって生じる損失・被害を評価する ②対策評価=危機対策にかかるコストなどを評価する
  4. 検討・・・具体的な危機対策の行動方針と行動計画を案出・検討する
  5. 発動・・・具体的な行動計画を発令・指示する
  6. 再評価・・・①危機内再評価=危機発生中に、行動計画の実施状況や効果を評価し、行動計画に随時修正を加える ②事後的評価=危機終息後に危機対策の効果を評価し、再発防止や今後の危機対策の向上を図る

ここで最も重要なのは、どのような行動方針と行動計画を作るのかということです。

まずは危機管理マニュアルを作成しておくことです。大地震ゲリラ豪雨のような自然災害の危機、製品のリコール・食中毒問題・会社の不祥事など企業活動に伴う危機など、企業が抱える潜在的危機は多岐にわたっています。こうした危機に対応するための有効な手段が危機管理マニュアルの作成です。

危機管理マニュアルには

  1. 従業員に企業が抱える危機を認識させる
  2. 危機が起こった際に迅速な対応が行えるようにする
  3. 対応漏れをチェックできる
  4. 従業員が臨機応変な対応ができるようになる

などという意義があります。

最も重要なのは企業が抱える潜在的な危機を洗い出し、危機管理計画を作成することです。危機管理計画では、①平時の危機管理(設備・備品の充実、避難訓練、定期的な危機管理マニュアルの見直し)②危機発生時の危機管理(基本的な行動指針の作成、危機発生時の各部署の役割の決定、情報管理方法の決定)③復旧時の危機管理(電気・ガスなどの生活インフラの復旧方法の見直し、資金管理者の決定)などの段階に応じて危機管理計画を作成しておくことが大事です。

ここでは、不測事態対応計画(コンティンジェンシー・プラン)について触れます。

これは、経済環境のみならず、経済外の環境も含めた予想外の不測事態に対応するための計画であり、東日本大震災以降、「今日の企業は常に予期できないような事態の発生に注意を怠ってはならない」という発想で、多くの企業が取り組むようになってきています。不測事態には、地震等の災害、石油等の資源・食料等の輸入ストップ、資材購入価格の高騰、為替市場の変動、政変・テロ等様々なものが考えられます。

漠然としているものの起こる可能性のある問題ごとに、複数の計画をあらかじめ定めておき、それが生起した際に、それに対応した計画に切り替えることにより、迅速な対応を果たし、損害の最小化を図ることが狙いです。

中小企業庁中小企業BCP策定運用指針」のBCP(Business Continuity Plan 事業継続計画)もコンティンジェンシー・プランの一種と言えます。BCPというのは「企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急事態時における事業継続のための方法手段などを取り決めておく計画」のことです。

BCPにおいては、企業の「存続に関わる最も重要性・緊急性の高い事業」である「中核事業」を特定することが重要な作業です。中核事業を絞り込むと同時に、緊急時においてそれをどの程度復旧させることが可能なのか、また目標復旧時間をどのように設定することが可能なのか、あるいはそれを実現するために必要となるバックアップ措置は何かなどを確認しておくことが重要となるのです。

BCPは「絵に描いた餅」ではダメで、緊急事態が発生した時には、どのような基準でBCPを発動させるのか、BCP発動時にはどのような体制で組織が動いていくのかといった平常時からBCP体制への切り替え方についてあらかじめ取り決めておくことが肝要です。またどのような状況になればBCP体制から平常時の体制に戻すことができるかといった基準も明確にしておくことが重要です。

政府が企業に対して不測事態に対処すべくコンティンジェンシー・プランやBCPを策定すべく指導しながら、自らの危機対応がお粗末すぎるというのは皮肉なものです。

今後も新型コロナ禍のような不測事態が起こり得る可能性は十分にあります。不測事態が起こった際に、政府のようにその時々の思いつきやその場の雰囲気で対処していたのでは今回のことが生かされたとは言えません。今回の経験を生かし、危機管理マニュアルを策定し、しっかりとした行動計画を作成しておくことをお薦めします。