中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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45歳定年制・世代交代リストラ

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おはようございます。

昨日の新規感染者は全国で7212人、そのうち東京1067人、神奈川669人、埼玉504人、千葉398人、愛知855人、大阪1147人、兵庫398人、京都196人、福岡292人、沖縄273人、北海道116人などとなっています。一部地域を除き全国的にはピークアウトしていますが、週末の人流を見るとなぜ減少しているのかよくわかりません。確かにワクチン接種率は上がっていますが、ワクチン接種が進んでいる国でもデルタ株が猛威を振るい感染者数が増加しており、ワクチン接種だけが原因ではないように思います。最初の新型コロナ感染拡大から1年半が経ちますが、その間とられた措置と新規感染者数の推移との因果関係(例えば、時短営業や酒類提供禁止と感染者数の推移との関係など)の検証が全くと言っていいほどなされていません。政治においてもフィードバックは極めて重要です。結果を検証し、何が正しく何が間違っていたのかを振り返り、間違っていたところを軌道修正して次につなげていかなければなならないのです。今の政治にはこうした点が全く欠落しています。政府のコロナ対策は太平洋戦争における日本軍の失敗と比較されますが、①戦略目的の曖昧さ ②短期決戦志向で長期的な視点の欠如 ③主観的で帰納的な戦略策定 ④楽観的な空気による支配 ⑤狭くて進化のない戦略オプション ⑥学習を軽視した組織 など多くの共通点が見受けられます。これについてはまたいつか書いてみたいと思います。どちらにしても、安倍政権・菅政権における新型コロナ対策は失敗でした。こうした失敗を糧として、次の総裁・首相には、国民のためコロナ対策に最優先で取り組んでもらいたいものです。しっかりとしたコロナ対策を行うことこそが経済の回復につながります。コロナ対策をないがしろにしていたのでは、経済の回復はますます遅れるだけです。

さて、今日は、ヤフーニュースの「45歳定年時代 世代交代リストラのために企業がやるべき3つのこと」という記事を取り上げます。この記事は経営コラムニストの横山信弘氏が書いています。

先日、経済同友会の夏季セミナーで、サントリー新浪剛史社長が「45歳定年制にして、個人は会社に頼らない仕組みが必要だ」と発言し、SNSでこの発言が炎上しました。「45歳で定年してどうしろというのか!」「単にリストラではないか!」など多くの批判が殺到し、新浪社長は記者会見を開き「45歳は節目であり、自分の人生を見つめなおすことは重要だ」「クビを切るものではない」と弁明しました。

この記事では、新浪氏の発言は的外れではなく、雇用環境を活性化させるうえで一石を投じたものと評価していますが、基本的には同感です。

コロナ禍で激変する雇用環境変化の中で、キャリアの見直しは不可欠であり、新浪社長の発言は時代の流れに逆行したものではないと思います。

確かに、人生100年時代が到来し、定年年齢が引き上げられ、令和3年4月1日施行の高齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保(義務)に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するために、高齢者就業確保措置として70歳までの定年引上げ、定年制の廃止などの努力義務を新設しています。

新浪氏の発言はこうした流れに反するようにも見えますが、必ずしも、新浪社長発言の真意は定年延長による高齢者就業確保に水を差すものではないと思います。

これまでの人生80年時代では、高校・大学卒業から60歳までの約40年間が仕事に携わる期間であり、年功序列、終身雇用が基本的な雇用スタイルでした。しかし、人生100年時代になると高校・大学卒業から80歳まで約60年間働かざるを得なくなります。コロナ禍から日本型のメンバーシップ型雇用から欧米型のジョブ型雇用への動きが加速しつつあります。日本においてもジョブ型雇用が多く取り入れられるようになると、80歳まで一度も転職することなく一社で勤め上げるということは現実的ではなくなります。そういう中で、60歳になってから、残り40年の今後の人生設計を考えるというのでは遅すぎるのです。自分のキャリアを見直すのは、45歳くらいがちょうどよいというのが、新浪社長の真意でしょう。

この記事では、「45歳定年制」を「世代交代リストラ」と言っていますが、リストラという言葉は、解雇を意味するものではなく、リストラクチャリング(Restructuring)の略で再構築を意味します。人生の再構築の時期として最もふさわしい年代が40歳代です。

昨日ドラッカー氏の「自己探求の時代」という論文を紹介しました。そこでは自己をマネジメントすることの必要性が指摘され、自己の強み、仕事の仕方、価値観を知ることの重要性が語られていました。労働者は、かつてのように企業や組織に固定されたものではなく、移動自由な存在となっています。自己の強みや仕事の仕方を活かし、自分の価値観に合致する企業へ移動することで、更に自己を成長させることができるのです。

そうは言っても、いまだに多くの人はできるだけ一つの会社で働きたいと思っています。しかし変化が著しいVUCAの時代にうまく対応できる企業も限られています。かつてのように企業は事業再構築を行わずして持続的に成長できるものではありますん。

一昨日の「マーケティング近視眼」で書きました、どんな成長企業・主要企業でも衰退するのです。何十年か先に、自分が働いている企業がどうなっているかなど分かりません。要は自分の強み、仕事の仕方を磨いて自分の価値観にあった企業へと移動していくのが最もよいのです。

コロナ前にNECが45歳以上の希望退職者を募り、近いところではホンダが2000人の希望退職者を募りました。長年勤めた企業を突然辞めるには覚悟が必要です。企業には、長年勤めた従業員が次の仕事へとスムーズに移行できるようにする責務があります。この記事では、その責務として、「啓蒙」「仕組みづくり」「リスクリング」の3つを挙げています。

  1. 啓蒙・・・突然の発表ではだれもが驚き、不信感を抱きます。丁寧な発信による啓蒙活動が必要です。
  2. 仕組みづくり・・・副業や兼業を承認・推奨する制度を設け、スムーズにマルチキャリアの道を歩める仕組みを作ることが必要です。
  3. リスクリング・・・学びなおしです。デジタル化時代に対応できない中高年のリスクリングは待ったなしです。

ドラッカーは、本業を持ちながら第二のキャリアを築くことの重要性を指摘しています。自己の強みや得意とする仕事の仕方、価値観を知り、それらを磨きながら、第二のキャリアを積むことが必要ですし、企業も「世代交代リストラ」を意識しつつ従業員がマルチキャリアを積める仕組みを作り、積極的に従業員のキャリア構築・人生の再構築を支援していかなければなりません。