中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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DXの本質を理解する

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で18,889人で2日連続で最多を更新しました。その内訳は、東京4989人、神奈川1807人、埼玉1528人、千葉1038人、愛知703人、大阪1654人、兵庫728人、京都372人、福岡1040人、沖縄732人、北海道480人などとなっています。埼玉、大阪、京都、福岡、沖縄、宮城など20府県で過去最多を更新しています。東京都モニタリング会議は「制御不能」と危機感を顕にし、「自分の身は自分で守るしかない」と打つ手なしの状況を吐露しました。また、分科会の尾身会長は、人流を5割に削減するために「買い物に行く機会、混雑した場所へ行く機会を半減する」ように提言し、さらに西村担当相は「お盆休みの帰省や旅行を中止する」ように要請しました。政府は打つ手なしの手詰まり状態で国民の自主的な取り組みに期待する以外に方法がないということで、コロナ対策に対する政府・菅政権の機能不全を露呈した形になっています。今回の爆発的な感染拡大には、間接的とはいえ東京五輪強行開催が大きな影響を与えていることは否定できません。更にパラリンピックを学校観戦で強行すれば、そのあとにどのような事態が訪れるかは手に取るように明らかです。ここはパラ中止の決断しかありません。これまでパラ開催に躍起となっていた政府が方向転換して「パラ中止」という決断をすれば、政府の危機感が国民にストレートに伝わり、現在五輪で緩んでいる国民の意識を引き締めることになると思います。イギリスのオックスフォード大学の研究チームが、デルタ株の感染拡大によって「ワクチン接種による集団免疫獲得は不可能である」との認識を示しました。ワクチン接種が進んでいる欧米でもデルタ株は猛威を振るい感染拡大が続いています。菅政権のようにワクチン接種だけを頼みの綱としていたのでは、いつまで経っても制御不能の状態が続きます。期待はできませんが、まともにコロナと向き合い、国民に向き合い、断固たる決意を示し、東日本大震災の時のように与野党力を合わせコロナ対策に取り組んでもらいたいものです。打つ手なしではないはずです。やろうと思えばまだまだやれることはあります。

さて、今日はプレジデントオンラインの「DXの本質を知る人とそうでない人『仕事の中身』の決定的違い」という記事を取り上げます。

この記事は、DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉だけが独り歩きするという状況を危惧し、「デジタル化の本質を理解すること」の重要性を指摘しています。「デジタル化の本質を理解すれば、仕事の時間配分が大きく違ってくるはず」と言っています。

DXというのは、経産省の定義によれば「企業がビジネス環境の激しい変化にタイおプし、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」です。

これまで何度もDXについては書いてきました。そこでも言ったようにDXは目的ではなく手段にしかすぎません。経産省の定義を読むと目的のようにも見えますが、その実態はIT化・デジタル化という手段です。単なる手段しかすぎないものを目的とはき違えてしまうことで、DXという言葉だけが独り歩きし、「DXが流行っているからうちの会社も導入しなければ」という風潮が生まれるのです。DX自体が目的ではありません。自社が抱える課題や問題を解決するうえでDXという手段が役に立つのかどうかということです。DXが自社が抱える課題や問題を解決してくれるかを判断するためにはDXの本質を理解することが必要になるのです。

1.コロナ収束後の会社組織と働き方

 コロナ以前からDXの必要性・重要性は指摘されていましたが、コロナ禍でテレワーク・リモートワークの導入が浸透しDXが加速しました。

 DXの1つの意義は「ITの浸透により、人々の生活をより良い方向に変化させること」です。ビジネスで言えば、「デジタル技術・IT技術、デジタルビジネスモデルを用いて、組織を変革し業績を改善すること」ですが、それによって顧客や従業員その他のステークフォルダー、さらに社会をより良いものにすることです。

いずれにせよ、世の中や社会、企業や組織をより良いものに変えていくためには、一人ひとりがそのことを意識しながら日々の営みに取り組んでいくことが求められるのです。

(1)組織はよりフラット化し、関係性も大きく変わる

  組織や事業はこれまでのピラミッド型からフラットなプロジェクト型に変わっていきます。上意下達で上の指示命令を下へと伝えていく「上司―部下」のビラミット型の組織から、チームとして協働して1つの目的を達成していくというフラットなプロジェクト型に移ってきています。フラット化することで、1人当たりの「つながり」や「コミュニケーションパス(経路)」は飛躍的に増えています。

