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変化に強い組織はどう作る?

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おはようございます。

新型コロナの新規感染者は全国で391人で、減ってはいますが下げ止まりしているように見えます。このところの減少傾向は、人々が日常生活の中で感染対策を徹底したこととワクチン接種が進み感染が広がりにくい状況になったことだと考えられています。大阪大学医学部の忽那賢志教授は「感染を山火事に例えると、ワクチン接種は木にあらかじめ水をかけるようなもので、水に濡れた燃えにくい木が増えれば山火事が収まるスピードも速くなる」と面白い例えで説明しています。水をかけた木がいずれは乾燥していくように、ワクチン接種の効果も6か月後には半減します。これまでの感染対策を継続するとともに、若い世代へのワクチン接種を進めていくことです。いずれ第6波もやってきますが、第5波よりも重傷者・死者の割合は減ると考えられているので、軽症・中等症患者への体制を充実させるべきです。第5波の時のように自宅療養・宿泊療養の患者が亡くなるような、救える命が救えなくなる事態は避けなければなりません。

さて、今日は、Web担当者Forumの「変化に強い組織はどう作る?ベンチャーと大企業の二項対立ではなく、『バイモーダル』を目指すべき訳」という記事を取り上げます。

「資金力は乏しいが即断即決のベンチャー」と「資金力は豊富だが方向転換が不得意な大企業」という構図が一般的ですが、この記事では、これからの時代には、「バイモーダル」の企業が生き残ると言っています。

1.バイモーダルとは

 バイモーダルとは「2つの流儀」を意味し、ユニモーダル(一つの流儀)と対比されるものです。より簡略化して言えば、「モード1」と「モード2」という2つの考え方を準備し、時と場合に応じて使い分けるというのが基本的なスタンスです。ベンチャーか大企業かといった対立軸で捉えるのではなく、両方の良さを生かした経営を行う企業が生き残るというわけです。

 モード1は、慎重さを重視し、突発的な事故が起こらないようにする価値観で、モード2は大ヒットを狙い迅速性を重視する価値観です。モード1が大企業の、モード2がベンチャーの価値観と言ってもいいでしょう。

 モード1は、安全性を重視しないとそもそも社会的に許されないビジネス、スリーストライク制どころかワンストライク制でアウトになってしまうような事業を行う企業の姿です。歴史ある日本企業の多くはモード1でやってきたと言ってもいいでしょう。

 モード1もモード2もそれぞれ利点(メリット)と欠点(デメリット)があります。

 モード1からモード2を見ると、「あの茶髪、サンダル履きの集団はいったい何だ」「仕事中にFacebookで『いいね』するか」という話になりますが、モード2からすれば「なぜ上の言うことばかり聞き、われわれ個人の意見を重視しないんだ」ということになります。あまりにも価値観が違いすぎているために、お互いの欠点ばかりが目についてしまうのです。この両者を一つの組織でどのように共存させるかはバイモーダルの大きな課題なのです。

 モード1もモード2も、どちらかだけが絶対的な正解というわけではありません。

 「安定性を重視するプロジェクト」ではモード1に重きを置き「モード1.2」で、「スピードを重視するプロジェクト」ではモード2に重きを置いて「モード1.8」でというように、グラデーションの中で、都度判断できる企業が強いのではないかと、この記事は言っています。その通りではないでしょうか。

2.2つの文化を共存させる「HRT の法則」

 この記事では、モード1トモード2の文化を社内共存させるための具体策として、「HRT(ハート)の原則」が重要だと言っています。HRTと言うのは次の頭文字を取ったものです。

  • Humility(謙虚さ)
  • Respect(尊敬)
  • Trust(信頼)

 HRTの原則は、書籍「Team GeekGoogleはいかにチームを作るのか」の中で紹介されており、あらゆるに人間関係の衝突は「謙虚さ」「尊敬」「信頼」の欠如によるものとされています。「謙虚さ」「尊敬」「信頼」の3要素が共有されていることが、組織やチームの生産性や幸福に直結するのです。

 これまでも書いていますが、ビジネスは人と人との関係、信頼関係で成り立っています。相手を思いやる心、相手を理解し受け入れて共感することが重要です。

 この記事では、「既存のものをむやみに馬鹿にせず、新しいものを殊更に信奉しない。新旧関係なく、異なる文化に対しての経緯を忘れず、異種混在を是とする。そして、HRTの原則を徹底的に守ることが、社内でバイモーダルを浸透させるコツ」と言っています。さらに、「この精神性に則るならば、既存の価値観や概念をわざわざ破壊する必要はない。『破壊的創造』を目的化せず、『協調的創造』を探索すべき」と補足しています。

この記事では、更にDX との向き合い方についても触れていますが、DXについては何度も書いていますので、今日は割愛します。

結論だけを言えば、「DXを推進しようとすると、先端技術の活用やデータ収集だけが目的化されがち。だが本当に最優先で考えなければならないのは『誰のどんな喜びに寄与するか』。CX(顧客体験)をDXにどう繋げていくかを意識すること」です。

DXにはデジタルトランスフォーメーションのほか、デジタルエクスペリエンスという意味もあります。エクスペリエンスというのは「体験・体感」のことです。

日本の組織では、最新のデジタル機器やデジタルサービスを使う経験が圧倒的に不足しています。いまだにコミュニケーションツールはメールだけでビジネスチャットを使ったことがない企業も多数あります。最新デジタルツールを使うことで、どのようなコミュニケーションの広がりを生むのか、あるいはどのようなアイデアを形にできるのかという経験が少なければ、DXなど起こり得ません。

小さな経験を増やすことからはじめていくしかありません。まずは身近な不便をデジタルでどう解消できるのかということからでいいのです。デジタルで少し楽になったという体験が次へとつながるのです。

DXの本質は「デジタルの力で固定された環境から解き放たれること」です。毎日、同じメンバーで、働く時間・仕事内容・行動パターンまで同じ人間同士が集まっている環境では、新しい発想やアイデアは生まれません。DXによって、デジタルゆえに時間や場所の制約から逃れ、空間を超えて他の地域の人とつながることによって、新たな課題の解決策やビジネスモデル、働き方を生んでいくことです。