中小企業が日本を救うbusiness-doctor-28

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休日の本棚 成功はゴミ箱の中に

f:id:business-doctor-28:20211113152749j:plainおはようございます。

昨日の新規感染者は全国で202人で、19県で感染者ゼロとなっています。下止まりしている感はありますが、行動制限緩和に踏み切った欧州では、1箇月も待たずに再び感染拡大し、ロックダウンを実施する国も出てきています。日本では緊急事態宣言解除から1か月以上たちますが、感染拡大の兆しは見えません。その違いはどこにあるのでしょうか?ワクチン接種率にそれ程の違いはありません。違いがあるとすればマスクです。欧州では行動規制緩和になりマスクを着用している国民は10人に1人程度、日本ではほとんどの国民がマスクを着用しています。昨日も書きましたが、「日本はワクチンに医療体制で負け国民意識で勝った」のです。第6波を起こさないためにも、いましばらくはマスク着用を続けましょう。

さて、今日は、レイ・クロック著「成功はゴミ箱の中に」(プレジデント社)を紹介します。著者のレイ・クロックはマクドナルド兄弟と出会い、マクドナルドのフランチャイズ権を獲得し、全米8000店舗へと拡大した起業家です。

ユニクロ柳井正氏とソフトバンク孫正義氏が「これが僕らの人生のバイブル」と絶賛する起業家レイ・クロックの自伝です。

クロックは、高校卒業後、ぺ-パーカップのセールスマン、ピアノマン、マルチミキサーのセールスマンとして働いていました。

彼は、「一度にミルクシェイクを6つ作れるミキサーを8台も使う店がある」と聞き、実際にマクドナルド兄弟が経営するハンバーガー店を訪れます。すると、そこでは客が大行列をなし、マルチミキサーはうなりを上げてフル稼働していました。

当時、席にいる客の注文を取ってから料理に取り掛かるというのが常識でしたが、マクドナルド兄弟のハンバーガーショップでは、店員は糊のきいた白シャツとズボンに紙製の白い帽子をかぶり、清潔で好印象、店内にはゴミ一つ落ちていません。長い行列ができていますが、客はほとんど待たされることなく、注文するとすぐにハンバーガ出てきてテイクアウトして外で食べるという形態です。メニューはハンバーガー、フライドポテト、ミルクシェイク、ソフトドリンクだけ、いたってシンプルです。硝子張りの厨房では、全工程の作業が単純に標準化され店員が手順に従って作業をしているようです。手順さえ覚えれば誰でも簡単にできるようになっています。

クロックがマクドナルド兄弟に出会い、彼らの洗練された販売システムにほれ込み、この事業展開を始めようとしたのは、52歳の時でした。

クロックは飲食業の経験がありませんが、直観的にこのビジネスの可能性を感じ、フランチャイズ化して全米展開を図りたいとマクドナルド兄弟と契約するのです。

クロックの課題は、品質を維持し規模を拡大するということでした。

フランチャイズなので、経営はクロックではなくフランチャイズオーナーです。当初はひどい品質のハンバーガーを作ったり、勝手にメニューを増やしたり、ゴミが出ても放置されたりと散々な状態でした。クロックは試行錯誤を繰り返し、「ハンバーガー大学」を作り、そこで認定されたフランチャイズオーナーやマネシャーだけが店舗を持てる仕組みに変え、商品開発研究所をつくり、作業を標準化することに努めました。

マクドナルド兄弟との契約では、何かを変更する際には、兄弟の承認が必要とされていました。マクドナルド兄弟は、クロックがやろうとする新しい挑戦をなかなか認めてくれません。そこで、クロックは、マクドナルド兄弟に270万ドルを支払い契約を破棄し、新契約ではマクドナルド兄弟が「マクドナルド」という店名を使用できないこととし、完全に兄弟と手を切ったのです。さらに、マクドナルド兄弟の店「ビッグM」の前に新店舗を出店し、兄弟の店を閉鎖にまで追い込みます。

クロックは、卑怯なことは大嫌いですが、一方で勝つためには手段を選びません。競争相手と徹底的に戦い続けます。

「競争相手にスパイを送り込もう」という意見には怒って反対する一方で、「競争相手を知りたかったらゴミ箱を調べればいい。私も深夜2時にゴミ箱をあさり、ライバルの肉の消費量を調べた」と言っています。これがこの本のタイトルの由来です。

クロックは、敵を徹底的に攻撃しましたが、それは、すべて「顧客にとって何がベストか」を考え抜いた結果です。

クロックは「マクドナルドのフランチャイズになるには、100%のエネルギーと時間を投入する覚悟が大切だ。頭脳明晰である必要もないし、学歴もいらない。しかし、マクドナルドへの情熱とオペレーションに集中する力が必要だ」と言っています。

クロックの成功は、情熱と執念の結晶です。クロックは次のようにも言っています。

  • やり遂げろ。この世界で継続ほど価値のあるものはない。才能があっても、天才であっても、教育を受けても、失敗している人はたくさんいる。信念と継続だけが、全能である。
  • 未熟でいるうちは成長できる。成熟した途端、腐敗が始まる。

この本は、マクドナルドを創った経営者の自伝で本当に面白いです。

楠木建教授は「僕の勝手な想像だが、クロックはマクドナルドの店でハンバーガーを食べながら30分だけ話を聞く分にはものすごく楽しい人だが、一緒に仕事するとうんざりすることもしばしばありそうだ。それでも、いなくなると妙に寂しいというのがクロック」と言っています。「おそらく実際に横にいたら『もう勘弁してよ』と言いたくなること請け合いの強烈なパーソナリティの経営者」ですが、大成功する創業経営者とは案外そういうものかもしれません。

横にいられると強烈すぎて逃げ出したくなりますが、本の中では時折突っ込みたくなれるので、肩も凝らず面白く読める本です。