(2)異分野の知見を持ち寄ってプロジェクトを進めていく

  一つのチームとして一つのプロジェクトを進めていくためには、異分野のあらゆる知見が必要なことは言うまでもありません。これまでは交流機会のなかった異種の人材間で協力・連携しながら、一つの商品やサービスを作り上げる必要が生まれてきています。

(3)価値創造する場所全てが、オフィスになる

  これまで仕事はオフィスでするものと考えられてきましたが、オフィスという言葉を「人が価値創造するための広義の場」ととらえるならば、自宅やカフェ、オンライン上のコミュニティさえも価値を生むことができればオフィスとして認められるようになります。コロナ禍で、リモートワークが導入され、多くの人がリモート体験しました。コロナ収束後はこの体験を生かしながら、会社か在宅かといった狭い視野ではなく、価値創造できる場所であればどこでもいいので自分でワークプレイスを選ぶことができるというように、広義のオフィスの本質に立ち返ることが大切です。

(4)多くの仕事がデジタル情報のまま実行・完結

  ペーパーレスということが言われてかなりの時が経ちますが、実際のところなかなか進んでいません。コロナ禍で、ハンコを押すためだけに出社するという紙仕事の欠点が露呈しました。そうした背景もあり、行政手続きなどで多少の「脱ハンコ」が進みましたが、ペーパーレス化はまだまだ先のようです。しかし、デジタル化が進んでいけば、仕事をデジタルの状態で受けて実行・完結できる機会も増えていきます。同時に、紙や文具・重機に頼らなくなることで、関節時間や間接コストが自然と減っていくことにも気付けるようになります。

(5)デジタル化で、仕事の比重や質が大きく変わる

  DXという言葉が先行し、デジタル化で具体的に何が変わるのか、どのような良いことがあるのかといったことがきちんと伝わっていません。その点は、デジタル化の恩恵をどのレベル、どういう立場で見るかによって、違ってきます。仕事やタスクの面で見れば、時間的な内訳が大きく変わります。具体的には、知的労働は「探す」「考える」「作る」「伝える」というプロセスで構成されますが、それぞれの段階でデジタル化の恩恵を受けるのです。「探す」では検索ツールを使うことで、「作る」ではテンプレートや共有資料を活用することで時間を圧倒的に短縮することができます。「探す」「作る」というプロセスで時間を短縮できた結果、「考える」「伝える」というプロセスに時間をかけることができます。じっくりと時間をかけて考えることで自分の理解や洞察が促進され、「伝える」ことに時間をかけることで、他人への共感が促進され、より良い人間関係・信頼関係が構築され、やる気が高まり仕事の質や成果も向上します。

ここに書かれていることだけを見ると、DXは良いことばかりのような気がしてすぐに飛びつきたくなります。確かにDXの必要性・重要性は否定しませんが、特に中小企業の場合、自社のどのような課題や問題があるのかを把握し、その解決のためにDXは有用かを検討し、必要な範囲でのみDXに取り組むという姿勢が重要です。

別段、既存事業の効率化、データの統合、基幹システムの刷新の必要性を否定しているわけではなく、デジタル技術の活用という視点から新ビジネス・サービスを考えていくアプローチを否定しているわけでもありません。あくまでも経営の関心は、競争優位を確立すること、ビジネスを成長させること、市場から退場させないこと(生き残りをかけた戦いに勝つこと)で、それに限界を感じたら新規事業への進出・転換を目指すことです。そうした目的を達成する手段の一つがDXでありIT化、デジタル化なのです。

目的達成のために必要であるならば、必要な範囲でデジタル化やDXに取り組めばいいですし、目的達成に必要がなければ、現段階では敢て取り組む必要はありません。

DXに取り組むというのは極めて大変なことです。人任せにはできません。経営者が率先して取り組み全社を巻き込む必要があります。自社で自立し、自走しなければなりません。DXの人材も自社で育成しなければならないのです。何も考えずに、流行りだからと飛びつけば、自分の首を絞めることにもなりかねません。DXを導入するなら慎重に考えてそれ相応の決意をもって導入してください。